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戦争と国家,アメリカ「帝国」の欲望に即して考えるが,ロシアのプーチンも同じ穴のムジナである事実はウクライナ侵略戦争で自明

 ※-1 帝国主義の悪業・罪業

 「本稿」は,初めは2008年の6月30日に書いていた文章であった。米帝(アメリカ帝国主義)の本性をほんの少しだけ,「歴史の事実:記録」をなぞって学習していた。

 a) 最近の話題としてならば,2022年2月24日にあの「プーチンのロシア」が「おっぱじめた〈ウクライナ侵略戦争〉」は,そのもっとも典型的な帝国主義風の,独善的な専断性を満載した,しかも「ロシアのプーチン」的な特性を有した,それもいくらかオカルト的な強権体制を,惜しむことなくわれわれに向けて披露してくれた。

 補注)日本にも一定の人数,ロシアン・スクール的な〈脳細胞の造り〉になっていた,つまり,そのほどよい洗脳状態にある連中がいて(佐藤 優,鈴木宗男,森 喜朗など),なにかにつけては,ロシアに有利で都合のいい言説をばらまこうとする習性の持主であろうとする立場から,あれこれ語りたがる習性をもっている。

 もっとも,日本の外交官のみならず,政治家にはそれ以上に相当数のアメリカン・スクールの連中もいるから,「どっちもどっち」であって,われわれはその一方だけのいいぶんを聞くといったごとき,単細胞的な応答はしないほうが懸命である。

 小泉純一郎や安倍晋三もアメリカにはベッタリの政治屋であって,あたかもアメリカ様のためにであれば,「自民党をぶっこわす」だけでなく,「日本も「?!★▲♥ ス」ことも,平然とおこなってきた。

 とりわけ,アベノミクスというアホノミクスが,2020年代における日本の政治・経済を,それこそガタガタにしつくしてしまい,いまや「衰退途上国的な状態」にまで追いこむ始末となったその「罪と罰」は重大だ,とだけいって済まされるような,今日的なこの国の問題ではなくなっている。

 小泉純一郎政権の為政( 2001年4月26日-2006年9月26日)は,その安倍晋三の拙政(2012年12月26日-2020年9月16日)を登場させるための伏線に引いていたことになっていた。すなわち,純一郎は手兵の竹中平蔵を使いながら,アメリカに従属する国家としての日本の立場を,より堅固にするための役回りを遺憾なく果たしていた。

 その後,2000年代における自民党政治は,民主党政権時代をはさんで,そして東電福島第1原発事故という「原発敗戦(= 第2の敗戦)」という大事件を跳躍台にしたかのようにして,いよいよ「後進国日本の再来(リバイバル)」のごとき様相を生起させる始末にまであいなっていた。

 ところで,慶応義塾大学名誉教授で憲法学者の小林 節は,勤務していた大学のゼミ生で在学中に外交官試験に合格した優秀な学生がいたが,彼が外交官になってからあるとき,アメリカ合衆国にしばらく勤務してから帰国したそのさいであったが,彼がみせつけた様子を,つぎのように形容していた。

 まるで「アメリカ国務省」の人間みたいになっていた,と。日本の外務省内では,次官の職名(地位)よりも駐米アメリカ大使のほうが実質,格が上だというもっぱらの評判というか〈格づけ〉があるらしく,前段の話題はさもありなんの話題であったことになる。

 そこで,小林 節が話に出したその慶大法学部卒の駐米アメリカ大使は誰かと探してみたら,おそらく,2023年10月24日から駐米大使として出向いた(12月1日着任,2024年2月27日信任状提出との記述がある)山田重夫だと思われる。この山田が外交官として二等書記官になり初めて仕事に就いた任地が,在米アメリカ日本国大使館であった。

