
安倍晋三のアベノミクスが壊してきた日本の政治と経済,世襲3代目の政治屋が残した実録
アベノミクスはただ,ダメノミクスであった。アベノポリティックスは,ひたすら最悪でしかなかった。安倍晋三という「世襲3代目の政治屋」が「この国の政治と経済」を破壊しまくってきた。そして現状は?
付記)冒頭の画像は「秘蔵写真で振り返る『政治家・安倍晋三』の軌跡」『JBPress』2022年7月11日,https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70925 から借りた。
総務省統計局の「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)3月分(2023年4月21日公表)」https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html は,こう報告していた。
《ポイント》
(1) 総合指数は2020年を 100として 104.4
前年同月比は 3.2%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は 104.1
前年同月比は 3.1%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く
※-1 「国民総所得『10年で150万円増』のはずが… たった半分 アベノミクス初期の政府目標は達成困難に」『東京新聞』2023年4月21日 06時00分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/245306
政府が2013年6月にまとめた「日本再興戦略」をめぐり,1人当たりの名目国民総所得(GNI)を「10年後に150万円以上増やす」とした目標の達成が困難となった。
目標額の半分しか届かない見通しで,生産性や賃金が上がらない日本経済の停滞を示す。岸田政権は,安倍政権の経済政策「アベノミクス」の教訓を生かし,低成長から抜け出す道筋を描けるかが問われている。

国民総所得(GNI)とは,「国内」で生み出された付加価値に着目したGDPに,「国民」という概念を用いて個人や企業が海外から受けとった利子や配当をくわえた統計。これを人口で割ったのが1人当たりGNI。企業の所得も含むため,家計の収入そのものを意味するわけではない。日本企業のグローバル化が進んで海外での稼ぎが膨らみ,GNIとGDPの差は広がっている。
2012年末に発足した第2次安倍政権は,再興戦略に民間投資の活性化や成長分野の開拓,海外市場の獲得などの施策を盛りこみ,国内総生産(GDP)を10年間の年平均で名目3%,実質2%伸ばすと明記。そのうえで,GNIは1人当たり150万円増をかかげた。
GNIは国内で生産されたモノやサービスの価値総額を示すGDPに,日本人や日本企業が海外で稼いだ所得をくわえた指標。名目で2012年度は514兆円,1人当たり403万円だった。
2022年度の実績はまだ公表されていないが,政府予測で595兆円,1人当たりで換算すると477万円程度になるみこみみ。10年間の伸びは75万円ほどにとどまる。
政府が「十分可能な数字」(内閣官房)としていたシナリオ実現には,当時から懐疑的な見方も強かった。企業業績や雇用情勢は改善したものの,消費税率引き上げやコロナ禍などもあり,名目GDP成長率が3%に達したのは2015年度だけ。経済の実力を示す潜在成長率は10年間で0.9%から0.3%に下がった。
産学の有識者でつくる「令和国民会議(令和臨調)」は〔2023年〕1月末に発表した提言で経済停滞の責任は民間にあるとしたうえで,「政府は景気刺激のための歳出拡大を優先し,成長力の向上に不可欠な構造改革や規制改革を先送りしてきた」と指摘。
金融政策,財政政策と並ぶアベノミクスの「三本の矢」に位置付けられた成長戦略の効果が限定的だったとみる。(引用終わり)
ここでは2年前の8月時点に戻るが,同じ『東京新聞』がある記事に出していた関連の図表を紹介しておきたい。ここで注意したいのは2016年に,当時の安倍晋三はGDPを膨らませて発表できるように操作することを指示した「事件」が記録されていた点である。その分も勘案したところで,まだまだどうしても,ぱっとしない数値の推移を記録していた。



