原発安全神話を唱えさせてきた総括責任者,政治屋だった故安倍晋三の「歴史的な責任」を考え,原発問題をめぐるこの「首相の原罪」をあらためて問うてみる
※-0「汚染水など太平洋にぶちまけ薄めればよし」か?
本記述は,2017年3月18日の書いて公表した文章を復活・再掲するものであるが,その本文部分そのものを再起させるまえに,2024年4月30日の時点で「原発事故」の問題をめぐる諸点は,いったいどのような姿勢・観点をもって理解されるべきか,まえもって多少でも再考しておきたい。
なお本ブログはすでに,2024年4月27日と29日の2回の記述を充てて「原発広告問題と芸能人,ビートたけしの場合はどうであったか,その記憶を回想する」と題した,「日本原発広告史」の一幕に関心を向け,批判的に考察した記述を公表していた。
ビートたけしは,芸能人としてそれなりに「原爆推進翼賛会」の名誉な特別会員的な立場からだったのか,むろんそれなりに高額の報酬を受けとってのなりゆきであったけれども,原発の推進を喧伝するために芸能人の役割を大いに発揚させていた。
対して,本間 龍の執筆になる『原発広告』亜紀書房,2013年など関連の著作は,原発推進国家体制のなかで「企業経営の宣伝広告費」,もちろん,大手電力会社その予算をめぐって関連するその経済社会的な問題を,批判的に議論してきた。
以下に,本間 龍が執筆してきた原発広告問題に関する著作を,アマゾン通販の形式を借りて,さきに紹介しておく。
21世紀に入ってからこの日本は,「国策民営」「地域独占体制「総括原価方式」を大手電力会社に保証してきたなかで,20世紀の後半から徐々に導入してきた原発の,つまり《悪魔の火》を焚いて電力を生産するという技術経済方式を,とくに積極的に採用してきた。
しかし,その結果として出来した「2011年3月11日の東電福島第1原発事故」という世紀の記録に残る深刻かつ重大な顛末は,いまとなっても日本の社会全体のなかに大きな後遺症を残している。
ところが,そのときに受けた被災の事実があたかもすっかり希薄化されつくし,あとにはなんら深刻な問題がないかのように語りたがる「原発推進派」の人士・識者が大勢いる。彼らは,原発事故によって日本の国土が放射性物質によって汚染されて事実史を,懸命になってごまかしたい欲望,つまり現実無視の意向を根強くいだいてきた。そして実際,そのように言動もおこなってきた。
「日本の国土」は東電福島第1原発事故の発生以後,多くの地域が「放射性物質による汚染」を被ってきた事実を介して,いまなお観過できない「地域の汚染」が「原発事故の後遺症」として残存させられている。
たとえば,つぎの『東京新聞』2023年6月25日の報道は,このように,われわれが意図してその存在に注視していないことには,潜伏的な事象としてよく気づかれないまま放置されかねない現況が,記憶のなから放逐されかねない。
東電福島第1原発事故から10数年が経っても,その社会公害的な後遺症がまだまだ強く持続的している「歴史の事実」を,早く忘れたい,できればなかった出来事にしておきたいと思いた人びとがいる。
東電福島第1原発事故「現場」に関してならば,これからも半永久的にといっていいくらいの時間の長さを想定し,対処していかねばならない事実は,その事故現場から放出しだし(2023年8月24日から開始し)た「処理水」という名の「汚染水」,これには単にリチウムだけでなく,環境省の解説によれば,つぎのような汚染物質を含んだまま太平洋に放出しつづけているわけで,その中身の組成はとうてい軽視などできないものである。
環境省当局は,「ALPS処理水」と自称される「放射能汚染水に含まれる核種は,トリチウム以外の62種類の放射性物質が規制基準を下回るまで浄化処理されます」といい,そのALPSでは,セシウム,ストロンチウム,ヨウ素,コバルトなどの放射性核種を,薬液によって沈殿処理したり,活性炭・吸着材で吸着したりして,浄化処理することができます」と説明していた。
だが,トリチウムの放出だけでも,これが未知の理化学的物質でもある点に関しては,そもそもまだ問題が残されていて,前段のように東電福島第1原発事故現場から排出されつづけている「汚染水という名の処理水」は,前段に挙げられた「いくつもの核種,なかには原発事故の発生にともなって生成された核種」が,除去されずに含有した状態で太平洋に排出されている。
そしてまた,その浄化処理したあとに残される「各種の放射性物質」は,これはこれで別個に処理し,始末しておく手間ヒマを必要にしている。しかも,その汚染物質の残骸は「高度な汚染物質」として,別個に格別な後始末を必要とする。
われわれがけっして騙されてはいけない点は,「富士の高嶺に降る雪も京都先斗町に降る雪も雪に変りはないじゃなし融けて流れりゃ皆同じ」という具合に,「汚染水が本性である処理水」の問題を理解できることなど,けっしてありえないことである。
「猛毒である事実」になんら変わりない「何種もの核種」であっても,ALPSで薄めておいてから,それを太平洋に流しこめば,問題である危険性は薄められるから「問題ない,問題ない,問題ない・・・」などと,2020年から2021年にかけて1年ほど総理大臣を務めていた菅 義偉のいいぐさと同じ気分になったつもりで,「処理水という名の汚染水」の全体を,単なるトリチウムの残存問題そのものと同じにみなすわけにはいかない。