現在「駐米アメリカ大使」山田重夫
お写真は次掲のもの
駐米大使になる外交官は大部分が東大法卒

 b) 欧米諸国(とくに蘭・西・葡・英・仏・独・米,そして露)の,近代史に刻んできた「大昔からの常習犯」の,しかも白人たちが構成する「帝国主義は,アフリカやアジア,中南米諸国に対する徹底的な搾取・あくなき収奪を基本になりたっていた。

 大英博物館は世界各地から財宝を収奪してきたその集大成を誇る,いわば泥棒・強盗一家の貯蔵庫(保管所としての宝庫)である。日本もかつて大韓帝国を植民地していた時代,各地に所在した古墳を暴き,しかも民間人までがその盗掘作業によって金銀の財宝を収奪してきた。

 最近では,解放後のとくに韓国では,独自の調査・発掘により,日本の博物館が宮内庁などが秘匿しつづけている古代史が生んだ財宝よりも貴重な発掘品が発見されるようになっていたものの,敗戦前に旧大日本帝国が盗んできた韓国(朝鮮側)の損失は,文化史的な観点からみて尋常ならざる重大な歴史への冒涜・収奪を意味した。

 c) さて,2022年2月24日に発生した戦争事態であったが,民主主義とはなんの縁もゆかりもなく,したすら単なる強権・専制国家である「ロシアのプーチン」が,なんだかんだとリクツ(オレのものはオレのもの,オマエのものもオレのものという類いのそれ)をこねくりまわしては,ウクライナへの侵攻を開始していた。

 爾来2年と9ヶ月近くが経過した。しかし,「特別軍事作戦」だと称してだったが,ウクライナに対して歓迎されざる侵略軍を送りこんだ「ロシアの独裁者プーチン」は,いまだにウクライナの人びとからは強い反撥を受けており,ウクライナ軍は停戦しようとする気配をはっきりとは出していない。

 ウクライナ側は米欧諸国の軍事援助を受けつづけており,また自国なりにいまふうの兵器生産(とくに空と海の両域で)に努力もしながら,しかも,21世紀における「戦争の技術方法論」を飛躍的に変質させる戦い方を創造しながら展開してきた。

 また,ロシアの国家宗教であるロシア正教会は,ウクライナへの侵略戦争に動因させる将兵たちに対して,その神父たちは「聖水」を彼らの頭に振りかけながら,ウクライナへの派兵を督戦する役目を果たしている。

 d) また2024年10月7日に始まったイスラエルによるガザ地域への「ハマスからの数千発のロケット弾攻撃」によって千5百名ほどの犠牲者を強いられた紛争(戦争)勃発を受けて,これへの反撃をおこないすでにパレスチナ人側ではそれよりも一桁多い人びとが老若男女を問わず命を奪われている。

 ハマス側は民間人のなかにまぎれこんでイスラエル側を攻撃する戦法を採っているかぎり,イスラエル側にいわせれば民間人の犠牲は不可避だという理屈になる。中近東において近代以降,さまざまなかたちで発生してきた歴史問題(紛争問題)の根源には,あのイギリス帝国そのものが居た。

 e) 本ブログ筆者は最近,中国帰還者連絡協議会・新読書社編『【新組新装】侵略-中国における日本戦犯の告白』新読書社,1958年7月7日という本を入手し,読んだことがある。

 その本は,有名であった光文社のカッパブックス『三光』1957年が「右翼の脅迫によって絶版とされた」のち,新読書社から1958年に初版が出版されたものの,その「新組新装」版になる。

森村誠一(1933-2023年)
90歳になって死去

 同書『侵略』を読んでみればすぐに気づかされる「日中戦争」-1937年7月7日に開始された〈支那事変〉,当初は〈北支事変〉-と称した日本帝国の中国へのさらなる侵略戦争の進行過程では,日本軍がどれほど残虐な行為を犯してきたかについて,戦犯として中国側に拘束された将兵たちの口からじかに語らせている。

