『悪魔の火:原子力』発電にいつまでもこだわるこの国のエネルギー政策,岸田文雄首相の原発「無知蒙昧ぶり」は救済不可
わざわざ『悪魔の火:原子力を燃料に焚く原発』にこだわるエネルギー政策しか想像できない,たとえば,国際環境経済研究所竹内純子の「原発イデオロギーの賞味期限」(※-2に引照し,議論する)は,とうの昔に切れていた。それでも「亡国の原発推進策」を夢みつづけるような,ハチャメチャの原子力観が堂々とまかり通る日本は,尋常ならざるエネルギー問題を抱えこんでいる。
付記)冒頭の画像は,つぎから借りた。木村 駿「ウクライナ危機で注目のチェルノブイリ原発,史上最大のカバーはこう組み立てた」『日経XTEC』2022.03.18,https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/01413/
つぎの『東京新聞』の記事は,昨年8月下旬に報道であった。
※-1 岸田文雄は安倍晋三よりも品質がより劣化した日本国の総理大臣,亡国・滅国・壊国の「世襲3代目の政治屋」である
この日本国首相は,『日刊ゲンダイ』の記事のなかで,こう批判されていた。
「安保3文書を改定し,防衛費をGDP比2%まで増やすことや,購入する武器の中身まで閣議決定で決めてしまった。防衛費倍増のために増税までするのに,一度も国民に信を問うていません。
ほかにも,60年を超える原発の運転延長を閣議決定で決めました。旧統一教会問題の被害者救済法はザル法で,教団と関係のある自民党議員についての調査もうやむやです。こうなったら,これらすべてについて,国民に信を問いましょうよ」
立憲主義と法治主義を捨てた政権に正当性はない
註記)「岸田首相よ 憲法を踏みにじる軍拡の是非を問えばいい それなら国民は大歓迎』『日刊ゲンダイ』2023年5月24日,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/323456
いまの日本,「無理が通れば道理が引っこむ」くにがらになっているが,その最高責任者の立場ではその自覚が皆無である。
※-2 竹内純子 国際環境経済研究所理事・主席研究員「〈経済教室〉長期電源計画,国関与強化を 電力システム改革の課題」『日本経済新聞』2023年5月26日朝刊31面「経済教室」
この竹内純子の「妄論的な原発推進論」は,確かに,岸田文雄の原発政策が豹変したのを受けて,大いに力をえたのか,以下にかかげる記事(画像資料でかかげている)で,つぎのように語っていた。
文字で引用すると長くなるので,該当の記事を画像にして紹介する。問題をとくに強く感じる箇所は,色つきで囲んである。つぎの人物紹介をしたあとに挿入する。
この竹内純子(たけうち・すみこ)という原発イデオロギー・情宣担当係である人物は,1971年生まれ,東京大博士(工学)で,専門は温暖化・エネルギー政策。そして,東北大特任教授。
竹内は,とくに「温暖化・エネルギー対策」が専門だということだが,以下に紹介する主張の中身に関してた疑問が,風船玉を一気に膨らましたかように大きくなって登場した。
この竹内純子の「寄稿のポイント3点」は,こうだとされている。なお,〔 〕内の記入は引用者のものであるが,突っこみどころが早速,飛び出ていた。
この※-1以降も同様な参照の仕方となるが,引用したい原文および記事がけっこう長いゆえ(つまり,今日の記述・全文も長くなっているゆえ),なるべく必要最低限の段落・箇所のみ紹介することにし,あとはその紙面そのものを借りて紹介する形式にしておきたい。
前後の脈絡でその記事の内容が気になる人は,面倒でもそれら紙面(画面)をクリックすれば,少し拡大して読めるようになるので,そのようにしてほしい。
さて,竹内純子の論旨からはその紙面で赤枠でかこった段落が,本ブログ筆者の立場からみて,注目したいところであった。この竹内の主張の眼目は,原発推進にただ有利に論理をこじつけて展開する点にあった。したがって,これを反論・批判することは容易である。全体の記述が進むなかでその意図を徐々に明解にしていきたい。
竹内純子いわく,
