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「特別軍事作戦」の名でウクライナ侵略戦争をしかけた「プーチンのロシア」の軍事費問題-戦争という行為は経済的には浪費・濫費そのものである実例-

 ※-1 プーチンの軍隊が「特別軍事作戦」開始

 2022年2月24日であった。「ロシアのプーチン」の私兵集団みたいな軍隊が大挙,ウクライナの首都キーウめがけて侵攻しはじめた。プーチンいわくこれは「特別軍事作戦」。その彼は早ければ,3日もあればウクライナ全土を軍事的圧力をかけて占有・支配できる,その間に政府首脳はどこかへ逃亡すると事前に,勝手に判断していた。

 だがウクライナ側は,2014年にクリミヤ半島をロシアに奪われた経験を踏まえてだったが,ウクライナ軍を現代化する準備(迎撃・対戦のための)体制をそれなりに整備・構築してきた。それによって,緒戦での巧みな戦術をともなう応戦の展開をもって,またロシア軍側のあまりにも大まかに過ぎていて,過信にもうぬぼれていたこの軍事侵攻は,それ以来「本日:2024年10月8日だ」とすでに「2年と7ヶ月半もの期間」,両国はなお戦争状態をつづけている。

 「ロシアのプーチン」は,ウクライナに対するアメリカやNATOの軍事支援はけしからぬと非難したが,この「プーチンのロシア」とて,中国の裏経路による援助的な取引や,イランからの無数のドローン供与,そして北朝鮮からの兵器・弾薬を供与(ないしは調達)も,実際にはなされているゆえその規模の量的・質的な相違はあれ,どっちもどっちであって,とくにプーチンのいいぶんはいつものとおり,我田引水的にひたすら強引なド・ヘリクツのいいがかりしか吐けないでいた。

 第2次大戦のとき旧ソ連邦は,とくにアメリカからの膨大な量の軍需物資を受けてこそ,ナチス・ドイツ軍を敗退させ,しかもドイツまで反攻していくことができていた。この史実を棚に上げておき,こんどは80年も経ってあとになったが,アメリカやNATOからの軍事援助を受けて,ロシアと戦っているウクライナを盛んに非難するといったごとき,まさに腸捻転的に逆立ち的にもつれた発言する始末。

 前段のごとき第2次世界大戦中,当時の軍事物資支援を定めたのが「レンドリース法:Lend-Lease Acts)であった。または,武器貸与法と呼ぶこの法律は,アメリカ合衆国が1941年から1945年にかけてイギリス,ソビエト連邦(ソ連),中華民国(中国),フランスやその他の連合国に対して,イギリスの場合はニューファンドランド,バミューダ諸島,イギリス領西インド諸島の基地を提供することと引きかえに,膨大な量の軍需物資を供与する関係を構築した。

 このレンドリース法の実際,その概略についてはウィキペディアに説明があるが,ソ連に対する実績は,こうであった。

 a) アメリカの対ソ連援助は以下の5つの期間に分けられる。

 まず,レンドリース開始前の時期(1941年6月22日-1941年9月30日)は,金で支払っていたが,つづいてはつぎのように進展した。

第1協定期間 1941年10月1日~1942年6月30日,1941年10月1日署名
第2協定期間 1942年7月1日~1943年6月30日,1942年10月6日署名
第3協定期間 1943年7月1日~1944年6月30日,1943年10月19日署名
第4協定期間 1944年7月1日から開始され,1945年4月17日に署名され
        公式には5月12日に終了した。

レンドリース期間区分

 援助は日本に対する戦争の期間(1945年8月8日ソ連対日参戦),「マイルポスト」(milepost)合意に基づいて日本が降伏する1945年9月2日まで続けられた。そして1945年9月20日にすべての対ソ連レンドリースプログラムが終了した。

 補注)第2次大戦末期,1945年8月8日のソ連参戦は,以上のごときアメリカによる兵器の援助によって支えられていた事実を,日本側にいたわれわれはどのくらい意識しえていたか?

