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「半国家・日本」とすでにいわれていたこの国の「本然たる姿」は21世紀のいまも現実そのもの

 ※-1 伊部英男『半国家・日本-戦後グランドデザインの破綻-』ミネルヴァ書房,1993年4月という本があったが……

 この本は20世紀の最後の10年間期に公刊されていた。ここではごく簡単にその内容説明と各章の目次だけ紹介する。

 「政治腐敗を生む権力構造,豊かさの実感乏しい国民生活,国際政治の現実から乖離し信頼を失う政治体制。今や戦後のグランドデザインはさまざまな面でその破綻が明らかになっている。その成立の背景,破綻の諸相とその原因の分析を通して,日本の国家としての真の自立を願い,新たな統合原理を徹底的に追求した力作である」

  目 次
   第1章 成立
   第2章 占領憲法の制定
   第3章 構成
   第4章 破綻
   第5章 挑戦
    付録 マッカーサー原案と現行憲法

伊部英男『半国家・日本-戦後グランドデザインの破綻-』
ミネルヴァ書房,1993年4月

 1993年,いまから32年前の日本は,バブル経済が破綻して5年も経っていないころであった。まだ,その余韻が残っていないわけではなかった時期に,『時事通信』がこの1993年の「10大ニュース」をつぎのようにまとめていた。

 ただ,この図解的な説明ではピンとこないところがあって当然なので,さらに追加となる説明を文章でさらに挿入するかたちを採ってみた。ただし,その10大ニュースの全部に対して満遍なく言及するわけではないので,まえもって断わっておく。

これら10大ニュースのひとつひとつは
たとえば2024年の出来事・事件と比較しやすいものがあった

たとえば6位の北海道南西沖地震がそれだが
以外にも2024-2025年に発生した問題に連なる出来事・事件もあるが
いちいち触れないでおく

 ともかく,『時事通信』がまとめた1993年の10大ニュースを,文章形式でもその全文を紹介しておこうと思ったが,これはだいぶ長くなるので,本ブログ筆者なりに「2024-2025年」を考えるうえで「濃厚な関連があり」と解釈する論点にかぎり,寸評をくわえる形式で,以下を記述する。

 「1位・細川連立政権が誕生」というものは,2024年10月27日に実施された衆議院解散総選挙の結果,ようや「統一教会味で金権・銅臭の自民党」と「エセ宗教・創価学会付属公明党の連立政権が,過半数割れとなった事実と突きあわせて「観察」できそうである。
 
 「2位・コメ部分開放を決定」(12月)というニュースを目にしたら,昨年(2024年)8月ころから明らかになっていた現象,米不足的な食料事情が2025年になってみれば,お米の値段が5割以上は一挙に上がるといった岸田文雄政権の農政無策を思いださせられた。

 いまの日本,かなり貧しい世帯・家庭ではお米が満足に食べられないというところが,冗談ではなく,すでに出ている。昔「貧乏人は麦を食え」といった日本の首相がいたし,大昔のフランスには「パンがなければケーキを食べれば」などとほざいた王妃もいた。

 だが,最近では貧窮した世帯・家庭(シングルマザーの家族に多い)では,たとえば小学生・中学生を抱える場合,まともな食事にありつけるのは学校給食だけだというから,いまの日本,本当にひもじい思いをさせられている,かわいそうな児童・生徒(子どもたち)が少なからず存在する。

 「3位・ゼネコン汚職拡大,29人起訴」。この種の問題はまるで「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」の20世紀版であった。対して,2024年の日本政治において大きな醜聞となっていたのが,「パーティ券・裏金問題」(政治資金としての脱税問題)であった。ところが,この問題,いまだにまともに清算・解決したという後始末には全然なっていない。

 「4位・大型不況深刻化,企業はリストラに拍車」 これは1993年の話題であって,このころ以降になると徐々増えだしたのが,非正規雇用者である。いまでは全雇用者の37%が非正規雇用で働く者となっているのが,日本の労働経済事情である。

 1993年のころだとまだ,本ブログ筆者の自宅のまわりにあったアパート群には,小さな子どもたちが大勢暮らしていて,午後になるとギャーギャー,ワーワーいいながら集団(ギャング)を組んで遊んでいたものだが,2024年になるだいぶ以前から,そうした光景はすっかり消滅していた。

 少子高齢社会現象は,日本だけが悩む問題ではなくなっているが,2025年における日本の出生数は70万人未満になると,いまから予測されている。1993年に生まれた子供は2025年には32歳,その間政府はいったい,どのような人口政策を講じてきたのか?