 この『侵略』のなかにも登場するように,ABC兵器のうち旧日本軍が化学兵器を使用していた事実は,指摘するまでもない「歴史のその事実」であって,例の731部隊の存在は敗戦後,アメリカ側がその実態(関連する情報・資料)を全体的に入手する意向をもって,関係者全員を免罪するというこれまたひどい戦後処理をしてきた。

 森村誠一の『悪魔の飽食』光文社は,1981年に刊行されていたが,旧日本軍の戦地中国における蛮行を描いていただけに,こちら側でその事実(真実)を周知していた「当事者」をはじめ,「東京裁判史観」を蛇蝎のように毛嫌いする「大東亜共栄史観」の持主たちは,森村を第1番の天敵(仇敵)であるかのように攻撃することもあった。

 f) さて,本日に復活させ再掲させる,それも16年ぶりに目覚めさせたこの記述は,いつもの文章に比較したら分量が控えめであった関係もあり,冒頭での序論に当たるこの段落を以上にように書いておき,とくにアメリカ帝国主義の問題を以下では議論していくものとなる。

 ということで,16年前に書いた記述がいまもなお,「米帝」流儀の変わらぬ歴史的な本質が,その程度の短い歴史の経過のなかで変わるわけもない,その付近の「史実」をめぐり,以下にわずかの分量でしかないが,議論をおこなってみることにした。

 

 ※-2  戦争と国家,アメリカ「帝国」の欲望 -ビジネスとしての戦争問題,戦争は誰のため,なんのために起こされるのか-

 ★ アメリカ「帝国」の世界支配 ★

 1) 戦争と宣伝

 アンヌ・モレリ,永田千奈訳『戦争プロパガンダ 10の法則』(草思社,2002年3月)と題した本がある。本書は,イラクにアメリカが戦争をしかける,ちょうどその1年まえに訳出・公刊されていた。

 本書は,ブリュッセル大学の気鋭の歴史学者が「戦争プロパガンダの真実」,すなわち「これまでに戦争当事国がメディアと結託して流した〈嘘〉を分析,歴史のなかでくり返されてきた情報操作の手口,正義が捏造される過程を」,題名『戦争プロパガンダ 10の法則』に則して「浮き彫りにする」というのであった。

 本書の目次は,こうである。

  第1章 「われわれは戦争をしたくはない」
  第2章 「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
  第3章 「敵の指導者は悪魔のような人間だ」

  第4章 「われわれは領土や覇権のためではなく,偉大な使命のために
       戦う」
  第5章 「われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残
       虐行為におよんでいる」

  第6章 「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
  第7章 「われわれの受けた被害は小さく,敵に与えた被害は甚大」
  第8章 「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」

  第9章 「われわれの大義は神聖なものである」
  第10章 「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」

『戦争プロパガンダ 10の法則』目次

 「第1次大戦からアフガン空爆まで,あらゆる戦争に共通する情報操作・正義捏造の手口を,気鋭の歴史学者が読み解く,衝撃の書」であると宣伝された本書〔2001年発行〕は,2003年3月のイラク戦争開始前後におけるアメリカ政府の「イラク侵攻の正当性」に関する説明の内容が,いかに虚偽と欺瞞に満ちていたかも,予測的に説明するものとなった。

 いまでは,2003年3月にイラク戦争を起こしたアメリカの立場に関していえば,わずかであっても,正しい要素あるいは理由があったと弁護できる人はいない。もしも,そう断言する人がいたとしてもただ1人,もうすぐ任期を迎える〔これは当時に合わせた表現であったので念のため〕ブッシュ大統領だけである。

 補注)ここで名前の出たその大統領のフルネーム(姓名)は,アメリカの第43代大統領となったジョージ・ウォーカー・ブッシュである(1946年7月6日,年齢 78歳)。また,父のジョージ・H・W・ブッシュが第41代大統領であった点は,周知のとおりである。

 ブッシュ・ジュニア-はいまさら,イラク戦争をしかけたアメリカの説明が「当初より嘘」だったことを否定していない。イラクへの侵略戦争を始めた理由など,そんなことは,もうどうでもよかったのである。ともかく,アメリカという国家の立場が抱く欲望・願望を達成しようと,がむしゃらに,開戦の理由をこじつけていたに過ぎない。

