銀河鉄道999 2巻 第9話 人の嫌がることをしてはいけません
「好奇心という名の星」
停車駅 好奇心
停車駅の名前が好奇心とはいったいどういうことなのでしょう?
この書き出し、何回目でしょうか。そのくらいいつも予想を超えるエピソードだということでお許しください。
999号がある星の横を通り過ぎて行きます。
この星の見た目はまるで目玉のようです。宇宙空間に浮かぶ目玉、そして衛星がふたつ。その目がずっと999を見ているように見えるのです。
鉄郎も初めは自転周期が合っているだけだと思ったのですが、メーテルがいうにはこちらの速度が変わってもずっとこちらを向いているのだそうです。
ようやくその星から離れようとした時、なんと衛星のひとつが999をとらえ引っ張っていくのです。しかも999の電子頭脳に直接語りかけ、よく見たいから着陸しろと言うのです。
そう、この星には意識があるのです。最近ではAIが意識を持つことの危険性が話題になることが多いですが、まさか星自体が意識を持つ事がありうるのでしょうか?それはこの星の正体が明らかになるにつれてわかってくるのです。
999は惑星の目にあたるところに停車させられました。目のように見えたところは昆虫の複眼のような六角形の集合体でした。そして今度は乗客に降りろと言いその上服を脱げと言います。
「ドスケベーな星だなあ ここは!」
鉄郎の感想に読者も納得でしょう。
車掌さんは服を脱ぐのを頑なに断り、自ら脱いだ鉄郎に対しては見たくないと言われてしまいます。次にメーテルに服を脱ぐよう要求をしますが、鉄郎と車掌さんが後ろを向いているのが紳士で素晴らしいです。
服を脱いだメーテルに星は興味深々です。
「人間トハミンナコウイウカタチヲシテイルノカ!」
世井正雪の時もそうでしたが、メーテルの身体を見た時の反応はみな独特です。何も知らされていない読者は想像するしかありません。
そしてこの後この星はさらにとんでもない要求をしてきます。
「分離解体シテ中身ヲミセテモラウ」
星は車掌さんの脳波をあやつりナイフで襲わせようとします。もちろん車掌さんは抵抗するのですが、今度は車掌さんの脳に直接攻撃をしかけてきます。
「イヤです、イヤです、メーテルさんをバラバラにするなんて」
苦しむ車掌さん。
それを見ていた鉄郎がナイフで星の表面を切り裂きました。さっき車掌さんがナイフを落とした時に星が痛がったような反応をしたのを見ていたのです。
ナイフで星の表面を切り裂く鉄郎。表面はビニールのように簡単に切れました。中には機械のようなものが見えます。やはりこの星は人工の星でした。
そしてその後のこの星の反応が予想外でした。
「ミナイデ ミナイデ 恥ズカシイ!ミナイデクレ!」
突然猛烈に恥ずかしがる好奇心。そして脳波攻撃や999を引き付けていた力もなくなってしまいます。
三人は急いで999に乗り込み脱出するのでした。
そして星から遠ざかったとたんに「好奇心」は爆発します。今後鉄郎は旅を続ける中で、たくさんの星の最後を見ることになるのですがこれが記念すべき星爆発の第一号となります。
メーテルはこれを星の自殺だといいます。
「自分のなかみを見られてやっと見られる他人の辛さがわかったのよ」
この後の松本巻紙は秀逸です。
「わが身をつねって人の痛さを知れとは古くからのことわざにある これこそ真実である 好奇心の星はわが身をつねって自然の星にかえった それがよかったのか悪かったのか鉄郎にもだれにもわからない それは思い出の中にだけ姿を残して銀河鉄道の車窓からきえてゆく・・」
今ネットで他の人を叩くことが多く見受けられます。おそらくそんなことをする人の多くが昔自分が叩かれた人ではないでしょうか。それをマグマのように自分の奥底にためて、今他の人を叩く。これは痛みを知らなかった「好奇心」とは違う気がします。知った上でやっているという悲しい現実だと思うのです。
お互いに恨みあう社会、これから鉄郎の旅に出てくるかもしれません。