 前段の話題に絡めていえば,非正規雇用でしかも大学生(進学率50%以上)の若者たちのなかには,日本学生支援機構から銀行ローンみたいな借金を背負わされて社会に出ていった事例が非常に多くあって,そのために結婚など余裕をもって考えられない生活環境を強いられ生きていくうちに,いつの間にか30歳代から40歳代にまで年を喰っていった。

 自民党政権国会議員のなかには,脳みそがコチンコチンに凍結した状態にあるだけで,「日本会議」や「神社本庁」の宗教路線イデオロギーに対してただ付和雷同的に,ゴマすり的な立場を装っている連中がいる。

 彼らは,別姓にしたらこの日本の古き良き伝統である「家制度・家族観」が崩壊するなどと,歴史的な理由づけとしてならば,単に明治以来の作品・挙証でしかありえなかった,つまり,長い歴史のなかで位置づければ,その明治維新的に創作された(⇒デッチあげられたに過ぎない)「家関連の諸観念」を,不勉強ゆえにだったのか,ひたすら無条件に,しかも頑迷固陋に受容していた。

 だが,それこそがまさに,「保守としての政治家」の立場でありながら,「政治としての保守の本質」をなにも分からぬ者が,しったかぶりをしただけで「我国の家・家族の伝統」などとわめきらしていた。けれども,その本当のところでは,不勉強の立場をみずから暴露していたのだから,恥ずかしいこと,この上なかった。

 たとえばお墓の問題。地方にいって明治時代以前に造られたお墓を訪ねてみてだが,それがどういう造りになっているか,再確認してみればよい。基本は個人ごとの墓標が立っている。それだけのことである。歴史の知識としてなんら詮索することもないまま,明治以来に造られてきた「日本の伝統」なるものを,自分の好き勝手に「2千年の長期」にまで拡大させ,自国の歴史を改変・捏造してはいけない。

 以上4位まで来たが,つぎは,祖父母のお墓が巨大古墳である事実を背負わされてきた夫婦が登場する。

 「5位・皇太子,雅子さまご結婚」 この2人の結婚からも32年が経ったわけで,一人娘の愛子はいま23歳。このムスメも結婚話が噂になっていてもおかしくない。最近は皇族たちでも未婚である者がいる。

 秋篠宮文仁(59歳)の娘は2人いるが,眞子は既婚で33歳だが,妹の佳子30歳は未婚である。彼女らの弟,悠仁は2024年9月に18歳で成年となっていた。

 「6位・北海道南西沖地震で死者・不明229人」のときは,被災地が復旧から復興といえる段階まで回復できていた。ところが,2024年1月1日に発生した能登半島地震から1年が経った現在の状況は,まだ「被災直後の雰囲気」をありのままに残している。

 この点についてはさらに,本日のこの記述中であとに言及されるが,菅 義偉が首相のとき国民たちに対していってのけたのは,「公助」はアテにするな,まず「自助」でやれ,つぎに「共助」だといったごとき,政治家としては本末転倒の,つまり本当に冷酷無残な発言であった。

 つぎは,『毎日新聞』2024年12月31日朝刊に「特集」として組まれた紙面を紹介する。右上の「前文」のなかには,能登半島地震のその後においては「復興が足踏みする〔してきた〕」事実が指摘されている。

 2024年元日に発生した,この能登半島地震「発生直後における政府・地方自治体の反応・対策ぶり」は,被災した国民・市民など,まるで封建時代の中世風のあつかいしかなされていなかった。