 その核心となっていたアメリカ帝国の好き勝手しだいは,「ロシアのプーチン」も「プーチンのロシア」風に,きわめてご都合主義で身勝手のきわみでしかなかった隣国への侵略戦争を,〈核の脅し〉もチラつかせながらであったが,いまもなお続行中である。

 最近のプーチンは北朝鮮との軍事同盟関係を結び,2024年8月8日からウクライナ軍が侵出し占拠しているロシア領クルスク州の戦闘地域に,11月1日になるまではすでに,北朝鮮兵を配備させていた模様である。さらに,すでに両軍の戦闘状態が始まったとする報道もなされていた。


 ※-3 アメリカの帝国主義的な政治行動

 あるホームページは,アメリカ帝国の行動類型を,つぎのように表現している。

  註記)以下は,永井俊哉「ブッシュはなぜ戦争を始めたのか」『阿修羅 掲示版』2004年2月3日,http://www.asyura2.com/0401/war47/msg/603.html 参照しての記述である。

 戦争の口実を求めていたアメリカ政府が「2001年の9・11」に,なんらかのかたちでかかわっていた可能性はかなり高い。太平洋戦争のきっかけとなった真珠湾攻撃,ベトナム戦争のきっかけとなったトンキン湾事件,あるいは湾岸戦争のきっかけとなったイラクのクエート侵攻など,過去の事例をみればわかるように,工作活動によって戦争の大義名分を捏造することは,アメリカの常套手段である。

 アメリカが日本を真珠湾攻撃へと誘導したのは,戦争によって大恐慌以来のデフレを克服する必要があったからである。同じ説明は,今回の9・11にも使うことができる。すなわちアメリカは,ネットバブルの崩壊によって生じたデフレの危機から脱却するために戦争をする必要があった。

 だから9・11は,世論を戦争へ駆り立てるため,アメリカ政府が以前から起きることを望んでいたテロ活動だったと考えることができる。

 湾岸戦争がアメリカに繁栄の10年をもたらしたのに対して,日本には「失われた10年」しかもたらさなかった。それは,日本が日本のマネーを日本の繁栄のために使うことができなかったからである。湾岸戦争でアメリカが使った金は,約610億ドルで,そのうち9割近くは,他の国が拠出した。

 補注)いうまでもないが,その「失われた10年」については,いろいろな観方もありえた。だが,現状の段階では日本が,ともかくすでに,その「第4周回目」にまで進み入った様相ならば,正直いって「堅調になってしまった」といえそうである。

 現状におけるこの国の深刻な内情を,ありのままにとらえて表現するとどうなるか? 21世紀の第1・四半世紀は,まさしく「日本の社会経済・産業経営が衰退への一途」であった事実史として,歴史(経済史・経営史)の教科書に記述される時代となった。

 人口統計の次元でみると,2023年になると出生率(合計特殊出生率)が1.20まで下がり,過去最低を更新した。同年の出生数は72万7288人(人口千人当たり人数だと 6.0)で,これも過去最少となった。一方,死亡数のほうは157万6016人で過去最多となった。この差はもちろん総人口がその減少分である。

補注:人口統計

 ちなみに,日本が湾岸戦争のために拠出した金額は,合計135億ドル。この出費は国債の発行と増税で賄われた。湾岸戦争のおかげで,アメリカは1991年に,10年ぶりに経常収支を黒字にすることができた。そして,その後ネットバブルを発生させ,他の国からの資本フローによって,経常赤字をファイナンスした。

 ★「筆者のコメント」:アメリカは当時,受けとって使った該当部署から領収書を出しておらず,具体的に会計報告もしなかった。どのように費消されたのか隠している。アメリカは,湾岸戦争のために日本が用立てした戦費をほかの用途に勝手にまわして使いこんでいた。

