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【ドイツ留学】ヨーロッパで平和学を勉強しよう!

平和学の領域は多岐にわたっています。
政治科学、法学、国際関係、国際政治経済学…etc
日本で言う大部分の平和学の方法論は、法学的や国際政治学的な視点から、質的な分析を行うことだと思います。一方でドイツの修士課程の平和学は、どちらかというと社会学に近く実践的な、Quantitative Approach ─ 【定量分析】がメインとなります。

今日は、ドイツ・オスナブリュック大学の平和学のマスターコースについて紹介します。


まずオスナブリュックとは何処か↓

マスターコースのHP↓


2年間で何を学ぶのか

モットーは、"平和の街で平和を学ぶ"

定量分析がメインと言いましたが、もちろん分析には論理的枠組みを学ぶことが必要なので、カントやクラウゼヴィッツ、ヨーロッパの古典から現代の枠組みまで、政治思想も学びます。
セミナー「平和学の概念と理論」では、デモクラティック・ピース論などのあらゆるコンセプト・セオリーについてひたすら議論し、人道的介入や保護する責任(R2P)といった新しい概念についても批判的に疑問を突きつけます。

1年目はこのような必須モジュールの授業に出席し、2年目は主にリサーチの訓練をしながら、選択的授業やインターンシップの単位も取ります。選択的授業は、移民学やジェンダースタディーなど、モジュール外の社会学の範囲内で自分の興味を広げることに有用です。
そして最後のセメスターに修士論文を提出すれば、卒業です🌸


ドイツ留学 良いところ

たくさんあります。
授業料が留学生でも無料
まずは国公立大学の学費が無料であることです。国籍や年齢による学費の差別はありません。
システム費として、半年に一度Semester Feeを支払います。この支払いに、半年分のドイツ全土鈍行交通機関乗り放題チケット”Deutschland-ticket”が組み込まれていることは言うまでもなく最高の学生待遇です。

英語で勉強できるコースが豊富
特に国際関係のコースは英語で行われますが、友達には化学や物理学を英語で研究している人もいます。私の所属する”Conflict Studies and Peacebuilding”のコースも英語で行われます。論文も英語で読み英語で書きます。
ドイツ人の英語はとても文法に忠実で、わかりやすいです。彼らにとっても英語は外国語なので、口に出して伝える努力をすれば大丈夫です。
大学は語学コースも充実しているので、生活のためにドイツ語も一緒に上達させましょう。

基本的にマスターコースは2年間
イギリスの1年間のマスターに比べて、ドイツはのんびりです。その分、論文を書く事に慣れ、じっくり学ぶことができるというのは良いことだと思います。
学生の間でも競争によるプレッシャーは無く、人と助け合いながら伸び伸びとやりたいことをやることができます。

・他の色々な国からも沢山の留学生
色々なバックグラウンドを持ち、色々な目的のために人々が世界中からドイツに集っている、本当の意味の多様性を目の当たりにします。これは毎日身に染みてドイツ留学の特権のように感じます。
多様な宗教社会が生活に身近にあるというのも、学びの多い点です。
基本的に学生は寮で共同生活をするというのも、ドイツ留学の魅力の一つです!

・ディスカッション文化に慣れる
ドイツのマスターはディスカッションベースで進んでいきます。最初は発言をするタイミングや内容に迷いますが、半年も経てば迷わずに思ったことを言えばいいのだと気付きます。伝えようとすれば、どんなドイツ人でも辛抱強く話を聞いてくれます。
議論を以て何かを洗練していくことはこの国の文化なので、教授も授業に対して批判的で率直なフィードバックを求めます。

・様々な学生割引や便利なサブスク
EU圏内に留学して、いろいろな国を見ることは非常に重要です。戦争のメモリアルはドイツ国内にあるだけではないからです。特に美術館や博物館に学生として無料/低価格で行くことは必要不可欠です。割引で劇場に行って舞台芸術を見るという体験も欠かせません。
(ヨーロッパ圏内には、学割に年齢制限や国籍制限を設けているミュージアムもあります。)

・夏休み長い
ドイツのセメスターは、冬セメスターが10月〜3月、夏セメスターが4月〜9月と、他の国と比べても遅めです。10月の新学期は新入生を迎えるウェルカムウィークなどをやっているので、授業は10月末まで始まりません。
4ヶ月くらいの長〜い夏休みを、インターンやサマーコース、旅行に活用できます。


ドイツ留学 悪いところ

必死に考えましたが、そんなに特筆すべきことは思い当たりませんでした。
日本人が周りに少ないですが、コミュニティのマイノリティになると社会の中での自分の輪郭がはっきりするため、自分と向き合う良い機会でもあります。

大学学費無料の対価として、インターンや学生旅行などで「留年」が普通であること…は確かに大変です。周りがのんびり進む中でも2年で修了できるように頑張るしかありません。



Study trip to Cyprus

このマスターコースの課外授業について紹介します。「政治的暴力と平和構築」というセミナーの一環で、今年はキプロスへ行きました。キプロス大学の平和学コースの教授・学生と交流することができる有意義な研究旅行でした。外務省や欧州委員会を正式に訪問した他、NGOやジャーナリストなどたくさんのローカルな方の話を聞くことができました。

キプロス島・ニコシアの緩衝地帯
国連による規制、治安維持が行われている

日本も戦争を経験した島国で、近隣諸国との歴史認識のすれ違いは存在するが、キプロスとは何が違うだろうか?ということを考えながら、緩衝地帯に沿って分断されたニコシアの街を歩きます。
緩衝地帯にあるHome for Cooperation にて、地元のNGOである The Association for Historical Dialogue and Research (AHDR)という機関による、分断された島の平和教育と対話の困難さについての話を聞きました。紛争の話を聞いて育った若い世代は、敵対する相手の顔も見えない状態で互いから遠ざかり、交流の殆どない状態が続いています。
AHDRのような機関は二度と同じ悲劇を繰り返すまいと、必死に憎しみの連鎖を断ち切ろうとしています。
ここで紛争はまだ終わっていないんだと実感します。

平和教育は私にとっても一生のテーマになると思います。キプロスの研究旅行に参加できたことは本当に貴重な経験になりました。


Berlinの街で見かけたストリートアート🕊🌹


ドイツ留学ではこのような、アカデミックな好奇心の海にどっぷり潜り込むことができます。
日本の大学の忙しない4年間に比べて、心にゆとりを持って自分の興味に向き合い・考える時間はこの国にしかないのではないか?とさえ思えます。
多様性に溢れたコミュニティの中で周りの人と支え合いながら生活できるドイツは、留学にぴったりだと思います。

参考:


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