以上のうち3つめの2022年7月時点の統計図表,「2014年から急上昇の『エンゲル係数』が高止まり 食品価格高騰で『やむにやまれず食費が増えた』」『東京新聞』2022年7月4日 06時00分,https://www.tokyo-np.co.jp/article/187367 は,なにを物語るか。
岸田文雄が政権に就いた2021年10月4日においては,すでに「ロシアのプーチン」によるウクライナ侵略戦争が始められていた。事後,この戦争の影響を受けて発生した「エネルギー需要の逼迫」が懸念され,重大な関心が向けられるようになった。とりわけ,世界経済全体に対するその悪影響は,インフレ模様が急進する事態として懸念された。
そのインフレ上昇傾向は,アベノミクス(アホノミクス)が経済政策として実施されていた時期であれば,大いに期待されたはずのものであった。しかし,その傾向は実際のところ,リフレ2%といった政策目標に据えたインフレ率など,簡単に吹っ飛ばすほど高い水準になっていた。
※-2「アベノミクス失敗後の日本経済」『植草一秀の「知られざる真実」』2023年4月19日,http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2023/04/post-570450.html
植草一秀は以前より,アベノミクスの空虚さをつとにとりあげ,批判をくわえてきた経済学者である。ここでは,この2023年4月19日の記述を紹介したい。説得力ある分析である。連番の a),b),c)……は,引用者が付した。
a) 日本経済の停滞が続いている。2012年12月に政権交代があり,第2次安倍内閣が発足した。安倍内閣は金融緩和,財政出動,構造改革を訴え,日本経済を成長させると訴えた。
金融緩和,財政出動,構造改革を柱とする政策を安倍内閣はアベノミクスと呼んだ。アベノミクスによって日本経済を成長させると意気ごんだ。経済成長によって経済活動の生み出す果実=パイが膨らむとした。
増大した果実が最終的に労働者の手元にまでしたたり落ちる「トリクルダウン」が唱えられた。
補注)そのトリクルダウンというはかない夢は,基本から失敗した。以下の画像資料に説明させる。

もとより,アベノミクスの虚構性に関することがらであったゆえ,以上のごときトリクルダウンが起こりうる可能性は,はじめからありえなかった。
〔記事に戻る→〕 ともかく,その目論見は失敗に終わった。そうこう唱えているうちに日本経済は,まともに成長できず,労働者の賃金所得は減少しつづけた。
2013年1-3月期から2022年10-12期までの実質GDP成長率(前期比年率)の単純平均値は 0.8%。
2009年10-12月期から2012年10-12月期までの実質GDP成長率単純平均値は 1.6%。
後者は民主党政権の時代である。
民主党政権時代に東日本大震災およびフクシマ原発事故が発生。日本経済は闇に包まれていた。この期間の成長率平均値が1.6%であったのに対し,アベノミクス始動以降,現在までの成長率平均値が0.8%である。
b) アベノミクス以降,日本の経済成長率は民主党政権時代から半減した。文字どおり,暗闇の日本経済が続いている。このなかで,日本の労働者の実質賃金は減りつづけた。
1人当たり実質賃金指数(現金給与総額)は2013年から2022年までの9年間に5.9%も減少した。日本は世界最悪の,実質賃金減少国である。

2012年から2017年までの5年間に法人企業の当期純利益は2.3倍に激増した。アベノミクスで潤ったのは大企業利益だけだった。経済全体が成長しないのに大企業利益だけが倍増した。
その背景は労働者への分配所得が減ったこと。経済が成長しないのに,経済活動の果実の分配において資本の取り分を増やせば労働者の取り分は減る。だから,労働者一人当たりの実質賃金が激減した。
安倍首相は「雇用が増えた」ことをアベノミクスの成果だと主張したが,増えたのは働く人の数だけだった。労働者全体の分配所得が減ったなかで,その減った分配所得を分けあう人数だけが増えた。
その結果,1人当たりの実質賃金は激減した。当然の結果であり,これを経済政策の成功事例とするわけにはいかない。
それでも,近いところでは2021年5月には1人当たり実質賃金が前年比で3.1%の増加を示した。久しぶりに,実質賃金前年比増加率が高まった。
c) ところが,本〔2023〕年1月の実質賃金前年比変化率はマイナス4.1%まで落ちこんだ。消費税増税が実施されたわけでもないのに,実質賃金が激減してしまった。最大の背景はインフレ亢進だ。

