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日本の大学が壊れていく現況をめぐりその原因分析など(2)

 ※-1 高等教育の理念を伴わない無償化措置は,非一流の私立大学や専門学校などを当面は救済・延命させても,高等教育業界全体を劣化させる愚策であった

 高等教育段階に関した〈根幹にあるはずの基本の問題〉はすり抜けて,学生保護者の低年収に会わせて支給するという給付型奨学金制度の「無差別な適用」は,不要・無用である3流以下の,とくに私立大学をいたずらに存続させるだけであり,文教政策としては失敗を意味した。

 もとより文教政策の理念などなく,安倍晋三旧政権の人気とりのためだけに,いいかえれば,ひたすら破綻への道に拍車をかけるだけの文教政策を展開してきたが,いまもなお混迷を深めているだけの日本の高等教育に未来への展望は,いまの岸田文雄政権になってもまったく見通せないでいる。

 付記)本稿の記述は,2019年5月13日が初出であった。4年と4ヵ月が経った本日,あらためて読み返しても,基本の論旨はそのまま通用することが確認できた。

 付記)冒頭の画像は,『ユアターン』「潰れそうな大学はどこ?後悔しない大学選びのポイントを解説!」2023年3月29日,https://www.your-intern.com/plus/tsuburesoudaigaku/ の引用。

 すでになんどかとても判りやすい図表なので,『東京新聞』が作成していたつぎの図表,とくに18歳人口になる若者人口が18年後にはどのくらい現象していくかがよく観取できるこれを,再度かかげておき,以下の記述の参照にしてみたい。

若者の人口統計が現象する趨勢は20世紀の早い時期から
特別にむずかしくもなく理解・認知されていた

 

 ※-2「『高等教育無償化』成立へ 中間所得層への支援継続は不透明 参院委可決」『朝日新聞』2019年5月10日朝刊3面「総合3」

 1) 事前の議論-見当違いの給付型奨学金制度-
 
 なお,この 1)から つづく 5)までの記述はだいぶ長くなっており,そのあとに,この記事の本文は引用することになる。この記事そのものの引用はだいぶ後段に移されている構成なので,しばらくはその点をよく承知して読んでいってほしい。このことを,念のためさきに断わっておきたい。

 この記事は「高等教育の負担軽減策の内容」と名づけられた図解をみながら読んでいきたい。この図解のみ事前にとりあえず紹介しての以下の記述となる。

 所得(年収)が少ない世帯・家庭はこのように大学などへ進学させるとき,このようにかなり助けになる援助が国家から施される。だが,ここには大きな問題がひとつあった。いいかえると重大な疑問があった。

年収で区分する負担軽減策


 すでに,日本における高等教育の段階は,過去における「エリートの段階」(就学率:15%未満)から,「マス〔大衆〕化の段階」(50%未満)を経て,さらに「ユニバーサル〔普通〕化した段階」(50%以上)まで到達している。

ユニバーサル段階をそのままに放置しておいてよいか?

 そうなってきた「現状のなか」では,「学歴」ということばが「就学年数」そのものに関する「長さの差」にもとづいて使用されるのではなく,つまり,高校卒業と短大卒業と大学卒業と大学院卒業などの「教育を受けてきた年数の差による学歴」の違いことではなくて,

 大学という教育段階を修了し,卒業した “同じ学生同士” であっても,どの大学を出たかによってその格付けが異なっているという意味で,この「学歴」ということばが使用されている。現在においては,この種になる「大学評価の一般的なありかた」が通用している。

 いま,ここでは断片的にしか触れえないが,日本の大学でも東京圏の私立大学に関しては,最近,つぎのような話題が登場していた。ある予備校幹部は「かつては大学のグループ分けに明確な差があったが,大学改革で一気に人気を集めてグループから抜け出す学校もあり,混迷を深めている」という。
 こうしたなか,新しいグループ分けで大学をみる動きが出ていた。

 中学受験専門誌「進学レーダー」編集長の井上修さんは,各高校の「SMART」(スマート)の現役合格率を見ている。

 Sは上智大(英名 Sophia University),Mは明治大,
 Aは青山学院大,Rは立教大,Tは東京理科大だ。

  新しい大学カテゴリー。〔これまで〕「早慶上理」のグループ分けもあったが,確かに偏差値や就職実績などを踏まえると,早慶は別格。上智大,東京理科大は,明治大,青山学院大,立教大とつなぎ合わせたほうが,しっくりくる。

