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JR東日本は電力をどこから調達しているのか,電力を大量に費消するための事業「リニア新幹線」がからきしダメな理由を考察する-

 ※-1 鉄道は電気で走る乗り物だが-リニア新幹線のエネルギー消費問題-

 a) 本日の話題は「JR東日本は電力をどこから調達しているのか」である。手っとり早く,こういう最新の話題にしたつもりだったが,まだ実現していないこの「リニア新幹線の消費電力量」が,東京・名古屋間開業時で 27万 kW/時,東京・大阪間で 74 万 kW/時とされ,さらには,東海道新幹線の 3 倍ものエネルギーを必要とするゆえ,原発がさらに必要だとのたまったトンデモな人物がいた。

 重力に逆らって空を飛ぶ飛行機を「旅客機」として利用する交通移動機関は当然,ほかの輸送手段よりも大量のエネルギーを消費する。また,-新幹線のエネルギー消費は「通常の新幹線」よりも,はるかに多く消費される点については,誰でも常識的な理解としてすでに気づいている。

 その「新幹線⇒リニア」の比率としてだが,いったいどのくらい,エネルギーの消費量が増えるかについて,JR東海側では誠意をもって正確に説明しようとはしない。秘密事項のようなあつかいにしておきたいらしく,なにやら怪しげな様子をうかがわせていた。

 b) ところで,本記述を根本から考えるためにはまず,柴田東吾・稿「JRはなぜ自前の発電所や変電所を持っているのか 電車を動かす鉄道会社は大量の電気を使用する」『東洋経済 ONLINE』202年11月9日,https://toyokeizai.net/articles/-/465209 という記述( ↓ )を,さきに参照しておくのが得策かもしれない。

 日本における鉄道問題関連で最新となる話題は,なんといってもリニア新幹線であった。しかし,このリニア新幹線の運行については,そのエネルギー消費量が,従来の新幹線より数倍,もしくは2桁近くもの水準に近づくと警告する識者がいないわけではない。ところが,JR東海の最高責任経営者たちはこの疑問(批判)に対してまじめに対応する気すらなかった。

 リニア新幹線が地下を通過する地域(地帯)では,その上のある土地が陥没する事件が発生してきた。また,前静岡県知事の川勝平太は在任中,静岡県の北部地域,それも住民がほとんどいない山間部のごく狭い,短い区間にしか通らないこのリニア新幹線の予定地が,

 もともと9割近くがトンネル工事であるがゆえ,当該地域においてはとくに,地下流水が寸断・途絶させられる可能性があり,その結果,下流地域への水量流入が枯渇させられるおそれが生じることを理由(自然・風土の破壊)に,それこそ頑強に反対してきた。

 それに対するJR東海側の説明(反論にせよ批判にせよ)は,だいたいにおいてまともな応答にはなっておらず,菅 義偉流にいえば「問題ない,問題ない,問題ない……」といった傍若無人の態度で一貫していた。

 c) ただし,以上のうちとくにリニア新幹線のエネルギー消費問題に関しては,まだ未実現の鉄道構想であるだけに,まだ検討の余地が多分に残されている。

 たとえば,「リニア新幹線の使用電力は? 【平均電力か,ピーク電力か?】」と題した文章は,「元国鉄技師の川端俊夫氏が『1人あたりでは新幹線の40倍』にもなるので『電力浪費の〈リニア〉は再考を』」という指摘を議論した,つぎの文章が問題提起をおこなっていたけれども,

 なにせ,実際にはまだ営業運転など始まっておらず,まだだいぶさきにならざるをえないリニア新幹線「走行時」のエネルギー消費問題の現実的な把握については,以上のごとき指摘(計算)が問題提起するごとき「相当に重大な事情」であったにもかかわらず,JR東海側の姿勢をみると,あえて「関連するエネルギー技術経済的な論点」を「伏在させて(実質隠蔽して)おくような気配」を,濃厚に漂わせきた。そもそも,そう簡単に結論が出せる問題ではない。

