セブン - イレブンの実態(2)
※-0「本稿」の前稿の紹介など
以上の2稿は,今回の話題「セブン&アイ・ホールディングス」(2025年中に社名をセブンイレブンコーポレーションに変更する予定)の中核をなすセブン - イレブンの「会計数値分析に留まらない企業実態分析としての経営状況分析」をするために記述されていた。「本稿(3)」はむろん,その続編となる。
もっとも,元のこの記述は時期的としては,2019年から2020年ころを主にとりあげた議論を展開していた。とはいえ,論及している話題そのものは,「それ以前から現時点まで」基本的に共通していたというか,連続体的て構成していたことに,なんら変わりはない。
という能書きを口上したところで,本日 2024年11月28日の『日本経済新聞』朝刊関係をのぞいてみたら,昨日につづいてまた,セブン&アイ・ホールディングス関連の記事が掲載されていた。昨日朝刊に掲載されたその記事もついでにもう一度,参照するかたちで本日朝刊の記事の前に並べておき,ともに紹介しておく。
またさきに,『朝日新聞』2024年10月11日朝刊に掲載された関連する記事も紹介しておく。
上の記事からとくにつぎの表を取り出し,一言しておきたい。
ところで,この本日の記述「本題(2)」は,昨日(2024年11月27日)〔⇒旧稿だと2020年9月3日であったが〕に連続する内容であった。また,本(旧・々・々の)ブログは,さらにそれ以前の「2009年2月20日」に,「コンビニ業界の闇にメスを入れる公取委」と題して書かれていた。
くわえてもちろん,その後において生じていた事情変化に即して,それなりに更新する中身にしておく努力もしてきた。
以上の経緯説明は,この記述を読む側にとってみれば,迷惑な詳細まで聞かされるという印象をもたれると思いながら,本日のこの「本稿(2)」は過去における記述をそのように改訂しつつ重ねてきた内容に対して,さらに更新する中身となる点を,事前にくだくだしく語らせてもらった。
以上のいいわけ的な記述は,つぎのような理屈:意図があって申しのべることになった。
つまり,単に時事的な観点から問題を議論するのではなく,「一定の時間の流れ:経過」に即して観察することになって,「セブン&アイ・ホールディングスの中核」⇒「セブン - イレブンの運営の実態」のなかから取りだしえた諸事象:諸問題は,これを歴史的な視点からあらためて注目・吟味しなおし,さらに関連する議論を批判的に深めてする討議が必要だと感じた。
昨日の『日本経済新聞』朝刊は〔前後関係がこみいっていて,ここでのその発行日は2020年9月2日の朝刊のことであった,混乱を避けるために面倒だが付記しておく〕,この公取委のコンビニ業界に対する改善指導の問題をあらためて報道していた。
その時点における話題であったが,およそ10年ぶりに再現(再発?)してきた「この種の話題」に接したところで想いだしたのが,いまから10〔14〕年ほど前に書いていた〔本日この記述として復活・再掲される〕当該の記述であった。
結果的な判断でいうが,それらの時間を空けて書かれた諸記述は,だいたいにおいて「今的にも活かされそうだ」と判断できた。しかし,この判断を下すに至った経緯そのものをよくよく考えてみるに,コンビニ業界をめぐる問題状況というものの基本的な認識が,実質的にはほとんどなしえていなかったのではないか,という懸念を浮上させた。
結局,そのようなコンビニ業界の実情に愕然としながら,本日の記述として『セブン - イレブンの実態(2)」を記述することになった。ということで,以下,※-1から始める論述の内容は,いまから15年前までの話題にまでさかのぼる。
※-1 大企業の専横的な利潤追求の行為-「セブン ‐ イレブンの利益管理」にかぎらないけれども,利益を獲得するためなら,なんでもするのが資本主義企業経営の根本的な本性-
本(旧・々・々)ブログ「2009年2月7日」の記述は,本ブログのその後〔2020年9月3日〕にまで復活されていた。そこで問題となっていた論点をさきに,簡単に言及しなおしておく。
世界最大のコンビニチェーンであるセブン ‐ イレブンの経営実態は,2019年の売り上げでみれば6兆7912億円(日本の全会社中では13位)になるまでに成長してきた。いまでは “流通の覇者” になったというべき同社である。が,その高収益の『裏側』にはタブーが隠されており,しかも大メディアではまともに問題にされてこなかった闇の世界が控えていた。