 註記)「MARCH はもう古い,注目の大学グループは『SMART』だ!」『DIAMOND online』2019.1.12,https://diamond.jp/articles/-/190663?page=2 

 このように造語されたごとき,たとえば「東京圏の私立一流大学」に進学する若者に対しても,「高等教育無償化」の措置(政策)が実際になされるとした場合,まず頭に浮かぶ疑問は,当該の学生がアルバイトに専念するような学生生活をしていてもいいのか,といったたぐいのものを想定しておく必要があるのではないか。

 保護者の世帯・家庭の「年収」がとくに寡少な水準にある場合に対する “実質的な大学無償化” だとしたら,そのあたりの問題,つまり「学業専念の義務」なども考慮に入れる余地がないのは,そもそも奨学金本来の趣旨に照らして疑問がある。

 関連させうる事実でいえば,留学生には週28時間までアルバイトを〔しかも非常に甘く〕許容する日本の文部科学省のことゆえ,日本人学生の場合に関してとなれば,それ以上にアルバイト就業をうんぬんする余地などない,とでもいうことにでもなるのか。

 だが,通常における日本の学生たちについての話となれば,たとえば全額無償化を受けられる場合に,もしもアルバイトをやりたい放題という現状が,そのまま認知・許容されるとしたら(実際にそうしようとしたら,むろんいくらでも就業可能と想定できるし,実際にそうしている学生はいくらでも存在する),大いに問題ありとみなすのが自然な理解である。

 もちろん,当該学生の学業が不振のときは,その給付の継続を検討するといった対処も予定されている。だが,給付型奨学金の問題として前面に置いて考えるべき基本点の認識が,だいぶ本質からはズレている発想しかうかがえない点に,疑問が残っていた。

 補注)この疑問は後段で引用する当該記事に関して述べているが,それを引用する前に以上から以下に記述する議論ゆえ,ひとまず我慢してこの内容を聞いてほしい。

 ふだんの学業成績が「全体の上位何%以内に着けている」とかいった評価ではなく,逆にこれ以上悪くなければいいといったごとき,いうなれば「最低のほうからここまで以上悪くなければ継続して奨学金の給付を許す」みたいな支給方法は,この給付型奨学金を決めた基準に関していえば,経済的事情をめぐり「政治的な配慮」が,いってみれば不純に混入されたかのごとき経緯であったといえなくはない。

 そこには,あえていうまでもなく,まるで奇想天外とでもいっていいくらいに「いままでにはなかった奇抜な〈逆転の発想〉」が観取できる。どういうことか?

 要言するならば,給付型奨学金制度であるならば最低限厳守すべき基本的な運営の方法,さらに関連して合せて付則的に措置しておくべき遵守事項が,まったく考慮外になっていた。あえて極論するが,奨学金の支給形態とすれば〈邪道の運営方法〉あるいは〈小手先でいじくりまわす制度作り〉が登壇していた。

 よほど成績が悪くならなくさえすれば,ともかく保護者の年収が低い世帯・家庭の学生は「給付型奨学金制度」が適用されるというのでは,「高等教育に対する奨学金制度の本旨」など,どこかに吹っ飛ばしたままの状態,すなわち教育理念の不在を意味する運用形態が示された,と批判されるのが筋(オチ)となる。

 2)「まともな私立大学」と潰したほうがいい「そうではない私立大学の大群」が乱立的に共存する現状

 さきに挙げたごとき,東京圏の私立大学であれば「早慶は別格。上智大,東京理科大は,明治大,青山学院大,立教大とつなぎ合わせ」て “SMART” と集団化される大学群に入学した学生たちの場合,保護者の年収の寡少に応じて,給付型奨学金制度の適用があってもいい。

 だが,学生であれば誰にでも,年収の条件が合えば無条件にこの奨学金が支給されるとしたら,本末転倒が生じないとはかぎらない。

 SMART 水準の大学群とは対照的である「偏差値40付近ないしはそれ以下の大学」に進学した学生であっても,保護者の年収額で認められれば,今回における高等教育無償化に条件に合わせてて給付型奨学金制度を適用される。