 つぎの「リニア新幹線の使用電力は?」と題した文章には,本当に恐ろしいことを平然と吐いた,JR東海の葛西敬之会長(生死年,1940年10月-2022年5月)が登場していた。しかし,だからこう,つぎの文書(◆)のように反論されてもいた。ちなみにこの故・葛西敬之は故・安倍晋三とは仲良しの間柄であった。類は友を呼ぶ。

 註記)前段の本文はつぎの記述に言及していた。このリンク先住所は絵柄(サムネイル的な動画サイトの表紙)として反映されない(それが出てこない)ので,つぎの表記方法でのみ指示しておく。それほどは長くない文章なので参照してほしい。

 (◆)⇒ http://web-asao.jp/hp/linear/%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%81%AE%E4%BD%BF%E7%94%A8%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E3%81%AF%EF%BC%9F.pdf

 d) さて, この文書のなかでは,その恐ろしい意見を平然と吐いた人物JR東海の葛西敬之会長が,リニア新幹線が従来型の新幹線よりもヨリ大量に電力を必要とする事実に関して,それも「3・11」の直後の時期であったことなど眼中になかった調子で,平然とこういってのけた。前記(リンク先住所)文書からの引用である。

 JR東海の葛西敬之会長は,2011 年 5 月 24 日の『産経新聞』で,「原発を速やかに再稼働させるべき」として「原子力を利用する以上,リスクを承知のうえで,それを克服・制御する国民的な覚悟が必要」と主張している。なんで私たちは原発のリスクを覚悟しなければならないのか。そんなリニアはいらないのだ。

JR東海の葛西敬之会長の暴言に等しい発言

 東日本大震災によって惹起された東電福島第1原発事故に当然関連する文句であったが,「リスクを承知のうえで……」という言説は,この原発事故が一歩間違えたら,東日本全体が国家として全滅するかもしれなかった,

 つまり「不幸中の『幸い』」によって,それこそ日本という国家がまさしく「九死に一生を得た」とでも表現したらよかった,その4号機の事故過程において現に発生していた重大な事実などそっちのけにして,そのように無謀きわまりない発言を放ったJR東海の会長は,

 それこそ万死に値する「反国民的=国賊に等しい無謀な暴言・狂言」を,しかもなんというか,実にエラそうに表白していた。もっとも,アベ友だったから,どうせろくでもない人間像しか描いてもらえないのがこの葛西の生きざまだと,以前から予想はしていたけれでも,この予想以上のひどさはいったいなんだと,本当に呆れた。

 「アベは国難で国賊の首相」だと指弾されてもいたが,この元JR東海の会長はトンデモどころか,下手をしたら日本国土全体を破滅させかねない発想を恥ずかしげもなくゲロしていた「亡国・滅国のJR東海の元会長」。

 つぎの画像資料はJR東海労組が制作・頒布したチラシである。

トンデモだったJR東海の最高経営者


 ※-2 各種交通機関のエネルギー消費量についての議論

 ここで議論しておきたい問題がある。「移動するための手段」となる各種交通機関が「消費するエネルギー量」が,つぎの話題となる。

 最初に,仕事・エネルギー・熱量の単位に当てられるメガジュールという指標に触れておきたい。

 「約1メガジュール(megajoule/MJ)=100万ジュール」という単位は「238.889キロカロリー,または 0.2778キロワット時」であり,その仕事量は,仕事率1kW で動作する装置が 1000 s(16分40 秒間)にする仕事に相当する。1MJ の熱量だと,0°C の氷を3kg 溶かすことができる〔という計算になる〕。

 ということで,具体的に各種輸送機関ごとにその輸送単位の運行エネルギー消費量を,基本単位としては「自転車約1メガジュール」を比較するために置いたうえで算出すると,それぞれの郵送機関はつぎのようになる。

  飛行機  約 3500メガジュール
  鉄 道  約 1920メガジュール
  自動車  約 35メガジュール
  自転車  約 1メガジュール

 この計算は,各種輸送機関が輸送できる人員(定員)の点には,ひとまず触れない説明になっていた。そこで,その人数を以下のように措定しておいたうえで,それぞれを比較しつつ検討するための説明をおこないたい。

