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2度目の就職の話 【薬局編 ⑬】
基本、パートタイマーの蒔田さんの勤務が午前中だけであったために、昼休憩からは嵐のような時間を桐島さんと共に闘う日々が続いていました。
そして、入社2ケ月を迎えようとしていたある日、独自の判断から、桐島さんが昼食で席を外している間に隣りの受付から手渡された手書きの処方箋を、プリンターから打ち出された薬の説明書の内容と照らし合わせながら、単独で薬袋に入れ、複数人の患者様に薬を手渡すといった禁忌な行動を取ってしまったのです。
(「多分間違いもないし、ばれはしないわ。駄目なことと言われても患者のほうから、まだかまだかと言ってくるのだし。」)
私はいつものように自分勝手な行動の辻褄合わせを心の中で行っていました。
仲宗根さん、そして山村さん、岩橋さんの3人がこちらを気にかけて見ている気配を感じたものの、何も言ってこないし大丈夫だと深呼吸をしながら自己暗示をかけたのでした。
見るに見かねた3人のうちのいずれかがその旨を桐島さんに報告したそうで、後日、私はその時に発生した投薬のミスと共に桐島さんから厳しく指摘されたのでした。
「妊婦さんに間違えて排卵誘発剤を渡したそうね。患者さんがいつもの栄養剤がスプレータイプに変わったのですねと尋ねてきて知ったの。しかも今回はもう使った後だったのよ。」
私の中で栄養剤の名前と排卵誘発剤の製品の外装のイメージが結びついていて、しっかりと確認もしないまま思い込みで渡してしまったのでした。
「あなたとはもうやっていけないわ。」
そして、その日の昼休憩から数日間、様子見も兼ねて、薬局、検査室を統括する技術部長自らが昼休憩中の桐島さんの代わりに入っていただくことになるのでした。