本〔2023〕年1月の消費者物価上昇率が前年同月比4.4%上昇を示した。日本でも本格的なインフレが発生してしまった。
インフレは庶民にとって災厄でしかない。インフレ分だけ実質賃金は目減りする。虎の子の預金もインフレが生じるとインフレ分だけ目減りしてしまう。
インフレを喜ぶのは資本である。インフレになれば給料を引き下げなくても実質賃金が減少する。企業の負担は軽くなる。インフレになればインフレ分だけ企業の借金は軽くなる。
つまり,インフレは資本に利益を供与し,労働者=消費者=生活者に苦しみを与える経済現象なのである。したがって,日銀はインフレ抑止に軸足を置かねばならない。
d) ところが,日銀の黒田総裁は最後までインフレ率上昇を推進した。その黒田日銀がようやく終焉し,植田日銀の政策運営が始まる。今後の適切な経済政策運営が求められている。(植草一秀の引用終わり)
以上のごとき植草一秀の分析・観察・批判は,つぎの図表(経済統計)をもって裏付けられる。アベノミクスだとか自称したトンデモノミクスの本性が,じっくり伝わってくるはずである。

安倍晋三の第2次政権時に発走させられたアホノミクスの本質は,つまるところ,庶民の日常における経済生活を踏んだり蹴ったりだけすることには長けていたが,それ以外に国民たちの大多数の人びとのためになる施策は,なにひとつ存在しなかった。
【参考画像】-とくに以下の2点-


安倍晋三のあとを継いで首相になった菅 義偉はなかでも,「公助・共助・自助」といった組み合わせのことばもちだし,この3つなかで国民たちが一番大事にし,優先すべきことがらは「最後の〈自助〉」だといってのけた。
つまり「公助⇒共助⇒自助」ではなく「公助←共助←自助」だと,よくこころえよと強弁したあげく,国家が本来果たすべき経世済民の基本路線は,なんの恥じらいもなく堂々と否定した。
換言すれば,国民たちはまず第1に「自助(1人ひとりの役割)」を最優先しているべきであり,それでも無理があれば「共助(地域の役割)」に期待してもいいが,「公助(行政の役割)」 は最後の最後までとっておけ,という屁理屈が,一国の最高指導者の口から強調されていた。
それゆえ,庶民たちの生活状況,その実態となるや こうなってきた。安倍晋三の第2次政権だけが,ここに枚挙されている各国の平均水準に比較して置いてけぼりになった。

つぎに「エンゲル係数」の国際比較があり,変化に富んだ事例が紹介されている。

さらに,エンゲル係数を世帯人数別に追跡した図表を紹介しておきたい。

つぎの図表は,法人税「減」の穴埋めに充てられてきた消費税「との相関性」を描いている。


上の画像資料は,「【山本太郎】この選択をできる人だけが勝ち組になれます。野党が自民党に勝つには経済政策でしか勝ち目がありません。」『YouTube』2023年4月22日の動画から,切り出したひとコマである。
なお,この画像のもとのその動画 ⇒ https://www.youtube.com/watch?v=dG8ImdIMLqY の視聴を勧めておきたい。
※-3 2023年3月段階-日本経済の状況は,かつてのアベノミクスの大失政を裏返したがごとき「国民経済の修羅場」を迎えた
『日本経済新聞』2023年4月21日夕刊「消費者物価 3.1%上昇〔2023年〕3月,電気代抑制でも高水準 食料品の値上がり続く」という記事は,つぎのように〈解説〉していた。

