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関東大震災のドサクサの中で起きていたこと

大阪の聾学校を舞台に、戦前の聾唖者の暮らし・聾教育を描いた、こんな漫画があります。

漫画から引用します。

大正12年6月

日本共産党への第一次弾圧が加えられ
主だった党員が次々と検挙された

第一次世界大戦 ロシア革命 米騒動を
きっかけに広まった様々な民衆運動に対し

政府は危機感を高め 事あるごとに
これらを過激社会運動として弾圧しようとした

そして同年9月1日

関東大震災が起こった!


地震と同時に発生した火災は
東京の街を焼き尽くした

想像を絶した災害に人々は
恐怖のどん底におちこんだ

政府は被災市民の安全や食料確保よりも
民衆の積もる不満が「米騒動」の時のように
爆発するかもしれないという恐怖におびえた

そして地震や火災よりも
もっと恐ろしいデマが流れた

社会主義者や朝鮮人が放火している!!

井戸に毒を投げ 婦女子を強姦している!!

爆弾を所持した不逞朝鮮人の来襲あるべし!!


このようなデマが警察と軍隊の情報網に
のせられ 各所に市民や在郷軍人による
自警団が組織された

そして警察 軍隊 自警団による朝鮮人・社会主義者
の虐殺が行われたのだった

横浜では警察部長から
「朝鮮人殺害差し支えなし」
との布告さえ出るに至った

こうして虐殺された朝鮮人は
六千人以上であったといわれる

大地震と火災の惨事のさなか、治安当局は市民に民族差別を煽り、思想弾圧を加え、警察や軍隊を動員して、治安維持の名目のもとに、上記のような虐殺を行ったのでした。

その後、東京の聾学校で学んでいた一作という青年が、被災してボロボロになりながら帰ってきて、見てきた惨状を先生たちに語る場面があります。以下、また漫画からの引用です。

高橋先生…健聴の男性教員
福田先生…難聴の男性教員
一作…聾唖(手話での表出がメイン)

高橋「何故だ⁉ 朝鮮の人達が暴動を起こした
   というのは本当なのか⁉」

一作:デマです!! そんな事はありません
   おかしいのは軍隊や警察や自警団の
   連中です!!

   連中は片っぱしから朝鮮人を見つけては
   追いまわし捕まえて
   よってたかって虐殺しました

   そして……

   殺されたのは
   朝鮮人や社会主義者だけではありません…

   ろうあ者も殺されました!!

   東京聾唖学校の生徒も殺されました!!

高橋「何故だ!! 何故ろうあ者が!!」

一作は「50円50銭」と説明します。

朝鮮の人は大体「こちゅーえんこちゅーせん」
と発音するので、憲兵に「50円50銭」と言ってみろと言われても黙って答えなかった。

ろうあの生徒は憲兵に呼び止められても、
耳がきこえないために答えられなかった。

だから、朝鮮人だと思われて、
憲兵に連れていかれて殺されたと。

そして一作は先生方に、学校で発行された証明書を見せます。

縦書きで、一作のフルネームと年齢があり「右の者は間違いなく聾唖者であることを証明致します」と書かれ、日付や校長名も入っています。

憲兵に呼び止められたら見せるように言われたこの証明書のおかげで、一作は殺されずに帰ってこれたのです。

高橋「な…何て事だ…」

一作:でも学校に行ってない
   ろうあ者も大勢います
   もっとたくさん殺されたとだろうと…
   先生方は言ってました…

高橋「そんな…そんなことがあっていいのか⁉
   何の罪もない朝鮮の人達や
   ろうあ者を…」

福田「要するに政府の狙いは
   震災に乗じて暴動のデマを流し
   社会主義者を弾圧する事です
   ロシア革命・米騒動以来
   政府は治安維持法を作りたがっていた」

一作:治安維持法…?

福田「国家の治安を守るという名目のもとに
   国家にとって都合の悪い思想や行動を
   取りしまるという法律だ」

一作:そのために朝鮮の人達を
   平気で殺したんですか⁉

福田「そうだよ一作…
   いざとなったらどんな冷酷な事でもやる
   国家とはそういうものだ」

高橋(無言で悲しそうに会話を見守っている)

福田「我々が おし つんぼと
   差別を受けてきた事と 今度の震災で
   朝鮮人や社会主義者が虐殺された事は
   決して無関係じゃない

国家は権力を維持し
強化するために差別の
体制を作りあげ…

軍隊や警察や市民に
差別を実行させるんだ」


関東大震災は死者10万人 重傷者3万人
損害総額65億円という莫大な被害を出しましたが
朝鮮人虐殺・社会主義者の虐殺は不問に付された
そうです   




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