経営管理・人事体制としての「労働者差別の基本構造-営利追求をする資本制企業の本性」を否定できるわけもない現実のなかでさらに苦しむ「日本の労働者階級(非正規雇用・階層)」が存在するかぎり少子高齢社会への歩調は加速するしかない
※-1「〈人事アナリシスレポート 人事制度設計〉労働力人口(非正規割合の推移)~増える非正規,変わる非正規~」『TRANSTRUCTURE』2021.01.25,最終更新 2024.01.17,
なお,この記事の住所は,https://www.transtructure.com/hr-data-analysys/search/hr-analysis-report/p7303/
--いまからちょうど1ヵ月前に公表されていた人事関係のこの報告は,副題に「増える非正規,変わる非正規」という文句を付加していた。現況の日本は人口減少に拍車がかかって止らず,2023年の出生数となる72万6千人にまで減少・低下していた。
この出生数の減少は,関係官庁の未来予測というものが「例によって・いつもとおり甘々であった事実」に関してとなるが,たとえばこういう説明が与えられている。
そもそも,政府予測はかなり甘い試算である可能性が高い。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(平成29〔2017〕年推計,出生中位・死亡中位)では,
出生数が80万人割れとなるのは2033年,
70万人割れとなるのは2046年,
60万人割れとなるのは2058年
〔など〕と推計している。ちなみに,2065年でも出生数は約55万人を維持でき,50万人割れとなるのは上記の通り2072年と予測している。
註記)小黒一正「『2022年にも出生数80万人割れ』の衝撃--政府予測より20年前倒しの少子化をくい止めるには『異次元子育て支援』が必要だ」『Foresight』2022年6月9日,https://www.fsight.jp/articles/-/48928
つぎに『朝日新聞』と『東京新聞』から関連する図表を参照しておきたい。
すでに,2022年において出生数は80万人を切っており,77万747人にまで減少していた。2023年ははそれよりさらに4万5千人ほど減少して,72万6千人になっていた。
したがって,関係官庁の立てていた従来の予測は,「70万人割れとなるのは2046年,60万人割れとなるのは2058年と推計していた」というけれども,それよりも二桁単位で大外れになっていた。いってみれば,それこそ脳天気もはなはだしい「人口統計の現未来から近未来」に対する分析・予測をくわえていた。
※-2 外国人労働者の人口統計をみると,2023年10月31日の時点で,つぎのように報告されていた
◆「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(2023年10月末時点)◆
=『厚生労働省』職業安定局外国人雇用対策課
海外人材受入就労対策室
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37084.html =
~外国人労働者数は初の200万人超え~
厚生労働省はこのほど,令和5〔2023〕年10月末時点の外国人雇用についての届出状況を取りまとめましたので,公表します。
外国人雇用状況の届出制度は,労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律にもとづき,外国人労働者の雇用管理の改善や再就職支援などを目的とし,すべての事業主に,外国人の雇入れ・離職時に,氏名,在留資格,在留期間などを確認し,厚生労働大臣(ハローワーク)へ届け出ることを義務付けています。
届出の対象は,事業主に雇用される外国人労働者(特別永住者,在留資格「外交」・「公用」の者を除く。)であり,数値は令和5〔2023〕年10月末時点で事業主から提出のあった届出件数を集計したものです。
◎ 届出状況のポイント ◎
外国人労働者数は 204万8675人で前年比 22万5950人増加し,届出が義務化された平成19〔2007〕年以降,過去最高を更新し,対前年増加率は 12.4 %と前年の 5.5%から 6.9 ポイント上昇。
外国人を雇用する事業所数は 31万8775 所で前年比 1万9985 所増加,届出義務化以降,過去最高を更新し,対前年増加率は 6.7%と前年の 4.8%から 1.9ポイント上昇。
国籍別では,ベトナムがもっとも多く 51万8364人(外国人労働者数全体の25.3%),次いで中国 39万7918人(同19.4%),フィリピン 22万6846人(同11.1%)の順。
