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7秒タイムマシン 第32話 儀式の場所へ

第32話 儀式の場所へ


レン、エミリ、そしてアヤカは、「影の預言者」が儀式を行った場所を探しに廃村へ向かうことを決意した。廃村は町外れの山の中にあり、古い地図を頼りにレンが車を運転していた。

車内は静かで、緊張感が漂っていた。アヤカは少し不安そうな表情で、エミリに寄り添っていた。エミリはアヤカの手を優しく握り、「大丈夫、私たちは一緒にいるからね」と安心させた。

やがて、車は目的地に近づき、舗装されていない山道に入った。レンは慎重に車を進めながら、地図を確認した。「もうすぐだ。この先に廃村があるはずだ。」

車が揺れながら進むと、ついに廃村の入り口が見えてきた。そこには朽ち果てた木製の看板があり、かつてここに村があったことを示していた。レンは車を停め、家族で車を降りた。

廃村は静まり返っており、かつて人々が暮らしていた痕跡がかすかに残っていた。木々が生い茂り、建物の残骸がところどころに散らばっていた。エミリは周囲を見渡し、「本当にここで儀式が行われたのかしら…」と呟いた。

レンは地図を広げて確認しながら、「この村の中央にある広場が、儀式の場所のはずだ。行ってみよう」と言い、二人を導いた。

三人は廃村の中を慎重に進んでいった。道は荒れ果てており、足元に気をつけながら歩かなければならなかった。やがて、彼らは地図に示された広場にたどり着いた。

広場には古びた石の祭壇があり、その上には不思議な模様が刻まれていた。中央には、かすかに光が漂っている場所があった。

「ここだ…間違いない。この場所で影の預言者が儀式を行ったんだ。」レンは確信を持って言った。

エミリは祭壇に近づき、その模様をじっくりと観察した。「この模様、何か意味があるのかしら…?もしかして、儀式の手順を示しているのかもしれない。」

アヤカも興味津々で祭壇を見つめ、「パパ、ママ、あの光、何だろう?」と指差した。

レンとエミリもその光に気づき、慎重に近づいた。光は石の間から漏れ出しており、まるで何かを守っているかのようだった。

「これは…」レンは手を伸ばし、その光に触れようとしたが、エミリが制止した。「待って、レン。何が起こるかわからないわ。慎重に行動しましょう。」

レンは頷き、エミリの言葉に従って、少し離れた位置から光を観察した。「確かに、無闇に触れるのは危険だな。この光が何なのかを突き止める必要がある。」

その時、アヤカが何かに気づいたように声を上げた。「パパ、ママ、ここに文字があるよ!」

レンとエミリはアヤカのそばに駆け寄り、彼女が指差した石板を覗き込んだ。そこには、古代の文字が刻まれており、その意味は不明だったが、確かに何か重要なメッセージが書かれているようだった。

「この文字が儀式に関係しているに違いない…でも、どうやって解読すればいいんだ?」レンは困惑しながらも、その文字を読み取ろうと試みた。

エミリは思案し、「もしかしたら、この文字は影の預言者の言葉かもしれない。彼が私たちに何か伝えようとしているのかも。」と考えた。

その時、石板から微かな光が放たれ、レンとエミリの手元に古びた巻物が浮かび上がった。驚きの表情を浮かべながら、レンはその巻物を手に取った。

「これは…影の預言者の巻物か?中に何が書かれているんだ?」

レンは巻物を広げ、中に記された内容を読み始めた。そこには、儀式を再現するための手順が詳細に記されており、石板に刻まれた文字がその解読の鍵であることが示されていた。

「この巻物に書かれている手順を使えば、儀式を再現できる…」レンは興奮を抑えきれずに言った。

エミリも巻物を覗き込み、「これが本当に儀式の手順なら、私たちはこれを再現するしかないわね。」と決意を固めた。

三人はその場で儀式の準備を整え、巻物に記された手順を一つ一つ慎重に実行していった。石板に刻まれた文字を読み解きながら、光が強く輝き始めた。

「もうすぐだ…最後のステップだ。」レンはエミリとアヤカを見つめ、覚悟を決めた。

三人が儀式の最後のステップを行うと、石板の文字が光を放ち、光の柱が天へと昇った。周囲の空間が揺らぎ、次元の境界が再び整えられていくのを感じた。

「これで…終わったのか?」レンは息を呑みながら光景を見つめた。

やがて光が消え、静寂が戻った。三人はその場に立ち尽くし、ようやく儀式が成功したことを確信した。

「やったわ…これでアルケンの影響を取り除けたかもしれない。」エミリは安堵の表情を浮かべ、レンとアヤカを抱きしめた。

アヤカも嬉しそうに笑い、「パパ、ママ、私たち、また元の世界に戻れるよね?」と期待を込めて尋ねた。

レンは優しく頷き、「ああ、アヤカ。もう大丈夫だ。私たちは一緒に家に帰るんだ。」と力強く答えた。


つづく

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