原子力発電と核燃料サイクルという「消えない《悪魔の火》」の再生産過程を確立させたい日本国の願望,その真意
※-0 2024年11月7日の『毎日新聞』と『日本経済新聞』の朝刊にそれぞれ報道されていた中間貯蔵施設の話題
まず最初にこれら記事を紹介しておきたい。『毎日新聞』と『日本経済新聞』2024年11月7日朝刊にそれぞれ掲載,報道されたものである。
この『毎日新聞』の記事でとくに注意したいのは,「最後の2段落」に説明されているこの「中間貯蔵施設」の現実的な意味である。原発体制が現実にいままで継続して実在してきた事実があるにもかかわらず,この中間貯蔵施設のための敷地がまともに確保できていなかったというごとき,きわめてズサンな原子力エネルギー政策の一環,
換言するならば,その「静脈菅」的な役割を分担するはずの中間貯蔵施設が,ともかく,当初から正式な場所としては,ほとんど確保されていなかったといった,この実話を聞かされて驚かない人がいたら,むしろ逆にビックリすべきである。
つぎにその点を反映させていたかのような核燃料サイクル関連の図解を2点紹介しておく。いずれにも,中間貯蔵施設に該当する図解部品の記載・記入はされていない。もっとも作図上,そのような位置づけでよいと解釈されているとみなすこともできる。
以下に参照する『日本経済新聞』朝刊の記事の場合は,見出しに「原発,安全稼働に一歩」と書いていながら,その続きの見出し文句には「中間貯蔵搬出先は見通せず」などと,
核燃料サイクル(原子力エネルギーのリサイクル)問題の基本要件が,肝心な関所を通れるみこみが立っていない事実も併せて報道していたのだから,これを読んだ人が,原発問題を多少でも理解している場合は,ズッコケルこと請け合いである。
要は,日本における原発利用体制は依然,基本的にはまともな「トイレのないマンション」状態のままに置かれている。日本の原発史において「核燃料サイクル」史の側面は,どのくらいの歴史・記録をもつのか,つぎに簡単に触れておこう。
この記事にも最後の2段落が肝心な事実に言及している。いわく「核のごみの課題が残されたままでは,次世代に負担を先送りすることになる」と。上の日経記事からはさらに図解のみ取り出し,再度つぎにかかげておきたい。赤丸は引用者が付した。
この図解でいうと,中間貯蔵施設としての役割は,青森県むつ市の六ヶ所村再処理工場内敷地が受け入れてきた実情があった。だが,本格的に専用として整備された中間貯蔵施設は,いままで皆無であった。というように,なんともいいかげんなあり方のままで,ともかく,日本の原発事情はその推進体制のみが無鉄砲に推し進めてられてきた。
そもそも,日本で初めて原子力発電がおこなわれたのは,茨城県東海村に設置された原子力研究所が設置されてから約1年後,1957年8月27日,実験用原子炉に初めて原子の火が入られた時であった。それからなんと,67年もの年月が経過してきたにもかかわらず,いまごとになっても再処理工場の段階以前の,中間貯蔵施設すら満足に確保できないでいたのだから,日本の原発体制は「トイレのないマンション」だと,半ば揶揄されての批判を受けて当然であった。
以上の記述に関連させては,日経記事が例示した図解と基本は同じであるが,中間貯蔵施設というものが,原発体制のなかでどのような位置・役目・機能を有しているのかを,さらによくしっておくために,つぎの図解とまた関連する新聞記事を添えておくことにした。
※-1 経済産業省資源エネルギー庁がマンガで説明した「核燃料サイクル」は夢がいっぱいに描かれているが,現実は半世紀以上もの時間が経過してもその悪夢のような核物資再利用のリサイクル構想は未実現
まずこのマンガを紹介する。
さて「六ケ所再処理工場 建設とトラブルの歴史」という関連の解説が,ネット上にはすぐにみつかったが( ↓ ),この解説は21世紀に入ってからの当初の時期,10年間内に関したものに限定される。しかし,この時期だけでも問題を何度も発生させており,これが六ケ所再処理工場の素性であった。
この解説を与えていたホームページはさらに,前段に参照した解説でみれば,最後の項目「▲-4 青森県の施設が日本のエネルギーを力強く支えていく」を充てて,日本の原子力エネルギー政策にはとても明るい見通しがありうるのだ,という具合に記述していた。
前段に参照した経済産業省資源エネルギー庁の説明によると,火力発電に使われる化石燃料(石油,石炭,天然ガス)は,一度燃やすと灰や煙になって使えなくなるが,原子力発電で使うウラン燃料は使い終わった燃料のなかから,まだ使えるウランなどを取り出すことができる。