 「最初からまともに救援体制を敷こう」とさえしようとしていなかったとくに「国家側の基本姿勢」は,われわれに対して露骨に,そして多分意図的にだったとも受けとるほかなかったのだが,彼ら側において「私物化し腐食しきった現政権の体質」を露骨に表現した。

2024年9月21日の能登北部は豪雨に襲われ
それこそ踏んだり蹴ったりされる災害の連続になった


 「7位・金丸前自民党副総裁,脱税で逮捕」 ところが2024年に世間を大騒ぎさせてきた「自民党の裏金問題」では,検察庁はまるでやる気なし,実にいい加減に始末。国会議員を騙るけれども,その本体はコソ泥「選良」たちの跋扈跳梁を許すこの国になりはてていた。

 その意味では,あの「幼稚と傲慢・暗愚と無知・欺瞞と粗暴」が特性であった安倍晋三君仕立て悪政は,2025年になってもまだまだその「負の効果」だけは抜群に持続可能な状態を維持できている。

安倍晋三君は日本にとってなにかイイコトしたか?
ワルいことならばてんこ盛り

その答えはつぎの表に整理・総括されている
それでもご当人いわく
「オレってなにかワルいことでもしたか」?

「世襲政治屋3世」である安倍晋三君はいまでは別世界
生きているときもまた別世界にいたが

 「8位・Jリーグ,空前の人気」
 
 「9位・円,戦後最高値」 この年の8月,東京外国為替市場は1ドル=100円40銭という史上最高値を更新した。

 しかし,その後,民主党政権になったあとになるが,ドル・円の為替レートが過去最大の円高水準の, “2011年10月31日の1ドル=75円32銭にまで上昇したことがある。

 だが,本日の2025年1月6日朝,7時50分で日経電子版に記載されていたそれは「 ドル・円 157円 59ー63銭」。この数値ではその間の14年を比較して割り算する気にもなれない。

 「10位・カンボジアPKOで文民警官5人死傷」

 ここまでが,『時事通信』がまとめて講評した1993年の10大ニュースであった。最初に挙げてあった文献,伊部英男『半国家・日本-戦後グランドデザインの破綻-』ミネルヴァ書房,1993年4月は,繰り返しとなるが,こういう内容を論じた本だと宣伝されていた。 

 「政治腐敗を生む権力構造,豊かさの実感乏しい国民生活,国際政治の現実から乖離し信頼を失う政治体制。今や戦後のグランドデザインはさまざまな面でその破綻が明らかになっている。その成立の背景,破綻の諸相とその原因の分析を通して,日本の国家としての真の自立を願い,新たな統合原理を徹底的に追求した力作である」

伊部英男『半国家・日本-戦後グランドデザインの破綻-』
ミネルヴァ書房,1993年4月

 その本が力作だという宣伝文句はさておき,この文の前半で書かれている「当時の1993年における日本の〈現状〉」ては,いまとなってみても,なんの変化もなかったかのように,この2025年にまで維持され推移してきた。

 ここでは,そうした観察をするほかないこの国の政治経済史的事情のなかからは,それも「労働者,サラリーマン&ウーマン」にとってというか,それ以上に生活者であるワレワレの実在全般に影響しているひとつの経済指標を,つぎに参照する『日本経済新聞』の記事から紹介しておく。

 ごく最近の話題となるが,実質賃金が上がったとかなんとかいいたがる報道も出てきた。けれども,それについては「そうですかね?」という反問を対置しておく必要があった。この点の認識を促す材料になりそうな記事も,同じ日経から取り出し,この以下につづけて紹介する。

「宇露戦争」開始後とうとう
デフレ傾向ではなく
インフレが高進しだした
 
てっとり早くは左側の統計図表をじっくり
ながめてみたいもの


 ※-2 真実を語りすぎてきたために,かつて「国策捜査」にはめられた体験を有する「植草一秀の『知られざる真実』」という「ブログの記述」で理解できること


 この「植草一秀の『知られざる真実』」という「ブログ」は,「マスコミの伝えない政治・社会・株式の真実・真相・深層を植草一秀が斬る」と標榜するサイトである。

          ★ 2025年金融市場が始動 ★
  =「植草一秀の『知られざる真実』2025年1月3日 2025年,
  http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2025/01/post-59e0a9.html

