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毒親 第57話 仕掛けられた罠
第57話 仕掛けられた罠
サキが田嶋の治療記録を持ち帰った翌日、病院内では何やら不穏な動きが広がり始めていた。職員たちがざわめき、警備が強化されているのが目に見えて分かる。
「田嶋が何か手を打ち始めたのかもしれない。」美和はスマホを握りながら、カイとサキに話した。「私が連絡を入れた病院側の内部監査も、突然ストップさせられたわ。」
「奴が裏で動いた可能性が高いな。」カイが険しい表情でうなずく。「あいつに先を越される前に、俺たちも早く行動しないと。」
「でも、どうやって?証拠はあっても、今はこれを公開する手段が封じられている。」サキが苛立ちを隠せない様子で言った。
その時、美和のスマホが鳴った。着信は知らない番号からだった。美和が電話に出ると、低く冷たい男の声が聞こえてきた。
「君たちが何をしようとしているか、全部わかっている。監視カメラがある事をしらなかったのかな?」それは田嶋だった。「君たちの行動、病院での動き、すべて監視しているからな。」
「……あなたが何を企んでいるか、私たちも知っていますよ。」美和は冷静を装いながら応じた。「あなたのやり方がどれだけ汚いか、全て世間に明らかにするつもりです。」
田嶋は鼻で笑いながら答えた。「好きにするがいいさ。ただし、覚えておいて下さいね。リナさんがどうなるかは、君たちの出方次第ですよ。」
電話が切れると、部屋の中に緊張が漂った。
「全部ばれてる。お姉ちゃんが危ない……!」サキが震える声でつぶやいた。
「まずいな。」カイは拳を握りしめた。「奴はリナを盾にして俺たちを脅してくるつもりだ。」
一方、病室ではリナが目を覚まし、看護師に問いかけていた。
「サキはどこ?ずっと来てくれないけど、何かあったの?」
看護師は困ったような表情で、「妹さんたちは今、病院に来られない事情があるみたいです。でも心配しないで、すぐに会えるはずですから。」と答えた。
その直後、田嶋が病室に現れた。
「リナさん、目覚めましたか、体調はどうですか?」
リナは少し警戒しながらも、「ええ、大丈夫です。」と答えた。
田嶋は穏やかな微笑みを浮かべながら近づき、リナの腕に触れた。「安心してください。私はあなたのために最善を尽くしていますよ。」
しかしその瞬間、リナの背筋に冷たいものが走った。田嶋の視線には隠しきれない冷酷さが垣間見えた。
「田嶋先生……私の妹たちに、何かしたのですか?」
田嶋は微笑みを崩さずに答えた。「いいえ。ただ、あなたの事は心配する必要はないと伝えておきました。すべて、私に任せてください。」
その言葉に、リナの胸には不安が募るばかりだった。
その夜、カイたちは別の病院にリナを移送する計画を立てていた。
「移送は明日の早朝だ。時間がない、それまでに準備を整えよう。」カイが力強く言った。
「でも、田嶋が動きを察知したら?」サキが心配そうに聞く。
美和が「そのために、私が奴の注意を引く。」カイは美和に目を向けた。「美和さん、できますか?」
美和は少しの間考えた後、頷いた。「もちろん。私が目を引いている間に、あなたたちはリナを安全な場所へ連れて行って。」
計画は練られたが、田嶋がそれを簡単に見逃すとは思えなかった。
「これは家族全員を守るための戦いだ。」カイは決意を込めて言った。「田嶋に勝つためなら、どんなリスクも取る覚悟は出来ている。」
田嶋の影が迫る中、リナの命を守るために、家族の戦いは新たな局面を迎えようとしていた。
つづく