 b) レンドリースプログラム開始から1945年9月30日までの間に,ソ連に対して出荷された軍需物資の合計を以下の表に示すと,こう一覧できる。

  航空機     14,795機
  戦 車     7,056輛
  ジープ      51,503輛
  トラック   375,883台
  オートバイ   35,170台
  トラクター   8,071台
  銃         8,218丁(この数字は理解に苦しむ。もしかすると
               大砲の「門」ことか?)
  機関銃      131,633丁
  爆発物     345,735 トン
  建物設備   10,910,000 ドル
  鉄道貨車     11,155輛
  機関車輛      1,981輛
  輸送船       90隻
  対潜艦       105隻
  魚雷艇      197隻
  舶用エンジン   7,784基
  食 糧       4,478,000 トン
  機械と装備品 1,078,965,000 ドル
  非鉄金属      802,000 トン
  石油製品      2,670,000 トン
  化学物質     842,000 トン
  綿        106,893,000 トン
  皮 革        49,860 トン
  タイヤ       3,786,000〔本〕
  軍 靴      15,417,001 足

ソ連に対して出荷された軍需物資の合計

 なお,輸送は北極海の輸送船団,ペルシア回廊,太平洋ルートでおこなわれた。太平洋ルートはレンドリース援助のおよそ半分が運ばれ,アメリカ西海岸からソ連極東へ輸送船団で,ウラジオストクからはシベリア鉄道で運ばれた。

 アメリカの参戦後,ソ連の船舶のみがこのルートでは使われ,日本による影響がいくらかあった。アラスカとシベリアを結ぶ航空路はアルシブ(Alsib)と呼ばれ,航空機の輸送と旅客輸送に用いられた。

 第2次大戦はドイツポーランド侵攻によって,1939年9月1日にはじまっていたが,その後,1941年12月8日,日本が米英などを相手に宣戦布告したとき,アメリカと日本の国力差は基本,「10対1」もあるという事実は,日本側でも当然に知悉していた人物はいくらでもいた。

 【参考記事】-『PRESIDENT Online』2020年4月23日-


 ※-2「特別軍事作戦」だと「ロシアのプーチン」がいいわけしたウクライナ侵略戦争の実情

 a) 今日(2024年10月8日)からあと半月ほどで,2年と8カ月もの期間になる「ロシアのウクライナ侵略戦争」は,いままでのとくに「プーチンの戦争の仕方」が,いかほど非人間的・反人道的であるかを,みごとなまでバカ正直に伝える事実が,それこそ目白押しに暴露されていた。

 20世紀中の戦争・紛争であればその真実や実相はなかなか,われわれのお茶の間にまでは伝わってこなかったが,なにせいまは,ユーチューブ動画サイトがたいそう豊富にその事実・様相を,手を替え品を替えのかたちでもって,放映している。

 そうした動画のなかには,実際に兵士がドローンの直撃を受けてだが「排除される・無力化される」映像が,たくさんと出ている。従来であれば「戦場で起きている事実そのもの」はほとんど,その真相・実態がしらされないままであった。せいぜい帰還できた兵士の口から断片的に語られることしかえられなかった。

 ところがいまでは,そのすべてではけっしてないものの,相当程度にまでは「人が人を殺す場面」が,たとえモザイクがかけられた画面であっても,また,ドローンの飛行体が戦車を撃破する瞬間などは軒並みであり,ユーチューブ動画サイトのサムネイルには,その種の報告がたくさん陳列・公開されている。

 b) 先日であったが,ロシア軍の若い兵士(同軍には70歳代の兵士もいる)が,ウクライナ国内でも海域に近くになった河川の下流地域にできている中州に,どういうわけか見捨てられた状態で数ヶ月,当然,兵站からは切り離されたかっこうで,その後露営を余儀なくされていたという。

 その兵士は左足に受傷してもいてその足を引きずっていたが,ウクライナ軍の攻撃用で砲弾をかかえたドローンに発見され,そのさい,1人ぽっちに置き去りにされた「自分の救助をしてほしい」旨を紙切れに書いてかかげたところを,ドローンのカメラがこれをみて諒解の合図を返してから,そのあと追ってすぐに,ほかのドローンが水(1リットルのペットボトル2本)とビスケットの一包みを,彼のために投下してくれたという。

 ロシア軍の孤立したその兵士は,たまたま居た場所が河川下流の中州地帯であって,幸いにもそこの水が飲める程度によい水質であったことや,とくに食料についてはその地域に生息する大型のカエルを捕捉して食べていたというから,まるで昔の日本軍が南方戦線に派遣されたあと,補給を受けられなくなってからの場合と同じ状態を,彼も強いられてきたと推測する。