 日本で正月三が日は休日だが世界は異なる。元旦は休日だが1月2日から業務がおこなわれている。金融市場が開き,金融変動が観測されている。日本でも先物市場では1月3日に休日取引がおこなわれている。2023年から2024年にかけて日本株価は急騰した。

 私〔植草〕は2023年年初に『千載一遇の金融大波乱』(ビジネス社)を上梓。表紙帯に「日経平均3万6000円突破も!」と明記した。2023年の大発会=1月4日の日経平均株価安値は2万5661円。日経平均株価3万6000円を信じる者は皆無に近かった。

 しかし,日経平均株価は2024年1月15日に3万6000円に到達。「3万6000円突破」がちょうど1年後に実現した。2024年初に上梓した『資本主義の断末魔』(ビジネス〔社〕)〔の〕表紙帯に「2024年,日経平均ついに史上最高値を更新か!」と明記した。

 2024年,日経平均株価は史上最高値を更新。7月11日に4万2426円の史上最高値を記録した。「卯跳ねる,辰巳天井」といわれる。2023年は卯年,2024年辰,2025年巳の年回りである。

 補注)この「干支にちなんだこの種のたとえ話」は,社会科学者の立場から大真面目に説かれていたとなれば,本ブログ筆者などはちょっと引かざるをえない「あつかい」であった。

 縁起物に徹した言及ならばともかく,丙午の年に子供( ♀ ?)の出生数が有意に減少したというふうに,過去において実際に起きていた「現実の話題」とは,実質話に関してほとんど別物であるはずの,いわばその因果関係がばらけていると解釈するほかないその種の叙述:表現は,社会科学の立場からは,ひとまず禁句ではないかと考える。

 〔記事に戻る→〕 2025年は油断のならない年になる。2024年7月末から8月にかけて日本株価は歴史的暴落を演じた。7月11日に4万2426円の史上最高値を記録した日経平均株価が8月5日に3万1156円の安値を付けた。

 3週間で1万1270円,26.6%の大暴落を演じた。金融市場では「バブル崩壊」との声も聞かれた。「日本株価は〔げ(トル?)〕下落トレンドに転じた」「日本株価は簡単に価格を回復しない」との声がこだました。

 株価暴落の契機が日銀による金利引き上げ措置だったから,STOCK VOICEという株式市場専門チャンネルで日銀に対する激しい私憤をぶつける「自称専門家」も観察された。

 『金利・為替・株価特報』https://uekusa-tri.co.jp/report-guide/ では,暴落さなかの8月7日に執筆した8月13日号タイトルを「日銀政策修正への揺さぶり投機に冷静対処必要」とし,

 「一気に27%株価急落が生じたため,株価が戻る局面で戻り売りに押されることが考えられるが,ファンダメンタルズの急変がなければ,緩やかに株価が反発する可能性が高いと考えられる」と記述した。

 〔そして〕第9節【投資戦略】タイトルを「相場下落はチャンスの創出」とし,「日銀の柔軟政策対応で事態好転可能性は高まりつつある。逆張り発想基軸に」と記述した。

 日経平均株価は順調に値を戻し,10月には4万円の大台を回復した。日経平均株価が暴落し続けないと判断した最大の根拠は,日本株価が指標から判断して「割高」であるとは判定できないことにあった。

 株価の代表的な指標に「PER=株価収益率」がある。株価が一株利益の何倍であるかを示す指標。日経平均株価の2024年末値は3万9894円。

 〔その〕今期予想利益基準でPERは 16.1倍。

 PERの逆数は株式益利回り。一株利益が株価の何%であるかを示す。

 〔その〕利回りは 6.2%。

 また,今期利益は3%増益が予想されている。10年国債利回り1%と比較して株式利回りは圧倒的に高い。このことは日本株価が割高ではないことを示している。

 しかし,2025年にはいくつかの懸念材料がある。米国株式市場と中国株式市場の動向である。(植草引用・終わり)