政府が〔2023年〕2月に策定したGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針には,電力市場設計の修正も盛りこまれた。安定供給と脱炭素化を両立し,日本がめざす電源構成を実現するには,世界中で実施されてきた電力システム改革じたいが再考の時期にあることを考慮しなければならない。
補注)ここで「世界中で実施されてきた電力システム改革」とはなにか,けっして自明ではなく,基本から説明を要する点となる。2022年2月24日「プーチンのロシア」が始めたウクライナ侵略戦争のせいで,高騰しているエネルギー資源価格の問題を念頭に置いてと思われるが,このように語っている。
だが,あまりにも短期的・近視眼的な発想がめだち,いいかえると原発推進派の立場に有利にもっていくための議論しか試みられていないとなれば,話は半分(以下)にしか聞く余地がなかった。
〔記事に戻る→〕 政府は昨今の電力供給力不足の原因として,「火力発電所の休廃止や原子力発電所の再稼働の遅れ」を挙げる。原発事故を契機に約16ギガワットの原発が廃止され,再稼働に至ったのは西日本の10基,10ギガワットにとどまる。
補注)この解釈は間違い。日本は再生可能エネルギーの開発・導入・整備,そしてこのエネルギー電源を可能なかぎり最大限にまで活用できる電力の発配給電体制の構築,いいかえれば,再エネを基盤としてスマートグリッド方式による電力生産・配給体制の大幅な遅延にかこつけたかたちで,原発に依存さえすればエネルギー問題が当面解決できるかのような,竹内純子の主張は視野狭窄の,いわば原子力ムラの基本利害を代弁する理屈でしかない。
(記事の引用は,ここで,大幅に中略)
とりわけ原子力発電は,日本の安定供給と脱炭素化の両立に決定的に重要であるうえ,エネルギー安全保障上の価値も高い。だが多額の初期投資と長期の回収期間が必要とされるため,競争的な発電市場では資金調達コストが増大しプロジェクトが成立しがたい。
英国は原子力について,規制資産ベースという総括原価方式に戻す決定をした。日本でも原子力の新規建設を期待するのであれば,公益電源としてその投資回収の予見性を確保する事業環境・体制整備が必要だろう。
補注)この「原子力発電は,日本の安定供給と脱炭素化の両立に決定的に重要である」という発言じたいが,ある意味,虚妄に近い発想にもとづいている。
すなわち,前段の補注中でふれたスマートグリッド方式による,しかも再生可能エネルギー体制を基盤とした電力生産と配給の体制構築を,初めから否定ないしは妨害する思考方法であった。
【参考図解】-札幌市エネルギー構想・2016年-
いまどきいまだに,このような「原発万歳!」風の,まったくに旧式で妥当性となれば希薄な主張ができる理由は,いったいなんなのかと疑いたくなる。別の意味でいうと,非常に奇怪な見解が披露されていた。
ドイツはもともと,2022年12月いっぱいで原発の全廃(廃炉)を決めていたが,ウクライナ侵略戦争のためにその期限を2023年4月15日まで延長した。そして,そのとおりに全原発の廃絶を実行した。
ちまたのしりかぶり殿たちは,ドイツは電力を一方的に輸入しているみたいな見当違いの指摘・批判も繰り出していた。しかし,それは事実に反している。隣国の原発大国(7割以上の電源比率である)のフランスのほうが,昨年などの場合,河川の渇水や装置・機械の故障を原因にして,原発の稼働体制に不調・不足が大幅に発生し,電力を輸入する経緯になっていた。
また,日本の同盟国として第2次大戦に敗北したイタリアは,ドイツよりも早くすでに1987年の時点で,民意にしたがいすべての原発廃止を選択していた。
1986年のチェルノブイリ事故は,欧州の広い範囲に直接に影響を与えた。エネルギー資源に乏しいイタリアは,それまで原発を活用していたものの,国民投票を実施し,1988年に一定期間の建設凍結を決定し,1990年に全基を閉鎖したのである。
イタリアにおける電力事情のその後については,電力不足や供給の不安定を指摘し,原発廃絶の事実を非難する原子力ムラ的な批判が散見される。とはいっても,2011年に東電福島第1原発事故が発生した事実にを挙げるまでもなく,イタリアの原発廃絶決断はまっとうであった。