それらをまた発電に使っていく流れを「核燃料サイクル」と呼ぶというように,原子力というネルギーはほかの化石燃料と基本的に異質・異種である特性が強調されていた。
しかし,原発の大事故を通してその恐ろしさを思いしらされている原子力エネルギーの「消えない火」としての根本的な《悪魔の火》としての基本特性が,ある意味ではしかたなくも,原子力発電で使ったウラン燃料のなかから,まだ使えるウランなどを取り出し,また発電に使っていく流れ,つまり「核燃料サイクル」を強いられるという原発関連の技術体系を生んでいた。
そのあたりの必然性に関した原子力というエネルギーの特性については,「核廃棄物,どうやって処分する? 環境に与える影響と実態」『looopでんき』2022年5月31日,更新日 2023年10月13日,https://.com/home/denkinavi/energy/environment/nuclearwaste/ という説明があり,この要をえた記述を参照しつつ議論を進めたい。
※-2 「核廃棄物,どうやって処分する? 環境に与える影響と実態」『looopでんき』2022年5月31日,更新日 2023年10月13日,https://.com/home/denkinavi/energy/environment/nuclearwaste/
あらかじめ断わっておきたい。この解説記事は長文なので,適宜に取捨選択しながらの紹介となる。また適宜に文章じたいを補正し,さらに連番の振り方もここでなりに着けなおしてある。
--2011年に起きた東京電力福島第1原子力発電所の事故以降,原子力発電が占める割合は大幅に下がっていたが,さまざまな理由からいまも稼働は続いている。
原子力発電所が抱える問題のひとつが,放射性廃棄物(核廃棄物)の危険性である。国内外では,どのような放射性廃棄物の処分方法が検討されているのか。
この記述では,放射性廃棄物が環境に与える影響と実態,最終処分方法である「地層処分」について詳しく解説する。
1)原子力発電
原子力発電は,原子核を核分裂させて熱エネルギーを取り出し,それを利用して発電する。原子力発電は,核分裂を起こしやすいウラン235が含まれたウラン鉱石から精製してえられる。そのウラン鉱石はさらに,発電に適するよう調整・加工して利用される。
ウラン235は中性子を吸収すると核分裂を起こし,そのさい,発生する熱を利用して発電タービンを回すのが原子力発電の仕組みである。ウラン235が核分裂を起こすときに発される熱エネルギーは,石油・石炭の燃焼でえられるものよりもはるかに膨大であり,原子力発電は効率の良い発電方法として世界各国で用いられている。
2)核燃料サイクル
原子力発電の使用済み核燃料は再利用することができるが,原子力発電の燃料であるウランの成分すべてが核分裂を起こすのではない。核分裂しやすいウラン235の濃度が100%になると,原子爆弾同然の爆発的な反応を起こす
ことになる。
反対に核分裂が起きにくいのがウラン238であり,実は,これが核燃料の大半を占める。発電のさい,中性子を吸収したウラン238は核分裂が起きやすいプルトニウム239に変化する。
とくに使用後の核燃料は,プルトニウム239や核分裂やほかの物質に変化せず残ったウラン235,ウラン238などが9割以上を占める。これらを再処理によって混合酸化物燃料(MOX燃料としての再利用は「プルサーマル」と呼ぶ)にすることで,再び原子力発電所で利用できる
3)放射性廃棄物
原子力発電で生まれる放射性廃棄物は,液体・固体・気体などさまざま。これらに対する処分は,それぞれ適切な処理をおこない,残存する放射能レベルに応じて対応方法を変えて処分される。
イ)高レベル放射性廃棄物
使用済み核燃料の9割以上が再処理によって再び原子力発電に利用されるが,残りは廃液となる。この廃液は溶かしたガラスとあわせて共に固められます。これが,高レベル放射性廃棄物であるガラス固化体である。
このガラス固化体は爆発などの恐れはないものの,放射能レベルが高く人体に有害なため,長い時間を経て放射能レベルが下がるまで,放射能を通さない安全な場所に保管しなければならない。
日本では,日本原燃株式会社が運営する青森県六ケ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターが保管を担っている。現在はここでは厳重に管理されていますが,より確実な地層処分をおこなう計画が検討されている。
同所では核燃料再処理工場も着工している。しかし,2021年時点で完成が25回延期されており,運用開始の見通しが立っていないのが現状でである。
