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東電福島第1原発事故の後始末,事故った原発の惨状が21世紀中に終わる希望がもてない現実をすなおに認めたくない原子力村

 ※-0 前 言

 東電福島第1原発事故現場の “にっちもさっちもいかない” 苦境と難業,そもそも「デブリの取り出し」が可能かどうかを判断・想定しようとする考え方じたいに,欺瞞があった。

 《悪魔の火》=原子力という難物に人間が対峙し,勝負しようとするその無理な立場・方途じたいが,そもそも,原発をめぐり難題中の難題を生む事態を,わざわざ呼びこむ原因になっていた。

志賀原発があるが珠洲には原発がない事情史

 本ブログ筆者も2日前に,NHKのこのドキュメンタリー番組「原発立地はこうして進む-奥能登・土地攻防戦-」を,ネットのユーチューブ動画サイトで視聴していた。

 2024年1月1日午後4時10分ごろに発生した,今回の能登半島地震の「本震の規模M7.6」では,たまたま未稼働であった志賀原発の2基であったが,非常に危うい目に遭っていた。

 もしも珠洲のほうに原発が立地していたら,震源地のほぼ真上ともいえる地域(より正確にはその幅広い地帯)において,しかもその1日のうちに震度5強・弱の余震まで7回も発生していたし,そもそもこの群発した地震の前にまず発生していた本震の震度7そのもので,「珠洲原発」(と仮称しておく原発が立地していたとしたら)は,間違いなくアウトになっていた可能性(想定!)が高かったはずである。

 つぎの参考に挙げる資料は,瀬尾 健『原発事故……その時,貴方は!』風媒社,1995年から引用する資料である。志賀原発が破損する事故を起こした場合,その悪影響がどうなるかを予測していた。

 能登半島地震では,この半島の地帯に住んでいる住民は,たとえば風向きが北風以外のそれも,とくに南向き西向きなどとなったと仮定する場合,避難そのものができないで,放射性物質の襲来をもろに受けるハメになる。

 なお,今回の地震では,土砂崩れが各地で頻発しており,そこの住民たちは避難すら全然できない状況が,数多くの地域で発生していた。その事実はここで申し添えるまでもないが,原発事故発生直後に避難しようとする住民の行動にとってみれば,決定的に悪条件になる。

志賀原発が事故を起こしたらどうなる


 ※-1 事故原発の廃炉などできるわけがない東電福島第1原発事故の悲惨な現実

 東電福島第1原発事故現場において,すでになんどか試みられてきたデブリ「取り出し」作業は,2011年3月11日の東日本大震災で誘発させた原発事故が残した「溶融物:デブリ880㌧」(1号機・2号機・3号機の合計トン数)を,まったくといっていいくらいに・ほとんど除去できないまま,堆積させた状況にある。

 その残塊からはいままで,耳かき一杯分しか取り出されておらず,東電福島第1原発事故が発生した「3・11」から13年近くが経った現状にあってもなお,デブリ取り出し作業は難題中の難題である。つまり,その作業は非常に困難だといわれるが,それ以上に格別に至難の任務でありつづけ,それこそ実質的にはいまだに,まともに手出しすらできない状態に停頓している。

これはとくにデブリの状況に関してならば
あくまで推測の図解である

 この記述は,東電福島第1原発事故現場の後始末は,原子炉の「『圧力容器⇒格納容器』⇒建屋」という構造関係のうちでも,実質的にいまもなおなにも「後始末」ができていない『圧力容器⇒格納容器』あたりに注目する。いわんや,廃炉に実際に進んだといえる段階そのものが,まだ遠い展望におけるそれとしてしか期待できていない。

 東電福島第1原発事故現場がいったい,いつになった廃炉を完了したといえる日が来るのか。原子力工学関係の専門家であっても,うまく予測できる人はいない。いえることといったら,たとえ「デブリの取り出し」が少しでも可能になった段階にまでたどり着けたとしても,その後さらに,どのくらいの年月がかかるのかという予想すら,全然ついていない。