この『東京新聞』2023年6月25日の原発事故「後遺症」に関連する記事は,原発事故の問題が「汚染除去」という「不可避であった対策・作業」が,いったいどこまで実施してされていればよいのか,その見当がよくつかない汚染の実況を教えている。
とはいえ,この新聞記事は問題の一例に過ぎず,とくに植物界に与えているはずの「東電福島第1原発事故以後のこの種の悪影響」は,できうるかぎりに調査され,対策を講じられ,汚染そのものを徹底的に減削させる方途が考案・実施される必要があった。
だが,日本政府の対策は弥縫策であるとともに目先の経済性最優先にしか念頭にはなく,すなわち「融けて流れりゃ皆同じ」風の,いわば,汚染水であれともかく太平洋に流しこんでおけば「大丈夫だ,問題ない・・・」という態度になる,この地球の自然・環境を完全に舐めきったかのような基本姿勢は,人類・人間の思考方式としてみれば傲慢の極致を意味する。
汚染水の処理方法としては,「一見というか当面,薄めて大海に流しこんでごまかす」というやり方が,もっとも経済的であること,いいかえれば安上がりであったゆえ,しかも日本政府はあえてそれを選ぶといったような,きわめて姑息な対応に逃げこんでいた。
原発汚染水の問題をまともに,真剣に考えたことがある人ならば,当然に踏まえているのが,つぎのごとき意見であった。
※-1 安倍晋三(いまは故人だが)のような政治家を長期間,総理大臣に戴いてきた「日本国民の不幸と災厄」
たとえば,原発災害訴訟として2017年3月17日に判決が出ていたのが,「国・東電に賠償命令 前橋地裁 避難者集団訴訟」という見出しのニュースがあった。この原告敗訴が多かった原発の裁判を念頭に置いて,つぎの話題に言及する。
いまから約11年〔2014年からだと約18年〕前,国会において巨大地震が原発に与える危険性を質問した日本共産党の議員がいた。その氏名は吉井英勝(よしい・ひでかつ,1942年12月に京都市で誕生)である。
吉井英勝は,京都大学工学部原子核工学科卒業,日本共産党中央委員,原発・エネルギー問題委員長,元衆議院議員(7期),元参議院議員(1期)という履歴の持主である。
吉井英勝は,東日本大震災が発生する以前から,災害などによる原発の電源喪失時の危険性を国会で再度にわたって指摘,質問をしており,2011年3月に発生した福島第1原子力発電所事故で現実のものとなったことで,各種のメディアで注目された。とくに2005年と06年に,津波による原発の全電源喪失と冷却系の破綻の危険性を質問主意書などでいち早く指摘していた。
「3・11」が起きた年内中であったが,吉井英勝が語る〈原発の問題性〉は,つぎのように紹介されていた。
「当時,政府や電力会社は正面から受けとめず,その後も安全対策を怠ってきた。〔2011年〕3月の福島第1原発事故後,政府は誤りを認め謝罪したが,腹立たしい」
--原子力にかかわることになったきっかけは。
「中学生だった1956年,京都市内で開かれた原子力平和利用博覧会にいき,未来を夢みた。初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹先生はとても明るい光だった。あこがれて京大に入り,原子核工学を学んだ。就職後,プラント設計をやった。図面上と実際につくることはまったく違うと肌身で分かった。配管溶接の巧拙も分かる」
--電力会社はほかの原発は安全と強調する。
「全国の原発を訪ね歩いた。軽水炉は高温高圧と低温低圧をゆききし,膨張,収縮を繰り返す。激しい水の循環は配管を削りとる。中性子を浴びつづける圧力容器は劣化する。その現実を直視しているかあやしい」
--原発の安全性に疑問をもったきっかけは。
「1979年の米スリーマイルアイランド事故,1986年のソ連チェルノブイリの事故を経て,原発の危険性を痛感した。1988年に国会議員になってからは原発問題一筋だが,観念的な脱原発論者ではない」
--これまでの原発推進政策をどうみるか。
「日本の原発はほとんどが米国由来の軽水炉で,運転すれば必らずプルトニウムが大量にできる。核兵器の原料となるばかりか,処理が困難な猛毒であり,環境汚染も引き起こす。未成熟な技術であり決別すべきだ」
--原発と人類は共存できないという発想か。
「決めつけはしない。人間が管理できる原発がありうるか。高レベル廃棄物の消滅処理を含め,基礎研究は続けるべきだ。科学を否定はしない」
--津波警告を政府などが受けとめなかった理由をどう分析するか。
「必らず利益が出る料金体系をもつ電力会社に原発メーカー,ゼネコンがぶら下がる。メガバンクは資金を出す。財界中枢部による『原発利益共同体』ができている」
「政治家には政治献金,大学には研究費,官僚には天下り先,マスコミには広告費,地方には交付金がばらまかれる。この構造を支えるイデオロギーである『安全神話』が社会を覆っていた」
--福島事故を経て,この構造は崩れていくか。
「安全保障と結びつけて原発を維持しようとする勢力がおり,そう甘くはない。脱原発でも経済がなりたつよう再生可能エネルギー利用を爆発的に進めることが重要だ」(西野 秀,2011年11月08日)。
註記)http://www.47news.jp/47topics/tsukuru/article/post_72.html