【参考統計図表】-商用飛行機の速度-

コンコルドは商用としては実質失敗した

 以前,東海道新幹線16両編成の座席定員は1323席であったが,2021年7月1日以後は,車いすスペースを広げた結果,1319席に変更された。

 つぎに,飛行機の座席定員は搭乗員(大型機の場合,10~20名以上になる)はひとまず除外するが,現在の旅客機の客室定員を300名としておき,各種輸送機関の運行エネルギーを比較してみたい。

 これら輸送機関についてはそれぞれの「乗り物としての特徴」,ならびにその長短も配慮すべき要因となりうるが,あまりにもいろいろな要因が入りこまざるをえないこともあり,ここではひとまず除外できる話題とみなしておき,つぎのように運行上必要となるエネルギー量を計算してみた。

  飛行機 3500 MJ ÷ 300名 =(1名当たり) 11.67 MJ

  鉄 道 1920 MJ ÷ 1319名 = 1.47 MJ (在来線ではなく新幹線)

  自動車  35 MJ ÷ 45名 = 0.78 MJ

  自転車  1MJ ÷ 1名 = 1.00 MJ(これは人力!)

 なお大型バスの定員だと,「正座席45席」が主流であり,「 正座席45席プラス補助席8席」で「53人定員」の大型バスが多い。·
       
 まだ実用化(商用化)段階にはいたっていない「リニア新幹線の消費電力量」は,東京・名古屋間開業時で27kW / 時,東京・大阪間で74万kW / 時とされ,東海道新幹線の3倍とされている。

 このリニア新幹線の定員は,東海道新幹線の「通勤列車」に準じた設備とした場合,12両での定員は728人と予定されているので,ここでは関連させて,その1人当たりの消費電力については,つぎの計算をしておく。この数値は現状の新幹線より航空機(旅客機)の水準のほうにより近づいている。

  リニア新幹線 1.47 MJ( ✕ 〔1319名 ÷ 728名〕)✕ 3 = 7.99 MJ

 補注)リニア新幹線のエネルギー消費計算に関しては,こういう説明があったが,ひとまず,以上の記述内容はそのままで議論を進めていく。こちらの676名で計算するとしてたら,上の MJ の数値はもっと上昇するが。

 出発10分前に乗車が始まり,車内に乗りこむと,普通車の客室が案外狭いことに気づく。普通車1両当たりの定員は1列4人,最大14列なので56人だ。14両編成を組む〔このリニアの〕列車1本当たりの定員は676人程度とみられ,東海道・山陽新幹線を走るN700S「のぞみ」の1323人の半分に過ぎない

 註記)梅原 淳・鉄道ジャーナリスト「202X年リニアの旅はどうなる? 時速500kmの世界は『ふわふわリズミカル』」(追記・訂正あり)『YAHOO!JAPAN ニュース』2020/10/31 8:00,https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/abe5d92fe224bd1e9a20f22cf5ade536898ec835

梅原淳の説明

 以上,※-1から※-2は本日,2024年9月10日において追補的に記述した内容である。以下からは,いまから9年前(2015年9月28日)に書いて,一度公開してあった関連の文章を復活,再掲することになる。


 ※-3「JR東日本敷地内『「連続不審火犯人』(2015年8月)の犯行動機,見当違いのエネルギー経済事情に関する認識」

 ここではまず,「他の不審火,関与供述『電力大量消費許せぬ』JRの事件容疑者」(『朝日新聞』2015年9月16日夕刊)の記事から紹介する。

 JR東日本敷地内で2015年8月中旬以降に確認された連続不審火で,うち1件にかかわったとして威力業務妨害容疑で逮捕された野田伊佐也(いざや)容疑者(42歳)が,別の複数の不審火への関与を認めていることが捜査関係者への取材で分かった。調べに「業務妨害とは思っていない」とする一方で,火をつけたことについては認め「大量に電力を消費するJRが許せなかった」などと話しているという。

