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V43 為になる本『検証 働き方改革』

by 日本経済新聞社編
2017年9月22日 第1刷

本書との出会い

当要約本V42にて「岡山の中小企業初めてのテレワーク」(by 石井 聖博監修)に触れた。その中で厚生労働省所管、2019年施行「働き方改革」の論点と施行前〜施行後の変化に関心を持ったことが、本書「検証 働き方改革」との出会いとなった。

本書は政令として施行される2年ほど前に日本が直面している問題・課題をするどく指摘し、未来像を見据えた各労働者・各企業・制度設計により社会を、より豊かにするための政治をおこなうことを目的とした真っ当な政治家や官僚そして企業への提言を発信している。

◯労働者が起こすべき変革
◯企業が起こすべき変革
◯国(政治家・官僚・政治学者など行政)が起こすべき変革

★施行以来2024年間に、「働き方改革」は、成功への生き残りをかけた戦略とまで言われるようになったが、導入のの真の目的は何か?そして、その先に目指す社会の有り様はどこにあるのか?を考える一助になることを、期待している。

はじめに

「ちゃんと働いて成果を出そう」
「そうしないと日本は持たない!」

人口減少による人手不足、企業は働き手の確保に四苦八苦。正社員も非正規労働者も集まらない。女性や高齢者、外国人もそう容易く大量採用はできない。そうした苦境にも関わらず、企業の中で働く人への目配りは十分ではない。大手広告代理店では、新入社員が過労自殺した。ブラック企業も後を絶たない。

なんらかの手立てが必要だ!
2016年9月、国は重い腰を上げた。
「働き方改革実現会議」設置だ。

本書が国と企業を動かし、働く人が前向きに仕事に取り組むきっかけになることをのぞむ!!!

第1章 「働き方改革」に足りない視点

1、「同一労働同一賃金」の迷路
  ・・・努力の成果、どう報いる
  ◯実力のある人=リーダーに求人殺到!
  ◯トップランナーを評価せよ

2、「一億総活躍」では不十分
  ・・・外国人が先導する現実
  ◯外国人と共通の土俵で競い合う覚悟

3、聞こえぬ「雇用流動化」の声
  ・・・失業を生かせる国に
  ◯人材を磨く意識の高さ、Market fitの職業訓練

4、モーレツ社員がいてもいい
  ・・・時間当たり価値の最大化
  ◯時間評価ではなく成果評価

5、会社にしがみつく時代は終わった
  ・・・原動力は個々の意欲に

コラム
これだけは知っておきたい「働き方改革」
【9つの改革テーマ】
1、同一労働同一賃金など非正規の待遇改善
2、賃上げと労働生産性の向上
  +より効率の高い仕事ができる働く環境づくり
3、長時間労働の是正(残業時間に上限)
4、転職・再就職支援、格差を固定させない教育
5、テレワーク、兼業、副業など柔軟な働き方
6、働き方に中立な社会保障制度、税制、女性・若者の活躍
7、高齢者の就業促進 
8、病気の治療、子育て・介護と仕事の両立
9、外国人受け入れ問題(高度人材に注力)

インタビュー
私の提言!!
 ● 副業解禁、再入社容認、年功は評価に値せず
   by サイボウズ社長 青野 慶久氏
 ● 「IOT社会、世界で人材奪い合いに」
   by 経済共創基盤 CEO 冨山 和彦氏

第2章 公正な評価と脱長時間労働

1、自由な職場とAIを武器に
  ・・・24時間賢く生きる

2、女性・シニアは「補欠」じゃない
  ・・・最前線に立ち続けよ

3、「改革は推進」労使に打算
  ・・・同床異夢
  会社は負担増、組合は正社員側、
  時代の変化に適合したルール整備

4、雇用改革は一進一退
  ・・・産業構造転換にルールが必要?
  長時間労働と年功序列に変わるあらたな仕組みは?

5、日経電子版読者が語る本音
  ・・・政府の残業の上限規制は必要か

第3章 会社に縛られない、社員を縛らない

1、成長目指し、人材大移動
  ・・・光る才能、使い尽くせ
  力のある労働者は伸びしろがあり、
  魅力的な仕事を提供する企業を選ぶ。

2、労働環境が生み出す生産性
  ・・・人件費こそ投資の対象!

3、「官製春闘」もういらない!
  ・・・高度人材
  当たれば厚遇、
  売れなければ契約打ち切り(アイリスオオヤマ)

4、離職者には国の存在遠く
  ・・・転職・能力向上頼るのは民間
  労働者にとっての国の施策は薄い。
  あっても、手続きが煩雑で誰を支援するのかも不明確。
  失業に悩む人もそっぽを向く。

5、改革へ、警戒感の解消急務
  企業は人件費を警戒する。
  労働者も残業時間の削減は残業代の削減になり、
  実入りは減る。

インタビュー
生産性高めるには!?
・成長分野へ人材を移す
 by 大内伸哉 神戸大教授
・残業よりも成果重視で(時間評価➡️成果評価)
 by 櫻田謙悟
・社員の不公平感なくす
 by 石川康晴 strype international
・時と場で縛らぬ評価を
 by 吉田晴乃 BTジャパン社長
・働き方改革 世界でも苦闘
 by フランス・韓国・ドイツ