〔記事に戻る→〕 経常赤字の問題を解決したいのならアメリカは,戦争ビジネスで儲けるなどという邪道を捨て,先進国らしく国内にハイテク産業を育てればよい。しかし,画期的な新技術の多くは,軍需産業における採算を度外視した研究開発から生まれるものである。たとえば,1990年代のバブルでもてはやされたインターネットも,アメリカ政府による軍事技術への投資のなかから生まれてきたテクノロジーなのである。

 ★「筆者のコメント」:経営学に関する諸理論でもそのように,戦争の必要から生れたものが多い。たとえばOR〔オペレーション・リサーチ〕がそれである。経営戦略論の講義は軍事問題の戦略論から始まる。

〔記事に戻る→〕 アメリカは今後も,デフレになると他国の金を使って戦争し,リフレをおこない,インフレになると軍縮によって軍需技術を民間に移転し,経常黒字国からの投資でハイテク産業を育て,そしてバブルが崩壊し,再びデフレになると,工作活動によって戦争の口実を捏造・・・というサイクルを繰り返すことで,他国民を搾取しながらみずからの繁栄を維持していこうとする。


 ※-4「ビジネスとしての戦争」&「戦争としてのビジネス」

 ブッシュ・ジュニア〔息子〕大統領が起こした対イラク戦争(2003年3月20日開戦してから完全に終結するのは2011年12月4日)は,ブッシュ・シニア〔パパ〕大統領のときの湾岸戦争(湾岸戦争(1990年8月2日-1991年2月28日)とは違って,多くの国の理解をえられなかった。

 それでも,ネオコンが強引に戦争に踏みきったのは,他国から拠出金がえられなくても,イラクの石油で戦争資金を賄うことができると計算したからであった。

 ネオコンが石油利権にこだわるのは,石油そのものが欲しいからではなく,戦争資金が欲しいからである。アメリカは,石油を媒介にした三角貿易で,経常赤字を解消しようとしているが,もしそれがうまくいかなければ,直接日本に資金拠出を迫ることになる。

 ★「筆者のコメント」:「戦争は経済でありビジネスである」からこそ,本ブログも関連するテーマをかかげてあれこれ議論していた。ビジネスが綺麗ごとでないという核心部分は,それが戦争と密着するときもっとも鮮明に露呈することになる。

 2001年9月14日,アメリカで「ただ1人,議会で大統領の武力行使容認決議案に賛成しなかった議員がいる。彼女の名はバーバラ・リー,民主党,カリフォルニア出身の黒人女性」であった。

 「この日から,彼女は生命の危険の脅かされ,護衛なしに外出できない状態になった」。結局「戦争が終わるたびに,われわれは,自分が騙されていたことに気づく」のであった〔が〕(モレリ『戦争プロパガンダ 10の法則』9頁)。

 ★「筆者の補足」:Barbara Lee(バーバラ・リー)は,2001年9月14日,アメリカ下院議会がブッシュ大統領に武力行使を認める決議を採択したさい,ただ1人反対票を投じて,こういう文句を含む演説をした。

 I believe that within the next century, future generations will look with dismay and great disappointment upon a Congress which is now about to make such a historic mistake.

 ただしこのような批判は,ブッシュ大統領などアメリカ・エスタブリッシュメントにとっては「屁とも思わぬ」ものであった。

 ※-5 む す び

 以上のような戦争宣伝にまつわる出来事・背景事情は,けっしてアメリカ帝国に専売のものではない。ついこのあいだまで,どこかの大○○帝国の舞台でも,長らく演じられてきた「それ」でもある。

 「非国民」「国賊」「米英のスパイか!」という定型:お決まりの罵詈雑言が,戦争反対者を封じるための殺し文句として,便利に活用された。これら,戦時期に常用された文句は,議論の余地を事前に閉め出すための決まり文句として,大いに悪用された。