 もちろん「話としては」「廃炉には何十年かかる」とかいったたぐいのそれは,想定というにしてもあまりに根拠の淡い,単なる希望としてならば可能であったに過ぎない。いずれにしても,この東電福島第1原発事故現場に残された「溶融を起こした原子炉3基」は,すでに13年もの時間が経過した現在にありながら,デブリを本格的に取り出せるのかどうかという難題をめぐっては,その可能性を具体的に語れる人は誰1人としていない。

 1986年4月26日に旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発が爆発事故を起こしたが,現在,その跡の現状はどうなっているか? その現場の後始末は放置することにしか,その対策はなかった。人間が住めなくなった周辺の地域もできてしまった。動物の出入りは自由であるが,人間の生存にとって必要な自然環境ではなくなった。

 原発の事故は,火力発電所が燃料を原因に大爆発事故を起こしたときとか,水力発電所のダムが決壊する大事故を発生させたときの事故とは,根本的に異なった異常事態をもたらす。とりわけ,原発事故の場合は,「放射能汚染」をともなうといった,決定的に異質である,それも非常に “たちの悪い害悪” が,現地には半永久的に残る。その周辺地域にも多大な災害を波及させる。

国際原子力事故評価尺度

 チェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)にくわえて東電福島第1原発事故(2011年3月11日)が起きたことによって,もしも今後において,「原子力事故」の評価尺度で「7の大事故」が,さらにこの地球上にある原発のなかから三度目の事故としてを起きてしまうときには,またもや大惨事どころか世界各国に甚大な悪影響が出る可能性大である。

 

 ※-2 原発を導入しようとする国が増加しないわけではな事情など

 『失敗学』という一見,奇想天外風の学問形態を発想していた畑村洋太郎(元東京大学教授・工学院大学教授)は,失敗を重ねていく過程のなかこそ失敗はなくせるものだという学問信念を披露していた。だが,その着想が絶対に適用不可能である原発問題にまで拡げられたところで,この失敗学は自家撞着・絶対矛盾の陥穽に落ちこんでいた。

畑村洋太郎作成の図表であるが
原発をここに記入したことじたい
過誤を犯したことになった

 そうであったはずなのだが,いまだにこの「なんとか学」は撤回されていない。ただし,原発を問題の対象から外しておけば,これからも生きのびていける「失敗学」だと思えるから,こちらの路線に変更したうえで,今後の進路を取るべきである。

 要するに「原発に失敗=事故は許されない」ことは,チェルノブイリ原発事故や東電福島第1原発事故によって,人類・人間はきわめて明解に嫌というほど,つまり叩きこまれたかのように教えられた。にもかからず,まったく性懲りもなく「《悪魔の火》を焚いて電力を生産する」原発を廃絶しようとしていない。

 長期的な展望をもって評定するならば,もっとも割の合わない技術経済的な特性を有するこの原発を,これからも利用しつづけ,おまけにその基数や発電量をより増やそうとしている。

さすがに「3・11」東電福島第1原発事故の直後は
この棒グラフの先端が頭打ちになっていた

 かつては(いま現在も)後進国だとか発展途上国だとか位置づけられている国々でも,原発を手っとり早く電力生産の手段として導入する動きが,いわゆる先進諸国側からの原発売りこみの動向に応じて,生じていないのではない。

 ただし,この地球上に「原爆≒原発」というやっかいモノを増やすことを意味する原発がそのように,人類・人間がカネ儲けの道具にする様相となっており,売買の対象にされている。

 再生可能エネルギーによる電力生産方法を採用しないで,ともかく原発を早く導入したいという意向もうかがえる。だが,実際にその運用と後始末(廃炉工程)の問題についてまでも,これを幅広くかつ長期的な観点から事前評価を十全にしたうえで,原発の導入を検討・決定しているのか,このあたりの問題は,それほど真剣に検討されていない。


