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最初の就職の話 ④

昼食はひとりで校正のかたたちが仕事をするテーブルのある部屋でとることがほとんどでした。
母年代のパート勤務の校正担当の女性が、たまに気にかけて声を掛けてくれましたが、当時の私としては同年代の女性たちとうまく話せず行動を共に出来ないことに引け目を感じ、彼女とも緊張でうまく話せませんでした。
同期の話しやすい女性は営業部のみで構成された別館におり、5月の下旬には営業部も増設された本社のほうに戻ってくると聞いていましたが、その時点ではまだ4月上旬、ひと月以上も先のことと思うと気が遠くなりました。

仕事のほうでは私にも昼休み中の電話当番が回ってきました。
仕事で電話を取ったことが一度もないため不安で仕方がなく、その日も電話を取ろうと手を伸ばしたのが3コール以降で同フロアの同じ歳の先輩女性が見かねて取ってくれました。
何かこうすればよいというアドバイスもなく、私が取ったほうが早いといった感じだったのか、仕事への責任の強さの表れだったのか。

そして、翌日の昼はまた校正室で食事をしていると、私より10歳ほど年上のパート女性のかたが、「みんな今から喫茶店に行くけど、行く?」と同じ歳の先輩女性を含む若いグループの集まりに誘ってくれました。
先輩たちが話しをしながら歩く道中、私はひとり彼女たちから距離を置いて歩いていました。
そして、彼女たちはかなり歩いたところにある純喫茶へと入って行きました。

毎日食事の後に来ている場所なのか、店員の女性がグループを大きなテーブルへと案内してくれました。
そして私を見てひと言。
「新人さんの歓迎会かな?いいわね。」
すると、私を誘ってくれた女性がおそらく何の気なしにさらっと答えました。
「違いますけど。」

私はその言葉を聞いた途端、胸が痛くなりました。
自分が先輩たちの立場なら、例え違っていても、「そうなのよ〜。これからちょくちょく一緒に来ると思うけどよろしくね。」「新入社員って感じで初々しいでしょ。」などと店員さんに言ったと思います。
そこは感覚の違いでしょうか。

その翌朝、私は2回目の電話欠勤をしました。
母親が厳しいのと、姉が紹介してくれた職場であることから家族には言えず、そういやバラの時期だったかなと大阪の中之島へと出かけたのです。
私の休み癖が加速し、その度に出かけるので、少しずつ財布の中身も乏しくなっていきました。
そのことが後の長期無断欠勤を引き起こす引き金になったのです。

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