補注)なお,最新の企業統計,2023年におけるセブン - イレブンの売り上げは,グループ全体の数値となるが,売上 17兆7,899億円,営業収益 11兆8,113億円,営業利益 5,065億円,経常利益 4,758億円,親会社株主に帰属する当期純利益 2,809億円であった。
さらにくわしくは,つぎの『株式会社セブン&アイ・ホールディングス 2023年度 決算説明資料』2024年4月10日,https://www.7andi.com/ir/file/library/ks/pdf/2024_0410ks_01.pdf を参照されたい。
前記の,本(旧・々・々)ブログ「2009.2.7」『セブン ‐ イレブンの経営実態』において(この「本ブログ内」では一昨日の記述からその「実態」に関する連続ものの論述を開始した)とりあげた文献は,古川琢也+週刊金曜日取材班『セブン ‐ イレブンの正体』金曜日,2008年12月10日,であった。
同書の末尾には「本書は『週刊金曜日』2007年9月7日号から2008年11月21日まで不定期連載された「セブン ‐ イレブンの正体」に加筆し構成したものです」と付記されていた。
公取委は,2002年4月時点ですでにフランチャイズ・ガイドラインを改定し,加盟店に対する本部の「優越的地位の乱用」を改善するよう業界団体などに改善を促していた。けれども,改定後6年経っても改善がみられないため,業界最大手で〈店からの被害〉申告件数がもっとも多いセブン ‐ イレブンから調査を始めた,と断わっていた。
本日〔ここでは2020年9月4日〕の時点になっての理解となる。前段の記述を復活させたさい,あらためて,いまさらのように驚かされたのは,2002年4月時点における公取委のコンビニ業界に対する指導が,それからおよそ20〔24〕年近く経った現在でも,ほとんど同じ趣旨をもって反復されるほかない事実の持続性について,であった。
※-2 コンビニ会計方式において各店に強要される利益貢献-コンビニ業界の「本部と各店舗」とは隷属関係-
「セブン ‐ イレブンの損益計算書」においては,「売上原価」から
イ)「仕入値引高(取引先とのリベート等)」,
ロ)「商品廃棄等(賞味期限切れの弁当等の廃棄ロス)」,
ハ)「棚卸増減(万引き等による消失)」
の3項目が差し引かれているが,その分だけ「売上総利益(粗利益)」が大きくなっている。問題はとくに ロ) にあった。
ここで,朝日新聞の報道〔2009年2月20日朝刊〕に用意されたつぎの図解を参照する。コンビニ会計方式において弁当のばあい,各店で売れ残った「廃棄分の原価」も,本部の会計の〈総利益〉〔以下では粗利益と表記〕のなかには計上されている。つまり,売れなかった(!?)弁当の原価全部もその〈粗利益〉に算入される。
コンビニ会計方式は,本部側がそのように,各店の粗利益から二重的に利益を収奪する〔マイナスさせる〕仕組になっている。コンビニのオーナーにとっては「みかけだけ膨れあがった粗利益のせいで,必要以上の『チャージ』を課せられるのであり,しかも,売れ残りの弁当を割引販売もさせないいまま,その仕入れ原価を粗利益に計上させ,各店の利益を食いちぎるかのように収奪していくという,なんともやりきれない本部の強引な会計方式に無理やり対応させられている。
本部は,売れ残りの弁当を値下げして売ることを許さない指導をしている。弁当の仕入れをする責任は各店にあると指導しているのであれば,売れ残りになりそうな「賞味期限の近づいた」弁当を,原価販売するか・しないかの責任=リスクは,オーナーの判断に任せればよいことである。
ところが,本部は少しでも自分側にだけ有利になる利益計算をするだけで,本部にも各店にも均等に利益が上げられるような,いいかえれば,原価分での負担も双方が同じにするような提携関係を許さない。弁当が売れなかったばあいの損失は,そのすべてを各店側に押しつけている。それでいて,本部の儲けは絶対確保できる関係=仕組を作っておき,ひたすら割引販売を抑えつけるだけで許そうとはしない。
問題は,日本の食料自給率まで話がすすむ。売れ残りの弁当〔の一部〕をオーナー一族やパート・アルバイトの従業員が食することにしても,どうしてもまだ,ゴミとして捨てられる弁当が〔その他賞味期限のある食品も同じだが〕,日本中で厖大な量になる。このことは,具体的に推算もされているが,われわれの日常感覚的にもよく認知・理解できる資源の浪費である。
当時に話題となっていたが,「モッタイナイ」というコトバがそのころには,世界語になろうともしていた。当然,結果的に弁当が売れ残らないように割引販売し,そのすべてが売り切れるように努力をすることは,各店にとっても本部にとってもよい商売であると考えてもよいはずである。