 その後の彼がどうなったか不詳であるが,多分,ウクライナ軍が捕虜にしまともに人間扱いしてけがも治療してやり,その後,元気になっていたと思う。だが,この彼の場合,もしも捕虜交換のリストに挙げられ,ロシア軍側にとらえられていたウクライナ軍兵士と交換されることになったら,このあとが面倒な話(人生)となる。

 いままでのロシア軍のやり方だと,彼はまたもや,最前線に放りこまれるに決まっている。この話は,現在進行中の「宇露戦争」のなかで実際に起きている「ロシア側の戦争のやり方」を敷衍しての説明である。

 c)「ロシアのプーチン」は,ロシア正教を将兵を戦場に送りだしては,しかも彼らが悠然・毅然と死ねることを正当化する「宗教的な狂信」を強いている。しかも,その主教たちは兵士に向かい,死ぬことを恐れるな,オマエたちは死んでも生き返るのだとお説教し,督戦し,戦場に送りこむ役目を果たしている。

キリル1世という名の生臭い・ロシア的なる坊主像
衣装がなかなか凝っている
なにせ神様の代理であるぞ

 神の名のもとに,「戦争行為としての人殺しと破壊の行為」を合理化する洗脳のための「戦争協力」が,ロシア正教の彼ら司教たちによって率先,実行されている「ロシアの旧教的構図」がかいまみえる。この政教一致の構図のなかに浮刻されている宗教国家思想は,まるいで靖国神社の国家思想それに近似している。

 また「ロシアのプーチン」は,「ロシア」という国家体制のなかでその「連邦」を構成する各共和国から兵士を動員するさい,「死ぬことを恐れるな,国のために死ぬことはヨイことだ」だと,日本でも大昔はやっていた文句を「自分は除外しての話」であったが,国民たちには押しつけがましく説いていた。

 この「ロシア連邦が世界にまれにみる多民族国家」である国内事情を反映して,つぎのように大別されている。つまり,日本語の「ロシア人」という単語には区別はないものの,実は,ロシア語にはまったく違った意味あいをもつ2つの「ロシア人」という単語があり,現在のロシアでは両者は明確に区別されている。

 ▼-1 ロシア人(男)= Русский [ルースキー],民族名としてのロシア人(ロシア民族のみ)

 ▼-2 ロシア人(男)= Россиянин [ラシヤーニン],ロシア国民としてのロシア人(多民族国家ロシアを構成する全民族)

ウクライナとロシアを跨いで血縁者や親類関係にある人びとは大勢いる

どういうことかというと,「プ-チンによるウクライナ侵略戦争」は,とくに▼-1の,いわば「ロシア民族」に対する「戦争動員」は,なるべくあとまわしにしてきた。つまり▼-2のロシア人(非ロシア民族)に分類されている諸民族を,優先的に動員してきたのである。

 その事実は,すでに各共和国側から不満や不平が提示されている事実からも理解できる。プーチンは,自分に対する国民たちの支持を失うことを非常に恐れている「強権・独裁政権」でもあったゆえ,つぎのような報道にも観られる人口統制政策を採るつもりである。

左下の記事は参考まで

 しかも,オマケにではなくて,プーチンは「国勢調査 ロシア全土を対象とした国勢調査を10年ぶりに実施へ」『ジェトロ(日本貿易振興機構)』2019年12月18日,https://www.jetro.go.jp › biznews と報道されていた点に関係しては,

 ロシア「連邦政府は12月9日,2020年10月にロシア全土で国勢調査を実施する連邦政府決定(2019年12月7日付第1608号)に署名したと発表した」といっていたけれども,直近になると(これは2024年10月段階になってから初めて聞けた話であるが),その結果は一般には公表しない方針に決めたというのだから,なにやらよほど都合の悪い事実をかかえるようになったに違いあるまい。

戦争の負担に追いこまれているプーチン的内情例示

 d)「ウクライナ侵略戦争」での戦死者

 以前,日本人で自衛隊出身のある人が義勇兵としてロシア軍に参加していたが,この人が戦死したというニュースがあった。また,2024年10月6日時点では,砲撃を受けたロシア軍のなかに北朝鮮の将校6名が死んだという報道もなされていた。