第4章 働くルール改革を検証する

1、仕切り直しの内閣改造
・・・結果重視/仕事第一/実力本位
2、大山鳴動の脱時間給
・・・政労使協議
3、人手不足、経済を底上げ?
・・・賃上げは息切れも
4、働き方改革、積み残した課題
・・・経済の好循環なお力不足、
   社会保障制度との連動みえず。

インタビュー
成長の道筋 by 加藤勝信 働き方改革担当相

働き方改革実行計画の重点は?
 ●政労使と有識者合同の明確な答えを出せた。
 ●同一労働同一賃金、長時間労働是正はどうにか制度導入できた

日本の成長力持続への道筋は?
 ●働き手を確保していく必要があり、働く意思がある人達が
  希望を実現できるようにしていかないといけない。
  どうやって、生産性を上げていくのかということもきちんと
  対応していく必要がある。

◯生産性向上と働き方改革の両立に対する取り組みは?
 ●AIやICTの取り組み
 ●カイゼンの採用など各省庁の生産性向上支援策

◯女性や高齢者活用
 ●103万円の壁、次が130万円の壁の税制の見直し

第5章 提言・働き方改革

日本経済新聞社はビジネス社会の一線で働く経営者や雇用問題に詳しいエコノミストの協力を得て『提言』を集約した。

背景に、少子高齢化で人口減少のなか、働く人一人一人の力を最大限に引き出すにはどうすれば良いか、働いて成果を出す方向に改革しなければ、日本の未来はない!の強い危機感がある。

1、働く力、再構築の時
・・・有識者提言
一、自由な働き、公正な評価
 ◯企業は曖昧な潜在能力で評価せず、
  求める業務内容を明確にして、公平に評価する。
 ◯IT活用で職住近接の環境を整えるなど、
  年齢差や性差に関係なく働く人を支える。

二、年功・長時間の悪弊を断て
 ◯働き手の評価は成果に基づいて決め、
  年功序列や長時間労働の根を断つ。
 ◯働き手は自らの能力を高める研鑽に励み、
  プロ意識を持つ。

三、ひとつの会社に縛られない
 ◯転職・再就職の市場を拡充し、
  労使のニーズにあった職業訓練を提供する。
 ◯長期雇用の良さを保ちつつ、
  退出ルール明確化などで失業の不安を減らす。

四、成長力強化へ人材集中
 ◯企業は成長分野に資源を集中し、
  働き手の能力開発にも取り組む。
 ◯1人当たりの労働生産性を、
  5年で世界トップクラスに引き上げる。

五、国は働くルール再設計を
 ◯就労意欲を削がない税制、
  社会保障制度を再構築する。
 ◯長時間労働など違法性のある企業の監視を徹底する。

2、崖っぷちは好機
・一人ひとりの働き手が密度濃く、
 元気に働ける環境を整える。
・組織に寄りかからない一人のプロとして腕を磨く。
・不安を感じずに職場を変わり、
 次の仕事に前向きに取り組めるようにする。
・成長分野へ資源を集中し、人材も大胆に移す。
・労働の質を問う時代
 企業も働き手の持つ力を引き出せないと成長はおぼつかない。

3、プロの技で差をつけろ
・根強い安定志向
・一生安泰はない

4、未来は自力で開け
・4足のわらじ
・自分の売りは
 →今の会社以外で働くとしたら?


コラム 働き方改革を巡る意識調査

■調査方法
電子調査票配布式
■調査対象
企業:国内上場企業301社
働き手:従業員1000人以上の企業社員10508人の男女正社員
内容:「自社の改革の進捗・政府への注文・期待」など
■調査時期
2016年12月下旬
111、最優先関心事は
  ◯長時間亜労働是正 全体の70%
222、副業・兼業の導入案
  ◯「禁止」70% 本業への支障・警戒
333、賃金「成果を重視」
  ◯ 75%  年功に拘らず。
444、改革「企業に有益」
  ◯ 70% 生産性、労使で付加価値底上げ
   ※労使間に温度差がある企業も。
555、人手確保「女性活用で」
  ◯7割超、外国人就労については業種間、
   生活環境、文化慣習課題が残る。

コラム 働き方改革の影響調査 

■調査方法
インターネット調査
■調査対象
民間企業勤務のビジネスパーソン約5万人
■調査時期
2016年12月
111、働き方改革取り組み企業と取り組んでいない企業それぞれの「働きがい」および「勤続意向」
  ◯6割が取り組み企業に好影響 
222、人材活用・育成にも好影響
  ◯10ポイント以上の差


kentakunte私見

人材に対する地方の中小企業を取り巻く事業環境は2024年現在も改善のきざしはない。というか、悪化していると言わざるを得ない。理由は、労働環境(賃上げや福利厚生、長時間労働)の格差により、『選ぶより選ばれる企業』になっていなければ、人材の募集に応える新卒者はほぼ皆無に等しい。率先して政府の『働き方改革』に便乗した一部の企業を除けば採用戦線は悲惨な結果を迎えている。

テレワークを推奨する「ワークスマイルラボ」の実績はまだ確認できていないが、事業そのものの変革(本書で指摘されている成長産業への転換)なしに生き残るとは考えにくい。テレワークが生産性を高め、労働効率をたかめる手段としての有効性を認めた上で、地方の中小企業ほど事業そのものの独自性強化を進めなければと信じている。

インタビューで問われた『人』の「売り」が価値を持つとは、事業における独自性の「磨き上げ」と解釈できる。地方の中小企業の「諦めないこころ」と飽くなき努力に熱き声援を贈り続けたい。


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