 以上の植草一秀の経済情勢分析は,素人のわれわれにはすぐには理解しにくいところもあるが,いいたい筋書きはよく分かる。しかし,本ブログ筆者は以前にも触れたことがあるのだが,前世紀中において日本株価が最高値になった水準,

 すなわち,1989年12月29日に,史上最高値となった38,915円87銭を記録したのは,当時の低金利政策と政府の積極財政政策を要因に,国内景気が回復し,金融機関による過度な貸し出しもあって,過剰流動性相場となったなかで, 不動産や株式などの資産価格が急騰,バブル景気が到来したからであった。

 そのとき,史上では最高値を示した株価に対して,2024年の7月11日に4万2426円の史上最高値を記録した日経平均株価があったとはいえ,同年8月5日に3万1156円の安値を付けるに至ったという経緯は,いったいどのように評価し,位置づければいいのかについてだが,以上の植草一秀の議論を聞いた範囲内では,まだよく諒解しがた要素を残していた。

 以上のごとき議論は,ここではいったん終わりにする。

 つぎに,植草一秀が実は,前段に引用した記述の前日,2025年1月5日に書いていたものだが,その標題を「半植民地からの脱却を目指すhttp://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2025/01/post-6d6c13.html と付けた,別の一文も公表していた。

 この植草一秀の文章もその全文を引用・紹介したいが,長くなってしまうので,ここでは後半の段落からその3分の1ほどを引用しておく。

 日本は永遠に米国の植民地の地位に甘んじるのか。ここから脱却すべきだが,現実は逆に,米国植民地の構造を半永遠のものにしようとしているようにみえる。

 それが政党分化に如実に表れている。

 「維新」と「国民民主」は鮮明に「対米隷属」の勢力。「第二自公」である。問題は「立憲民主」。この勢力が「日本政治刷新」を追求する勢力から「対米隷属」勢力に急激な変化を示している。

 野田佳彦氏を持ち上げる動きが2022年から始動した。この人物を持ち上げて立憲民主党党首に押し上げた。この結果,立憲民主が完全に「第二自公」勢力に転じつつある。

 「維新」「国民民主」「立憲民主」が主導する勢力が政権を奪取して日本が変わるのか。おそらくなにも変わらない。

 〔それよりも〕日本を「戦争をする国」に改変し,原発を推進し,消費税増税を推進することになるだろう。この方向に日本は進んでいる。

 これでは日本は永遠に米国の半植民地。このことを広く日本国民が認識し,方向転換を図る必要があるのではないか。

日本は永遠に米国の半植民地

 ここで一言だけ添えておくと,かつてあの「世襲政治屋3世」安倍晋三も「戦後レジームからの脱却」という標語を好んで叫んでいた。しかし,現状のごとき「某国に対する服属国家体制」に触れることもないまま,そのように高唱した観念の立場からだとなれば,自身もどっぷり漬かったままであった『この国の「半国家」性』を問題にしたところで,なんの解決案も導出できるはずがなかった。

 つまり,この国の21世紀になっても変わらぬ対米従属国家体制は,これをより具体的に説明するとしたら,たとえばつぎのような表がうまく整理・指摘してくれている。

日本国防衛省自衛隊3軍は実態として米軍の指揮下にあり

 

 ※-3 雨宮処凛「自民党という人災『失われた30年』の戦犯であり,この国を衰退させた張本人たちによる総裁選-どんなに立派なことを言おうとも,『失われた10年』を『失われた30年』へと引き伸ばし,GDP世界2位から4位へと転落させるなど,日本をここまで衰退させた張本人であり大戦犯こそが自民党議員ではないか。」