参考)2005年2月,京都議定書関連行事出席のために,環境保護活動家でナイロビ大学教授のワンガリ・マータイが来日したさい,日本語の「もったいない」という言葉に感銘を受け,のちに「MOTTAINAI」キャンペーンを展開していた。
2006年8月に発足「もったいない学会」のHPが,http://www.mottainaisociety.org/ としてある。同会は,2007年12月28日に正式にNPO法人として設立され,エネルギー問題,それも石油を主に問題にする学会である。
〔記事に戻る→〕 ところが,本部側はその均衡点〔割引販売をしてでも売り切る結果〕に達する以前の段階において,発生する可能性のある〈売れ残りのリスク〉をいっさい分担しようとせず,その原価すべてを各店側に覆いかぶせている。
それによって,実際に生じていない粗利益が生じたかのように,無理やり計算させている。コンビニにおける本店と各店の関係は,大企業と下請企業にも似た一方的な〈主従の秩序〉を意味するかのように映る。
要するに,その売れ残りになった弁当の原価分は,各店のオーナーが自腹で買いとったような関係になっている。おかしい。売れてもない弁当を売れて儲かったかのように会計処理させている。
だから,コンビニ本店にとって一番儲かる顧客が,実は「フランチャイジー:チェーン各店」そのものだという指摘は,けっして見当違いでも皮肉でもなく,きわめて適切である。
したがって公取委が,以上のごとき「本部と各店」の地位間に顕著である優劣関係に関して,「見切り販売を正当な理由なく本部が制限し,売れ残りとして加盟店に廃棄を余儀なくさせること」を,優越的地位の乱用に当たるとして公正取引委員会が問題にした事由は,しごく正当である。
以上の記述に関しては,2019年4月24日の時点に書かれた同旨の記述が『YAHOO!JAPAN ニュース』の記事となって掲載されていた。本日 2024年11月28日に閲覧してみたその記事は,その2019年での日付であった点を断わりつつ紹介しておく。さらに一歩踏みこんだ分析と,これにもとづいて批判されるべき問題点が説明されていた。
※-3 古川琢也・金曜日取材班『セブン - イレブンの正体』金曜日,2008年12月
この本についてひとつの感想が「2009年2月20日」に書かれていた。あるブログでの記述であったが,前項までの内容に関連する段落を適当に取捨選択し,紹介する。
--公正取引委員会が,コンビニエンスストアによる悪徳なフランチャイズ商法に対して,調査に乗り出した。これを契機にようやく,大手メディアは関連する記事を書きだした。公取委が動けば,いままで沈黙しつづけてきた大手メディアも報道する気になれたという寸法。すでに,自殺など多くの被害者が出てるだけに,遅きに失した感はある。けれども,これで少しでも,現役オーナーが救われる結果となればと願っている。
たとえば,前段で参照した朝日新聞の記事は,「セブンイレブン,加盟店の値引きを制限か 公取委が調査」http://www.asahi.com/national/update/0219/TKY200902190245.html という見出しをかかげていた(新聞紙の報道のほうは,2009年2月20日朝刊に掲載)。
補注)以下の記述は繰り返しになる中身もあるが,分かりにくい点も含まれているコンビニ業界の会計方式であるゆえ,反復をいとわずに説明している。
--国内1万2千の加盟店(当時)を抱えるコンビニ最大手「セブン - イレブン・ジャパン」(東京)の本部が,傘下の加盟店に対する優越的な地位を利用し,店側が弁当などの売れ残りを減らすため値引き販売しようとするのを不当に制限していた疑いがあるとして,公正取引委員会が独占禁止法違反(不公正な取引方法)容疑で同社の調査に乗り出したことがわかった。
同社の店舗は,フランチャイズ契約を結ぶ加盟店と直営店の2種類。加盟店からの収益が全体の7割を占める。
▼-1 弁当など消費期限が来て廃棄した場合,加盟店側はまずその原価を負担する。コンビニ各社がとっている会計方式では,廃棄が出ても,売れた商品の利益にかかるロイヤルティー負担は残るため,結果的に赤字になりかねない。
▼-2 複数の関係者によると,複数の加盟店が廃棄される商品の損失を減らす目的で弁当や総菜などを,消費期限前に値引き(見切り販売)したところ,同社本部が「フランチャイズ契約を打ち切る」「大変なことになる」などと圧力をかけ制限した疑いがある。