総務省が〔4月〕21日発表した3月の消費者物価指数(CPI,2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が 104.1となり,前年同月比で3.1%の上昇だった。政府による電気・ガス料金の抑制の一方で,食料品を中心に生活必需品の値上がりが続き,伸び率は前月と横ばいだった。19カ月連続のプラスで,高水準の上昇幅が続いている。
伸び率が横ばいになるのは2022年5月以来,10カ月ぶり。上昇率は QUICK が事前にまとめた市場予想の中央値(3.1%)と同じだった。日銀の物価目標である2%を上回る状況が続く。生鮮食品を含む総合指数は前年同月比3.2%上昇で,プラス幅は2月から0.1ポイント縮小した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前〔2022〕年同月に比べて3.8%上がった。上昇率は2月から0.3ポイント拡大した。消費税導入時の伸び率を上回り,1981年12月以来,41年3カ月ぶりの水準となった。
品目別では,電気代などの「エネルギー」は前年同月から3.8%低下した。2月は0.7%の低下だった。政策効果で下落幅が拡大した。電気代は8.5%低下(2月は5.5%低下)だった。都市ガス代は10.0%の上昇(2月は16.6%の上昇)で伸び率が縮んだ。
宿泊料は0.6%の低下と,2月の6.1%低下から下落幅を大幅に縮めた。政府の観光促進策「全国旅行支援」の効果が続く一方で,3月は新型コロナウイルス禍からの経済社会活動の正常化が進み観光客が増え,上昇圧力が高まった。
総務省の試算では,電気・都市ガス料金の抑制策と全国旅行支援を合わせた政策効果は,生鮮食品を除く総合の前年同月比伸び率を 1.2ポイント押し下げた。単純計算すると,政策効果がなければ前年同月比で4.3%の上昇だったことになる。
生鮮を除く食料は8.2%の上昇で,1月(7.8%上昇)から拡大した。外食(6.9%)や鳥インフルエンザの影響による鶏卵(29.4%)の上昇が目立つほか,原材料価格や運送費の上昇で調理食品(8.9%)もプラスが続く。
同日発表した2022年度の生鮮食品を除く総合指数は103.0で,前年度から3.0%上昇した。ロシアによるウクライナ侵攻を受けた電気代などの上昇や食料品などの物価高で,上昇率は1981年度の4.0%に次ぐ41年ぶりの水準となった。(引用終わり)
--安倍晋三君の自称アベノミクスが,いかほど,アホノミクスでダメノミクスでウソノミクスでしかなかった「その事実」は,当初からとくに浜 矩子同志社大学教授が,それこそ罵声を浴びせる勢いで批判し,強調していた。
だが,アベノミクスはそれでも,目の前にみえる悪路に向かってドンキホーテ顔負けの勢いで突入した。結果はご覧のとおりであった。「ロシア」がウクライナにしかけた「特別軍事作戦」の余波が,経済的な大津波のごとく日本にも押し寄せてきた。
ところが,最近,生活保護費の給付水準に関した裁判所が,つぎのような判断を下していた。この国は裁判官たちの脳内の神経系統がだいぶねじれている。
※-4 生活「保護費」と国家予算「予備費」
★ 生活保護費引き下げ取り消し認めず
初の2審 受給者逆転敗訴 ★
=『NHK NEWS WEB』2023年04月14日 17時36分,https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20230414/2000072834.html 冒頭段落のみ引用 =
生活保護の支給額が段階的に引き下げられたことについて,全国各地の受給者らが取り消しを求めている一連の裁判で初めての2審の判決がいい渡され,大阪高等裁判所は,引き下げを取り消した1審とは逆に,受給者の訴えを退けました。
これまでの地裁の19件の判決のうち,引き下げを取り消したのは9件で司法判断が大きく分かれています。
生活保護の支給額を,国が物価の下落などを反映する形で2013年から2015年にかけて最大で10%引き下げたことについて,受給者らが最低限度の生活を保障した憲法に違反するなどと主張して,国や自治体に対して支給額の引き下げの取り消しなどを求める訴えを全国29の都道府県で起こしています。(後略)