 註記)「北朝鮮士官6人,ウクライナで死亡 現地報道」『日本経済新聞』2024年10月5日 18:50,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM052HE0V01C24A0000000/

 プーチンはウクライナ侵略戦争の当初,支配下に置いた地域から万人単位でこどもたちを誘拐し,ロシア人家庭に送りこみロシア人として育てさせようとしてきたるが,これは完全に子どもの人権侵害である。

 戦争開始からすでに2年と7ヶ月半が経過したいまであるから,その対象にされたウクライナ側の子どもたちは,かつてのナチスによる「金髪で青い眼」の子どもを選んでだったが,東欧地域の諸国からさらい,ドイツ国民の養子にして育て,ドイツ民族の純粋遺伝子確保に資させたといったごとき,根本から欺瞞・虚偽であった「プーチン版的な再生産行為」になっている。
 
 また,今回のウクライナ侵略戦争で新たに占領した地域からは,とくに強制動員のかたちでウクライナ人を徴兵し,ウクライナ軍(自国の軍隊)と戦わせるという非理・不合法の選択肢まで強行しようとしている(すでにしているか?)。

ウクライナ側にしてもロシア側にしても正確な統計は把握しかねるが
すでに両国での犠牲者(死者および重度負傷者)の数は
総計で100万人に達したと見積もることもできる

 ところで,「クライナ戦争,両軍の死傷者50万人に迫ると米当局者推計」『REUTERS』2023年8月19日午前 2:26,https://jp.reuters.com/world/us/F6BJHVCPYFOH3CUG6VCW6ABJ3I-2023-08-18/ という報道内容に則して判断するに,

 その後,1年以上経った戦況推移に照らし推測する場合,2024年10月段階での話としておおまかに判断するほかないが,この2倍程度にまでは増えているとみてもよく,「両軍の死傷者は100万人に迫った」と受けとめて大きな狂いはあるまい。


 ※-3 元KEGB職員ウラジミール・プーチンは嘘しかつかない国家最高指導者

 a) 1年前の2023年10月11日に発売されていた井上寿一『戦争と嘘』(ワニブックス)は,「嘘はつきものだ」というよりは,事実そのものを嘘あつかいできるプーチンの〈嘘つき常習犯性〉に深く関連する議論を収めた本である。

 同書の宣伝になってもいるが,いいたい要点は,以下に引用する諸点でもよく説明されうると受けとめ,以下に同書の紹介としておきたい。

 日本政治外交史を専門とする学習院大学元学長が,満州事変~日本の敗戦にいたるまで,〔その〕〈嘘をめぐる政治の歴史〉をたどる。

 流言飛語(デマ),プロパガンダ,広報外交,新聞,雑誌,ラジオ,ポスター,ビラ,怪文書……。嘘をつく方が不正義とは限らない!

 (本文より)
 戦争をめぐる嘘は国家を崩壊に導きかねない。
 実際のところ戦前昭和の日本は崩壊した。

 戦争をめぐる嘘が及ぼす重大な影響は,時代が異なっても変わらない。
 そうだとすれば,今日の軍事紛争・戦争を考えるさいに,
 日本の戦争の嘘をめぐる歴史から重要な示唆をうることができるだろう。

井上寿一『戦争と嘘』の主旨

 b)「『特別軍事作戦』から『本物の戦争』」に プーチン大統領が演説で侵攻正当化 旧ソ連7か国首脳招くも “同床異夢” か【解説】」『TBS NEWS DIG』2023年5月9日 (火) 22:32,https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/477042

〔2023年5月9日〕モスクワ「赤の広場」でおこなわれたロシア・プーチン大統領の演説のポイントについて解説します。

 プーチン大統領は演説のなかで「われわれの祖国に対し本物の戦争が開始された」と述べ,これまで「特別軍事作戦」と称していたウクライナ侵攻について「本物の戦争」という言葉を使いました。

 ただ,あくまで西側諸国からしかけられたもので,西側は「ロシアの崩壊を求めている」と主張し,ウクライナ侵攻を祖国を守る戦いと位置づけて正当化するとともに,侵攻を継続する姿勢を示しました。