ロ) 低レベル放射性廃棄物
この低レベル放射性廃棄物は,放射能レベルの高い順にL1,L2,L3と区別される。
L1 放射能レベルの比較的高い廃棄物:制御棒,炉内構造物など
L2 放射能レベルの比較的低い廃棄物:濃縮廃液,紙,布,イオン 交換樹脂など
L3 放射能レベルの極めて低い廃棄物:コンクリートや金属
これらのうち,廃液などの液体は濾過や蒸発濃縮を経て放射性物質を取り除き,紙や布などは焼却後に圧縮され,フィルターやイオン交換樹脂は貯蔵タンクに保管されて放射能レベルを下げたあと,ドラム缶に入れられる。
さらに,これらの処理を経た廃棄物は,基本的に地中に埋められるが,深さや地質によって4つに分類される。
なお,放射性物質を含む排気はバグフィルターを通して大気中に放出されます。放射性物質はバグフィルターでばいじんと一緒に捕捉される。
とくに低レベル放射性廃棄物の処分方法としては,つぎの措置がなされている。
トレンチ処分 人工構築物を設けない浅い地中に埋設する処分方法
ピット処分 コンクリートピットを設けた浅い地中に埋設する処分方法
中深度処分 一般的な地下利用に対して十分余裕を持った深度(地下 70m以深)に埋設する処分方法
地層処分 地下300mより深い地下に埋設する処分方法
とりわけ,この放射性廃棄物の処分方法については,これまで各国間でたびたび議論されてきた。そのなかで現状,もっともも妥当性が高いとされているのが地層処分である。ここからは,日本でも有力視されている地層処分について詳しく解説します。
4)現在,もっとも現実的な選択
放射性廃棄物の処分場所として地下が選ばれた理由は,現時点でもっとも現実的な選択であったからで,この放射性廃棄物のなかでもっとも強い放射能を発するのが,先述した使用済み核燃料である。
発生直後は数十秒そばにいるだけで人の生命に危険が及び,時間が経つにつれて放射能レベルは下がるものの,危険がなくなるまでには1000年から数万年という大変長い時間が想定されている。
そのような物質を人の活動や自然災害などの影響を受けやすい地上に置いておくことは危険視され,地下深部への埋設が考えられるようになった。これが地下300m以上に放射性廃棄物を埋める地層処分である。
補注)この付近の説明になると,まさしく「消えない火」としての原発で焚くために利用された核燃料の危険性,それも半恒久的であって,人間の壽命など軽く飛び越えて持続していく「使用後におけるこの核燃料有害物質」性は,なんともいいがたい極度の「有害的な危険性」を,われわれ人間・人類に向かい,ずいぶん遠い先の未来にまで残存しつづける。
電力の生産に利用される燃料としては,異例中の異例であるのが核燃料であることは,もはや説明の必要がないくらい明々白々である。水力発電に利用される「水」そのものは,有害でも危険でもない。
火力発電に利用される石炭・石油・天然ガスは,そのまま適切に保管していれば,核燃料のような危険性や扱いにくさは生じない。再生可能エネルギーの太陽光や風力,地熱はそれなりに扱いやすい。
原発とこの核燃料の国際価格は,これまで顕著に上昇してきた。ほかの火力発電用の燃料も値上がりがないわけではないが,核燃料のためのウラン鉱原産地の関係では,それこそ国家安全保障の問題にまでじかに通じる政治問題まで惹起させがちである。
〔記事に戻る→〕 地下深部は酸素が少ないため物質が変化しにくく,埋めたものの移動速度も非常に遅い。また,深さや地質を選べば放射能が漏れ出るリスクも最小で済む。
とりわけ問題になっていたのは,放射性廃棄物を後の世代に残してしまうことを考慮し,一定の期間は回収可能にしておく「回収可能性の確保」もなされている。将来世代の選択の余地をできるだけ残そうという考えである。
いまのところ,地層処分以上に現状に即した処理方法をもちあわせる国はない。
5)最適地の選定
地層処分において重要な要素となるひとつが,最適地の選定である。処分地の選定手順は,以下のようである。
【1】 文献調査 広域にわたる過去の火山活動などを文献から調査
【2】 概要調査 地下の状況を実際に調べる地盤調査(ボーリング調査) 【3】 精密調査 地下施設を建設し,より細密に行う地下環境の調査
地層処分の実施は,原子力発電を行う各電力会社が協力して立ち上げた原子力発電環境整備機構(NUMO)が主体的におこなってきたが,2021年時点で各自治体への呼びかけに応えているのは,北海道寿都町・神恵内村です。
補注)ここでいわれている「地層処分の実施」とは,いわゆる最終処分場を前提にした話題であり,それこそ一番困難な使用済み核燃料・関連の後始末問題を意味する。