 この雨宮処凛稿は,『 HUFF POST 』2024年9月19日 11時30分 JST,https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_66ea7e1be4b0abd55921d121 に公開されていたものである。元の出所は末尾に付記してある。話題は昨年(2024年)秋における自民党総裁選から始まる。

 a) メディアは連日,自民党総裁選一色だ。過去最多,9人の候補者が乱立し,いろんなことをいっている。

 9人中5人が世襲議員,また9人中4人は選択的夫婦別姓に反対のところなどをみるたびに(反対なのは高市早苗氏,小林鷹之氏,林 芳正氏,加藤勝信氏),「まだこんなところで立ち止まってるのか……」と強制的に昭和にタイムスリップさせられたような気持ちになる。

 補注)最近は「昭和」というとずいぶん昔でふるーい時代を想像させる用語として使用されているが,この昭和は1945年8月を挟んで完全に質的に異なる時期を前後させていたし,また単に古い時代であったかのように思わせかねない表現は問題あり。

〔記事に戻る→〕 そんなものをみればみるほど,「この国の政権与党は,世間の感覚とズレまくった上,日本で一番くらいに時代遅れの組織なのだなぁ……」と遠い目になる。思っていた以上に自民党が「ヤバい」ことに多くの人が気づけるので,いい機会なのかもしれない。

 しかし,そんな総裁選の報道を見るたびに,心から思う。

 b) どんなに立派なことをいおうとも,「失われた10年」を「失われた20年」「失われた30年」へと引き伸ばし,GDP世界2位から4位へと転落させた挙句,平均賃金を韓国に抜かれるなど,日本をここまで衰退させた張本人であり大戦犯こそが自民党議員ではないか,と。

 いまさらどれほど耳当たりのいいことをいおうとも,「じゃあなんでいままで,これほどの崩壊に対して,なにもせずに傍観していたのか」と詰め寄りたくなる。

 そんな自民党が招いた崩壊を振り返ろう。

 まず思い出すのは,バブル崩壊後,企業を守ることを優先し,当時の若者の人生を犠牲にしたことだ。そうして若年層を中心に非正規雇用が激増。1990年の非正規雇用率は2割ほどで,その多くが学生やパートの主婦だったわけだが,現在の非正規雇用率は4割近く。多くがみずからが家計を支える層である。

 こうなると,当たりまえだが低賃金,不安定ゆえ結婚する人は減り,少子化が加速していく。さらに貧困ラインぎりぎりの生活なので消費できない人が増えていく。これはもうずーっと前から指摘されていたことだが(そして私も声を上げていた1人だが),恐ろしいのは誰もこれを途中で方向転換しようといいださなかったことだ。

 その結果,日本からじわじわと国力が失われていったわけだが,目先の利益や損得だけでなく,長期的なビジョンをもった政治家がいればけっしてこんなことになっていなかったのではないか。しかし,自民党議員たちは,「第3次ベビーブーム」の担い手として期待されていたロスジェネをみすみす見殺しにした。そんなロスジェネはもう50代に突入する。

右上「給与額の格差」に注目

 c) ここに,そんな衰退を表す数字がある。2022年3月,経済財政諮問会議が発表した調査結果だ。

 1994年と2019年の世帯所得の中央値を比較したところ,35歳から44歳では104万円減少。45歳から54歳ではその倍近くの184万円も減っていたというのだ。また,全世帯の年間所得の中央値は,1994年の550万円から2019年は372万円と,32%(178万円)も下がったという。

 それなのに,負担は増える一方だ。たとえば1980年代,国民負担率(社会保険料と税金の合計が国民所得に占める割合)は30%台だった。それがいま,47.5%とほぼ5割に迫る勢いだ(2022年)。

 道理で生活が苦しいわけである。しかも2年以上にわたって続く,物価高騰。今(2023)年7月に発表された国民生活基礎調査によると,「生活が苦しい」と回答した人は59.6%。調査開始からの37年で最悪の水準だ。

 このように,日本社会を壊してきた自民党だが,もっとも激しく破壊したのは「自民党をぶっ壊す」と叫びつつ,この国の雇用と生活をぶっ壊した小泉純一郎氏だろう。

 竹中平蔵氏とともに,どれほど「普通に働き,普通に生きる」ことを破壊してきたか,この30年くらい日本で暮らしてきた人であれば全員が痛感しているはずだ

 d) しかも「既得権益の打破」を謳いながら,自身は3世議員。息子の進次郎氏を4世議員にするなど,みずからが「歩く既得権益」では,と突っこみたくなるのは,私だけではないだろう。