在留資格別では,「専門的・技術的分野の在留資格」が対前年増加率としてもっとも大きく 59万5904人,前年比 11万5955人(24.2%)増加,次いで「技能実習」が 41万2501人,前年比 6万9247人(20.2%)増加,
「資格外活動」が 35万2581人,前年比 2万1671人(6.5%)増加,「身分に基づく在留資格」が 61万5934人,前年比 2万727人(3.5%)増加。
一方,「特定活動」は 7万1676人,前年比 1687人(2.3%)減少。
こうして在留する外国人総数は,2023年6月末時点で322万3858人(前年末比 14万8645人,4.8%増加)にまで増加しており,過去最高を更新しているなかで,その統計を増加させた主因は「労働者」として入国する外国人の増加にあった事実にあった。
補注)出入国在留管理庁「令和5〔2023〕年6月末現在における在留外国人数について」2023年年10月13日,https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00036.html 参照。
※-3 しかし,四半世紀以上も前から日本は人口減少に備えて1千万人単位で移民を受け入れるべきだと提唱しつづけてきた人物,坂中英徳がいた
坂中英徳(さかなか・ひでのり,1945-2023年)は,法務省出入国管理庁のなかで34年間入国管理行政に携わり,東京入国管理局長,名古屋入国管理局長,福岡入国管理局長,仙台入国管理局長などを歴任してきた体験をもとに,
「50年間で移民1000万人受け入れる」という移民 1000万人政策を提唱し,移住を推進しないで衰退する「小さな日本」ではなく,移住を推進する「大きな日本」をめざすべきだと主張した。
坂中英徳は退職後,外国人政策研究所を設立し,前段のごとき移民政策の実現のために,さらに尽力してきた。坂中は日本敗戦の年5月,現在の北朝鮮に生まれ,大学卒業後は法務省で入管行政にたずさわってきた。その体験のなかで在日朝鮮人たちと出会い,以上のごとき移民政策を提唱した。
それにしてもいまとなってみれば,坂中英徳が提示した移民の人数1千万にというのは,まったく足りない数値であったことに気づかされる。その点は現在の時点になってみれば,人口が急激に減少しだし,しかも少子とともに高齢者の比率が高まっていく趨勢を観れば,否応もなしに「思いしらされる」ごとき「現在なりの実相」になっている。
なお,前段の記述のなかに「特別永住」という〈在留資格〉を有する在日韓国人たちは,旧大日本帝国時代からのしがらみがあり,正当にもいうよりも不当に,そのような奇妙な在留資格「特別永住」を付与されているわけであって,本来「日本国籍」をもっていてなんらおかしくない彼らに対して,坂中英徳が入管行政の第1線で在日韓国人たちと業務上交わる機会をもち,その実情をしっていくなかでこそ,外国人1千万移民の受け入れ策を提唱したことになる。
坂中英徳のその「1千万人単位で移民政策」が仮に,21世紀に入ってから10年が経過したころからでも本格的に導入,実施していれば,これにまた必然的にともない発生するほかない多種多様な日本社会内での歴史的・文化的・人種的・民族的な諸問題の発生可能性はさておいても,
2024年にまで至っていよいよ,急速な人口減少が止まらなくなっているこの日本国の人口趨勢は,かなり緩和されたかもしれないと,そのように推測することも可能である。
※-4 『毎日新聞』2024年2月8日朝刊は1面と3面を当てて「韓国『国家消滅』危機感」という見出しの特集解説記事をかかげていた
隣国,韓国における急速な人口減少の様相は,日本にとってもけっして「他山の石」どころではなく,国内の人口統計が現状のままになりゆきとしたら,韓国がいま直面している人口激減傾向の発生に似た現実的な問題が,たいして間を空けることもなく到来する。
韓国はすでに必死になって人口の急激な減少に対しては対策を講じてはじめている。とくに出生率が2023年に関しては,なんと0.68という数値(予測)まで出ていた。
つぎの図表は韓国の通信社『聯合』から借りたものである。この図表の右上の表記は「出生児・合計出生率 展望 中位推計基準」との記入がある。
『毎日新聞』2024年2月8日朝刊3面に韓国における少子化問題が特集記事的にとりあげげられていたので,この紙面(1面と3面)のうち3面を左右に分割して(上下に並ぶ)画像資料として紹介してみたい。
なお韓国統計局は,自国の出生率について,2023年 0.72,2024年 0.68,2025年 0.65の最低値を打って,その後リバウンドし,2036年には 1.02まで回復すると予測している。しかし,この予測は高位を予定した希望的な観測だという嫌いを否定できない。
〔前段※-2に参照した『厚生労働省』の記述に戻る ↓ 〕