6) 現在の貯蔵方法
現在採用されている貯蔵方法は,主に2つある。
まず1つは湿式貯蔵である。廃棄直後の燃料は高い熱と放射線量をもつため,まず水が循環する燃料プールで冷却され,その後,水やコンクリートといった放射線を遮断する物質で囲み,貯蔵する。
水を使う湿式貯蔵に対し,風を使う貯蔵方法が乾式貯蔵である。乾式貯蔵では,燃料プールで冷却された廃棄物を空気の自然対流が起きる「キャスク」という金属容器で貯蔵する。
いずれにせよ,使用済み核燃料の放射能レベルが,天然のウラン鉱物ほどに下がるまでには約10万年,再処理をほどこしても約8000年はかかる。それゆえ,何世代にもわたって安全に管理する態勢が構築・保持できることはもちろんのこと,その管理体制を維持していくためのリソースも考慮に入れなければならない。
なお,地層処分のほかにもさらに,高レベル放射性廃棄物の処分方法が検討されてきた。その方法を列記しておく。
海洋底処分
氷床処分(南極の氷に廃棄する方法も検討された)
宇宙処分
7) 海外の事例
日本では地層処分や再処理施設の新設が遅々として進んでいない。海外諸国でも同様である。
2021年時点で処分場の操業メドが立っているのはフィンランドとスウェーデンの2カ国のみである。
フィンランドでは,南西部に位置するオルキルオト島にて2016年12月から地層処分場の建設を開始していた。施設の名前は「オンカロ」。日本語で「洞窟」を意味する。
スウェーデンでは,原発事業者4社によって立ち上げられたSKB社が主導。地層処分の立地を調べる「総合立地調査」と公募に応じた自治体の処分場立地についての見通し,2つの調査を同時におこなう「フィージビリティ調査」がおこなわれていた。
2009年,最終処分地に選定されたのはフォルスマルク。ストックホルムから北に約120kmの場所にある。2011年には処分地の立地・許可申請が実施され,2031年ごろに操業を開始し,2070年代後半に処分完了と閉鎖を予定している。
8) エネルギーは選べる時代〔 引用者註記)なおこの項目は過誤を含むのでとくに注意して読みたい〕
稼働すれば核廃棄物が生まれることは避けられない原子力発電。しかし,発電時にCO₂ を排出しないというメリットもある。
〔この原発が炭酸ガスを出さないという虚説は,原発推進派の識者でも最近は「少しは出す」というように,発言を変質させてきた事実に即していっても,ほとんど誤論である〕
このようなメリットとデメリットを比較し,さらにこの記事でご紹介した核廃棄物処理についての取り組みを踏まえ,私たちの生活と未来にとってなにが重要かを考えなくてはならない。
〔原発に関しては,前段のごときマヤカシの解説がまかり通ってきた事実を,いまとなってみれば,議論のさい,慎重に考慮しておく必要となっている事実を,ここでは格別に強調しておく〕
とはいえ,原子力発電以外にも注目されているエネルギー源がある。その代表が再生可能エネルギーである。1人ひとりが使うエネルギーを選べる時代になり,地球環境保全への取り組みにつながる電力会社を自由に選ぶことができるようになった。(ここで,引照終わり)
結局「原子力発電以外にも注目されているエネルギー源がある。その代表が再生可能エネルギーである」と指摘されていた。しかし,原子力村における「論理に即してオウム返しに叫ぶ」としたら,この原発だけは「この再生可能エネルギー仲間」から外してはいけない,などと固執すべき必然性があったことになる。つまり,原発の原子力をどこまでも再生可能エネルギーと同列に並ばせておく必要性があった。
高木仁三郎に関して本ブログは以前,こういう記述をおこなっていた。関連する個所を,ここでも繰り返しておきたい。
原発は「稼働中においては炭酸ガスを少なめにしか排出しない」「温暖化の原因にはなっていない」といったごとき(しかし,廃炉工程に入ったらその後は何十年以上もの長期間にわたり,こんどは発電をまったくしない代わりに大量のCO2 を排出するのだが),オタメゴカシ的な発想にすらなりえない,お粗末に尽きたその種の理屈の誇示は,科学的にまとも認識ではありえかった。というよりは,そのまた以前の極めつきのトンデモな妄論であった。
それでは,なぜそのような原子力村の論理がいままで,大きな顔をしてのさばりつづけ,経済産業省資源エネルギー庁の立場が,国家担当機関としてだが,まだまだ継続されていきそうなのか? このあたりに関する議論は今回の記述ではできない。別の機会に譲る。
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