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毒親 第37話 美和の猛攻

第37話 美和の猛攻


数日後の午後、カイの家に一通の封筒が届いた。送り主は「弁護士事務所」と書かれている。カイは嫌な予感を抱きながら封を開けると、そこには「監護者指定の申し立て通知」と記されていた。美和がユイの親権に干渉するつもりで動き出したのだ。

「まさか…」カイは手紙を握りしめ、顔を歪めた。彼の脳裏に、美和の冷酷な表情が浮かんだ。


その夜、家族会議が開かれた。リナはまだ病院にいたため、カイとサキ、そしてリナとビデオ通話を繋ぎながら話し合いが行われた。

「これ、本当にお母さんが?」リナは通話の向こうで困惑した表情を見せた。

「間違いないと思う。」カイは低い声で答えた。「内容からして、美和さんがサキさんを追い出そうとしてるだけじゃなく、ユイを取り上げようとしているようだ。」

リナはショックで声を失い、一瞬、画面越しに涙を拭う姿が映った。

サキも驚きを隠せず、「私がここにいることで、ユイちゃんまで巻き込まれるなんて…」と呟いた。

カイは強い口調で言った。「違う。美和さんが勝手にやってるだけだ。俺たちが屈しなければ大丈夫だ。」


翌日、カイは信頼できる弁護士に連絡を取り、対策を相談した。弁護士は冷静に助言した。

「監護者指定の申し立てというのは、実際に親権を変更するほど簡単な手続きではありません。ただ、相手方が家庭内に問題があると主張している場合、それが争点になります。」

「問題なんてありません。」カイは即座に答えた。

「では、相手が提示する『問題』が虚偽であることを証明する必要があります。たとえば、サキさんが家にいることが悪影響を及ぼしているという主張について、反論できる証拠を集めることが重要です。」


その夜、カイは家族全員で夕食を取りながら、ユイの笑顔を見ていた。彼女は純粋無垢で、美和の策謀など知る由もない。そんなユイを守るために、カイは決意を新たにした。

しかし、嵐の前兆は確実に迫っていた。その翌朝、美和が予告なくカイの家を訪れる。


「おはようございます。」玄関先に立つ美和は、冷たい笑顔を浮かべていた。カイは彼女の意図を察しながらも、冷静を装って応じた。

「美和さん、何のご用ですか?」

「あなたたちにもう一度考える機会を与えようと思ってね。」美和は家の中に足を踏み入れ、リビングに向かった。

サキとユイがリビングで遊んでいるのを見て、美和は鋭い目をサキに向けた。「まだここにいるのね。」

サキは視線をそらしながらも、毅然とした声で言った。「私はここで家族を支えるつもりです。」

「家族ですって?」美和は冷笑した。「リナの体調を悪化させた張本人が、何を言うのかしら。」

その瞬間、カイが間に入った。「美和さん、これ以上家族を攻撃するのはやめてください。あなたがやろうとしていることは、誰も幸せにしない。」

しかし、美和はその言葉に動じることなく、こう言い放った。「私が幸せを壊しているですって?本当に壊しているのはあなたたち自身よ。」

ユイが怯えた表情でカイの後ろに隠れるのを見て、カイはさらに強い口調で言った。「美和さん、出て行ってください。あなたがここにいると、家族が傷つきます。」

美和は鼻で笑いながら言った。「まだ終わったわけじゃない。すぐに分かるわよ。」

そう言い残して、美和は家を出て行った。


その夜、カイはリナに美和とのやり取りを報告した。リナはため息をつき、「お母さんがここまでしつこいなんて…正直、私も信じられない」と言った。

「俺たちにはまだ家族の絆がある。それを守るために、全力を尽くそう。」カイの言葉にリナはうなずき、サキもまた小さく微笑んだ。

しかし、家族は気づいていなかった。美和の策略が新たな形で牙をむくまで、時間の問題だったのだ。


つづく

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