補注)前記した『YAHOO!JAPAN ニュース』の記事のなかにも,該当する図解が提供されていたが,その強引というにはあまりにも露骨なその「みえすいた・カラクリぶり」は,資本としての強欲ぶりを最大限に発露させてやまない本性を,それこそ,みごとなまで正直に体現させていた。
〔記事に戻る→〕 とくに問題なのが,いわゆる「ロスチャージ問題」であった。コンビニエンスストアの実態に関したこのような話題は,かなり前から問題になっていた。しかし,なにゆえ,いままで大手新聞・雑誌社,テレビ局は報道できていなかった。
その理由は,主に2つあった。
a) 「優良スポンサー」である。テレビ局にとっては,たとえばおでんの時期でも分かるように,広告をガンガン入れてくれる大事なお客様なのだ。
補注)このコンビニのおでんは,その後,商品管理が面倒だ,結局,手数がかかる割には儲からないという理由をもって,そのほとんどが販売を止めたと観察してよい。つぎの書きこみは,関連する東京都内の実情を報告していた。
b) 主要な販路。とくに雑誌・新聞は,いまやコンビニエンスストアが重要な販路となっており,出版物の取扱を中止されることへの懸念。
マスメディアの弱腰には,いつもながら呆れるばかりではあるが,公正取引委員会が動いたことで,各社はおおっぴらに報道できる。そして,単行本として出版された昨〔2008〕年「週刊金曜日」から出された『セブン・イレブンの正体』は衝撃的だった。
当初そのあたりの書店では買えなかった。セブン・イレブン会長の鈴木敏文氏は(当時)大手書籍卸のトーハンの副会長も兼務しており,取扱を拒否したのだ。関連のURLをのぞけば〔当時〕,鈴木がその兼務していた事実が確認できる。その後,取扱拒否を撤回したという。しかし,この本の社会的影響がトーハンの圧政を乗り越えたともいえる。
フランチャイズ店オーナー(店主)が,ロスチャージ問題で大変な苦労を強いられていることはすでにしられていたものの,取引業者や運送業者の悲惨な実態は,初めてしるものであった。
みずから店へいき,自社納入商品を購入する「自腹買い」が当たりまえのようにおこなわれている点。GPSを利用した運行管理システムにより,急ブレーキなどが減点となるなど,運送業者のドライバーが見張られているなどはたいへん興味深い。
補注)いまどきプロの運転者(ドライバー)が必要もないのに(走行中に緊急事態が発生でもしないかぎり),急ブレーキを踏むことなどありえないのではないか? 速度オーバーは以前からタコメーターが使用されていたから,ここではひとまず問題外であった。ともかく,GPSの使用法としても疑問があった。
この本『セブン・イレブンの正体』を読むと,セブン・イレブン本部とは,ただひたすらに強欲で阿漕な詐欺集団としか思えない。書店に出回っていないからさぞかし売れてないのではと思えば,さにあらず。私(本ブログ筆者)が購入した本は「2009年1月20日 第3刷」と印字されている。第1刷の発売は「2008年12月10日」であった。2回増刷しており,年始年末をはさんでだが,10日ごとに増刷していた。
参考にまでアマゾンの書評は,本日:2020年9月4日時点で34件寄稿されている(本日 2024年11月28日午前9時だと43件に増えていた)。5点満点でその評価の平均点は「星5つで4.5」である(本日だとその星は3.8に低下していた)。ともかく,公正取引委員会の改善指導がコンビニ業界になされるのは,2020年の時点までですでに数回にわたっていた。
最近のコロナ禍の関係もあるなか,コンビニ店主と本部との裁判が進行中である。ここでは「弱い立場」に置かれていた店舗側の立場からなされている主張を,つぎに※-4を設け紹介しておく。
※-4「セブン契約解除無効裁判,堂々の意見陳述 命より大切な契約書はない」(引用は,週刊『前進』2020年8月27日,第3158号, http://www.zenshin.org/zh/f-kiji/2020/08/f31580201.html から)
時短営業で闘うセブン―イレブン・ジャパン加盟店の松本実敏オーナーの契約解除無効を争う裁判が〔2020年〕8月14日,大阪地裁で始まった。以下は,コンビニ関連ユニオンのブログに掲載された河野正史委員長の傍聴記と松本さんの意見陳述の要旨である。
1)「本部との対等な交渉を」
昨〔2019〕年12月31日に,セブン本部から「クレームが多い」なる理由で不当にも契約解除攻撃を受けていた,セブン - イレブン東大阪南上小阪店の松本実敏オーナーの契約解除の無効を争う裁判が〔2020年〕8月14日,大阪地裁202号大法廷で開かれた。
