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ニュースの代わりに書物を読むと理性で世界に接することができる

瞑想を習慣にするようになってから、自分の心の状態がよくわかるようになってきた。
どのようなことがあると心が乱れてくるかにも、気づくことができる。
今までこのNoteでは、ニュースダイエットをテーマに書いてきた。
そのうちの一つの記事で、私は次のように書いた。

「禅僧であり、学者であり、宗教指導者である、ティク・ナット・ハンは、『あなたに平和が訪れる禅的生活のすすめ』アスペクト社のなかの「5つの気づきの実践」において、毒を含むようなものは見ない、聴かない、読まないという意識的な消費の実践をアドバイスをしている。
「テレビ番組、雑誌、本、映画、会話などに関しても、有毒なものは取り込まない」(P.104)
案外忘れられていることがある。それは、「憎悪」は伝播するということである。強烈で毒性の強いニュースは、人々の心に憎しみや怒りなどといったネガティブな感情を湧き起こす(たとえそれをはっきりと自覚していなくても)。
そもそもメディアとは、あるものを容器に入れて、人々に届けるものだ。
容器に入っているものの中身に対して、無頓着であってはならない。」

ネガティブなニュースやネガティブな情報にふれると、まるでウィルスに伝染したように心にネガティブな感情がおこる。
電子メディアだからといって安全なわけではないように思える。
私たちは、他人から怒鳴られたり、怒りをぶつけられたりすると、暗い気持ちになり、怒りが伝染する。
しかし、電子メディアを使ってニュースを見るときは、平気な気持ちで気軽にスイッチをつける。
しかし考えてみれば、電子メディアで報道されるニュースのなかには、想像を絶するほどの悲惨な出来事を報じたニュースや犯罪の報道が流れることがある。
ポジティブなニュースだけが流れるわけではない。
そうしたニュースは、他人から直接怒鳴られたり怒りをぶつけられたりするのと同じだとはいわないまでも、心に刺さるネガティブな毒素の量で言えば、決して少なくないように考えている。
なぜなら、そうしたニュースは暴力にまつわる出来事を報じているからだ。

だからこそ、ニュースダイエットの哲学は心の平穏を保つ上でも大切になってくる。

ニュースを見ようとするとき、私たちは何を求めているのだろうか。
たんにいつも見ているからという習慣で見てしまう人が多いように思える。
でも、結局、次の日にはそのほとんどを忘れているし、三日後には完全に忘れている。
思い出せない。
違う。脳が不必要ないらない情報だと判断して捨てているのだ。
不必要な情報を得るために私たちは貴重な時間を費やす意義があるのだろうか。
記憶にも残らないうえ、ネガティブな場合もあり、気分もむしろ悪くなるし、人生と直接関わりのある情報はほんのわずか。
しかも、そのわずかな情報でさえ、生きるのに不可欠だというわけではない。

だとしたら、良質な本や良質な長文記事を読む時間をニュースの代わりにした方がいいのではないだろうか、と思ってしまう。
そうした人生哲学はニュースダイエットと呼ばれる。

それに生活に直接関わる情報は、インターネットで自分で取りに行けるし、新聞にも載っている。あるいは、誰か身近な人が教えてくれる。

書物というメディアはグーテンベルクの印刷術の発明で大きく広まったという。
理性の時代に産声を上げたメディア。
書物というメディアは、世界を理性的に深く理解する上で、いまだ最良のメディアであると思っている。
書物だったら、ネガティブな感情の毒素も伝染しにくいように思える。
紙の書物は、目に優しいだけでなく、人間のメンタルヘルスにも優しい気がしている。
もちろん、本の中にも、一部、ネガティブで毒のあるものはあるかもしれないけれど、そう滅多にないし、自分で良書を意識して選んだり、書評のプロフェッショナルである識者が選んだ本を読めば、電子機器よりもずっと安全なように思える。
書物というメディアは、総じてネガティブな毒素に対する遮断フィルターが機能しやすいと思っている。
つまり、理性で深く世界を理解するのに特化したメディアである。
世界に生じる暴力や憎悪、怒りの毒素を自分の日常に招くかどうかを決めるのは私たち自身の権利だと思う。
もし以上書いたことに何かしら共感できる部分があったら、ロルフ・ドべリ著『NewsDiet』(サンマーク出版)を読んでみてほしい。
現代という時代は、情報が増え過ぎた時代だ。
情報過多は脳疲労を招くし、心の健康にもよくないように思える。
だからこそ、いかに数少ない良質な情報を血肉とできるかにかかっている。
ロルフ・ドべリは、『News Diet』で述べていた。
今の私たちとニュースの関係は、20年前の私たちと砂糖や塩分の摂り過ぎによる生活習慣病との関係と同じだ、と。
情報の摂取も、ある意味では食事である。
ニュースダイエットは情報における健康的で安全な食事の方法であると言える。


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