 補注)最初からいきなり疑問を提示しておきたい。鉄道車輌,ここでは電車や電気機関車のことになるが,その性能によって電力消費量を異ならせるにしても,ともかく,それ相応に電気を使いながら走行するほかない交通機関である。

 その点じたいに関していえば,どの鉄道会社にも同じに妥当する話題になるし,世界各国の鉄道事情についてもまったく同じことがいえる。なお,断わっておくが,JR東日本だけでなく日本のJR各社においては,もちろんディーゼル・エンジンで走行する車輌や機関車も多数運用されている。だが,ここでの話題ではないので,これ以上は触れない。

 JR東日本に限らないと思われるのだが,「大量に電力を消費する」という1点だけをもって鉄道会社を「許せない」という観方は,かなり短絡というか支離滅裂の鉄道「会社観」であった。

 ラッシュ時は非常に混雑した運行をしているのに,昼間などはがらがらに空いた電車を走らせているのは「問題だ,けしからん」,あるいは,ラッシュ・アワーの東日本JR中央線で都心に向かう上り電車は混んでいるのに,下りの電車はがらがらだから「むだダ!」といったところで,いずれもここでは,ピント外れの話題となるので,ひとまず考慮外となる。

〔記事本文に戻る→〕 野田容疑者の逮捕容疑は,東京都品川区にあるJR東日本の変電所付近に火のついたものを投げ入れ,同社の業務を妨害したというもの。JR東の敷地内では〔2015年〕8月中旬以降に7件の不審火が確認されたほか,8月18日にも東京都立川市で電気ケーブルが焼けた。

 捜査関係者によると,野田容疑者は立川市の不審火を含め,「ほかにも数件やった」などと関与を認める供述をしているという。武蔵野市の自宅からは,2件の不審火現場付近で確認された黄色い帽子や自転車にくわえ,市販されているアルコール燃料のボトルも押収された。調べに対し「(8月よりも)前からやっていた」とも話しているという。

 また,自身のものとみられるインターネットの写真共有サービス「インスタグラム」には,複数の不審火との関与を疑わせる画像が数多く投稿されていた。

 8月6日の投稿では,目黒区の不審火現場と似た場所で,黒い布に包んだペットボトルのようなものを針金でつり下げた様子が写っている。8月8日には,布のようなもので包んだペットボトルをケーブル脇に置いた写真とともに「品川→広町→大崎だけで3点完了」と書きこんでいた。

 また6月には,ケーブルを支える鉄骨の上で焼けた物体を写した写真や,なんらかの入れ物を紙で巻き,針金でつなげた写真を投稿。9月11日の投稿では,本人とみられる人物が黄色い帽子とサングラスを身に着け,「燃料用アルコール」などと書かれた黄色いボトルをもっている姿が写っていた。

 警視庁は,このインスタグラムが野田容疑者のものとみており,野田容疑者がこうした燃料を使って,これまで把握している8月より前から放火を繰り返していた疑いもあるとみて調べを進める。

 --さて,こうしたJR東日本の鉄道関係敷地内への放火事件を起こした犯人の〈犯行動機〉を聞かされたとき,すぐにつぎのような疑問が湧いてきた。

 2011年3月11日午後2時46分に発生した東日本大震災のあと,東京電力側の電気使用者側に対する,半分は脅迫めいた,しかも「恣意的な対応」とみなすほかなかった「計画停電」が,3月14日から28日までなされた。いまから回顧してみるに,そのような「無計画な停電措置」が本当に必要であったかどうか,かなり濃厚な疑問が残っていた。

 「3・11」の緊急事態発生に対峙させられたJR東日本は,電気で駆動・走行させる電車や電気機関車が大部分である鉄道会社として,いったいどのように対処していたのか,ということがらに関心が向けられてよいはずである。実は,そのための説明が,次項より参照するJR東日本のホームページなどにある。

