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橈骨遠位端骨折のリハビリ方法〜Oval ring theory、ダーツスロー・リバースダーツスローモーションについて〜


Oval ring theoryとは?

Oval ring theoryは1988年にLichmanにより報告されたもので、手関節運動に多くの手根骨が関わるにもかかわらず、近位列には筋腱の付着がないことから、遠位列に伝えられた力が靭帯を介して近位列の位置を決めるという主張である。舟状骨・大菱形骨間でのRadial link三角骨・有鉤骨間のUlnar linkによる力の伝達が考えられている。

林 典雄ほか.「橈骨遠位端骨折に対するギプス固定後の運動療法」.改訂第二版 関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹.メジカルビュー社,2020/3/10.199
図1:Musculoskeletal key

力の伝達順序としては以下のようになります

  1. 第2.3中手骨が筋腱によって力の伝達を受けて動く事で遠位手根列も一体となり運動を開始します

  2. 遠位列が運動を開始することによって、radial linkを介して舟状骨が、ulnar linkを介して豆状骨・三角骨が動き、更に月状骨に力が伝達することによって、手根骨全体の運動が生じます

※・豆状骨にはFCUが付着していますが、それ以外の手根骨には手外在筋が付着しないため、手根骨は運動自体ができません
・第2.3中手骨と遠位手根骨の関節は、可動性はほとんどなく、遠位手根骨同士の関節も靱帯結合が密で可動性が概ねない状態になります

ダーツスロー・リバースダーツスローモーション

手根遠位列間はほとんど不動で一塊となって動くが、手根中央関節におけるその動きは、橈掌側から尺背側に走る軸を中心とした回旋運動であり、手関節掌背屈軸に対して45°の角度を持っている。この手根遠位列の運動は、手関節のどのような運動においても同一であり、ダーツを投げるような運動、すなわち回内45°での回旋運動では、遠位列のみの運動となって手根近位列は動かない。橈屈は、手根中央関節での橈背屈(ダーツスローモーション)と橈骨手根関節での掌屈とが組み合わさったものであり、手根中央関節での背屈ベクトルを橈骨手根関節での掌屈が相殺し、橈屈運動となる。同様に尺屈においては橈骨手根関節での背屈が手根中央関節での掌屈ベクトルを相殺する。

林 典雄ほか.「橈骨遠位端骨折に対するギプス固定後の運動療法」.改訂第二版 関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹.メジカルビュー社,2020/3/10.199

リハビリとして考えられること

  • Oval ring theory
    まず、自動運動での筋出力が絶対条件となると考えられます。筋は伸筋であれば第2中手骨に付着するECRL・第3中手骨に付着するECRB。屈筋であれば第2中手骨に付着するFCRであると考えられます。また、遠位手根骨より近位手根列への伝達の際に靱帯を介すため、手根骨・靱帯が存在していなければならない。また、欠損例であればこのtheoryを用いることは困難になると思われます。靱帯伝達となるため、靱帯が硬くては伝達自体は難しいものになる。そのため、手根骨間靱帯は柔軟性を保持していなければならないと考えられる。

  • ダーツスローモーション
    自主訓練として、取り入れる際にはダーツを行ったことがある若年層であれば指導が容易となりますが、高齢の場合は指導方法を注意する必要があると考えられます。リハビリの際に反復的に施行する、自主訓練用紙を作成するなどの方法をとると良いかとは思います。また、一番重要な事としては前腕回内45°位にて保時した状態での橈背屈・掌尺屈動作となります。前腕の位置が異なれば効果を得られる可能性が低下する可能性があると考えられます。

  • リバースダーツスローモーション
    ダーツスローモーションの反対の動作を行う形となります。ダーツスローモーションは前腕回内位での手関節橈背屈・掌尺屈ですが、リバースダーツスローモーションでは手関節が橈尺屈・掌橈屈となります。そのため、実際にやってもらうと分かりますが自動運動では難しい動作パターンとなるため他動運動での動作となります。そのため、ただでさえ知識のないクライアントでは動作理解し施行することが困難なため、リバースダーツスローモーションはセラピストが他動運動にて施行することが好ましいと考えられます。また、セラピストだとしても初回介入時にいきなり施行しようとしても動作自体がやり難いと思われますので、セラピスト間で練習したのちにクライアントへ施行する方が効果的に行えると思われます。

  • ダーツスローモーション、リバースダーツスローモーションの取り入れ方
    ダーツスローモーションは主にMCJを動かし、リバースダーツスローモーションは主にRCJを動かす方法です。そのため、橈骨遠位端骨折後の初期にRCJへの負担軽減を考慮しつつ介入するのであればダーツスローモーションより介入を進行する。手関節の掌屈・背屈角度のどちらが低下しているかを考慮し、掌屈の関節可動域が低下しているのであればMCJが主体に動くため、ダーツスローモーションを施行し変化があるか。背屈の関節可動域が低下しているのであればRCJが主体に動くため、リバースダーツスローモーションを施行し変化があるかと導入していけばいいと思います。

参考文献・引用文献

林 典雄ほか.「橈骨遠位端骨折に対するギプス固定後の運動療法」.改訂第二版 関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹.メジカルビュー社,2020/3/10.199

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