しかも,その後における再生可能エネルギーの導入・利用・発展は,世界的な傾向として厳然たる事実となっていた。そこに原発を,2000年代当初に突如提唱された原発ルネッサンスの要領で,増やそうとしたごとき試図は,結局,東電福島第1原発事故によって水を差されていた。
ドイツとイタリアが,きっぱりと原発とは縁切りしたにもかかわらず,世界の原発史のなかでは有数の原発保有数を誇ってきた日本という国は,要するに,潜在的な核保有国である現状を変えたくないために,原発は止められないのである。
「やめられない,とまらない」という,あのお菓子の宣伝文句ではないが,日本は自国が原子力中毒の国家体制である事実を十分に自覚したうえで,岸田文雄は,経済産業省の国家官僚たちのいいぶんを鵜呑みし,「原発の新増設」を唱えた。
この首相は原発問題に対する態度の面においてもまた,完全にキシダメノミクスの担当者であった。岸田文雄は,亡国の首相であったアベの驥尾に付す能しかなく,エネルギー政策に関する知識・情報を全面的に欠く事実を,みずから露呈した。
(中略をはさんで〔 ↓ 〕)
〔記事に戻る→〕 これら(とは分かりにくいが,前段の記述を受けている)は多数のプレーヤーからなる発電市場という古い価値観に拘泥するものであり,前者は大手発電会社の電源投資のインセンティブ(誘因)をそぎ,後者は送配電部門に強く依存する発電部門のキャッシュフローを行きつまらせ,電源投資をよりむずかしくするだろう。これまでの改革の延長線上に安定供給と脱炭素の両立が望めない以上,再設計を試みるべきだ。
補注)この決めつけ,「これまでの改革の延長線上に安定供給と脱炭素の両立が望めない」という指摘は,ひどい発言である。まさに,原発へのこだわりがそうした電力の「安定供給と脱炭素の両立」を阻害してきた点こそが,エネルギー問題の初歩的な認識であり,専門の識者に尋ねるまでもない周知の事実であった。論点のすり替え。
原発が電力の安定供給のための装置・機械だという決めつけじたいが問題でもあった。原発は,発電量の需給関係における調整がもっとも不適なエネルギー「原子力」を使用している。この原発の稼働面の融通性のなさは,まさに木偶の坊的な特性を意味し,まさしく最大の欠点であった。
安定だという言葉を使用する場合,なにを基準にどのように適用して考えるのか,よく吟味する必要がある。少細な電力源を大量に集めて電力の生産・配給を安定性を保ちながらおこなう再生可能エネルギー体制は,これを,スマートグリッド方式によって発電・送電・給配電を融通・管理する方式を採用するゆえ,原発のような大容量になる装置・機械にとってみれば,はっきりいって邪魔者なのである。もっとも “逆も真なり” であった。
原発の技術経済的な特性に鑑みると,スマートグリッド方式は不適で対応しにくい電力管理体制である。それがゆえ,スマートグリッド方式のなかでの原発は,もはや完全に異端児であり,場合によっては妨害因子のごとき電源になる。この原発(原子力というエネルギー)による電力の生産と配給は,この電源側の都合でもってその消費者の電力利用法まで差配(強制)する傾向が隠せないでいた。
結局,原発は,いま世界中でドンドン発展し,進歩し,拡大中である再生可能エネルギーによる電力の生産・配給に対して,本当はお邪魔虫的な存在になっていた。
それがゆえ,原発推進論者は必死になって,この再生可能エネルギーの導入・利用・展開に遅れをとっている日本の電力事情の状況にあるからか,ただ「原発,原発,原発……と叫ぶ」だけの立論や主張に終始してきた。
東電福島第1原発事故の深刻な重大性は,「原子力緊急事態宣言」(2011年3月11日 16時36分発令)がいまだに解除されていない。この事実ひとつをもってしても,原発事故がもたらしてその甚大な後遺症は,教示されつづけている。
竹内純子の議論は,以下のような「原発じたいが残した深刻な技術病理」には,いっさい触れず,目をつむっている。いいかえれば,逃げるに逃げられない問題が目前に立ちはだかっていただけに,ともかく,こちらの解決不能の論点にはいっさい言及しない。竹内にあっては,原発問題に関した「論理の運用方法」が「歴史の現実状況」からは完全に乖離している。