こうした吉井英勝の原発問題に関する認識とその鳥瞰図は,反・脱原発に関して “より正しい史観” を提示していた。いまとなっては,しごく当然であり,自然でもある「核発電問題」に関する批判的な時代認識を語っていた。
だが,いわゆる原子力村勢力(財界中枢部による『原発利益共同体』)はいまだに根強く,反・脱原発の時代的な趨勢(必然的な発展方向)に対して執拗に抵抗し,妨害してもいる。東電福島第1原発事故を体験したあとでも,そうなのである。
本ブログ内では,先日〔2017年03月16日,このブログ内の日付では2024年4月27日と29日〕に記述した「原発推進広告宣伝マンから太陽光パネル販売促進係への転進,世界の北野 武か・日本のビートたけしかしらぬが,原発芸能人として犯した過ちは永遠に消えない」が,若干,関連する言及をおこなっていた。
本日の記述において問題にする論点は,この吉井英勝が国会のなかで当時〔2006年12月〕,自民党政権で総理大臣を努めていた安倍晋三を相手に,原発の危険性に関して質問をしていた「歴史の事実」についてである。この具体的な内容は,次項※-3で紹介する。
2011年「3・11」を契機に発生した東電福島第1原発事故は,政治面において公的に重大な責任問題を発生させただけでなく,同時にまた,その倫理面においても看過できない深甚な責任問題も誘出させた。
2012年12月26日,民主党政権が崩壊し,自民党の安倍晋三が再び首相となって登場していた。
2011年3月11日,東日本大震災が発生すると,東電福島第1原発に事故が発生した。ところが,その収拾(後始末)のために今後,あと何十何年かかるのか皆目見当がついていない。2024年の4月末日現在も,そのように断言できる。
ところが,安倍晋三は,2020年に東京でオリンピックが開催できれば,東電福島第1原発事故現場の後始末はそっちのけでもいい,という態度を示していた。日本国内の陰鬱な事情を控えていた状況のなかで,2020年に東京にオリンピックを招致するのだといい,盛んにはしゃいでいた一群が存在していた。
なんら解決のメドが立っていない東電福島第1原発事故現場の深刻な問題は放置したまま,それでいて,そこは “アンダーコントロール” されているなどと,当方もない現実無視の大ウソを,その招致のための会議の場で披露していた日本の首相が,ほかならぬ安倍晋三であった。
そのような大ウソを正々堂々と吐ける政治家安倍晋三については,もはや,その政治家としての人間性についてはもちろん,人間としての理性・知性・感性そのものからして,根幹よりその「存在意義」が問われていた。この人物を首相に据えている日本の国民たちは,当時,最大・最高の不運・不幸にみまわれていたわけである。
※-2「第165回国会 256,巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」に関する「質問答弁経過情報」(衆議院,2006年12月13日吉井英勝提出・22日首相答弁 )の紹介
この質問主意書についてここでは,つぎのように引用する。
その「質問本文」と「答弁本文」(原文では前後に分けて別の項目に記載されている)を,それら質問と答弁からそれぞれに「対応する項目」を引き出すかたちにしておき,そうして「質問と答弁」を対形式に組みかえ,並べて引用することにしたい。
長いが重要な内容である。全文を原文どおりそのまま引用する。ただ,本ブログの記述・引用に当たっては,改行箇所などは適宜に追加し,またその間には空白行も挿入してもいる。
★ 巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など
原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書 ★
政府は,巨大地震に伴って発生する津波被害の中で,引き波による海水水位の低下で原子炉の冷却水も,停止時の核燃料棒の崩壊熱を除去する機器冷却系も取水できなくなる原発が存在することを認めた。
巨大な地震の発生によって,原発の機器を作動させる電源が喪失する場合の問題も大きい。さらに新規の原発で始められようとしている核燃料棒が短時間なら膜沸騰に包まれて冷却が不十分な状態が生じる原発でも設置許可しようとする動きが見られる。
また安全基準を満たしているかどうかの判断に関わる測定データの相次ぐ偽造や虚偽報告に日本の原発の信頼性が損なわれている。原発が本来的にもっている危険から住民の安全を守るためには,こうしたことの解明が必要である。
よって,次のとおり質問する。
一 大規模地震時の原発のバックアップ電源について
1 原発からの高圧送電鉄塔が倒壊すると,原発の負荷電力ゼロになって原子炉停止(スクラムがかかる)だけでなく,停止した原発の機器冷却系を作動させるための外部電源が得られなくなるのではないか。
そういう場合でも,外部電源が得られるようにする複数のルートが用意されている原発はあるのか。あれば実例を示されたい。また,実際に日本で,高圧送電鉄塔が倒壊した事故が原発で発生した例があると思うが,その実例と原因を明らかにされたい。
【回答】 一 の1について
我が国の実用発電用原子炉に係る原子炉施設(以下「原子炉施設」という。)の外部電源系は,二回線以上の送電線により電力系統に接続された設計となっている。