 補注)以下の記述では,JR東日本敷地内での放火事件(連続不審火)を起こしたとして威力業務妨害容疑で逮捕された野田伊佐也が,本気で抱いていたらしいこの鉄道会社の電力事情に関する認識不足,いうなれば「無知に近い思いこみ・見当違い」が説明されるはずである。

 

 ※-4 東電は自営(自社所有の施設)で発電し,利用している

 以下の説明は少し古く2004年のものであったが,これなりに参考になる。題名は,信濃川発電所所長 内藤健次「朝夕のピーク時に対応するため,調整池を利用して効率的に発電しています」(JR East Group SR200408)である。

 奥秩父山脈の甲武信ヶ岳に源流をもち日本海に注ぎこむ信濃川。その豊富な水量を利用して発電される電力は,JR東日本で使用する総電力量の1/4にのぼる。主に東京近郊を走る電車へ電力を供給。東京都内だけをみれば,電車の走行や駅構内の照明・空調用など,総電力量の約半分を賄う。

信濃川発電所明細
信濃川発電所画像


 JR東日本の水力発電所は,新潟県川西町と同小千谷市の3カ所にある。1939年に千手発電所が,1951年に小千谷発電所,1990年に新小千谷発電所がそれぞれ発電を開始。3発電所合わせて2003年度の総発電量は17.8億kWhにのぼる。

JR東日本小千谷・新小千谷発電所
信濃川発電所概要図

 以上の画像資料や図解資料についてはさらに,つぎのJR東日本が公開していた関連の図表なども添えておき,理解の助けとしたい。

火力発電のほうが水力発電よりも多い

つぎの図解資料がさらに再生可能エネルギー関連を解説
地域的にまだまだ再生可能エネルギーの開発として適地があると思われる
JRなりの再生可能エネルギーに関する説明

 つぎの図解・図表はここまでの記述を総括的にさらに説明する中身になっている。

この減少していく傾向は2017年以降も進展しているとみたいが
関連する資料は未見

 JR東日本がもつのは発電所だけではない。自前の送電線や変電所も備える。発電された電力は谷川岳山中の送電線を通り,約200km南の東京・武蔵境交 流変電所に送られ,その後各地の変電所を経由して電車の動力源として利用する。「列車運行に利用することもあり,この水力発電所ではとくに水量の正確な予測が重要です」と話すのは,信濃川発電所の内藤健次所長。

 JR東日本は,川崎火力発電所でも消費電力量の約1/3を発電しており,できるだけクリーンエネルギーの使用割合を高めるため,発電量を水力発電の量に合わせて調整している。翌日の発電量を割り出すため信濃川本流はもちろん,支流付近の降水データも参考にして水量を予測する。水量の予測は,宮中取水ダムの水位維持のためにも必要だ。ダムの水位を一定に保つため取水量も調整するのである。

 註記)以上本文と最初の画像は,「クリーンな電力で列車を動かす」を参照。リンク先住所は,http://www.jreast.co.jp/eco/pdf/pdf_2004/08.pdf 

 

 ※-5「列車制御システム・エネルギー・情報通信 エネルギー」http://www.jreast.co.jp/recruit/student/work/system/energy/

 【冒頭注意事項】 上記のリンク先住所は現在は削除されている。

 「エネルギー」フィールドは,JR東日本の最大の商品である「鉄道輸送サービス」を安定的に提供するために欠かせない仕事です。エネルギーフィールドのエンジニアは,技術力で幾多の課題を解決し,安全・安定輸送を支えていきます。

 1) 事業ミッション

 JR東日本では,自営発電所で発電した電力を,1200kmにもおよぶ自営送電線・変電設備・電車線路・配電設備などを経由して,電車や駅などに供給しています。

 また,発電から電力を消費する列車,照明や電光掲示器などの電力負荷設備までをトータルに管理し,鉄道輸送の安全性と安定性の確保はもちろん,お客さまへ快適な空間の提供をエネルギー面から支えるとともに,再生可能エネルギーも含めた将来のエネルギー戦略の検討をおこなっています。