▲-1 東電福島第1原発事故の被災者「補償問題」
▲-2 中間貯蔵施設事業の「ゆきづまり」,最終処分場などはこれからの問題
▲-3 復興事業で計上・執行された「膨大な予算」の問題
▲-4 廃炉工程の進行ともに莫大な経費が,これからは継続してさらに発生する。この「未来の負担」は,もはや恐怖に等しい実体を意味する
【参考記事】
つぎの※-3は,金子 勝によるきびしい「原発問題批判」となる。
※-3 川口雅浩・経済プレミア編集長〈経済プレミア・トピックス〉「金子 勝氏 岸田政権の原発回帰で電力会社はボロもうけ」『毎日新聞』2023年3月12日,https://mainichi.jp/premier/business/articles/20230309/biz/00m/020/011000c
a) 超党派「原発ゼロの会」の指摘
「この法案は根本的に欠陥がある。電力会社に60年を超え,原発を限りなく動かすインセンティブ(誘因)を与えることになる」。岸田政権が今国会で成立をめざす「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」について,金子 勝慶応大名誉教授(財政学)はこう指摘する。いったいどういうことなのか。
補注)原発(原子力を燃料とする発電方式)がグリーンだという規定は,冗談でなければ無知のなせる発想であった。原発事故が起きた地域では,グリーンということばで想像できる「草木」は,どうなっていたか? 説明するまでもあるまい。原子力=緑のエネルギーなどと口にしうる人は,その神経を疑わせる。
超党派の国会議員らで作る議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」が3月2日,岸田政権が進める原発政策の見直しについて衆院第2議員会館で議論した。このなかで金子〔勝〕氏は有識者代表として,国会議員や官僚らを前に法案の問題点を指摘した。
岸田政権は法案のなかで,2033年度から電力会社に対する「排出量取引制度」の導入をめざしている。この制度は政府が電力会社の二酸化炭素(CO2 )排出量に応じて排出枠を割り当て,電力会社がその量に応じて「特定事業者負担金」を支払う仕組みだ。
電力会社はCO2 を排出しない再生可能エネルギーや原発で発電すれば負担金を支払わなくてすむ。政府は負担金をペナルティーとして用い,電力会社が火力発電から脱炭素電源に切り替えることを狙っている。
ところが,電力会社にとっては初期コストのかかる再エネを導入するより,既存の原発を再稼働させ,長く使う方が負担金を免れるには都合がよい。
b) 内閣官房と議論かみ合わず
冒頭の金子氏の発言は,この点を指摘したものだ。「60年超の原発の運転は電力会社がもっともやりたがっている。新たな負担金を発生させないため,原発を動かし,火力を減らすのが最適な行動となるからだ。老朽原発を全部稼働させれば,電力会社は(負担金を払わなくてすむので)ボロもうけになる。政府はそれを誘導しようとしている」というのだ。
補注)オンボロの原発を稼働しつづけたら,事故を起こす確率(論)は当然,増大する。この程度の知識は信頼性工学に聞くまでもないイロハのイである。
これに対して,内閣官房のGX実行推進室の担当者は「これはCO2 の排出量に着目した制度で,2033年度以降に導入していく。原子力の稼働条件に応じてなにかを低減させるというものではない」などと明言を避け,議論はかみあわなかった。
東北大の明日香寿川教授(環境政策学)は「この法律はCO2 を出さなければなんでもよいというスタンスで書かれている。国連のクリーン開発メカニズム(先進国と途上国が排出権を設け,CO2 を削減する仕組み)に日本は原発を入れようとしたが認められなかった。(原発をCO2 削減に用いるのは)国際的に必らずしも正しくない」と述べた。