松本オーナーは,裁判長と本部側弁護士を圧倒する堂々たる意見陳述をおこなった。
一方,本部側の弁護士は「松本オーナーがお客様に頭突き,飛び蹴りをした」なるでっち上げを十数回も引用するなど中身のない陳述に終始し,マスメディアには「松本オーナーを応援する報道はやめること」と注文する始末であった。
裁判後,松本オーナーは「私個人の闘いではない。私よりも苦しんでいる全国のコンビニ関係で働くすべての仲間のために闘い,勝利する」と感動的に語った。(コンビニ関連ユニオン委員長 河野正史)
なお,その後におけるこの松本実敏のセブン - イレブン本部との裁判闘争は,週刊金曜日オンラインのつぎの記事を参照されたい。
⇒ https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2023/05/22/antena-1260/
この裁判の結果は,裁判所という「国家権力側」にいて,どうしても「大企業体制側の強い味方であると自白した判決を下す」ほかなかった,「ヒラメ的裁判官」が絶対的多数派である現実に鑑みれば,ごく自然な判決であった。
本ブログは昨日の記述中で,コンビニ業界の労働状況が小林多喜二の小説『蟹工船』(『戦旗』1929〔昭和4〕年5月号,6月号に発表)に譬えられる事実に言及してみたが,今日はつづいて,細井和喜蔵『女工哀史』1925〔大正14〕,改造社という本まで思い出した。
コンビニで働くパートやアルバイトの人たちも含めてとなるが,そのなかでもとくに「経営者の夫妻や家族たち」は,現在の商業経営においては「経営者の立場」でありながら,実際には,コンビニ本部という本当の資本家たちにさんざんいいように搾取されているだけの「労働者としての被搾取集団」にしか映らない。
『蟹工船』や『女工哀史』の時代からその間,すでに1世紀前後もの時間が経過したが,資本制企業の経営的な本質に関していえば,そのなにひとつ変わるところがない。いわば,コンビニ業界の管理状況はその代表格である地位を誇れるような一業種である。
現実の資本主義国家体制そのものが,はたして「いいもの」なのか,それとも「悪いもの」なのかに関した議論をしかと踏まえたうえで,なおかつ,その『回避できない悪業面そのもの』を,そのまま許すことはできまい。現に「歴史が繰り返されている」のである。
いまの時代,コンビニ業界においては「資本家・経営者側であるのがコンビニ本部」であり,それに頤使(いし)されているのが「労働者=被用者側のコンビニ各店舗・経営者たち」である。前者が本当の経営者なのであって,後者は単なる「雇われ店長としての労働者たちである」に過ぎない。
なまじフランチャイズ制度などとエセ近現代的なマント(企業形態)をまとっているだけに,21世紀において堂々と生きている “半奴隷的な流通制度の具現体としてのコンビニ業種” は,そうした資本制企業の経営本質に連なった「搾取問題の制度化」を,巧妙だと形容するまでもなく,それ以前にきわめて露骨に発現させ運用してきた。
セブン - イレブンは当初,アメリカのセブン - イレブンからノウハウを仕入れて,コンビニ業を日本国内で初めて創業した。しかし,アメリカ流のフランチャイズ制度にはなかった「本部と各店舗」との奴隷的な上下関係を独自に構築し,展開し,定着させてきた。なんのためにであったかといえば,利潤追求(利益確保)をより多く達成するためであった。
本記述の冒頭においては,オーストラリアに進出しているセブン&アイ・ホールディングスの盛況ぶりが紹介されていたが,日本国内と同じやり方がライセンス方式で可能になっているとは思えない。
その種の疑念を抱いたところで,早速ネット上を「オーストラリア セブン - イレブン 従業員 待遇」という言葉の組みあわせで検索してみたところ,冒頭につぎの記事が出てきた。「賃金未払い」?
ところで,『株式会社 セブン - イレブン・ジャパン』の「企業理念」は,同社のホームページに解説されているが,この理念は,ただのキレイごとの社是=精神論に過ぎなかった,という過去形的な感想を抱いた。
ところで,セブン - イレブンの語源は本来,午前7時から午後11時まで営業するコンビニエンス・ストアーを意味していたが……。「24時間戦えますか?」ということか。
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【付記】「本稿(2)」の続編は,以下のリンク先住所である。
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