 補注)このいいぶんは「嘘が本当は真実なのだ」というリクツの倒錯性を,本当に成就させていたプーチンの無自覚の虚言癖を,くまなく表明していた。確かに西側は「ロシアの崩壊を求めている」から,ウクライナを軍事支援している。だが,この事実を即,ロシアが「ウクライナ侵攻を〔から〕祖国を守る戦い」になるのだ,というド・ヘリクツを誘出できるプーチンの感覚は,他者の側にあっては全然理解できない。

〔井上寿一の本の解説に戻る⇒〕 旧ソ連がナチスドイツを破り「大祖国戦争」と呼ばれる第2次世界大戦と侵攻を重ねあわせ,国民の団結を呼びかけたかたちです。

 補注)ロシアがウクライナ侵略戦争の最中であっても,その「大祖国戦争」と呼んだ第2次世界大戦の勝利体験と重ねあわせたい意向を,いつものように強調する立場は,その「成功体験」の万能性を信じられるがゆえであった。

 だが,現在のウクライナ側の立場は,そのロシアが昔の戦争において意味づけた同義でもって逆に,このロシアと戦っている。しかも,手強い相手となって継戦している。ウクライナはしかも,このたびの「宇露戦争」の舞台においては,戦争の形態に新たな戦術方法をくわえた。

 いうまでもないがそれは,多種多様なドローン兵器の積極的な活用であり,また旧来型の諸兵器の復活的な再生・利用も,あらためて認識させる事態まで起こしていた。ロシアは,米欧諸国の支援を受けた戦うウクライナ側の戦意・士気を当初からみくびっていた。

 プーチンは,2022年2月24日のウクライナ侵攻は早ければ,簡単に3日で片づくとまで慢心していた。しかし,結局は今日の2024年10月8日になってもまだ終結できていない。プーチンは諜報部員であって軍人ではないせいか,戦争のやり方の本当のところに関しては,疎い面を残していた。

〔記事に戻る→〕 一方,ロシアが先週3日に発表した「プーチン氏を狙ったウクライナ側のテロ行為」とするクレムリンへのドローン攻撃については,直接の言及はありませんでした。

 今回,ベラルーシやカザフスタンなど旧ソ連諸国7か国の首脳が式典に招かれました。

 ロシアとしては孤立していないとアピールする狙いがあるとみられますが,カザフスタン大統領がこれまでにウクライナとの「和平を模索する時だ」と述べるなどロシアと距離を置く発言も出ていて,いわば同床異夢の側面も指摘されています。


 ※-4 政治体制のロシア政治経済-戦争が国家の弱体化を招来する-

  a)「ロシア軍事費21兆円規模へ 2025年予算案 歳出の3割 『戦勝』へ全力」『産経新聞』2024年10月1日 09:22,https://www.sankei.com/article/20241001-U4JTMZND3FK2PLSRJX4YZJFUJY/

 ロシア政府は〔2024年〕9月30日,2025年の国家予算案を下院に提出した。タス通信などが伝えた。兵器調達や軍隊運営などに充てる軍事費には,2024年予算の約 1. 3倍となる13兆5千億ルーブル(20兆8600億円)を計上。軍事費が国内総生産(GDP)に占める割合は約 6. 3%となり,過去最高を更新した。軍事費は歳出全体(41兆5千億ルーブル)の約3分の1を占めた。

 ロシアの軍事費はウクライナ全面侵攻を開始した2022年に4兆7千億ルーブル,2023年に5兆ルーブル,2024年に10兆4千億ルーブルと右肩上がりに増加。軍事費がGDPに占める割合は侵攻前,3%台後半~4%台前半にとどまっていた。軍事費の増加に応じて教育や社会保障への支出は削減傾向が続いており,ロシアは国力を挙げて「戦勝」を達成する構えだ。

【参考資料】-ロシア軍事予算2025年までの見通し-

この「軍事支出の対歳出比」は
2025年に30%未満に収まりそうには思えない

〔記事に戻る→〕 軍事費増大の背景には,ウクライナの戦場で死傷する兵士が増大するなか,露国防省が高額報酬を約束した契約兵による兵力補充を進めていることや,戦死者の遺族や負傷兵らに支払う見舞金の増加などがあるとみられる。

 2025年予算案では,軍事費と,国内治安対策や諜報などに充てる国家安全保障費を合わせた国防関連費に計16兆7千億ルーブルを計上。国防関連費が歳出全体に占める割合は約4割に上った。歳入は40兆3千億ルーブルとし,赤字分は国債発行など借入金で賄う。