ここ30年の間に非正規雇用者はその数でも,雇用者に占める割合でも大きく増加してきました。近年では,非正規雇用の活用の弊害や限界も指摘されていることから,今後は非正規雇用者の正規社員化や処遇の改善が進み,非正規割合の伸びは鈍化し,その後は減少傾向になることが予想されます。非正規割合の高い業種や企業では収益構造の転換が求められるでしょう。
図1をみると,平成の約30年〔1989年~2019年〕の間に,雇用者に占める非正規雇用者の割合は約2倍へ大きく増加していることが分かります。平成1〔1989〕年の非正規割合は約20%でしたが,平成31〔2019〕年には約40%と,雇用者の5人に2人が非正規雇用者となっています。
平成9〔1997〕年の消費税増税や平成10〔1998〕年の金融危機の影響から景気が急速に悪化し,とくに平成10〔1998〕年から平成15〔2003〕年までの5年間は非正規割合の伸び率が突出して高くなっています。この5年間の雇用者全体の内訳をみると,正規雇用者数が減少し,非正規雇用者数が増加しています。景気の悪化を理由に,各企業が非正規化を進めたのです。
これまで,人件費をできるかぎり抑え利益を確保する目的で,非正規雇用者の活用が進んできましたが,こうした目的での非正規活用はあらゆる問題もはらんでいます。たとえば,非正規雇用者の賃金の低さ,経年での賃金上昇の少なさ,社会保険への未加入などです。そこで近年,同一労働同一賃金や無期転換の促進,社会保険の加入対象の拡大など,非正規雇用者の処遇改善への動きがみられるようになりました。
これらの動きを背景に,今後は非正規雇用者の処遇が正規雇用者並に引き上げられること,非正規雇用者の正規雇用化が進むことがみこまれます。これらは,非正規活用を進めてきた企業の人件費コストを大きく押し上げることとなるでしょう。
たとえば,総従業員数100名,非正規雇用者の比率が50%の企業で,非正規雇用者全員を正規雇用化するとします。正規雇用化に伴い給与水準の引き上げや賞与の支給などを行い,1名あたりの人件費単価が200万円増加する場合には,企業全体で1億円もの追加の人件費が発生します。
非正規雇用者を多く活用することで戦略的に利幅を上げてきた企業ほど,非正規雇用者の処遇改善のための人件費負担を重く背負うこととなるため,人件費構造や利益構造の見直しが急務となります。
※-5 以上のように非正規雇用のもとで労働する人びとが,回りまわってというまでもなく,日本の人口統計が最近になってもドンドン減少していき,しかも少子高齢という社会構成を促進させる基本要因のひとつになった
21世紀に入ってからは顕著になった非正規雇用のもとで働く労働者階級(階層)の人びとが,いつまで経っても解消しない。つまり,日本の労働経済は,同一労働同一賃金という基本条件をすべての労働者に対して適用しないで,賃金の差別構造を「合理化」する人事・労務管理体制を当然視してきた。
その,まさにいびつな経営管理体制を,むろんこれからも維持していきたい企業支配体制側の欲望が,実は,この日本社会を人口統計面において縮小再生産させてきた根本原因になってもいたからには,
国家意思にもとづくの経済制作や社会政策のありかたそのものを,大変革するくらいの覚悟がないかぎり,いいかえれば,現在の自民党(おまけが公明党)政権にはなにも期待できない現状であるかぎり,問題が解決に向かい顕著に前進する気配すら期待できそうにない。
ところで,日本の政治はいまだに「パー券裏金」問題,つまり政治屋どもによる「政治資金の不正使用の問題」で大騒ぎしている最中である。その当事・関係者たちの「いまだけ,カネだけ,自分だけ」の欲求構造だけが,これみよがしに突きつけられてきた「国民・市民・庶民たちの立場」からみた「日本の労働経済のありよう」は,これからもますます「少子高齢社会」風に貧困化していくほかないのか,そして,増税だらけになった国民生活をさらに継続させていくだけなのかなど,といった印象しか抱けていない。
※-6「〈なるほドリ・ワイド〉広がる非正規春闘=回答・東海林智」『毎日新聞』024年2月4日朝刊5面「オピニオン」
この問答風の解説記事からは,日本の労働経済が「本当は貧しい生活者しか支えていない」というさみしい現状が理解できるはずである。
--賃上げの可否や程度をめぐり,労働者と使用者の間で繰くひろげられる春闘。2024年もその幕が切って落とされました。
世界的な物価高騰を背景に,政府,労使とも賃上げに前向きな発言が目立ちますが,昨年(2023年)に続く大幅な賃上げは実現するのでしょうか。
正社員だけではなく,いまや労働者の4割近くを占める非正規雇用労働者による「非正規春闘」も,静かに広がりつつあります。(⇒この記事に添えられていた図表をさきにかかげておく)
◆-1 賃上げを訴えるのは大変そうだね? -労働組合が代表して交渉-
なるほドリ そもそも春闘って,なんなの?
