デザインがうまくいくフォントの選び方は?
最近ブランディング系発信に終始してきてますが、今日は今まで一度も語ってこなかった「文字の機能」と「フォントの選び方」について書きます。長くなりそうなので数回に分けて語ります。デザイナー向け、デザイン学習者向けの内容です。
欧文フォントというのは、それこそ世界に膨大な数があり、和文フォントにしても造りの粗い著作権フリーフォントも含めたら、これも膨大な数です。
そんな中、私はこのクリエイティブキャリアにおいて和文フォントに関してはメインで使用するものは、ウェイトを除けば10書体程度の種類しかありません。かなり少ないのでしょうか。他のデザイナーがどうなのかは分かりませんが、フォントの多用はしていてきていません。これらの和文フォントの英数字や句読点、括弧類に各種欧文フォントやウェイトや種類違いの和文フォントを当てて合成フォントを作ったりしますが言ってみれば、合成フォントの種類は数多く作るのですが、実際の使用フォントの種類は呆れるほど少ないです。ではなぜか。
理由としてはシンプルで、デザインにおいてフォントより重要なものというものを常に意識しているからです。要約するとこんな感じに。
書体 < 構成
何にせよこれです。構成が、とにかく大切だと思っています。
だからと言ってフォント選定をおざなりにしていいかというとそうでもないのですが、フォントというものを考える時、文字というものはレイアウトにもよりますが、媒体スペースに対しての占有面積がそれほど広くありません。つまり、情報としては文字はまず「文字」として知覚されるわけですが、その「文字」の形を知覚されるのはその後なので、遅いんです。
広告でもなんでもいいのですが、文字を見るときに人は何をみているのか、その順番を考えると以下の感じです。
全体構成の中の文字
↓
文字が伝える意味
↓
文字の形状が伝える情緒的意味
広告ないし、何かのデザイン媒体が視覚から情報が入る時、まずは構成が目に飛び込んできます。媒体内でのデザイン構造、骨格とでも言えるものだと思います。だから見られる優先順位というものを踏まえると、「フォントがどんな形状をおびているか」という情報は、構成ほど早く知覚されないと言えます。ちなみに、書体がおびている情報というのは、字体が持つ角やカーブ具合、太さや細さ、ストロークの長さなどで構成されるデザイン情報をいいます。
ただし。
フォントはなんでもいいというわけではなく、文字というのは「意味を帯びている記号」である一方で「形状を帯びている記号」でもあるため、人に情緒的なニュアンスを伝える視覚情報となります。
これはどういうことかというと、「文字は太さや細さ、長さや短さ、広さや狭さの組み合わせで、見る側に異なった印象を与える」からと言えます。
たとえば、丸みを帯びて太い文字は「可愛らしい」とか、繊細な細い文字は「刺々しい」「高級感」などの情報を含んできます。文字が帯びる「形」の部分には以下のことが言えます。
形状は「情緒的な意味」を生む
ではフォント選定において、フォントが持つ5つの機能を以下にまとめました。次回以降に順を追って語っていきます。
① 読みやすいかどうか(可読性)
② 適用媒体やコンセプトに合っている印象か(親和性)
③ ブランディング、VI展開などで文字扱いを限定する(画一性)
④ 情報を差別化させる(判別性)
⑤ 情報の視認が優れているかどうか(視認性)