 そうとなったら概括的な予想としていえそうな点は,日本の大学教育は今後「崩壊する可能性がより〈大〉」である。この点については以前からの話題としてすでに,私立の非一流大学が,それも底辺校になればなるほど,実際にどのような教育をする現場になっているかについては,その水準なども周知の事実の点であった。

 日本語もろくにしゃべれない,英語の実力は中学校1年にも相当しない大学生が,いまの非一流私立大学,それももちろんたくさん存在する底辺校のなかには大勢いる。こちらの「3流・4流の大学群」はいうまでもなく,すでに,大学サバイバル(生存)競争のなかで非常な苦戦を強いられているし,間もなく倒産する予定を展望するほかない3流・4流大学も数多くある。

 補注)この本文の記述から3~4年経った現在の時点では,https://ja.wikipedia.org/wiki/廃止された日本の大学一覧 などに報告されているが,ここに一覧されている「大学群・廃絶の一般現象」は,2030年をメドにいえばさらにその潮流としてより可視化されるはずである。

 そして,そのような大学に進学する学生たち(前述のように酷く低学力の者たち)によってこそなんとか成立でき,大学であるかっこうをとりつくろいなら維持されている大学群であっても,これからもさき,しばらくは存続を許していく(延命させていく)ための「大学無償化」となったとしたら,日本における高等教育の現場は,さらに目も当てられない状況に追いこまれていく。

 もっとも,非一流私立大学のなかにあっては四半世紀以上も前から,そもそも「高等教育」などと呼べる実態は存在していなかった。日常生活への意欲そのもののすら希薄である若者たちが「人生のモラトリアム」を過ごす常宿にまでなっている。

 しかし,21世紀もその最初の四半期を通過する時期になってみれば,日本の大学というものの存在意義,もちろん高等教育制度としてのそれは,ますます不可解でかつ迷走するほかない状況に置かれたままである。

 3) 島野清志の定番分析-基本的な説明-

 文部科学省は以前から,国立大学の学生たちに対して,私立大学の学生たちに適用する「今回の制度」に似た「高等教育無償化」政策を実施してきた。ここでは,島野清志『危ない大学・消える大学 2019年版』 (エール出版,2018年7月)が,国立大学と私立大学の相違をつぎのように説明していた点を,さきに紹介しておく。

 格付け対象は私立大学が基本ですが,国公立大学も格付けしてます。ただし,センター試験が義務づけられている国公立大学は「私大の格付けの対比からも国公立大学にBグループを設けるのは妥当とは思えない」(104頁)として,すべてA2以上のグループの3段階とされています。

 私立大学は上位からSA~Nまでの10グループに格付けされており,このうちNグループが「危ない大学・消える大学の候補校」(65~74頁)で,島野氏をして「できればこのクラスまでに入ってもらいたい」という限度がEグループとなっています(85~86頁)。

島野清志『危ない大学・消える大学 2019年版』 エール出版,2018年7月
なおこの星野の2019年版がこのシリーズ・連続ものの
最終版になっていた

 島野清志の定番分析になっていた「大学格付け分類」に関していうと,『危ない大学・消える大学 2019年版』(2018年7月)に提示された「『危ない大学・消える大学 2019年版』格付けに基づく学生数割合」(『数字作ってみた』2018/07/08 02:13,https://tanuki-no-suji.at.webry.info/201807/article_1.html は,その核心部分にかかわってつぎのような説明を与えていた。

 今〔2018〕年も,島野清志『危ない大学・消える大学』の新〔2019〕年度版が発売された。1993年のシリーズ初刊から四半世紀になる。ただ,危ない・消えるといいながら,それでもこれまでに現実に潰れたのは14校。そうは潰れていない。それなのに,このシリーズが長年続いているのは,潰れる大学の指摘以上に,掲載している「格付け」のほうが関心をもたれるからだと,島野は分析している(78~79頁)。

 そこで,その最新版(最終版となったこ)の『危ない大学・消える大学』の格付けをみてみたい。ちなみに,島野の格付けは,河合塾の偏差値と総定員充足率を基本に,科目数やセンター試験の得点率なども加味している(80~82頁)。

 格付け対象は私立大学が基本であるが,国公立大学も格付けしている。ただし,センター試験が義務付けられている国公立大学は「私大の格付けの対比からも国公立大学にBグループを設けるのは妥当とは思えない」(104頁)として,すべてA2以上のグループの3段階とされている。

