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余白から見える世界

 10年ほど前から堀口切子の作品を撮り続けているフォトグラファーの大中啓さん。オンラインショップからSNSやDMの写真まで堀口切子の作品の多くを撮影している大中さんは、堀口徹さんとは仕事仲間であるとともに、プライベートでもご飯に行く仲だといいます。そんな公私ともに堀口さんと交流のある大中さんに、堀口切子の魅力や堀口さんの考えるキーワードのひとつである「省く」についてお話を伺いました。

大中 啓 
2006年よりフォトグラファーとして活躍。広告・雑誌・カタログなどを撮影。発表した作品で国内外での受賞、展示など多数。

■写真にもこだわりが詰まっている堀口切子

いつもどのように堀口切子の作品を撮影しているのか教えてください。
 堀口さんとアートディレクターの方と3人で「どういう風にするのが一番使いやすいのか」「写真は縦位置がいい/横位置がいい」「こういう感じがいいよね」とかそういう話をしながら結構作ってく感じかな。最終的にその写真が何に使われるかによって結構変わるから。SNSに使うのかカタログに使うのかみたいな。インスタだったら正方形がいいとか、バナーだったら横長がいいとか、使用用途によってどういうのがいいとかは違うからね。言いたいことはみんな言うけど、最終的には毎回落ちるとこに落ちているんじゃないかな。

日本橋高島屋で行われた堀口さんの作品展のDM、私たちも拝見しました。とっても素敵でした!
 あれ、めちゃくちゃ撮りづらかった(笑)DMがすごい細長くて端の見え方と真ん中の見え方が違うから、ピントもそうだし形状も変わるわけ。だから見え方が綺麗に見えない可能性があって、結局あれ全部、一個ずつ合成してる。実際は並べて撮っているんだけど、一個ずつ撮っていて。全部ね(笑)あれをきっちり合わせていくのは難しいんだけど、その辺は堀口さんのやりたいイメージに、って感じかな。

大中さんの思う堀口切子の魅力は何ですか?
 柔軟なのが一番の魅力かも。長く企業をやっていくにはどうしたらいいのかな、という考え方で今があるんだよね。固定概念に縛られていないっていうか。信念はもちろんあるけど、時代に合わせてやっていく、というか。

そんな堀口切子だからこそ多くの人に注目されているんですね!
 でもね、堀口さんのラッキーな部分もたくさんあったと思う。じゃあなんで江戸切子が注目されるようになったのかというと、他社で江戸切子がスカイツリーのモチーフとして使われていて。そういうので江戸切子に注目が上がっていく中で、早い段階からHPとか写真に力を入れていたから、ひっかかったんじゃないかな。その当時はWEBサイトすら持っていない会社が多かったから。

■「省く」ことで生まれるもの

堀口切子を端的に表現するとしたら、どのような言葉になりますか?
 堀口切子って堀口さんそのものだと思うよ。会社自体が。そんな気がする。 堀口さんは優しいの、ちょっとエンターティナーというか。「使い手によって完成させる」というのも、消費者側からすると唯一所有する喜びになると思うし。だってその人が完成させるんだから、十人十色な答えが出るよね。そういう意味では押し付けていない。人に最終的な答えを委ねているんだから。それが彼の性格なんだと思う。優しい。余白を残すことは。

「余白」は堀口切子作品の大事なポイントですよね。
 そうそう。あと、江戸切子って結構足し算する人が多いんだけど、あの人は極力引くよね。彼の中でもジレンマがあって、江戸切子に対して世の中の人がいいと思うものと、彼がいいと思うものにギャップがあって。本当は相当引きたいはずなの。ただ、売らないといけないっていうのもあるから、省ききれないっていうジレンマもあると思う。でも、洗練されているよね。それも堀口さんっぽい気がする。

■おわり

 大中さんにお話を伺い、堀口さんをはじめとした堀口切子をつくり上げている方々が魅せ方に非常にこだわりを持ち、作品の写真の細部まで気を配っていることがわかりました。それに加えて、時代に適応する柔軟さと「省く」ことでうまれる余白が堀口切子の魅力なのではないでしょうか。

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