もしかすると,一般的に労働者たちの賃金水準が低下(低迷?)しているから,生活保護の支給額も下げてよい(!)という裁判所側の判断なのか?
だいたい,生活保護水準の賃金に近い報酬しか受けとれない労働者層もいないわけではない「この国」であったから,この関連で起こされた裁判じたいが,悲喜劇的な様相を呈していた。
余談となるが,ちなみに,裁判官の報酬月額は,つぎのとおりである。
区分 報酬月額(円)
判事1号 1,175,000
判事2号 1,035,000
判事3号 965,000
判事4号 818,000
いまの日本は本当に,本当の貧しい国になったものである。政治が4流の「世襲3代目の政治屋」体制の国家であったが,経済は3流そのものになりはてており,「息をするだけで精一杯のように貧困な労働者層・生活層」が大勢いる。
だから,「最低賃金法9条3項は,生活保護の施策との整合性を考慮要素に最低賃金を定めるよう求めているが,最低賃金として生活保護費を時給換算した836円を下回る時給を設定したことは,同項違反を疑われても仕方がない」といったきわめて低水準の議論が,裁判所の舞台でまかり通っている国:日本になっていた。
2023年の春闘があった。しかし,一部の大企業に勤務する正規雇用の労働者群にのみ話の通じる賃上げ「闘争」であった。連合という労働組合の上部団体は,いまや自民党の友好的連帯性ならば,りっぱに誇れるような,実に奇怪な「〈労働者の味方〉である立場」に転落している。
それでいて,「コロナ禍」のために国家予算にやたら予備費が積み上げられてきた経緯を奇貨として,岸田文雄がこの予備費を悪用する姿勢が最近あらわである。
つぎの予備費に関する『日本経済新聞』の時期を引用しておく。
◆ 予備費とは 使い道は閣議で決定 ◆
=『日本経済新聞』2022年4月23日 2:00,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA226880S2A420C2000000/ =
予備費〔とは〕自然災害や急激な景気悪化といった不測の事態に,政府が柔軟に対応できるよう使い道をあらかじめ定めずに毎年度の予算に計上する費用を指す。災害などに備える一般的な予備費は年3000億円前後で推移していたが,近年は5000億円の計上が定例化している。
東日本大震災や新型コロナウイルス対応などに特化した予備費を別枠で確保することもある。コロナ対応予備費は2020年度春以降の補正予算で計9.65兆円を積み,2021~22年度も当初予算で5兆円ずつを計上するなど異例の規模に膨らんだ。
政府は4月中に取りまとめる物価高の緊急対策の原資として,2022年度予算に積んだコロナ対応などの予備費5.5兆円の一部を充てる。
具体的な使い道は予算成立時に決まっておらず,政府が閣議で決める。財政法は「予見しがたい予算の不足に充てるため,内閣は予備費として相当と認める金額を歳入歳出予算に計上することができる」と定める。
使い道の事前議決が義務づけられている一般の政策経費と異なり,国会の監視が及びにくく「財政民主主義に反する」との批判は根強い。乱用が進めば「政府の便利な財布」となりかねない。
ところで,厚生労働省が雇用調整助成金(雇調金)として設けた「新型コロナウイルス対策特例」をめぐっては,不正受給した企業が続出した。また, 14兆円超の税金が国会を経ずに使われた “コロナ予備費” であったことから,コロナ対応にあたった病院にも多く支出されたものの,適切に使われていない実態はいくらでもあった。
最後に『日本経済新聞』朝刊連載の「コラム 大機小機」から,2023年4月21日に寄稿された「植田日銀総裁に問うべき10年」が,アベノミクスの不全性を批判したくだりを引用しておきたい。
(前略)
世の中が関心をもち,またいま検証されなければならないのは,過去25年ではない。2013年に始まり〔2023〕4月8日まで続いた黒田東彦総裁のもとでの,過去10年の金融政策である。