 2) 具体的な取組

 JR東日本では,新潟県に信濃川発電所(水力),神奈川県に川崎発電所(火力)を有しており,発生させた自営電力は,東京電力から供給される電力とあわせて首都圏列車の安定運行に用いています。

 また,環境保護活動にも積極的にとり組んでいます。たとえば,CO2 排出量の少ない天然ガスを燃料とした火力発電設備の導入や,ホーム屋根や用地内への太陽光発電装置の設置,消費電力の少ないLED照明の導入を進めており,今後も随時拡充していきます。

 3) これから実現したいこと

 JR東日本の事業では,列車の運行やお客さまへのサービス提供など,あらゆる場面で電力が必要です。

 昨今では,新幹線の高速運転や列車増発などの輸送サービスの改善や,エレベータ設置などの駅のバリアフリー化,エキナカビジネスにともなう開発など,各事業における電力需要はますます増加しています。このような高まる電力需要に対応するために,設備の強化をさらに進める計画です。

 JR東日本では,発電所だけでなく変電設備や配電設備,さらに電車線路設備といった,多種多様な電力設備を保有しています。最新設備の導入により,電力設備の更新・強化をおこなうことで,電力需要に対応するだけでなく,メンテナンスの省力化もめざします。

「3・11」直後東京電力への電力融通に協力したときの統計資料
出所は本文出典


 JR東日本ではこれまで,自営発電所などの設備更新や蓄電池駆動電車の試験など,エネルギー分野の新技術導入にとり組んできました。その一環として,エネルギー利用の一層の効率化をめざし,「スマートグリッド技術」を適用する検討と実用化を進めています。(引用終わり)

 --以上のJR東日本による説明は,ひとまず額面どおりに受けとめてよい話題とみなせる。

 JR東日本の電力調達とこの使用に対する経営姿勢は,鉄道会社にとってみれば,重要な経営資源のひとつである〈電力〉を,自前で発電,いいかえれば,外注ではなく自製で調達しており,運輸業としての鉄道会社として観るとき,きわめて当然でもある「企業体制のあり方」といえる。

 さらにいえばそのような経営努力は,鉄道輸送会社であるJR東日本の立場にとって,「電車・機関者を動かす」ために重要な経営資源:「電力エネルギー」の確保に関するものゆえ,基本的な経営方針にもとづいた,より実際的な対応である。

 ここで,東日本旅客鉄道株式会社「JR東日本における自営電力の最大活用と電力使用量の節減について」2011年3月18日,https://www.jreast.co.jp/press/2010/20110312.pdf という文書を参照しておきたい(前段にはこのなかに出ていた表を紹介してあった)。

 この文書は日付から判るように,同年の「3・11」の1週間後に公表されていた。こう解説している。

 鉄道輸送には列車の運転用電力のほか,信号,運行管理システムおよび駅の電灯などの電力が必要となります。

 当社では,新潟県十日町市・小千谷市に信濃川発電所(水力),神奈川県川崎市に川崎発電所(火力)を有しており,発生させた自営電力は,東京電力から供給される電力とあわせて首都圏列車の安定運行に用いております。

 現在,可能なかぎり自営電力の供給量を増加させるとともに,使用する電力を節減することにより電力を生み出すなど,首都圏の電力の確保に協力させていただいております。

 1.自営電力の最大活用

  (1) 信濃川発電所
 十日町市長のご提案及び国土交通省のご指示により,地震発生前よりも放流量を低減することにより取水量を増して発電量を増やしているほか,首都圏の電力需要のピークにあわせた発電が可能となるよう,水の放流時機の最適化を図っております。

  (2) 川崎発電所
 燃料供給の範囲内で最大限可能な発電を実施しております。このJR東日本川崎火力発電所が「3・11」直後には,東電側に電力を融通していた事実については,つぎの記事を参照したい。


 2.電力の使用量の節減 

 節電のため,つぎのような取組みを実施しております。お客さまのご理解,ご協力をお願いいたします。

 (1) 駅での取組み
   ・日中時間帯のコンコース,ホームの消灯または減灯
   ・エスカレーターの運行停止(長大なもの,階段が併設されていないもの等は除く)