 私立大学は上位からSA~Nまでの10グループに格付けされ,このうちNグループが『危ない大学・消える大学の候補校』(65~74頁)では,島野をして「できればこのクラスまでに入ってもらいたい」という限度がEグループまでとなっている(85~86頁)。

 なお,島野清志『危ない大学・消える大学 2019年版』2018年7月の格付けは,対象外とされた大学も残しているが,その定義が現在は明記されていない。この点も断わったうえで,下記のように一覧化がなされている。

 以下に,【Bグループ】の29校までは「大学名も併せて」この一覧に出してあるが,このBグループでやっと「準一流大学」といえる水準の大学群である。この水準以下の諸大学になると,その存在じたいが “あってもなくても” もともと,たいして意味のなかった「大学の割合」が徐々にかつ急激に増えてくる。

 4) 具体的な分類(国立・公立・私立の区分は改行し,1行分の余白行も入れて示した)

 【SAグループ】は18校で,そのうち国公立が15校,私立が3校。
  北海道大学,東北大学,筑波大学,お茶の水女子大学,東京大学,東京外国語大学,東京工業大学,一橋大学,横浜国立大学,名古屋大学,京都大学,大阪大学,神戸大学,九州大学。

  国際教養大学。

  慶應義塾大学,国際基督教大学,早稲田大学。

 【A1グループ】は58校で,そのうち国公立が43校,私立が15校。
  小樽商科大学,帯広畜産大学,群馬大学,埼玉大学,千葉大学,電気通信大学,東京海洋大学,東京学芸大学,東京農工大学,新潟大学,金沢大学,福井大学,信州大学,静岡大学,名古屋工業大学,三重大学,滋賀大学,京都教育大学,京都工芸繊維大学,大阪教育大学,奈良女子大学,岡山大学,広島大学,徳島大学,長崎大学,熊本大学。

  群馬県立女子大学,高崎経済大学,千葉県立保健医療大学,首都大学東京,神奈川県立保健福祉大学,横浜市立大学,都留文科大学,静岡県立大学,愛知県立大学,名古屋市立大学,京都府立大学,大阪市立大学,大阪府立大学,神戸市外国語大学,神戸市看護大学,北九州市立大学,福岡女子大学。

  青山学院大学,学習院大学,上智大学,聖路加国際大学,中央大学,津田塾大学,東京理科大学,日本赤十字看護大学,法政大学,明治大学,立教大学,同志社大学,立命館大学,関西大学,関西学院大学。

 【A2グループ】は101校でそのうち国公立が91校,私立が10校
  北見工業大学,北海道教育大学,室蘭工業大学,弘前大学,岩手大学,宮城教育大学,秋田大学,山形大学,福島大学,茨城大学,筑波技術大学,宇都宮大学,上越教育大学,長岡技術科学大学,富山大学,山梨大学,岐阜大学,愛知教育大学,豊橋技術科学大学,兵庫教育大学,奈良教育大学,和歌山大学,鳥取大学,島根大学,山口大学,鳴門教育大学,香川大学,愛媛大学,高知大学,九州工業大学,福岡教育大学,佐賀大学,大分大学,宮崎大学,鹿児島大学,琉球大学。

  釧路公立大学,公立はこだて未来大学,札幌市立大学,名寄市立大学,青森県立保健大学,青森公立大学,岩手県立大学,宮城大学,秋田県立大学,山形県立保健医療大学,山形県立米沢栄養大学,会津大学,茨城県立医療大学,群馬県立県民健康科学大学,前橋工科大学,埼玉県立大学,新潟県立大学,新潟県立看護大学,富山県立大学,石川県立大学,石川県立看護大学,敦賀市立看護大学,福井県立大学,山梨県立大学,長野大学,長野県看護大学,岐阜県立看護大学,三重県立看護大学,滋賀県立大学,福知山公立大学,兵庫県立大学,奈良県立大学,公立鳥取環境大学,島根県立大学,岡山県立大学,新見公立大学,尾道市立大学,県立広島大学,広島市立大学,福山市立大学,山陽小野田市立山口東京理科大学,下関市立大学,山口県立大学,香川県立保健医療大学,愛媛県立医療技術大学,高知県立大学,高知工科大学,福岡県立大学,長崎県立大学,熊本県立大学,大分県立看護科学大学,宮崎県立看護大学,宮崎公立大学,沖縄県立看護大学,名桜大学。