 ところで,21世紀における日本国が,かつての「戦争の時代」に似た政治社会になっていることに気づいている人は少ないのではないか。いわば「ハードな戦時社会体制」から「ソフトな有事社会体制」への変化が,陰険かつ穏健にも工夫され創造されているのである。

 しかも,この記述じたいが始めて(初版的に初め)公表されたときは,現在では当たりまえになっている「安全保障関連法」(2015年9月成立)は,まだ存在しなかった。だが,冒頭から触れた湾岸戦争やイラク戦争が発生してきた過程において,日本はたとえばすでに,つぎのような「実質的な対米従属軍〈自衛隊3軍〉」としての分担を,否応なしに強いられていた。

 以下は,元読売新聞記者で,現在は社会学者,著述家であるといわれ,日本大学危機管理学部特任教授である勝股秀通が,いまは完全に集団的自衛権を発動できる国となったこの国を,それ以前の段階においてであったが,すなわち実質的には,アメリカインド太平洋軍の属軍として作戦行動させられてきた日本国防衛省自衛隊の存在を,すでにつぎのように描写していた。

 この記述の段階では遠慮がちに言及されていた自衛隊の「対米属国軍的な基本特性」としての位置づけは,2015年9月に,安倍晋三の第2次政権が成立させた「安全保障関連法」によって,その完全なる体現を,文句なしに実現させられることになっていた。

 2004年1月,司令官を務めた在日米軍のある幹部は,離日するにあたって,自衛隊の役割が大きく変化したことに言及しながら,アジア地域を中心に,米軍と自衛隊がより緊密に連携しあうことの重要性を指摘した。

 在日米軍幹部の言葉は,米軍が自衛隊を見る目の変化であり,いいかえれば,米軍が自衛隊を,純軍事的に『イコールパートナー(Equal Partner)』として位置付けたことを意味している。

 その源泉は,紛れもなく2001年9月11日,米国で発生した同時テロだ。同時テロ以降,世界を取り巻く新たな安全保障環境において,平和を獲得し,維持するための国際協力が,いままでにも増して重要になった。

 日本は,後方地域支援活動に限定しながらも,インド洋に海上自衛隊の艦船を派遣し,アフガニスタンを舞台にした不朽の自由作戦(対テロ戦)に参加する米英軍など各国海軍艦艇に燃料補給をおこないい,イラク戦争後は,疲弊したイラクの復興支援活動を目的に,陸・海・空3自衛隊の派遣を決めている。

 イラクでは自衛隊へのテロ攻撃が懸念されるなど,危険度だけをみても,自衛隊がこれまで参加してきた国連平和維持活動(PKO)などとは次元が違う。このため,自衛隊の “戦地派遣” との批判もあるが,自衛隊の活動をめぐるドラスティックな変化は,在日米軍幹部が指摘したように,米軍と自衛隊,その根っこにある日米同盟関係が新しいステージに到達したことでもあるのだろう。

 註記)「第三章 対テロ・イラク戦にみる対米協力」『日本国際問題研究所』https://www2.jiia.or.jp/pdf/russia_centre/h16_us-eu/05_katsumata.pd)

実体は対米協力ならぬ対米従属

 いまの日本国防衛省自衛隊3軍は,まさに「戦地派遣」そのものができるし,する軍隊組織として位置づけられている。

 それも,アメリカとの間柄としてならば,「米軍が自衛隊を,純軍事的に『イコールパートナー(Equal Partner)』として位置付けた」という事情を基盤にして,しかも安全保障関連法が施行されている現段階となれば,

 そのイコールパートナーとはこの真意そのものが,けっして日米軍事同盟関係としてイコールではない,しかもそのあからさまな「日米服属の上下関係でしかありえない軍事同盟」の実情から目を背けてはいけない。

【参考記事】-『日刊ゲンダイ』の記事は有料なので最初の段落しか読めないが,題名:見出しで検索してもらえれば近日中に,ほかに転載された同一文で読めるようになっているかもしれないので,そのように試してほしい-


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