また,重要度の特に高い安全機能を有する構築物,系統及び機器がその機能を達成するために電源を必要とする場合においては,外部電源又は非常用所内電源のいずれからも電力の供給を受けられる設計となっているため,外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも,非常用所内電源からの電力により,停止した原子炉の冷却が可能である。
また,送電鉄塔が一基倒壊した場合においても外部電源から電力の供給を受けられる原子炉施設の例としては,北海道電力株式会社泊発電所一号炉等が挙げられる。
お尋ねの「高圧送電鉄塔が倒壊した事故が原発で発生した例」の意味するところが必ずしも明らかではないが,原子炉施設に接続している送電鉄塔が倒壊した事故としては,平成十七年四月一日に石川県羽咋市において,北陸電力株式会社志賀原子力発電所等に接続している能登幹線の送電鉄塔の一基が,地滑りにより倒壊した例がある。
2 落雷によっても高圧送電線事故はよく起こっていると思われるが,その結果,原子炉緊急停止になった実例を示されたい。
【回答】 一 の2について
落雷による送電線の事故により原子炉が緊急停止した実例のうち最近のものを挙げれば,平成十五年十二月十九日に,日本原子力発電株式会社敦賀発電所一号炉の原子炉が自動停止した事例がある。
3 外部電源が取れなくても,内部電源,即ち自家発電機であるディーゼル発電機と無停電電源であるバッテリー(蓄電器)が働けば,機器冷却系の作動は可能になると考えられる。
逆に考えると,大規模地震でスクラムがかかった原子炉の核燃料棒の崩壊熱を除去するためには,機器冷却系電源を確保できることが,原発にとって絶対に必要である。
しかし,現実には,自家発電機(ディーゼル発電機)の事故で原子炉が停止するなど,バックアップ機能が働かない原発事故があったのではないか。過去においてどのような事例があるか示されたい。
【回答】 一 の3について
我が国において,非常用ディーゼル発電機のトラブルにより原子炉が停止した事例はなく,また,必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない。
4 スウェーデンのフォルクスマルク原発1号(沸騰水型原発BWRで出力一〇〇・八万kw,運転開始一九八一年七月七日)の事故例を見ると,バックアップ電源が四系列あるなかで二系列で事故があったのではないか。
しかも,このバックアップ電源は一系列にディーゼル発電機とバッテリーが一組にして設けられているが,事故のあった二系列では,ディーゼル発電機とバッテリーの両方とも機能しなくなったのではないか。
【回答】 一 の4について
スウェーデンのフォルスマルク発電所一号炉においては,平成十八年七月二十五日十三時十九分(現地時間)ころに,保守作業中の誤操作により発電機が送電線から切り離され,電力を供給できなくなった後,他の外部電源に切り替えられなかった上,バッテリーの保護装置が誤設定により作動したことから,当該保護装置に接続する四台の非常用ディーゼル発電機のうち二台が自動起動しなかったものと承知している。
5 日本の原発の約六割はバックアップ電源が二系列ではないのか。仮に,フォルクスマルク原発1号事故と同じように,二系列で事故が発生すると,機器冷却系の電源が全く取れなくなるのではないか。
【回答】 一 の5について
我が国において運転中の五十五の原子炉施設のうち,非常用ディーゼル発電機を二台有するものは三十三であるが,我が国の原子炉施設においては,外部電源に接続される回線,非常用ディーゼル発電機及び蓄電池がそれぞれ複数設けられている。
また,我が国の原子炉施設は,フォルスマルク発電所一号炉とは異なる設計となっていることなどから,同発電所一号炉の事案と同様の事態が発生するとは考えられない。
6 大規模地震によって原発が停止した場合,崩壊熱除去のために機器冷却系が働かなくてはならない。津波の引き波で水位が下がるけれども一応冷却水が得られる水位は確保できたとしても,地震で送電鉄塔の倒壊や折損事故で外部電源が得られない状態が生まれ,内部電源もフォルクスマルク原発のようにディーゼル発電機もバッテリーも働かなくなった時,機器冷却系は働かないことになる。
この場合,原子炉はどういうことになっていくか。原子力安全委員会では,こうした場合の安全性について,日本の総ての原発一つ一つについて検討を行ってきているか。また原子力・安全保安院では,こうした問題について,一つ一つの原発についてどういう調査を行ってきているか。調査内容を示されたい。
【回答】 一 の6について
地震,津波等の自然災害への対策を含めた原子炉の安全性については,原子炉の設置又は変更の許可の申請ごとに,「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(平成二年八月三十日原子力安全委員会決定)等に基づき経済産業省が審査し,その審査の妥当性について原子力安全委員会が確認しているものであり,御指摘のような事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。
7 停止した後の原発では崩壊熱を除去出来なかったら,核燃料棒は焼損(バーン・アウト)するのではないのか。その場合の原発事故がどのような規模の事故になるのかについて,どういう評価を行っているか。