補注)原子力発電が炭酸ガスを出さない,ただし稼働中にかぎってはという限定付きのその主張は,そもそも無理が過ぎた〈先験的な定義〉でしかなかった。原子力という燃料を使用する事実じたいが,実際にはグリーンからほど遠い事実そのものであるし,炭酸ガスを出さないといった過度に強調した主張からして元来,眉ツバものであった。
c)「革新炉開発の1兆円は焦げ付く」
さらに金子氏は,岸田政権が「GX経済移行債」を発行し,革新炉と呼ぶ原発の技術開発に1兆円を投じる方針について「原発が安いというなら,(電力会社が)単独で資金を調達できるはずだ」と疑義を呈した。
GX経済移行債とは政府が2023年度からの発行をめざす新たな国債だ。今後10年間で約20兆円を調達し,脱炭素社会への移行に用いる。償還には特定事業者負担金のほか,化石燃料の輸入会社から一定額を徴収する化石燃料賦課金を充てる方針だ。
金子氏は「革新炉と呼ばれるフィンランドやフランスの原発は運転できずに建設費が膨らんでいる。GX債で革新炉へ技術支援するのは焦げつくのが確実だと思う。革新炉は事実としてうまくいっていないので,電力会社は建設に二の足を踏む可能性が高い。銀行も融資しないだろう」と,否定的な見方を示した。
これに対して,内閣官房の担当者は「(革新炉開発の)1兆円についてはGX基本方針で公表しているが,あくまでイメージだ。具体的な発行額は国会の議決を経て,各年度の予算で進めさせていただく」と述べるにとどまった。
金子氏は「再エネや蓄電池などの技術革新が,原発をやっていると必要なくなってしまう。この法案は技術革新を妨げるスキームになっていないか。福島の原発事故以降,日本でもドイツ並みに再エネが進んでいたら,どれほど電気料金が安くなったのか,検証する必要がある」と指摘した。
超党派のこの会議では,原子力政策に詳しい龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)らが法案のさらなる問題点を指摘した。次回,詳しくお伝えする。(引用終わり)
最後に名前の出てきた大島堅一は,「『あまりに乱暴』 龍谷大教授,首相の原発『新増設』言及に怒り」『毎日新聞』2022年9月5日朝刊という記事のなかですでに,岸田文雄の「原発新増設」を非難していた。この記事はインタビュー形式であるので,大島の答えの段落から適宜に,以下の主張を引用してみる。
1年近く有識者会合で議論した末に昨〔2021年〕秋に改定したばかりの国のエネルギー政策の中長期方針「エネルギー基本計画」でも新増設については言及を避けています。そうにもかかわらず,いきなり別の政府会議で従来方針を覆すのはあまりに乱暴です。十分な検討をしてきたとも思えません。ウクライナ危機などで「電力が足りないから」と新増設を検討するというのは非常に短絡的だと思います。
原発は建設に10年,20年の時間がかかり,稼働時間は40~60年程度,さらに廃炉には30年前後もかかります。いま,新増設を決めると今後100年,150年にわたって行動が縛られることになります。
短期で変動する足元の資源価格をもとにした新増設を判断してしまうと,再生可能エネルギーなどほかの選択肢を狭めるリスクがあるわけです。原発は発電時に二酸化炭素(CO2 )が発生しない利点がありますが,稼働開始までには長い時間がかかり2050年カーボンニュートラル,脱炭素への貢献は限定的なものにとどまることになるでしょう。
せっかく福島原発の事故後に完全自由化した電力市場をゆがめかねません。日本が原発を導入してからすでに半世紀。それでも「独り立ち」できないというなら,そもそも主要電源として原発が劣っている証拠といわざるをえません。
ウクライナ危機で打撃を受けている欧州は原発に対する投資を増やそうとしていますが,脱炭素,脱ロシア依存に向けた投資の主体はあくまで再生可能エネルギーです。日本政府が原子力産業の延命に取り組めば取り組むほど,長い目でみれば日本経済にとって痛手になりかねません。
国内で電力需給が逼迫する可能性があるといっても,深刻なのは需要のピーク時に限られます。原発は常時発電する「ベースロード電源」なので,ピーク時だけ発電量を増やすなど柔軟な対応には貢献できません。原発の稼働を進めても,現在ベースロード電源になっている火力発電の統廃合の動きは早まるでしょうが,緊急時の電力の供給増につながわるわけではありません。
