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認知症の連れ合いとの老後ー後悔すれど

-----------------2021.06-----------------

「飯は何?」
「まだ決まってない!!」
「なんでそんなにイライラしてるの?俺は飯は何?って聞いただけだよ。別にお前の作る飯がまず言っていったわけじゃないだろ」
病院の前。暑い中。タクシーの順番待ちの長い列。そんな中でのやりとり。
私たちの前の上品な老婦人が、笑いを押さえるようにして下を向いたとき、初めてシマッタ!と思った。
認知症の夫の脳外科受診の付き添い。いつもだと二時間半ほどなのに、今回は救急車で運ばれてきた人がいたため、倍の時間がかかった。
予約を取って再受診にしようかとも思ったが、次の番だったし、それにタクシーも往復で六千円弱だし、と、ケチったのが運のつきだったのだ。
ヒマを持て余した夫が、
「ちょっと(病院の中)歩いてくる。ついでに売店も覗いてくるけど、欲しいもの何かある?ちゃんと戻ってくるから、お前は本を読んでていいよ」
額面通りうけとめて
「そう、じゃあ適当に戻ってきてね」
と言えるなら要介護3の認定にはなっていない。
「そんなに俺と一緒にいたいの」に「うん、そうなの」と返し、付いて回る。
まあ、毎度のことである。でも今回は特別延々と付いて回ることになったのだ。おまけに六月になって初めての真夏日!私は寒さには滅法強いのに、暑さにはからきし弱い。八年ほど前に熱中症で入院してからは、なおさら暑さが堪えるようになってきた。
家に帰ってきて一段落し、ホッとする。そして余裕が出てくると、しきりに反省しだす。
あの時…
「まだ決まってないけど、何か食べたいものある?」とか
「そうね、何にしようか?」とか、どうして言えなかったんだろうと…。

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