 國學院大學,芝浦工業大学,成蹊大学,成城大学,東京女子大学,日本女子大学,武蔵大学,明治学院大学,南山大学,西南学院大学。

 補注)公立大学のなかには,元私立大学であったものが公立化された事例も多く含まれている。

 【Bグループ】は29校で私立大学のみ
  天使大学,女子栄養大学,獨協大学,学習院女子大学,工学院大学,駒澤大学,昭和女子大学,聖心女子大学,専修大学,東京家政大学,東京経済大学,東京電機大学,東京農業大学,東洋大学,日本大学,愛知大学,中京大学,名古屋外国語大学,日本赤十字豊田看護大学,名城大学,京都女子大学,同志社女子大学,龍谷大学,関西外国語大学,近畿大学,甲南大学,武庫川女子大学,ノートルダム清心女子大学,立命館アジア太平洋大学。

 以下に続くのが(私立のみ),
  【Cグループ】28校,【Dグループ】36校,
  【Eグループ】57校,【Fグループ】99校,
  【Gグループ】87校,【Nグループ】69校。

 そのほかとして,
  【格付けを保留した大学】47校,
  【本書未掲載(格付け対象外)の大学】122校〔医・歯・薬・獣医の単科大学あるいはそれに類する大学〕58校と〔宗教・宗派教育の単科大学あるいはそれに類する大学〕5校。

 さらにある「そのほか」の分は,省略。

 5) 日本の大学-いつも低空飛行であるその実態-

 要するに,今回の高等教育無償化という文教政策は,Nグループに属する大学の学生までも,平等に対象にしている。この点じたいが悪いとはいちがいにいえないものの,当該の政策を策定し,実施するための方法論があまりにも無定見であり,実質的に無方針であるように感じられるほど拙速かつ粗雑であった。

 前述中に出ていた文章,「『危ない大学・消える大学 2019年版』格付けに基づく学生数割合」(『数字作ってみた』)は,こうも語っていた。

 一方で,F・G・Nの消滅の危険性のある層は大学数では34.0%と3分の1以上占めているのに対して,学部学生数は15.0%に過ぎません。とくにNグループは大学数は9.2%と1割近くあるものの,学部学生数が全体の2.0%に過ぎません。確かにNグループの多くは小規模でかつ定員割れしている大学群ですから,このようなことになるのでしょう。

 以前にも同様なことは記しましたが,就活などで「沢山の大学があるなかで,学歴フィルターなどで一部の有名大学の学生だけが優遇されている」という不公平感が聞かれることがありますが,実は大学生の過半数が,国公立大学や日東駒専以上の難関私大・有名私大の学生なのです。企業が上位から学生を採っていったら,あるいは学生の応募が集中したら,上位の有名大学だけで十分にいっぱいになってしまうのです。

 ここで,学生全体のうち「3分の1」の数に相当すると特定された「F・G・Nの大学群」に在籍する学生たちには,気の毒だといわれるかもしれないが,給付型奨学金制度の対象外にしておくべきである。もとより「F・G・Nの大学群」そのものが「大学としては無用だ」と評定されてもよかった,換言するとそうみなされて当然の「大学の一群」であった。

 文部科学省所管の中期目標管理法人である独立行政法人日本学術振興会の「科学研究費助成事業」は,国公立と私立の何流大学であっても教員に対する学術振興のための助成金を支出しているが(もっとも完全に公平・平等だとはお世辞にもいえないが),学生に対する給付型奨学金を支給する,それも保護者の年収(の低さだけ)にみあってともかく一定・特定の金額で支給するといった「単一の基準」を適用する方法は,いささかならず奇妙であり珍答でもあった。

 日本の大学は既述したように,大学・学部水準じたいに関してからして「一流か否か」によって根拠づけられる『学歴の差』(大学「偏差値」のその差ではない評価)が,当たりまえに流通しており,なおかつ半ば公認されたごとき現象すらある。

 本ブログ筆者は以前から,現状における日本の大学は「その校数でも学生数でも,3分の2〔相当分〕は要らない」と,あえて極論してきた。私立大学でもまともな一流校以外は,特定の使命・任務・課題を有する準一流大学に限っては置いていてもよいけれども,それ以外のところは,特別な存在理由があるもの以外,すべて早めに廃学させたほうが,日本という国家体制の存続にとっても得策でありうる。

