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【直ぐに実践できる】母指球筋・小指球筋の覚え方


導入

今まで対応した患者さんの中に母指球・小指球が萎縮した方を担当に持った事があると思います。その際に母指球・小指球は何の筋で構成していて、神経支配は何だっただろう?と考えた事はあるでしょうか?
今回、この記事を最後まで閲覧してもらうことで母指球筋・小指球筋の構成筋、神経支配、作用などが分かり、明日からの臨床に活かせる事間違いなしです。

概要

母指球筋・小指球筋とは、手の内在筋であり母指・小指の基部に付着した筋が隆起している部分です。母指球・小指球が存在することで手掌面のアーチ形成ができ、より細かな物品操作が可能となります。

図1:母指球筋・小指球筋、アーチ

構成筋

母指球・小指球は以下の筋で構成されています。


表1:母指球・小指球の構成筋

各筋の起始・停止・支配神経と作用

母指球筋

母指対立筋(OP)
起始:大菱形骨、屈筋支帯
停止:母指の中手骨の橈側縁
支配神経:正中神経(C6,7)
作用:母指の対立

母指内転筋(AdP)
母指内転筋には斜頭と横頭の2頭が存在します
斜頭
起始:有頭骨、中指および示指中手骨底掌側
停止:母指の基節骨底および尺側にある種子骨
支配神経:尺骨神経(C8,Th1)

横頭
起始:中指中手骨の骨幹掌側面
停止:母指の基節骨底および尺側にある種子骨
支配神経:尺骨神経(C8,Th1)
作用:母指の内転・対立・屈曲・伸展(付着部位が多いため、動き方によって作用が異なる)

短母指屈筋(FPB)
短母指屈筋には浅頭と深頭の2頭が存在します
浅頭
起始:屈筋支帯
停止:母指の基節骨底および橈側にある種子骨
支配神経:正中神経(C6,7)

深頭
起始:大菱形骨、小菱形骨、有頭骨
停止:母指の基節骨底橈側にある種子骨
支配神経:正中神経(C6,7)
作用:主には母指のMP関節の屈曲に作用します。その他にも母指の掌側外転・対立動作にも関与します

短母指外転筋(APB)
起始:舟状骨結節、大菱形骨、屈筋支帯の橈側前面
停止:母指の基節骨底および橈側にある種子骨
支配神経:正中神経(C6,7)
作用:母指の掌側外転

小指球筋

小指対立筋(OPM)
起始:有頭骨鉤、屈筋支帯
停止:小指中手骨の尺側縁
支配神経:尺骨神経(C8,Th1)
作用:小指の対立

小指外転筋(ADM)
起始:豆状骨、屈筋支帯
停止:小指の基節骨底尺側
支配神経:尺骨神経(C8,Th1)
作用:小指MP関節の外転

短小指屈筋(FDM)
起始:有頭骨鉤、屈筋支帯
停止:小指の基節骨底掌側
支配神経:尺骨神経(C8,Th1)
作用:小指MP関節の屈曲

短掌筋(PB)
起始:手掌腱膜
停止:なし
支配神経:尺骨神経(C8,Th1)
作用:小指球を覆う皮膚自体を緊張させて、小指球尺側の皮膚を凹ませる

筋萎縮とのつながり

母指球筋が萎縮している症例を幾度か見たことがあると思います。その時に

母指球筋は何筋が付着していて・・・
何神経支配だったっけ・・・
忘れた・・・

とならないように普段より頭に入れておけると良いかと思います。
私は、ゴロなどを使わずにそのまま覚えました。私なりの覚え方を下に載せておきます。

まず、母指球筋・小指球筋共に内在筋になるため外在筋である長〇〇とつく筋が付着することがないことは直ぐに分かると思います。更に母指球筋・小指球筋共に4つずつの筋が付着します。
また、手内在筋であり母指・小指に付着する対立筋・屈筋・外転筋はなんだろう?と考えます。そしたら、もう後残っている筋は母指内転筋と短掌筋となるため最後の2つの筋を思いだすことができるかどうかかな?と思います。

神経に関しては、母指球筋は3/4が正中神経支配になります。唯一、母指内転筋が尺骨神経となることを忘れないようにするだけです。小指球筋は全て尺骨神経支配になるため覚えやすいと思います。

一番重要な筋は母指内転筋を忘れないようにすることだと思います。

萎縮している場合には、上記で示した母指球筋・小指球筋の筋力低下が存在します。

母指球筋の場合

  • 手根管症候群(正中神経麻痺)

  • 母指CM関節症

  • 筋単独の筋力低下

小指球筋の場合

  • ギヨン管症候群

  • 小指中手骨骨折

  • 筋単独の筋力低下

による影響で萎縮が発生する可能性があります。

参考文献

1)林 典雄.改訂版第2版 運動療法のための 機能解剖学的触診技術 上肢.株式会社メジカルビュー社

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