 この※-4に引照した記事は2024年10月1日付きであったが,次段には,これよりも約11月ほど以前のつぎの記事も引用しておきたい。

 b)「ロシア国防費 68%増,初の社会保障費超え… ウクライナ侵略長期化」『読売新聞』2023年11月21日 08:47,https://www.yomiuri.co.jp/world/20231121-OYT1T50001/

  ★ 下院で予算案可決 ★

 ロシア議会下院は〔2023年11月〕17日,2024年の政府予算案を可決した。国防費は前年比68%増の10. 8兆ルーブル(約18兆円)に膨らみ,社会保障費を初めて上まわった。治安対策などを含む国防関連予算は歳出全体の約4割を占め,ウクライナ侵略の長期化をみすえたものとなった。国防予算への傾斜は,長期的に経済への悪影響を招くとも指摘されている。

国防予算は長期的には経済に悪影響

 露政府紙のロシア新聞によると,17日の議会ではプーチン政権を支える与党「統一ロシア」の議員が「国家の主権を守り,(ウクライナ侵略のロシア側の呼称である)『特殊軍事作戦』の参加者や家族を支援する予算だ」と語った。予算案は上院で審議後,大統領の署名で成立する見通しだ。

 発表によると,歳出は36. 7兆ルーブル(約62兆円)。国防費は国内総生産(GDP)の6%に当たる。治安対策などの国家安全保障費 3. 4兆ルーブルを合わせると,国防関連費は 14. 2兆ルーブルとなり,歳出全体の39%を占めた。国防費の詳細は非公表だが,露メディアによると,人件費や兵器の購入,軍需産業の近代化のほか,負傷兵や死亡した兵士の家族への対応にもあてられる。

【参考資料】-戦時体制期日本の軍事予算推移,3割を超えたら本格的な戦争遂行国家体制発進への合図が発せられたも同然-

とくに太平洋戦争中はインフレ傾向がひどく高潮していった

 c)「 “ロシア 年間国防予算 当初の約2倍に” 軍事侵攻長期化影響か」『NHK NEWS WEB』2023年8月8日 5時45分,https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230808/k10014156751000.html

 ロシアはウクライナへの軍事侵攻で軍事費が増大しているとみられ,ロイター通信は年間の国防予算が当初のおよそ2倍に膨らんだと伝えています。プーチン大統領は企業への追加課税の法律を成立させ,税収確保を急ぎたいものとみられています。

 ロイター通信は,ロシアのことしの国防予算が,当初のおよそ2倍にあたる9兆7000億ルーブル,日本円にして14兆2000億円余りに膨らんでいると今月4日に伝えました。

 これは,国家予算全体の3分の1を占める規模だとしています。その結果,学校や病院,道路などに使われる予算が削減されているとも伝えています。ロシアはウクライナへの軍事侵攻が長期化していることで軍事費が増大しているとみられています。

 また,G7=主要7か国などがロシア産原油に上限価格を設ける制裁を発動したことで,ロシアは石油輸出によってえられる収入が減少していると,アメリカ財務省は分析しています。

 こうしたなか,プーチン大統領は,企業への追加課税をこなうための法律に〔2023年8月〕4日付けで署名し,成立させました。この法律ではエネルギー関連などを除いた企業を対象に,利益に10%を課税する内容となっています。

 支払いの期限は来〔2024〕年1月28日ですが,今〔2023奇異年11月末までに納めれば税率を5%にするとしていて,ロシアの有力紙「コメルサント」は「政府は税金をなるべく早く受け取りたがっている」と伝えています。(引用終わり)

 結局,このように報道された方途に向かい,現在まさに「戦争国家」体制まっただ中にあるロシアとあいなっている。


 ※-5「焦点:ロシア,『教育・医療費』削って国防・治安予算を増額」『REUTERS』2022年11月28日午後 2:01 ,https://jp.reuters.com/article/world/-idUSKBN2SF08P/

 ロシアは来年度予算の3分の1近くを国防と国内治安関連に費やす予定だ。ウクライナにおける軍事作戦の維持に資金を回すため,学校や病院,道路に割り当てられる予算は削減される。