 ※-3「福島第1原子力発電所の廃止措置状況」『福島県ホームページ』https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16025c/genan491.html が語る廃炉の問題現状(掲載日:2024年1月5日更新)

 この※-3は,福島県のホームページから,関連の記事を紹介する。

 --福島第1原子力発電所では,廃炉に向けた取組が進められています。政府と東京電力は,福島第1原子力発電所の廃炉の道筋を「東京電力ホールディングス(株)福島第1原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(中長期ロードマップ)に定めています。

 以下においては,主に図解を紹介するとともに,文章部分については必要な段落を引用しての説明としたい。

 a) 要するに,この福島第1原子力発電所1号機の「廃炉措置に向けた中長期ロードマップ」は,原子力工学の基礎知識だけでも理解しているつもりの人びとにとってみれば,まさしく《画餅》であった。 

この期間割では「第2期」が無限に継続している

そもそもここに記入のある日付2021年12月とは関係なく
デブリの「取り出し」作業は難渋している
という前にいつまでも手つかずの状態を余儀なくされている

 確かに「中長期ロードマップは,福島第1原子力発電所の廃炉を進めていくうえで,基本的な考え方や主要な目標工程等を政府が定めたもので」あり,「2011年12月に初版が決定され,2019年12月27日に5回目の改訂が決定され」ているが,しかしながら,これが実現に向けて進展をみたという実際の様子は,全然なかった。

 b) また「中長期ロードマップでは,廃炉作業が終了するまでの目標となる工程を立てており,作業の進捗の目安を3つの期間で区分をしてい」ると説明しているが,

 その「ロードマップ期間区分」のうち最初の「汚染水対策」は,ほかの処理方法を故意に選択せず,安易に太平洋に汚染水(処理水という名のそれに変装させられているけれども,事故を起こした原発デブリに触れた水としてまだいくつもの核種を含有している)を流しこむ方法を採っていた。

 この汚染水の処理方法は,それこそ世界で初の事例になったわけで,「地球環境・海洋への汚染水排出」を,いまも堂々と平然におこなっている。事故を起こした原発から新しく生まれた「特有の核種」の場合であって,しかもALPSで処理したあと,完全に除去できていない状態になっていたとしても,できるだけ薄めて太平洋に流せばいいのであれば,初めからそのまま太平洋にぶちまけるやり方と本質的になにも変わりはない。

 そして,その「中長期ロードマップ」の次段階,「使用済燃料の取り出し」は,この記述が言及しているように,そのとっかかりをつかむことさえまだできずにいるのであり,つまり,暗中模索状態に留め置かれていたままである。これまでも当面「しつづけてきた」事態は,単にきびしいというよりは,正直いって絶望的な局面の連続になっていた。

 そのデブリ(これには使用済燃料だけでなく,溶融した原子炉が巻きこんで溶かしこんだ「周囲の施設資材」も含むものだから,使用済燃料とだけ記すのは不正確である)が,今後いつごろになってその採りだしが可能になるかと問われて,まともにその時期を予想して答えられるものはいない。

 ということで,いま言及している「福島第1原子力発電所の廃止措置状況」『福島県ホームページ』は,さらに「廃棄物対策」にも触れているとはいえ,この対策となると,まだまだずっとさきの話題になりうる程度のものであった。

c) 「中長期ロードマップはどのように決められるの?」とこの「福島第1原子力発電所の廃止措置状況」『福島県ホームページ』は語ってもいたが,しょせん,画餅の次元における語りになっていた。

 福島県は「廃炉作業の実施には,技術的な戦略が必要となります。そのため,2015年から毎年,廃炉を適正かつ着実に進めるための技術的な検討をおこなう」「『原子力損害賠償・廃炉等支援機構』が『福島第1原子力発電所の廃炉のための技術戦略プラン』を取りまとめています」と説明している。だが,2024年になった現段階から振りかえってみるに,その後において確たる進捗がなかった事実しか確認できていない。