【回答】 一 の7について
経済産業省としては,お尋ねの評価は行っておらず,原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。
8 原発事故時の緊急連絡網の故障という単純事故さえ二年間放置されていたというのが実情である。ディーゼル発電機の冷却水配管の減肉・破損が発生して発電機が焼きつく事故なども発生した例が幾つも報告されている。一つ一つは単純な事故や点検不十分などのミスであったとしても,原発の安全が保障されないという現実が存在しているのではないか。
【回答】 一 の8について
原子炉施設の安全を図る上で重要な設備については,法令に基づく審査,検査等を厳正に行っているところであり,こうした取組を通じ,今後とも原子力の安全確保に万全を期してまいりたい。
二 沸騰遷移と核燃料棒の安全性について
1 原発運転中に,膜沸騰状態に覆われて高温下での冷却不十分となると,核燃料棒の焼損(バーン・アウト)が起こる。焼損が発生した場合に,放射能汚染の規模がどのようなものになるのかをどう評価しているか。
原子炉内に閉じ込めることができた場合,大気中に放出された場合,さらに原子炉破壊に至る規模の事故になった場合まで,それぞれの事故の規模ごとに,放射能汚染の規模や内容がどうなるかを示されたい。
【回答】 二の1について
経済産業省としては,お尋ねの評価は行っておらず,原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。
2 経済産業省と原発メーカは,コストダウンの発想で,原発の中での沸騰遷移(Post Boiling Traditional)を認めても「核燃料は壊れないだろう」としているが,この場合の安全性の証明は実験によって確認されているのか。
事業者が沸騰遷移を許容する設置許可申請を提出した場合には,これまで国は,閉じ込め機能が満足されなければならないとして,沸騰遷移が生じない原子炉であることを条件にしてきたが,新しい原発の建設に当たっては沸騰遷移を認めるという立場を取るのか。
【回答】 二の2について
原子炉内の燃料の沸騰遷移の安全性に係る評価については,平成十八年五月十九日に原子力安全委員会原子力安全基準・指針専門部会が,各種の実験結果等を踏まえ,「沸騰遷移後燃料健全性評価分科会報告書」(以下「報告書」という。)を取りまとめ,原子力安全委員会が同年六月二十九日にこれを了承している。
また,一時的な沸騰遷移の発生を許容する原子炉の設置許可の申請については,報告書を含む原子力安全委員会の各種指針類等に基づき審査し,安全性を確認することとしている。
3 アメリカのNRC(原子力規制委員会)では,TRACコードでキチンと評価して沸騰遷移(PBT)は認めていないとされているが,実際のアメリカの扱いはどういう状況か,またアメリカで認められているのか,それとも認められないのか。またヨーロッパなど各国は,どのように扱っているか。
【回答】 二の3について
政府として,諸外国における原子炉内の燃料の沸騰遷移に係る取扱いについて必ずしも詳細には把握していないが,報告書においては,米国原子力規制委員会(NRC)による改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)の安全評価書の中で一定の条件下の沸騰遷移においては燃料棒の健全性が保たれるとされている旨が記載されており,また,ドイツでは電力会社等により沸騰遷移を許容するための判断基準についての技術提案が行われている旨が記載されている。
4 東通原発1,2号機(着工準備中,改良型沸騰水型軽水炉ABWR,電気出力一三八・五万kw)については,「重要電源開発地点の指定に関する規程」(二〇〇五年二月一八日,経産省告示第三一号)に基づいて,〇六年九月一三日に経済産業大臣から指定され,九月二九日に原子炉規制法第二三条に基づいて東通原発1号機の原子炉設置許可申請が国に出された。この中では,沸騰遷移が想定されているのではないのか。
【回答】 二の4について
東京電力株式会社東通原子力発電所に係る原子炉の設置許可の申請書においては,報告書に記載された沸騰遷移後の燃料健全性の判断基準に照らし,一時的な沸騰遷移の発生を許容する設計となっていると承知している。
5 ABWRでは,浜岡5号機や志賀2号機などタービン翼の破損事故が頻発している。ABWRの東通原発が,沸騰遷移を認めて作られた場合に,核燃料が壊れて放射性物質が放出される事態になる可能性は全くないと実証されたのか。安全性を証明した実証実験があればその実例も併せて示されたい。また,どんな懸念される問題もないというのが政府の見解か。
【回答】 二の5について
東京電力株式会社東通原子力発電所に係る原子炉施設の安全性については,報告書を含む各種指針類等に基づき審査しているところである。
三 データ偽造,虚偽報告の続出について
1 水力発電設備のダム測定値や,火力・原発の発電設備における冷却用海水の温度測定値に関して測定データの偽造と虚偽報告が電力各社で起こっていたことが明らかになった。総ての発電設備について,データ偽造が何時から何時までの期間,どういう経過で行われたのか明らかにされたい。