 いくら大学がユニバーサル化したからといっても,大学生らしい勉学などろくにしてもこなかった大卒がゴロゴロいる時代である。「大学の思い出は就活です」などとホザク学生もいる。お話にもならない大卒の証書は,ただの紙片同然ではないか。就職戦線における『学歴』フィルターを通した「スクリーニング(濾過対策)」は,会社側だけをむげには非難できる慣行ではない。

 おまけに,非一流大学の成績評価もいい加減である。どだい,一流大学の「優:A評価」と3流・4流大学の「優:A評価」とのあいだには,大げさではなく,「雲泥の差」すらありうる。旧帝大系の学生が書いた答案と私大3流・4流大学の書いたそれとが,ともに「優:A評価」に採点されたからといって,同等・同類であることなどありえない。これは本ブログ筆者の体験談のもとづいて,バカ・正直に述べる〈感想〉である。

 筆者の実体験では,非一流大学の学生たちがたとえば定期試験で書く答案にまともなものは少ない。その意味でも試験答案の採点には非常に苦労させられてきた。試験問題(課題)を記述形式で,それも教科書やノートなどの持ちこみなしで自由に書かせたら,ほぼ全滅というか初めから完全に解答不可能である学生が大部分であった。

 ある大学のある授業科目で試験監督を手伝ったときみた光景は,経営学部の学生に対する民法(一般教育科目)の試験であったが,白紙の答案を提出する学生が3分の1ほどいた。ある程度書いている学生が,はたしてどのような答案を書いたかはしらないが,推してしるべし。

 まともに採点していたら,100名中の数十名がなんとか「可・Cの評価」で単位を,それも温情的な計らいでもってもらえれば(単位取得できるとなれば),せいぜいいいところである。それでも「優・Aの評価」を出さねばならないとなったら,これはもう実質,成績そのものに関する「改ざん・捏造の行為」の敢行とあいなるほかない。もう安倍晋三君もびっくり・・・,という程度の悪さ。

 安田賢治『笑うに笑えない 大学の惨状』祥伝社,2013年に関して(この本は,末尾の Amazon 広告への「画像リンクのひとつ」として出してあるが),「出版社からのコメント」(広告・宣伝の説明)は,こう書いていた。

 分数計算のできない大学生が珍しくなくなって久しくなります。いまや大学はレジャーランドを通り越して,小学校・幼稚園化の道を転げ落ちています。大学は,いま,二種類しかないといわれています。入試が成立する大学と,入試がいらない(誰でも入れる)大学です。

 後者の実態はあまり表に出てきませんが,しればしるほど唖然とするばかり。そんな大学は,学生集めのため,あの手この手で必死です。そんな実態を,確かなデータをもとに伝えていきます。崩壊寸前の大学ビジネスの実態,ブラック企業に大量の卒業生を送りこむ仕組・・・。この10年で激変した大学の教育環境を考えます。

安田賢治『笑うに笑えない 大学の惨状』祥伝社,2013年のことから


 全国共通で実施する高校卒業証明試験だとか大学入学資格試験だとかを,高卒者に課しておき,これに合格しない高卒者は大学を受験させない制度のない日本である。その試験の水準=難易度がどのくらいのところに置かれるにせよ,いまどき非一流私立大学になればなるほど,実態は,だいぶ昔から「無試験で全員が入学可能の体制」にまで逢着している。

 だから,そのあたりの大学キャンパスに遊弋している学生たち対しても,保護者の年収が少ないからといって,奨学金という名の生活保護的に「大学にいかせるための経費」を支給するのは,いったいなんのための「給付」奨学金なのか,その意味がまったく理解できない。

 そのような予算が措置できるならば,外国人留学生のうちでもまともな大学に通っていて,なかでも比較的に成績のよい学生層に給付型奨学金をもっと積極的に支給するとかして,アルバイトをさせないで学業に専念させる態勢を提供する。こういったふうに別に,該当の国家予算を有効に活用できる使い方もありうるはずである。