 (2) 列車に関する取組み
    ・運転本数の削減
    ・暖房の停止または設定温度を下げる

 前段で紹介してあった記事,杉山淳一「大規模停電の危機…その時,JR東日本は東京電力に電力供給していた」(『マイナビニュース』鉄道トリビア,2011年4月16日,http://news.mynavi.jp/series/trivia/094/ を,以下に引用しておきたい。

 東日本大震災で福島第1原子力発電所が被災し,東京電力の電力供給エリアでは電力供給不足となった。震災からしばらくのあいだ,計画停電が実施され,鉄道会社は列車の運休や本数削減で対応した。そんななか,JR東日本は鉄道部門で節電を徹底する一方で,東京電力へ1時間に21万kWhの余剰電力を供給していた。これは一般家庭約50万4,000世帯分の消費量に相当するという。

 JR東日本は,新潟県十日町市と小千谷市にまたがる信濃川発電所と,神奈川県川崎市に川崎発電所を所有している。どちらも国鉄時代に作られた発電所で,急速に電化が進む首都圏の鉄道に対して,安定的な電力を供給するために作られた。鉄道の電化は,当時の東京電力の需要と供給のバランスを崩すと考えられていたようだ。

 「節電効果と発電所のフル稼働で余剰電力が」 JR東日本の発表資料によると,地震発生前の3月10日18:00~19:00において,JR東日本の自営発電所は56万kWhを発電。その電力はすべて自社で消費していた。

 それが地震から6日後の3月17日18:00~19:00になると,自営発電所はフル稼働して62万kWhを発電。ここには,新潟県十日町市の協力による水力発電取水量の増量も含まれている。一方,JR東日本の消費電力は41万kWhと下がり,これはJR東日本の徹底した節電による結果といえる。

 補注)途中になるが,JR東日本の川崎火力発電所が故障を発生させていなかった事情は,本来の電力会社側(東電のこと)が関東地方を中心に各地に所有していた火力発電所のなかには,「3・11」の大地震によって発電不能になっていたところが相当数になっていた事実に比較するとき,

 もっとも,東京電力が所有していた多く火力発電所は当時,それまで未稼働・休止状態にあった発電所も含んでいたとはいえ,相当数が臨機応変に対応できていなかった当時の事情は,実に情けない会社経営をするのが東電だと感じさせた。あの横暴な「計画停電」実施の思い出とともに,当時に関連した事情としては忘れられない「当時の出来事・記憶」である。

〔記事に戻る→〕 JR東日本の節電内容は,運行本数の削減のほか,客室の冷暖房の停止にくわえ,日中の一部区間では室内灯の消灯も実施した。駅構内では日中時間帯のコンコースやホームの消灯や減灯,エスカレーターの運行停止も実施中だ。エスカレーターに関しては,長大な場合や付近に階段がない場合は除外されているが,大半のエスカレーターは停止中であり,メタボな筆者にとってはこれで足腰が鍛えられ,健康になりそうな勢いであるのはここだけの話だ。

 話は戻ってJR東日本の発電量は62万kWh,自社の消費は41万kWhまで絞った。その差,21万kWhについて,JR東日本は東電管内の深刻な電力不足に対応するため,なんと東京電力に供給していたのだ。21万kWhというのは,川崎発電所の発電機4台のうち,最大電力発電機1台分に相当する。

 電気事業連合会によると,一般家庭の消費電力は1カ月に300kWhとのことなので,一般家庭約700世帯の消費電力1カ月分に相当する。1時間あたり平均にすると約50万4000世帯分となる。JR東日本は節電だけではなく電力供給にも協力し,そして新潟県十日町市も間接的に電力不足の解消に力を貸してくれていたことになる。

 〔当時〕連日報道されていたように,JR東日本も鉄道設備や職員が被災し,大きな損害を被っていた。これによる業績の悪化は免れなかった。それにもかかわらず,JR東日本は被災者の支援や被災地の復興のためにと5億円の支援を決定した。また,もともと赤字だった三陸方面の普通路線についても「地域復興のために必要」と全線を復旧させる意向だという。