記者 毎年4月を前にした時期に,新年度からの労働条件について,労働者と使用者が話し合って決める交渉です。戦後間もない1955年に始まったとされています。注目されるのは賃上げ,つまり賃金を上げるかどうかですが,ほかにも,1日当たりの労働時間の長さや休日の数など,さまざまなテーマが話し合われます。
Q 雇(やと)われる側が「給料上げて」と会社側に訴(うった)えるのは,大変そうだね。
A はい。だから多くの場合,働く人の集まりである労働組合が,みんなを代表して交渉します。
労働組合を作ること(団結権),その労働組合が使用者と交渉すること(団体交渉権),仕事を拒否すること(ストライキ権)は労働三権といって,憲法で労働者に認められています。
組合員は正社員が中心とされています。厚生労働省の調査によると,2023年の労働組合員数は993万人余,推定される組織率は 16.3%と過去最低でした。短時間働くパート労働者に限ると 8.4%です。
Q 春闘はどんな感じで進んでいくの?
A 労働組合の集合体に当たるナショナルセンター(全国中央組織)ではこれまで,自動車や電機,鉄鋼などの大企業の労働組合が最初に交渉して高い賃上げを獲得し,それを中小企業などに波及させる作戦で進めてきました。
ナショナルセンターのうち日本労働組合総連合会(連合)は,2023年の春闘で3.58%の賃上げを実現しました。およそ30年ぶりの大幅な賃上げでした。
Q ふーん。それでも「生活が苦しい」という話はよく聞くね。
A 大幅な賃上げも物価高には追いつかず,大半の人にとって生活が楽になった実感は乏しいです。賃金から物価の影響などを差し引いた実質賃金を先進国で比較したデータをみると,1991年を100とした場合,2019年の数値は英国 148,米国 141,仏独 134に対し,日本は 105にとどまりました。
とりわけきびしいのはパート,アルバイトなどの非正規雇用労働者たちです。賃金の水準が正社員より3~4割程度,安いからです。
◆-2 賃金はなぜ安いの?
最低賃金水準,ギリギリで設定
Q なんで安いの?
A 非正規の人を雇う会社の場合,最低賃金ギリギリの水準で賃金を設定する場合が少なくないからです。最低賃金とは,使用者が支払わなければならない賃金の最低額で,法律で定められています。
最低限の生活ができることを前提にした水準ですが,最低賃金ギリギリの賃金では生活はずっと厳しいままです。正社員と同じように働いても,それにみあった賃金を得られていないという不満をもつ人たちは多いです。
Q そうなんだ。
A このまま黙ってはいられないと,いくつかの労働組合が手をたずさえて2023年に作ったのが「非正規春闘実行委員会」です。10%以上の賃上げを要求し,回答が不満だったらストライキも辞さない。正社員が前面に立つことの多い春闘ですが,非正規の人も負けじと,会社側と渡りあうのです。
昨年は,靴店やスーパーマーケットなどで5~6%の賃上げを獲得しました。いずれも少数の組合員による行動でしたが,同様に働く5000~9000人の非正規の人たちの賃上げにつながりました。
Q 交渉するのは正社員よりも難しそうだね。
A 賃上げを求めても,年1回の最低賃金改定を受けて賃金水準が上がっていることを引きあいに拒まれることもあります。
非正規の人たちは1カ月や半年などの期間の契約で働いているので,会社側の意に沿わないことをすると契約を打ち切られるかも,との恐怖ととなり合わせです。声を上げづらいのです。
それでも,非正規春闘には昨(2023)年,計17の労働組合が参加し,今年は20組合が名を連ねます。約3万8000人の非正規の組合員を抱える全国生協労働組合連合会(生協労連)が新たにくわわりました。
柳恵美子委員長は「非正規の要求をスルーさせないよう,共闘して声を上げたい」と話します。実行委以外でも非正規の人たちの賃上げに積極的に取り組む動きもあります。
Q 働く人の声がもっと会社側に届くといいね。
A 労働者全体の動向からすれば,非正規春闘は小さな動きかもしれません。それでも,不安定な雇用で働く人たちが「物価高騰に見合う賃上げを」などと声を上げる姿は,同じ境遇で働く人たちの励みにもなります。実行委メンバーの原田仁希・首都圏青年ユニオン委員長は「1人でも声を上げられ,闘えることを伝えたい」と話しています。