 あったことはといえば,「汚染処理水」を太平洋に向けて排出したことだけである。これに対して,主にアジア諸国からは猛烈な非難を受けた事実だけが記録された。東電福島第1原発事故現場からのその排出は,いくつかある汚染水の処理方法に関していえば,「ただ一番コストが安いから」という理由にもとづいてなされていた。

 ほかに何種類もある処理方法-ALPS処理水の処分方法については専門家が,長期保管にくわえ5つの方法,地層注入,地下埋設,水素放出,水蒸気放出,海洋放出などがありうるにもかかわらず,一番安上がりな最後の海洋放出という方法を採った。この種の海洋汚染によって生じる汚染は,東電福島第1原発事故が初めて強行した無謀である。

 東電と日本政府は,前段に挙げてある「ALPS処理水の処分方法」のうち,海洋放出以外は最初から除外していた。つまり,その処分方法は,単純にコスト計算に依拠してのみ選択し,決めていた。それらの代替案を総合的に比較し検討する手順ははぶいており,ひたすら安いかどいうかという点だけを基準に決めていた。要は最大限にズルをしたのである。

 

 ※-4 関連する報道・記事から

 1)「福島第1原発で続く廃炉作業の厳しい現実,燃料デブリの取り出しはいつになる」『読売新聞』2023/02/18 15:30,https://www.yomiuri.co.jp/science/20230210-OYT1T50119/ は,「原発推進派である新聞社の立場」から,いつも好意的にしか論じられない宿命にあるせいか,希望的観測に満ちた記事しか書いないでいる。

 この『読売新聞』の記事からは小見出しのみ紹介するが,最後の段落のみ本文も引用しておく。なおこの記事はいま(2024年1月27日)からだと,ほぼ1年前の報道であった。

 △ 放射性物質の濃度は事故直後の100万分の1 
 △ 1号機「耐震性は保たれている」,大型カバーで覆ってがれき撤去
 △ 被災状況で異なる作業,取り出し作業に向けて「構台」準備
 △ 燃料デブリの取り出しは英国製のロボットアームで
 △ 200トン以上の燃料デブリ,試験的に取り出すのは数ミリグラム

 燃料デブリの取り出しは,事故から12年たっても始まっていない。中長期ロードマップの当初予定より2年ほど遅れている。コロナ禍の影響で,英国からの資材の運搬やスタッフの来日ができなくなった時期があったことが大きいという。だが重要なのは,ロードマップではなく,安全を確保しながら着実に廃炉を進めることだろう。

 技術の進歩で,いまはできなくても,将来,可能になることがあるかもしれないし,手法を根本的に変更することが必要になるかもしれない。世界も注視するなか,これまで経験したことのない廃炉作業は続いていく。未曽有の原発事故を起こした日本は,安全な廃炉をやり遂げなければならないと感じた。

『読売新聞』2023/02/18

 この記事,「重要なのは,ロードマップではなく,安全を確保しながら着実に廃炉を進めることだろう」と推測・期待の助動詞をもちいた表現を採っていた。

 ここでは,「着実に廃炉を進めること」と「ロードマップ」をなるべく尊重することとは,矛盾しない内容になると思うが,実に奇妙な修辞:いいまわしをしている。

 また,「技術の進歩で,いまはできなくても,将来,可能になることがある」とか「世界も注視するなか,これまで経験したことのない廃炉作業は続いていく。未曽有の原発事故を起こした日本は,安全な廃炉をやり遂げなければならないと感じた」とかいい,廃炉の問題であっても,まるでそれなりに「夢も希望もある」みたいな筆致による〈演出〉を醸すべく,記事が書かれている。