2 こうしたデータ偽造と虚偽報告は,繰り返し行われてきた。使用済核燃料の輸送キャスクの放射線遮蔽データ偽造,原発の溶接データ偽造,原子炉隔壁の損傷データ偽造とデータ隠し,配管減肉データ偽造,放射線量データ偽造など数多く発生してきた。
日本の原子力発電が始まって以来の,こうした原発関連機器の測定データや漏洩放射線量のデータについての偽造や虚偽報告について年次的に明らかにされたい。
【回答】 三の1及び2について
お尋ねについては,調査,整理等の作業が膨大なものになることから,お答えすることは困難である。なお,経済産業省においては,現在,一般電気事業者,日本原子力発電株式会社及び電源開発株式会社に対し,水力発電設備,火力発電設備及び原子力発電設備についてデータ改ざん,必要な手続の不備等がないかどうかについて点検を行うことを求めている。
3 原発の危険から住民の安全を守るうえで,国の安全基準や技術基準に適合しているのかを判断する基礎的なデータが偽造されていたことは重大である。
そこで国としては,データ偽造が発覚した時点で,データが正確なものか偽造されたものかを見極める為に,国が独自に幾つかのデータを直接測定するなど検査・監視体制を強化することや,データ測定に立ち会って測定が適正かどうかのチェックをすることが必要である。
国は,検査・監視体制を強化したのか,またデータ測定を行う時に立ち会ったのか。これだけデータ偽造が繰り返されているのに,何故,国はそうしたことを長期にわたって見逃してきたのか。
【回答】 三の3について
事業者は,保安規定の遵守状況について国が定期に行う検査を受けなければならないとされているところ,平成十五年に,事業者が保安規定において定めるべき事項として,品質保証を法令上明確に位置付けたところである。
御指摘の「データ測定」の内容は様々なものがあり,一概にお答えすることは困難であるが,例えば,電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第五十四条に基づく定期検査にあっては,定期検査を受ける者が行う定期事業者検査に電気工作物検査官が立ち会い,又はその定期事業者検査の記録を確認することとされている。
御指摘の「長期にわたって見逃してきた」の意味するところが必ずしも明らかではないことから,お答えすることは困難であるが,原子炉施設の安全を図る上で重要な設備については,法令に基づく審査,検査等を厳正に行っているところであり,こうした取組を通じ,今後とも原子力の安全確保に万全を期してまいりたい。
右〔上〕質問する。
註記)以上において,当該の質問と答弁は,以下のリンク先・住所で読める。
※-3「『福島はアンダーコントロールされている』安倍首相改めて明言」http://no-border.co.jp/archives/27401/, 2014年10月02日
参議院本会議で〔2014年10月〕1日,安倍首相の所信表明演説に対する代表質問が始まった。
民主党・田中直紀副代表は,昨〔2013〕年の8月,福島第1原発から大量の放射能が飛散していたことが今〔2014〕年8月になって明らかになったことについて,「なぜ1年間も隠蔽してきたのか? 昨年のオリンピック招致のさいに,アンダーコントロール発言を行った安倍総理に猛省を促したい。発言の撤回と国際社会への陳謝を求める」と迫った。
これに対し,安倍首相は「政府は発生した日に速やかに公表している。福島第1原発の放射性物質の影響は外洋でははるかに基準値を下回っているので,『状況はコントロールされている』と申し上げている」と答え,発言の撤回や謝罪を拒否した。(DAILY NOBORDER 編集部)
註記)引用は,http://www.asyura2.com/14/genpatu40/msg/539.html から。本日(ここでは2017年3月18日に検索したところ)では,現住所となるアドレスは削除されていた。
「アンダーコントロール」という表現のもとに安倍晋三がいいはった〈ことがら〉は,余人をもっては代えがたい独特の理解にもとづいているようである。例の汚染水漏れ対策の1件にしても,いまだに完全に阻止できていない。
だが,阻止できていない状態にあっても,それなりに対策に当たっていれば,安倍晋三流に解釈するとアンダーコントロールになりうるのだから,なにをかいわんやである。
最近では,東電福島第1原発事故に関連する罹災者(被災者)の人数を削りおとしていこうと,被災地に関する「避難指示区域」の解除が進められている。こうした原発事故の被害を,みかけだけでも最小化していくための手練手管ばかりが,熱心に工夫されている。
この原発事故のせいで,最終的にふるさとに戻れない人びとの数が,いったいどのくらいになるのかまだ不詳である。しかし,原発事故の場合,他のあらゆる事故・災害の形態・結果とは質的にも異なって,最終段階では人間の住めない地域がどうしても絶対的に残ってしまう。
安倍晋三が2006年12月当時,首相の立場から,吉井英勝の質問「原発の危険性」に関する問題指摘を,軽く一蹴する回答を提示していた。吉井は京大で原子力工学を学んだ専門家の立場から質問をしていた。安倍は官僚の用意した文書にしたがい,それもまるで「木で鼻をくくった」ごとき答弁をしていた。
【参考画像資料】