原発には福島で起きたような事故リスクや放射性廃棄物の処理をどうするかといった問題が残されています。岸田政権は原発の都合の良い部分だけをみるのではなく,新増設について慎重な議論をすべきです。(引用終わり)
ここまで記述をしてきて痛感するのは,多分,岸田文雄は首相として原発問題のイロハを学んでいないし,これからも学ぶつもりがないという事実である。もはや,本当に情けないこの国の最高指導者だという印象しか抱けない。
そういえば最近バレた事実だが,岸田文雄の息子が2022年12月,官邸にトモダチを招待してはしゃいで騒ぐ「出来事」を発生させていた。組閣時に大臣たちが並んで記念写真を撮る赤絨毯の敷いてある階段で,このトモダチたちとその真似をしたり,あるトモダチは寝そべったりもしていた。この親子,2人ともダメだね……。公私混同はアベ譲りだとしても,である。アベは無子だったが。
※-4 ところで『毎日新聞』2023年5月25日朝刊であったが,偶然だったかもしれないが,原発関連の記事が多く掲載されていた
★「3面」から
「国内唯一の高速炉・常陽,新規制基準の審査『通過』 原子力規制委」『毎日新聞』2023/5/24 11:26,更新 5/24 16:34,https://mainichi.jp/articles/20230524/k00/00m/040/035000c
原子力規制委員会は〔5月〕24日の定例会で,日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(茨城県)が新規制基準に適合したことを示す審査書案を了承した。事実上の審査通過で,規制委は意見公募などを経て審査書を正式に決定する。
常陽は,プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料をナトリウムで冷やす研究炉で,発電機能はない。1977年に運転を始めたが,2007年に炉内の装置が破損するトラブルを起こし,2015年以上停止している。
原子力機構は2017年,再稼働の前提となる安全審査を規制委に申請した。しかし避難計画の策定などをめぐって,原子炉の熱出力を14万キロワットから10万キロワットに縮小するなど,審査は長期化した。山中伸介委員長は「非常に長い時間がかかった印象。実験炉であっても,ナトリウムを使った高速炉で,出力も大きい。かなり慎重に審査したつもりだ」と述べた。
高速炉は,政府が進める核燃料サイクルの中核となる施設だ。使用済み核燃料を再処理してできるプルトニウムを,既存の原発で燃やすプルサーマルよりも効率よく消費できる。
政府は2022年12月にまとめた原子力政策で,既存原発から建て替える次世代原発の一つに,高速炉を位置付けた。原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を高速炉で燃やして減らす研究なども進めるとしている。
しかし,常陽のつぎの段階である原子力機構の原型炉「もんじゅ」(福井県)は不祥事やトラブルで2016年に廃炉が決まり,開発は難航している。現状では常陽が国内唯一の高速炉だ。原子力機構は2025年3月の再稼働をめざすが,高速炉の開発が今後,順調に進むかは未知数だ。(引用終わり)
【参考記事】
核燃料サイクルおよび高速増殖炉は,以前から現在まで,そしてこれからも技術的に成功するみこみとして予測するに,99%ない。それでもこだわっている日本の原発事情は,その先に「原爆事情」との同居状態にあるからだと,ごくふつうに(当たりまえ!)指摘されてきた。
★「7面」から--。これは紙面で紹介する。
★「11面」から--。これも紙面で紹介する。
★「14面」から--。これも紙面で紹介する。すでに議論のあったヨーロッパにおける電力事情にかんした説明がなされている。
★ 2023年5月26日朝刊「社説」は,しごくまっとうな論説をかかげていた。だが,岸田文雄はこの程度の「原発問題に対する理解力」でさえ不在である。彼は理解しているとか,していないとかではなく,その理解とは無縁。