 2) 岡田広行・東洋経済解説部コラムニスト「デブリ取り出しを焦ると廃炉作業は行き詰まる 専門家が提言する福島第1原発の廃炉のあり方」『東洋経済 ONLINE』2021/03/08 9:00,https://toyokeizai.net/articles/-/414722

 この東洋経済の記事は,冒頭で全文を要約した文章を載せてもいたので,これを引用しておく。

 福島第1原子力発電所の事故から10年が経過しようとしている。

 国や東電の計画では廃炉作業を30~40年で終了させるというが,原子力の専門家からは,その実現性を危ぶむ声が上がっている。東芝で原子力技師長を務め,原子炉の構造を熟知する宮野 廣氏がその1人だ。

 宮野氏が委員長を務める日本原子力学会・福島第1原子力発電所廃炉検討委員会は2020年7月,「国際標準からみた廃棄物管理」と題した報告書を公表。そこでは,国や東電が福島の地元関係者との協議を踏まえたうえで廃炉終了後の福島第1原発の跡地の「エンドステート」(最終的な状態)を設定することが急務であることや,放射性廃棄物廃棄物の抑制対策の重要性が指摘されている。

 また,宮野氏自身は,国や東電が進めようとする燃料デブリ取り出しの方法について,必らずしも適切でないとして警鐘を鳴らしている。

 福島第1原発の廃炉の進め方はどうあるべきか。宮野氏に聞いた。

宮野 廣の見解

 ところでこの宮野 廣については,この記事のなかで略歴も紹介されていたが,あまりに簡単なので,よそから情報を拾って補足し,つぎに書いておくことにした。

 「宮野 廣(みやの・ひろし)」は金沢市生まれ,金沢大学附属高校卒,1971年慶應義塾大学工学部卒,東芝に入社。

  原子力事業部原子炉システム設計部長,
  原子力技師長,
  東芝エンジニアリング取締役,同首席技監など

を経て,2010年法政大学大学院客員教授。日本原子力学会標準委員会 前委員長,日本原子力学会廃炉検討委員会委員長,日本保全学会顧問

宮野 廣・略歴

 この経歴から観て,この人物からはまず,抜本の解決策が提言されるとは思えない。

 前段に,要約として紹介しておいた文章のなかには,政府がやる気さえあればいくらでも可能であった対策が,実現可能にあったにもかからず,小田原評定のごときに発言されていた節が強く感じとれた。

 地元の協議などの手順を経なくとも対策はいくつもありうるはずだが,こちらの方面に関する話題になると,けっして具体的には発言しようとはしない。

 3) AERA編集部「福島第1原発『デブリ取り出しは不可能』と専門家 廃炉できないなら「『石棺』で封じ込めるしかない」」『AERA dot.』2022/03/07/ 10:00,https://dot.asahi.com/articles/-/41837?page=1

 この記事の見出しで専門家と指称されていた人物は「小出裕章(こいで・ひろあき)」である。

 小出は1949年生まれ,原発の危険性を世に問いつづけてきたために,2015年に京都大学原子力炉実験所を65歳で定年退職するとき,助教の肩書きのままであった。著書に『原発事故は終わっていない』毎日新聞出版など。

 上記記事の本文に入る。

 東京電力福島第1原発事故からまもなく〔2022年3月で〕11年。国と東電は30~40年後の廃炉完了をめざすロードマップにもとづき,作業を進めている。

 だが,相次ぐトラブルから廃炉作業の計画は大幅に遅れている。廃炉は本当に可能なのか。『AERA』2022年3月7日号は,小出裕章・元京大原子炉実験所助教に聞いた。

 【ロードマップ】 使用済燃料の取り出し開始~廃止措置終了までの道のりは,これである。

廃炉完了をめざすロードマップ
第2期にまだ進んでいないのに
第3期は2021年12月に始まる予定だと説明されている

〔小出裕章いわく〕 国と東電が策定したロードマップは「幻想」です。国と東電がいう「廃炉」とは,燃料デブリを格納容器から取り出し,専用の容器に封入し,福島県外に搬出するということです。