 ロイターの予算分析によると,ロシア政府は国防・治安関連に合計9兆4000億ルーブル(約21兆5000億円)を支出することになる。来年は2024年大統領選挙におけるプーチン氏の再選につながる重要な年だが,他の優先課題は圧迫される形だ。

 ロシア連邦捜査委員会,検察庁,刑務所,ウクライナに派遣されている国家警備隊の活動を含む治安関連予算だけでも,2022年に比べて,50%増加する。

 ロシア政府としては記録的な規模の国防・治安関連予算になるが,金額じたいは,米国の来年度国防予算および国土安全保障のニーズの一部(すべてではない)を満たすための予算に比べれば,約18%に過ぎない。

 独立系のアナリストであるアレクサンドラ・ススリナ氏は,「国家予算が軍事作戦の資金を捻出する手段になっている」と語る。「年金や教育関連の予算も増額されているとはいえ,ロシアが本来やるべきことに比べれば見劣りがする。10年来の問題が未解決のままだというのに」(引用終わり)

 戦争をしている国でもないのに,防衛予算をすでに5年間かけて倍増するということを決めていた日本も存在している。それも,自国のためではなく,アメリカ政府や軍産複合体を富ますための予算枠の設定であった。岸田文雄政権が垂れ流した極悪なる作品のひとつであった。

アメリカインド太平洋軍の褌担ぎが日本の防衛予算を組む目的ではあるまい
相も変わらず属国精神満載の防衛省自衛隊


 ※-6 岡田美保「ロシア・ウクライナ戦争のコスト-2023~2025年連邦予算案を中心に-」,公益財団法人日本国際問題研究所『研究報告 「大国間競争時代のロシア」(令和4年度 ロシア研究会)』2023年3月24日,https://www.jiia.or.jp/research/JIIA_Russia_research_report_2023.html

 以下は,上掲稿の3.「2023-2025年予算及び予算計画法案」から。

(1)歳出:国防費のピークは 2023 年

 ロシア・ウクライナ戦争が続くなか,2022年9月22日の閣議でロシア政府は「2023年連邦予算及び 2024-2025 年連邦予算計画法案」の検討を開始した。同法案は,11月24日に下院,同30日に上院で可決され,12 月5日にプーチン大統領により署名された。

 2023年の国防費は約5兆ルーブルとされ,国防及び国家安全保障・法執行予算とを合わせると,ロシア政府は国防・治安関連費に歳出の31.6%(9兆2000億ルーブル(約21兆5000億円))を支出することになる。

 また,国防費のピークは2023年に設定されており,その後逓減が計画されている一方で,国家安全保障・法執行予算は2023年一挙に 1. 5倍増額されたのち,さらに増額されて高止まりとなる計画である

(参照:表 2「ロシア連邦予算歳出(2021-2025年)内訳(兆ルーブル)と軍事支出の対歳出比(%)」)。この表2については,場所がずれることになったが,※-4でさきに参照した。

 国防費の細目は,ごく一部しか公開されていないため,いかなる費目が国防費を押し上げているのかの特定は困難であるものの,この予算法案は,(予定どおりに運べば)2024年に実施される大統領選挙をふまえ〔プーチンは再選されていた〕,現政権が,戦争のピークを2023年,戦争への反対運動の抑えこみや支持票の動員を2023年から2024年と想定していることを示唆している。(引用終わり)

 さて以上のようにプーチンがもくろんだ「宇露戦争」は,それほど順調には運んでおらず,とりわけ,ウクライナ軍が北部でロシアに接する地域のうち「ロシアのクルスク州へ侵攻した経緯」は,ロシアのウクライナ侵攻下の2024年8月6日にウクライナが始めた,「ロシア西部クルスク州への越境攻撃」として,プーチンには衝撃を与えた。

 またプーチンは,2024年10月1日を期限に切って,その「ロシアのクルスク州へ侵攻したウクライナ軍を押し戻す」ように命令したが,本日(10月8日)時点になってもまだ実現されていない。彼の立場としてはこの事実にはなるべく触れないしか「残された手はない」のかもしれない。

 最後に,この「ウクライナ軍による」「ロシアのクルスク州へ侵攻した経緯」に関しては,もちろん,軍事専門家たちがあれこれ論評していた点のみ付言しておく。

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