※-4 核のごみ「捨て場」さえ,いまだみつけられないままの,この日本の原発政策の末恐ろしいまでの無策-半世紀以上そのままで来たという粗雑・乱暴の無責任-
a)「核のごみ『政府の責任で処分を』基本方針を閣議決定」『日本経済新聞』2023年4月28日,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA283L50Y3A420C2000000/
政府は〔4月〕28日,原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分に関する基本方針を閣議決定した。「政府一丸となって,政府の責任で最終処分に向けて取り組んでいく」と強調した。
基本方針の改定は8年ぶり。松野博一官房長官は同日の関係閣僚会議で「高レベル放射性廃棄物の問題は原子力を活用していくうえできわめて重要な課題で,国民が懸念していることの一つだ」と述べ,処分場選定の第1段階となる文献調査の実施地域の拡大をめざすとした。
補注)この表現に気をつけたい。いまもまだこのように「処分場選定の第1段階となる文献調査の実施地域の拡大をめざす」などと報道されていた。なにかの,ひどく悪い冗談にしか聞こえないのだが……?
基本方針は国が主導するかたいで地元の電力会社と原子力発電環境整備機構(NUMO)が協力して100カ所以上の自治体を訪問することや,地元の経済団体や議会などに説明し調査の検討を申し入れることなどを盛りこんだ。
西村康稔経済産業相は同日の閣議後の記者会見で「地域の声を踏まえながら丁寧に情報提供や対話を重ねたい」と語った。
補注)丁寧にいっておくが,どうも冗談ではないらしいのが,これから「原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分」をさがしにかかる,といっている。繰りかえすが,冗談か?
b)「 核のごみ処分,世界で難航 フランスが3カ国目の具体化」『日本経済新聞』2023年4月26日,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA242OH0U3A120C2000000/
原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分が世界で難航している。欧州では原発活用と核のごみの処分場をセットにするルールづくりが始まったものの建設が進むのは2カ国しかない。日本は北海道で調査を始めたが停滞気味だ。各国が懸案を乗り越えないと原発の持続的な活用はむずかしい。
フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は1月,原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場を仏北東部の農村部ビュールに建設する計画を仏政府に申請した。「われわれが生み出した放射性廃棄物を将来世代に残さないように責任をみせる」と強調した。
補注)日本の場合「われわれが生み出した放射性廃棄物を将来世代に残さないように責任をみせる」という点をめぐる見通しが,まったく立っていない。それでいて,原発,原発……と叫ぶ原子力ムラの住人がまだまだいる。ただし,原発を新増設しろという人たちは,こちらの非常に困難のある問題についてはなにもいわない,沈黙を押し通す。これほど,いい加減でデタラメはない。
〔記事に戻る→〕 仏政府が承認すれば世界で3例目となる。多くの電力を原子力に依存する原発大国のフランスにとって最終処分場の建設は長年の懸案だった。
広さ15平方キロメートルの処分場を地下500メートルの場所につくる。順調に進めば2027年に建設を開始。安全性の審査などに約5年かかり,廃棄物を試験的に運び入れるのは早くて2035年からになる。
核のごみを地下深くに埋める方式は地層処分と呼ぶ。高レベル放射性廃棄物は約10万年にわたり放射線を出し続け,地上に保管するのは危険なため,日本を含め世界の多くはこの方式を検討,採用している。