いずれにせよ,この国会における応答からまだ満5〔12〕年も経っていなかった,2011年の「3・11」が起きた。安倍晋三は原発を間違えて理解していた。というよりは,なにもまともにしらずに,官僚の作文を読んでいただけであった。吉井英勝は専門家である立場から,原発の危険性を指摘・批判していた。
安倍晋三が「第165回国会 256,巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」に関する「質問答弁経過情報」(衆議院,2006年12月13日提出・22日答弁,提出者 吉井英勝)をもって回答していた内容は,
この肝心な論点においていえば,その後においては完全に破綻することを予定され,いいかえれば確実に想定されていた。その意味では,非常に不吉で悪運とでもいうべき「国会衆議院における原発の質疑」がなされていた。
2006年という時点を回顧してみたい。1979年3月28日,アメリカは自国の原発(スリーマイル島)で発生した溶融事故は,「国際原子力事象評価尺度(INES) 」で計るとレベル5の事例であった(レベル7まである)。このレベル5の原発事故は「事業所外へリスクを伴う事故」と定義されてもいて,具体的にはつぎのように説明されている。
基準1 ……事業所外への影響放射性物質の限定的な外部放出,ヨウ素131等価で数百から数千テラベクレル相当の放射性物質の外部放出
基準2 ……事業所内への影響原子炉の炉心や放射性物質障壁の重大な損傷
アメリカでの原発新設は順調ではなく,滞っていたといっていい。スリーマイル島原発事故の7年あと,1986年4月26日に発生したチェルノブイリ原発事故は,アメリカにおける原発の新設に大きな影響を与え,決定的に抑制する要因となっていた。
また,アメリカでは経済計算(経営会計)でする「採算面の評価」に関して,もともときびしい条件に囲まれていた原発は,国策民営で推進されてきた日本の原発事情とは異なり,新設を進められない状況が続いていた。
つい最近まで,アメリカでは,原子力発電所の新規建設が途絶えていた。それは,原発の後始末にかかわる困難だけでなく,なによりもまず経済性(採算性)が万全ではない事実が前提にあって,これには明確に疑問が抱かれてきた。
ところが,日本の東芝がウェティングハウスを買収し,原発事業を傘下に収めることで,21世紀におけるこの産業部門で大儲けをもくろんでいた。けれども,この企図はもろくも大外れしたあげく潰えた。正直な話,むしろ “東芝はババをつかまされた” のであった。
その顛末は,エネルギー資源の未来展望にかかわらしめて判断するに,自然・再生可能エネルギーの開発・利用を軽視した,あるいは視野の外に放擲した「東芝の経営姿勢じたい」が呼び寄せてしまったものであった。
その後,東芝は存亡の危機に瀕した経営状態にまで追いこまれた。その主因は,原発事業の買収戦略にあった。換言すれば,その基本戦略はエネルギー未来観を完全にみまちがえたのである。
※-4「原発事故『防げた』津波予見可能と認定 国・東電に賠償命令 前橋地裁 避難者集団訴訟」『朝日新聞』2017年3月18日朝刊1面
以下に引用するこの記事は,2006年12月当時において日本国総理大臣の立場から,「原発安全神話」を念仏のように説いていた安倍晋三に不可避であった「重大な歴史的責任」を再問していた。
安倍晋三が当時,首相として述べていた原発観は,絶対に安全だといいきっていたがゆえ,完全に間違えていた。そもそも安倍は,原発に関した基本的な技術認識などもちあわせなかった。
いまさらといえ,この原発観に対しては再度,問題にされるべき深刻な政治責任問題があった。むろん,倫理的・道徳的な問題性も同時に追求されるべき対象として控えていた。
そうした問題性は,単に過去に起きた原発事故がもたらした災厄に関してのみでなく,この世紀に記録された大事件の発生とその後の諸案件に対して,時の国家最高責任者がどのように対応したかに関しても,基本から問われて当然であった。
--東京電力福島第1原発事故で群馬県内に避難した住民ら45世帯137人が,国と東電に総額約15億円の損害賠償を求めた集団訴訟の判決が〔2017年3月〕17日,前橋地裁であった。
原 道子裁判長は,国と東電はともに津波を予見できたと指摘。事故は防げたのに対策を怠ったと認め,62人に計3855万円を支払うよう命じた。(▼2面=怠慢認定,37面=判決要旨,39面=原告は。これらの記事は引用しない)
原告弁護団によると,原発事故をめぐる訴訟で,国の違法性や,国や東電による津波の予見可能性を認めた判決は初めて。福島や大阪など全国18都道府県で約30件ある同様の集団訴訟で初めての判決だったが,今後の判決や賠償政策に影響を与える可能性がある。
判決は,政府が2002年7月に策定した長期評価で,三陸沖北部から房総沖でマグニチュード8級の津波地震が起きる発生確率を「30年以内に20%程度」と推定した点を重視。この発表から数カ月後には,東電は大きな津波が来ることを予見できたと述べた。
東電が長期評価に基づいて2008年5月ごろ,福島第1原発に15.7メートルの津波が来ることを試算していたことも指摘。この時点で「東電が実際に津波を予見していた」と判断した。