 当初,国と東電は,デブリは圧力容器直下の「ペデスタル」と呼ばれるコンクリート製の台座に,饅頭(まんじゅう)のような塊になって堆積していると期待していました。そうすれば,格納容器と圧力容器のふたを開け,上方向からつかみ出すことができます。

 しかし,デブリはペデスタルの外部に流れ出て飛び散っていることが分かりました。デブリを上部から取り出すことができないことが分かったのです。

 そこで国と東電はロードマップを書きかえ,格納容器の土手っぱらに穴を開け横方向に取り出すといいだしました。しかしそんなことをすれば遮蔽のための水も使えず,作業員の被曝が膨大になってしまいます。

 それどころか,穴を開けた方向にあるデブリは取り出せたとしても,格納容器の反対側にあるデブリはペデスタルの壁が邪魔になり,みることも取り出すこともできません。

 つまり,デブリの取り出しは100年経っても不可能です。

 東電は「国内外の技術や英知を活用すれば廃炉はロードマップどおりに達成できる」などと繰りかえし,いっているようです。本気で考えているとすれば,相当なバカだと思います。ロードマップは彼らの願望の上に書かれたもので,その願望はすでに崩れています。

 廃炉できなければどうすればいいか。できうることは,1986年のチェルノブイリ原発事故の時に実施したように,原子炉建屋全体をコンクリート製の構造物「石棺」で封じこめるしかありません。

 人間に対して脅威となる放射性物質のセシウム137とストロンチウム90の半減期は,それぞれ30年と28年です。100年待てば放射能は10分の1に,200年待てば100分の1に減ってくれます。

 100年か200年か経てば,その間に,ロボット技術や放射線の遮蔽技術の開発も進むはずです。そして,いつかの時点でデブリを取り出すこと以外ないと思います。

 国と東電は,それくらい長期にわたる闘いをしているんだと覚悟しなければいけません。そのためにも,一刻も早く福島県に「廃炉は不可能」と説明し,謝罪するべきです。悲しいことですが,事実を直視しなければ前に進めません。(引用終わり)

 --チェルノブイリ原発事故現場のように石棺で覆っておく現場処理については地域住民からは強い反発が,以前示されていた。

 「デブリの取り出しは100年経っても不可能」だと断定されている。だが,この石棺方式が採用できない現状をなんとかしてでも実現させようとする「原子力村」の面々が,ほわれわれのしりうる範囲内ではまったく登場していない。

 なぜか? 原発の再稼働だとか新増設とはひとまず別問題として,それこそ何世紀にもかけてとりくんでいくほかない「原発の廃炉事業」が,今回,東電福島第1原発事故のそれがこれから長期間にわたりつづいていくことになるのだから,これに関係する整理事業にかかわることになる原子力工学専門家の人びとは,それなりに自分たちの食い扶持が,これからもそれ相応に確保できそうな〈雲行き〉である。

 原発が事故ろうと,なんになろうと,そもそも原子力村の住民たちはそうした生活感覚の持主たちが大勢いた。 原子力損害賠償・廃炉等支援機構みたいな法人組織がこれからも簇生していくのか?

 

 ※-5 この線路はどこまでつづいているのか

 この※-5では,以上までの記述に関連する新聞記事の現物を画像資料にして紹介する。

これからも「廃炉完了みえず」という見出し

2度あることは3度あって
3度あることは4度と
多分無限に続く
以前同じように別型だがロボットを利用して調査をしていたが
その改良版ということか
これもまたまるで無限に続くかのような試行である
前段にかかげた『日本経済新聞』記事と同じ内容を
報じている記事だが「スプーン一杯ほどの燃料デブリ」
という表現が気にかかる
相手は880㌧であった
原発廃止論の『毎日新聞』の社説

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