 --さて,こういった事実を踏まえ,よく理解したうえで,前段に登場させた野田伊佐也は,JR東日本の鉄道関係敷地内への放火事件を起こしていたのか?(上の紹介したユーチューブ動画サイトの話題は,ごく最近のニュースだったので,本文の内容からだとだいぶあとの時期となるので,で,念のため……) 

 a) 電力の消費量が多い業種は鉄鋼業,有機化学工業製品製造業,パルプ・紙・紙加工品製造業の順となり,自家発電の電力量が多い業種は,パルプ・紙・紙加工品製造業,鉄鋼業,有機化学工業製品製造業となる。

 パルプ・紙・紙加工品製造業では,製造過程において発生する黒液や原材料の廃材をバイオマス燃料として発電に使用し,自社で消費する以外にも,売電するケースもある。なお,紙の製造過程において,蒸気を大量に使用することから発電機は蒸気タービンを導入する施設が多い。

 註記)https://www.fuji-keizai.co.jp/market/12078.html 参照。

 b) 旅客部門におけるエネルギー源別の構成比の変化をみると,主として乗用車に使われるガソリンの割合が1965年度の53.0%から2012年度では79.5%に上昇した一方,主として鉄道に使われる電力の割合は1965年度の 7.2%から2012年度には 3.0%に低下した。

 註記)http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2014html/2-1-2.html 参照。

 以上,a) と b) の記述説明にはさらに,関連する前提・条件があれこれ付帯するので,ここではあえて単純化した話題としておいた。電力をたくさん消費する産業・業種は,とりあえず関東地方に限っていっても,JR東日本という鉄道業だけではない。そういう時代になっていることは,容易に理解できる。

 鉄道関係でもしも「電力消費の問題」をとりあげたいのであれば,たとえば「リニア新幹線の使用電力は?」という文書が,こう議論していたので聞いてみよう。

 前述にあった「JR東日本〔全体で〕は鉄道部門で節電を徹底する一方で,東京電力へ1時間に21万kWhの余剰電力を供給していた。これは一般家庭約50万4,000世帯分の消費量に相当する」という記述を念頭に置き,読んでみればよい。こちらは計画されているリニア新幹線1本にだけ関する言及である。

 「空気抵抗を最大限減らすよう車両形状を最適化し,車両重量も新幹線の半分程度にするなど,省エネの技術的努力を重ねた実験車両の結果から推定された最善の数値であると推察される」として,「ピーク時の消費電力27万KWないし74万KWは,100万KW級の原発1基の出力の約4分の1ないし約4分の3に,それぞれ相当する。

 つまり,東京~大阪開業時にほぼ原発1基分相当の電力が必要になるということである。元JR東海会長まで務めた葛西敬之(生死年,1940年10月-2022年5月)は,「3・11」直後であったが,原発の事故など恐れずに,リニア新幹線を実現するためには原発の新増設を実現させろみたいな「暴言そのもの」を吐いていたが,このようなアベ友がいたからこそ,この日本はドンドン傾いてきたし,本当にダメな国家にまでずり落ちてきた。

 註記)前掲,http://web-asao.jp/hp/linear/%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%81%AE%E4%BD%BF%E7%94%A8%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E3%81%AF%EF%BC%9F.pdf 参照。

 いずれにせよ,前述してみ野田伊佐也が犯したごとき当時の犯罪,JR東日本敷地内の諸回線を標的にした放火事件は,その標的の選択そのものにおいて,なにか大きな勘違いをしていたというほかあるまい。

 暴力や破壊ではなくて,この国を破壊しつづけている世襲・暗愚の政治屋や基本精神が亜流であった経済人に対しては,真正面から言論によって批判しつづけていく基本姿勢が肝心である。このことは,安倍晋三や葛西敬之を反面教師(!?)としてひとまずでも,位置づけておく余地があったことを意味する。

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