実際に襲った津波は15.5メートルだった。判決は,東電が非常用発電機を高台に設置するなどしていれば事故は防げたのに,対策を怠ったと指摘。「経済的合理性を安全性に優先させ,とくに非難に値する」と述べた。
一方の国も,2002年には原発の脆弱性や非常用配電盤を浸水させる規模の津波の到来を予見できる状態だったと判断。原発の耐震設計について,旧原子力安全委員会が策定した指針にもとづき,東電が中間報告を出した2007年8月の時点で,国は事故を防ぐ対策をとるよう命令すべきだったとした。
そのうえで賠償額を検討。放射線被曝への恐怖にさらされずに平穏に生活する権利を認め,事故で被曝線量が高まったかや年齢・性別・職業などに応じ,個別に被害を検討することが適切との考えを示した。
東電の賠償基準になっている国の中間指針には合理性を認めたうえで,指針を超える被害があった避難指示区域内からの避難者19人と,区域外からの自主避難者43人の請求を一部認めた。
1)〈解説〉国の不作為,明確に指摘
東電だけでなく,規制権限をもつ国も東日本大震災級の津波を予見でき,原発事故を防げたとする判決は画期的だ。両者が連帯し,同等に賠償を負担するよう踏みこんだ。
津波対策の甘さについては,国会事故調査委員会が「規制当局と東電経営陣には意図的な先送りと不作為があった」と指摘。民間の検証委員会も「不十分な過酷事故対策を許した点では規制当局も東電と責任は同じだ」と批判していた。判決は,同様の見方を示した。
国の対応は鈍いままだ。事故から3年たってまとめたエネルギー基本計画で,原発を不可欠なものと位置づけて再稼働を進めた。にもかかわらず,事故の法的な責任は明確にしてこなかった。
原発賠償にかかわる法制度では「原発を推進してきた社会的な責任」だけを負うとし,負担は賠償金などが不足する東電への援助にとどまるとしてきた。
判決は,事故を防ぐため,対策をとらせる法的責任が国にあると明確に示した。原発を推進した国の責任があいまいであってはならない。
2)判決のポイント
▲-1 東電は高い津波の到来を遅くとも2002年に予見でき,2008年には実際に予見していた。
▲-2 東電が津波対策をとっていれば,原発事故は発生しなかった。
▲-3 国も津波到来を予見できる状況だったのに,事故を未然に防ぐための命令を東電に出さなかった。
※-5 罪深き政治屋であった安倍晋三の反動性
2013年9月7日のことであった。日本のオリンピック東京招致委員会は,アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催されたIOC総会において,最終プレゼンテーションをおこなっていた。
2020年に開催されるオリンピック・パラリンピック招致をめざして,東京都猪瀬直樹知事や,現役アスリート・フェンシングの太田雄貴選手,陸上の佐藤真海選手,そして安倍晋三首相などが発表をおこなっていたのである。
なかでも安倍晋三は,前段に引用したごときに,しかもいまだに手つかずのままにある東電福島第1原発事故現場の実態には目をおおい,アンダーコントロールなどといった〈虚偽の表現〉を弄しつつも,それでいて大見得を切ったかのような演説をぶっていた。
前段,朝刊1面の冒頭記事として報道されたこの「原発事故・前橋地裁 避難者集団訴訟」の「国家と東電側の敗訴」は,いま〔当時は〕首相の座にいる安倍晋三自身が背負っていた,それも非常に重大な歴史責任を再確認させていた。
いうまでもなく安倍晋三は,昔もいまも「原発推進体制擁護」の立場を支持し,この立場に連係する諸利害を優先させてきた。この「世襲3代目の政治屋」はこの国を創るのではなく,盛んに壊してきた。
この首相のその言動を観察してみれば,いつかは必らず,この人に固有の「原発原罪責任」が問われねばならない「歴史段階的な因果関係」が浮上してくる。
原発事故に関する基本の責任を問われるべきは,東電関係の最高幹部だけでなく,とくに自民党の歴代首相のなかでも安倍晋三は格別に,その政治的・経済的な責任および倫理的・道徳的な責任を問われている。
【参考画像】
いまからさきに断わっておく。おそらく事後,半世紀の時間が経過したときでも,東電福島第1原発事故現場の後始末は終わっていない。この判断は,チェルノブイリ原発事故現場を想起すれば,容易に推定(類推)できる。
ソ連はロシアになった。だが,「昔のチェルノブイリ:1986年」は,原発事故による大きな傷痕をかかえたままの状態でもって,つまり「いまのチェルノブイリ:2017年」として存在する。
それと同じである。ついこのあいだに原発事故を起こしていた「当時の福島:2011年」も基本的には,ほぼこのままの状態でもって「未来の福島:20XX年」(「3・11」の31年先ならば2042年)となっているはずである。
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本日,2024年4月30日の『日本経済新聞』「私の履歴書」に登場した財界人の間違えた「原発(原子力)観」を,そのひとつの見本としてかかげておく。この人の場合は,問題の本質を理解したうえでの発言ではなく,きわめて教条的に,つまり観念論の私感を披露しただけであった。原発=原爆だという主張の延長線上での理屈ならば,理解できなくはない。
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