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最初の就職の話 ⑤

ガシャーンと物音を立てて、経理課長のコーヒーカップを割ってしまいました。
昼休憩のときに、水に浸けておいてあったカップを黙って洗っていたら、こんなことに。
「すみません。」と私が経理課長に謝ると、「いいよ。」と優しく言ってくれたのですが、直後、同じ歳の先輩女性と経理課長との会話が洗いものを続ける私の傍で聞こえてきました。
「私、24歳くらいに見えると言われたのよ。」
「そうなんだ。」

確か2回目の喫茶店に向かう際、珍しく先輩が親しげに話かけてくれました。
「確か同じ歳よね。」
私はふいに話しかけられて戸惑ったのと、少し嬉しかったのと入り混じったような気持ちになり、先に上げた言葉を放ってしまったのでした。 
当時(20歳)は、肌艶を見れば実年齢が同じだとは一目で分かるものの、学生の雰囲気が抜けない私とは違って洗練されているという意味合いで伝えたのですが、当然そのような意味に捉える人などはいません。
(ここで学習したはずなの゙に、同じ失敗を次の職場でしてしまいます)

再び先輩とお互いに挨拶のみを交わす日が続いていた頃、別館にいる営業部の男性が入力業務中の私に新入社員歓迎会の案内を持ってきてくれました。
若い社員が主催する集まりで、営業部の同期の女性と私の歓迎会ということでした。
みんなと話せるきっかけになるかなと思い、チラシに目を通すと会費4500円と書かれてありました。
「どうしよう。」
私の前月の給与は母が管理しており、そのうちの手渡されたいくらかのお小遣いは電話欠勤のたびに入った喫茶店代や、交通費などにほぼ消えてしまっており、もう既にお小遣いを使い切ってしまった事情などとても母には言えなかったのです。

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