(引用終わり)
そんなこと,こんなことなどが,労使間でとりあげられ,駆け引きの材料とされているうちに,時は確実に5年,10年と進み,それだけが過ぎていく。人間だからその分,年齢もかさねていく。だから,その期間においても日本の出生率・数を増えさせえないまま,時間だけがドンドン経過していく。
話題は少しずれるが,基本線では通底するこういった報道もあった。まず『日本経済新聞』2024年2月4日朝刊1面の記事は「〈チャートは語る〉地方議会 止まらぬ空洞化」「首長『専決』数,10年前水準 担い手不足も顕著」というしだいで,つぎの図表を添えている記事であった。
前段に紹介した『日本経済新聞』の記事を後追いしたごとき『毎日新聞』2024年2月9日朝刊の記事が,見出しを「町村議選27%無投票 直近4年間 定数割れ31町村」とかかげ,出ていた。
つぎに,本ブログ筆者が購読する新聞2紙(『日本経済新聞』と『毎日新聞』)が,2024年2月5日朝刊に報道したつぎの記事は,その中身が同一の記事があった。つまり,原資料を引用するだけの記事であったので,紹介された文言はだいたいに同じになっていた。
ここでは『毎日新聞』の記事「現物」のほうを紹介しておく。問題は前段でも触れたように,若い人たちが「人間生命の再生産作業」に関心・自信をもてる余裕をなくしている時代の情況にあった。
岸田文雄の為政を観ていると,この「世襲3代目の政治屋」もまた「いまだけ」の関心事しかもちあわせない人物なのであった。すなわち,「自分が首相でいられる時間をできるだけ長くし」たいだけであり,ただし「カネだけはしっかり血税(公金)からチューチューしながら」も,そして,ともかく「自分が首相として政権党の人事をいじくりまわしつづけ」ることにしか興味がない,といったごとき風情の,つまり平々凡々な人物であった。
そのような甘ちゃんの人物が政治家として日本の最高指導者の地位に就いているゆえ,この国がよくなる期待などもてるわけなど,まったくありうるはずがなかった。現状,世襲政治の悪弊ぶりは究極のドンヅマリまでゆきついている。安倍晋三もひどかったが,岸田文雄もまたトンデモ……。
岸田文雄は「脱税メガネ」というありがたくないあだ名(ニックネーム)を謹呈されていた。世間の人びとの日常生活の様子がこの御仁の網膜に写っていたところで,そもそもがあまりにも「異次元的な対象に過ぎて」いて,そのまっとうな理解ができないでいた。つまり,この人は世情などにはうといまま,日本国総理大臣職をこなしていくほかない立場にいる。
安倍晋三は亡国の首相と呼ばれたが,岸田文雄もその亡国性に関してならば,アベ友の1人として近しい仲間たりえた。アベがまだ生きていれば,両名は不協和音を発しながらであっても,この国をさらに「亡国」化路線に引きずりこんでいく役目を,遺憾なく発揮しえたものと思われる。
最後に一言。日本企業内の労働管理体制論をめぐってであったが,ジョブ型雇用だとかメンバーシップ型雇用だとかいった「雇用分類の不謹慎な仕方」を提示したあげく,日本の労働経済学を不要に撹乱させた「ある国家官僚の天下り的に成り上がり風の似非研究者」がいた。
そもそもジョブ型雇用という重語は,ほかにたとえていうとしたら「女の女性」というに等しかった。また,メンバーシップ型雇用という雑語は,同じく「会社組織による雇用」というに近く,学術的な概念整理とは無縁の
のっぺらぼうな用語であった。
この程度の思考回路しかもたないが,一見,学究風の語り口を得意としたらしい人物が横行する産業界であったからか,非正規雇用問題に明るい展望が開けるような期待はまったくもてなくさせ一因を,その御仁が提供することになった。
大熊信行という氏名をもつ学者の本に,『生命再生産の理論-人間中心の思想-』東洋経済新報社,昭和49年という,ちょっと変わったふうにも聞こえる書名をつけた1冊があった。意外といまにも通用する議論をしていた。もちろん,ものごとの根源から問題を考えるために役立つという観点から,そのように指摘してみた。
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