 補注)こういた提言をしたら,コンビニ業界や外食産業などから苦情が出るかもしれないが,これとそれとは完全に別問題であった「はずである」。もっともこの補注の文章を書いてから4年もたった最近では,コンビニ業界や外食産業からは,新型コロナウイルス感染症が2020年から流行っていた関係もあってだが,外国人留学生の姿は激減した。

 補注)関連してはこういう意見もみられる。「アジア諸国も豊かになり,コンビニから外国人が消えた。セルフレジが外国人を追い出したのではない。逆でコンビニの最後の頼みの綱だった外国人がいなくなり、コンビニはセルフレジにするしかなかった」。

 註記)綿花「外国人店員の消えたコンビニ」『note』2023年8月18日 06:10,https://note.com/cotton_flower/n/n177089462e46
 

 ※-3「『高等教育無償化』成立へ 中間所得層への支援継続は不透明 参院委可決」( ※-2 の『朝日新聞』2019年5月10日朝刊3面「総合3」)を,ここからあらためて引用

 〔2019年〕10月に予定される消費増税を財源に,低所得世帯の子どもを対象に高等教育の負担を軽減する関連法案が〔5月〕9日,参院文教科学委員会で与党と一部野党の賛成多数で可決された。

 〔2019年5月〕10日の参院本会議で可決,成立する見通しで,2020年4月から,授業料減免と給付型奨学金の支給が始まる予定だ。ただ,法案の審議では,制度の対象とならず,支援を受けられなくなる学生の扱いなど,解決すべき課題も浮かんだ。

 1)負担軽減策の柱は,授業料の減免と給付型奨学金の拡充だ。

 対象となるのは「両親と大学生,中学生」のモデル世帯で年収380万円未満の場合。収入ごとに減免額は3段階に分かれ,270万円未満の住民税非課税世帯は,国公立大が年間54万円で一部の大学を除き全額が免除,私立大は最大で70万円が減額される。

再度,ここにかかげる

 奨学金は,非課税世帯なら国公立大の自宅生で約35万円,私大の下宿生ならば約91万円支給される。文部科学省は新制度で低所得世帯の大学などへの進学率が,現在の4割程度から全世帯平均の約8割まで上昇し,支援対象者が最大75万人になると推定。必要な予算は約7600億円と試算している。

 支援策は,低所得層の支援が手厚くなる一方,一定の収入を超えるとまったく受けられない。現在も多くの大学が収入や家族構成などに応じて授業料を減免しているが,国立大の場合は各大学で基準が異なり,個別の状況に応じて支援する学生を決めている。私大には減免額の半分を国が補填する仕組があり,給与所得者なら年収841万円以下の世帯まで対象にできる。こうした学生が今後どうなるか,まだはっきりしない。

 国会審議でも立憲民主党などから「現在,減免を受けている学生が制度の対象外になるのでは」との質問が相次いだ。柴山昌彦文科相は「対象とならない学生も生じうる」と認め,対策は「学びを継続する観点から,実態などをふまえて配慮が必要か検討する」と述べるにとどまった。

 文科省の担当者は「在学生を救いたいが,財務省との厳しい予算の折衝になる」と話す。文科政策を担当する財務省の中島朗洋主計官は「新制度は支援を低所得層に重点化するもの。中間所得層の在学生の支援は,大学がみずらの経営判断で続ければいい」と語る。

 補注)ここまでの記述で示唆されているが,この年収の「中間所得層の在学生の支援」が相対的にかなり不利になる事態が生まれるとみていい。だいたい年収5百万から1千万未満の所得層を,どれほど〈裕福な階層〉と観ているのかといえば,相当に誤解以前の見誤りをしている。

 効果租税の比率が非常に高まり,その収奪度がきびしい昨今,その所得層を除外したうえで,それもちまちまとした区分を設けては「いくらだけなら支援する」という発想じたいが,貧国体質たる国家精神を端的に物語る。

〔記事に戻る→〕 母子家庭で育ち,現在は姉と2人で東京都内で暮らす東京大3年の岩崎詩都香(しずか)さん(20歳)は「新しい制度になっても支援を受けつづけられるのか」と不安を感じている。1年生の時から年間約54万円の授業料を免除されているが,新制度の対象とならない場合は生活が一変しそうだ。「アルバイトをかなり増やすことになると思う。疲れて勉強に差し支えが出ないか心配だ」。