世界で原子力の電力利用が始まってから約70年。使用済み核燃料などの廃棄物をどこに処分するかは原発の推進国,脱原発を決めた国の両方で難航するテーマだ。稼働している最終処分場はまだない。
補注)「稼働している最終処分場はまだない」。けれども「毎日,毎日,稼働しているし,核のごみも出しつづけている」。これ,どうしますか? いま原発を全廃してしても,その後始末にはおそらく何世紀もかかるし,しかもきれいに跡形もなく始末できるわけではない。ネコババの要領で地中深く,最終処分の対象となる「高レベル放射性廃棄物」の押しこんでおくに過ぎない。
これまでに国が具体化を認可した2例は,発電量に占める原発の比率が高い北欧だ。フィンランドがすでに建設中で,スウェーデンは2022年1月に処分場の場所を決めた。
米国は政権交代で政策が揺れる。一度はネバダ州の施設が処分場として決まっていたが,オバマ政権で計画中止になった。トランプ政権が再度,処分場にしようと試みたが,いまだに決定には至っていない。
補注)世界で起きる地震の約1割は日本である。国土はけっして広くはない。無責任に地中に埋めておいたら,10万年あとにこの国で暮らす人たちに大きな迷惑をもたらす可能性を否定できない。
脱原発を決め,廃炉作業を進めるドイツは,適地とみなした地域の地下に一度は実験施設を作った。ただ,地盤の問題や住民の反対運動で撤回。あらためて適正地を示した地図を公表したが,国土の半分が含まれており,絞りこむには至っていない。英国なども建設着手はまだだ。
処分場の必要性は欧州連合(EU)の決めたルールからも明確だ。EUは2022年7月,環境面で持続可能な事業かどうかを定めた「EUタクソノミー」で,原発を「グリーン」な電源と認定した。条件として,原発から出る高レベル放射性廃棄物の処分施設の具体的な計画をつくることを求めた。
補注)「原発を『グリーン』な電源と認定した」一件は,苦しまぎれというか,こじつけのヘリクツであった。すでになんどか触れた点であるが,原発の色あいはどちかというに,灰色もしくは「黒色と黄色の組み合わせ」ではなかったか?
日本は処分場の候補として名乗り出た北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村について2020年11月に最初の段階の「文献調査」が始まった。地質図や学術論文などを調べ,適地かどうか机上で探る内容だ。2年ほどとされた想定期間より調査は長引いている。
もともとは原子力発電環境整備機構(NUMO)に一任する手法で進めていたが,専門家をくわえてデータを評価する手法をとるよう経済産業省が2022年4月に提案。「文献調査の終わりはまだ先になる」(同機構)という。
補注)この「文献調査の終わりはまだ先になる」というイイグサも,いまとなっては無責任そのものの表現でしかありえない。以下につづく2段落目でもさらに「具体策はみえない」とかで,なんという無責任。
さらに別のハードルもある。核のごみのもちこみを受け入れがたいとする条例を北海道が定めていることだ。鈴木直道知事は文献調査のつぎのステップとなる概要調査に「反対する」との意向を示す。
政府は2月に決めた新たな基本方針で核のごみの最終処分に「政府の責任で最終処分に向けて取り組む」と打ち出したが,具体策はみえない。
岸田文雄首相はBSテレ東番組で次世代原発の開発と放射性廃棄物の処分をめぐり「順番にやるべきだという議論があるが同時に努力しなければいけない課題だ」と話す。
補注)この人もいままで,ものを分かっての発言はなにひとつ,していなかった。
日本は核燃料資源を循環して使うサイクル政策も行きづまっており,核のごみを大量に抱えている。自治体や電力会社に任せず,国が前面に立たなければ長期に原発を使う環境は整いにくい。(引用終わり)
そのとおりである。たとえ,国が全面に立ったところで,「長期に原発を使う環境は整いにくい」ことに,なにひとつ変わりはない。このあたりの記事作りになると,なんとか弥縫策的にもいいつくろう言辞を弄するのが,『日本経済新聞』の基本的な方針であり,いまや社是。
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