なるほど時間は連続的に流れているから,過去はいくらでも遡ることができる。自然は飛躍を好まない,という言葉もある。しかし黒田前総裁のリフレ策はまさに飛躍だったのだ。
リフレの理論的根拠となったのは,「期待」で武装された現代版の貨幣数量説である。貨幣数量説は古い学説だが,1933年大みそかのニューヨーク・タイムズ紙に発表されたルーズベルト大統領宛ての公開書状で,ケインズは貨幣数量をズボンのベルトに例え,それが無効であることを説明した。
きついベルトをすれば腹(実体経済)を引っこめることはできる。しかし長いベルトを買ってもウエストを大きくはできない。
グローバルスタンダードのマクロ経済学といわれた現代版の貨幣数量説は,「期待」の役割を強調する。信じられないほどのペースでマネーを増やせば,人びとのインフレ期待が高まり,物価は上がり,実体経済も回復する。
日銀は公約どおりマネーを増やした。しかし物価は目標とする2%まで上がらなかった。超低金利は不動産市場に影響を与えたが,設備・研究開発投資はさっぱりである。
過去10年の金融政策を検証することはアベノミクスの検証だ。したがって,重大な政治的含意をもつ。政治からの圧力もあるだろう。しかしそれは,日銀が中央銀行としての独立を回復し,金融政策を「政治政策」ではなく経済政策にするために,いつかは乗り越えなければならない壁である。(与次郎)
それでも,安倍晋三の第2次政権に対して「アベノミクスは成功した」などと,妄想以上の幻覚症状にまだ酔っていられる「大▲鹿者」がいないわけではなかった。そうだとすれば,この国の現首相の「異次元的なウンヌン発言」とともに呆れかえるほかない。
そもそも「現在の異常な物価高は,直接的には岸田政権の無為無策,長期的には安倍政権が黒田日銀総裁とおこなった『円安株高誘導政策』の後遺症」だったという厳然たる事実を,あらためて確認しておくべきである。
補注)この段落で「 」内は,山崎雅弘の『ツイッター』 2:06 PM · Apr 21, 2023, https://twitter.com/mas__yamazaki/status/1649278356150710272 より。
『毎日新聞』2023年4月22日朝刊2面に「〈士記〉約束されている失敗」という一文を,専門編集委員の伊藤智永が書いていた。岸田文雄に対してこう警告していた。
始める前から失敗と無駄を警告されたようなものだろう。岸田文雄政権の少子化対策は,各種手当・給付の「異次元なバラマキ」案を並べるが,国連人口基金(UNFPA)は19日発表した報告書で,そうした施策に効果は乏しいと指摘しているからだ。
(中略)
家父長制の名残である戸籍制度の廃止は,「四月バカ」の冗談でなく核心的な少子化対策だ。
(後略)
戸籍制度をいまだに固守している先進国というかアジアの一国がこの日本。以前であれば,この戸籍制度は日本が誇る国民登録制度だといった自慢話がなされないわけではなかった。
だが,いまだに戸籍という封建遺制に固執するこの国の旧民法的な精神構造は,ほとんど化石も同然である。にもかかわらず,いまだにそれを墨守するつもりでいられるという神経経路となれば,博物館入りさせる価値がありそうである。
事実婚の比率は日本では完全にはよくつかめていないけれども,2~3%ぐらいだと推測されている。だが,「婚外子」が半数以上を占める欧州の某国が存在する事実とは,比較するのもしんどいほど,戸籍にこだわる石頭--4月バカのそれではなく,単に事実上のばかに相当--の政治屋が,まだ多く生きている。
統一教会と大の仲良しであった,それも自民党の政治家を中心とする多くの人物たちが,まだ「現役の政治屋」として活躍(暗躍?)中である「この国」。安倍晋三君もその1人であった。
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【参考記事】-金子 勝の議論-
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【参考記事】-3年前の記事だが,安倍晋三の破壊政治を指摘-
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