 補注)授業料の減免制度の適用者が,アルバイトもしていなければ学生生活がしっかりとはなりたたず(上の東大生の場合は下宿している),学業に十分に専念できない現状があるとしたら,このように「国立大学で授業料の減免措置を適用されている学生」ですら,アルバイトに精を出してなければならない現状は,なおも問題がある,本末転倒の部分を新しく発生させている認識されていい。

 2)県外に進学,加速か

 新制度によって,思わぬ影響が発生する可能性もある。大和総研は4月,文科省の試算を元に「約17万人が新たに大学や専門学校に進学し,対象者は約81万人にのぼる」との予測を公表した。この結果,島根,佐賀,秋田など9県では毎年,高校卒業者の4~5%が県外に進学し,首都圏では流入の方が多くなると予想。学生の大都市への集中が加速するとみる。

 さらに生活費などの心配が少なくなることで,学生アルバイトが数十万人規模で減ると予想もしている。人手不足に拍車をかける可能性があるとして,金融調査部の坂口純也研究員は「学生バイトに依存する業界は,人手を確保する対策が必要になるだろう」と指摘する。

 補注)この見通し,「学生アルバイトが数十万人規模で減ると予想もしている」点は,はたして順当な判断か疑問が残る。もっと厳密な分析をおこない判断する余地がありそうである。「アルバイトもいままでどおりやる」という学生がどのくらい出てくるかまで考慮した予想だったのか,という関連になる。

 とくに,地方から都市部に来て下宿している学生たちは,今回予定されている給付型奨学金制度を適用される保護者の子どもたちであれば,なおさらその余地がありうるし,アルバイトを止めない場合も大いに残ると観たほうが適切ではないか。

〔記事に戻る→〕 大学生らも支払う消費税の増税部分を使って,一部の学生の負担を軽減する制度にも疑問の声が上がっている。高等教育無償化をめざす学生らで作る『FREE』は3月,全国 140の大学・短大・専門学校の学生 1457人へのアンケート結果などをもとに声明を発表し,「消費増税は学生の暮らしと直結する。それを財源に使うことは新制度の大きな矛盾だ」と指摘した。(引用終わり)

 こうした消費税に関する指摘・批判は理解できる面があるとともに,また別の新しい問題も感じる。目的税的に消費税を課すのはそれじたいが悪い政策だと断定はできない。問題の大枠は,法人税や所得税の代わりに消費税の財源が代替として充当させられてきた点にもあった。

 また,安倍晋三(元第2次)政権になってからは,露骨に軍事費(防衛予算)を増やしつづけてきた。したがって「消費税を給付型奨学金の財源に充てる」ことじたいに反対するのは,それかぎりで主張するのであれば,議論の広がりが期待できなくなる。

 岸田文雄が首相になってからなにを,その安倍晋三政権からうけついだかというと防衛費(軍事費)の倍増であった。こちらの予算ばかりは威勢よく大判振るまいで,自衛隊幹部たちはその予算が実現されても,どこの用途に振りければよいのか当面まったく見当がつかないと困惑を隠せないほどであった。

 ところが,文教予算方面における奨学金の問題だとなると,その支給する金額や保護者の年収制限などいちいちちまちました条件を付けるばかりで,いったいなんのための「給付型」奨学金の制度作りなのか,「国家百年の大計」という大前提にかかわりそうな発想は,これっぽっちもない。小手先の制度イジリに終始している。

 前首相の菅 義偉は給付型奨学金には反対だと述べてもいて,本ブログ筆者は驚愕したが,安倍晋三や岸田文雄は「世襲3代目の政治屋」として金銭面の苦労をまったくしらないとい意味でまた,唐変木な対応となる采配しかできない。

 だいたい,日本学生支援機構のローン型で利子まで併せて返却しなければいけない貸与型奨学金となると,これが制度としてあってはいけないとは絶対的にはいえないものの,結果として大学を卒業した若者が人生設計そのものを阻害される,いわばエセ奨学金ならばただちに廃止したほうがよい。

 菅 義偉は「公助・共助・自助」という国民への支援体制のあり方のうち,右側の自助からオマエたちは努力しろといいたかった「暗愚・固陋の総理大臣」であった。「苦学生」という概念とはなんら縁のなかった安倍晋三や岸田文雄となると,その逆方向でそのものであって,「無知・無策」の文教政策しか頭に浮かばなかった。

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