 それなのに,この国に住む多くの人は「忘れる」ことに長けているのか,小泉親子はまだまだ人気がある模様。なぜ批判されず,ありがたがられているのか私にはまったくわからない。

 だって,ここまでこの国が破壊されていなかったら,失われなくていい命は確実にあったのだ。お金がなくて病院にかかれず亡くなった人や経済的な問題で自ら命を絶った人は多くいる。

 一方,もう少し安定した社会であれば,生まれてきた命だって多くあるだろう。このように,政治は命に直結するのに,あまりにも命を軽んじる政治がおこなわれてきた。そして自民党は,積極的に庶民を見捨ててきたわけである。

 e) もうひとつ書いておきたいのは,世襲議員についてだ。今回の総裁選でも候補者9人中5人と半分以上が世襲議員だが,このことの異常性をもっと考えるべきではないだろうか

 アーティストや俳優のなかには,自らが「2世」であることを隠し,実力だけで成功をおさめた人も少なくない。おそらく「2世」と思われることが嫌で,みずからの力だけで勝負したいというプライドがあるのだろう。

 そのような姿勢は潔いと思うが,では政治家のなかに,2世であることを隠し,親の恩恵を受けずに勝ち上がったという人がいるかといえば,残念ながら1人の顔も浮かばない。世襲とかダサくて恥ずかしいから嫌,というプライドの持ち主はいないのだろうか。

 ちなみに小泉進次郎氏が「解雇規制の見直し」について触れ,「世襲議員がなにをいう」と批判を浴びているが,世襲議員に対する規制・制限こそが必要ではないだろうか。

 f) さて,いろいろ書いてきたが,自民党総裁選に党員ではない私たちは投票できない。それなのに連日総裁選の様子をみせつけられながら思うのは,普段の選挙でもこれくらいメディアで取り上げてほしいということだ。

 討論会でもインタビューでもなんでもいい。いつもの選挙の,投開票日の夜になってやっと候補者の詳しいことが報じられる「手遅れ感」たっぷりな報道には,多くの人がうんざりしている。

 ということで自民党の「人災」について触れてきたが,人災は他にもまだまだある。

 g) マイナ保険証はもちろん,社会保障費は削って軍事費だけはガンガン増える,庶民にとってめちゃくちゃ優先順位の低い改憲への前のめりっぷりなど,どこを切り取っても民意など反映されてはいない。

 総裁選を機に,いま一度,自民党がしてきたことを思い出してほしい。

【原文末・註記】 2024年9月18日の雨宮処凛がゆく! 『第691回 自民党という人災〜「失われた30年」の戦犯であり,この国を衰退させた張本人たちによる総裁選。の巻(雨宮処凛)』より転載。 


 ※-4 「財務省に『カネ返せ』」 市民が集結」『田中龍作ジャーナル』2025年1月4日 19:18,https://tanakaryusaku.jp/2025/01/00031833

       
        ▲「罪」務省とはいいえて妙である ▲

 神聖不可侵の吸血鬼に向かって市民たちが「カネ返せ」と叫びつづけた。財務省解体を求め「消費税廃止」「インボイス廃止」を訴えたのである。(主催者:ころん氏)

 大臣経験者の知人が在任当時,財務省の力の源泉である特別会計にメスを入れようとしたところ翌朝には,自分の資産状況や愛人まで大蔵省(現財務省)から調べ上げられていた,という。

 財務省は,官僚の財布と呼ばれる特別会計を差配することで霞ヶ関の各省庁を支配下に置く。特別会計は一般会計の4倍近くもの予算額をもち,国会のチェックも入らない。財布の財布たるゆえんだ。(2024年度の特別会計=約436兆円/一般会計=約112兆円)

 民主党(現立憲)の衆院議員だった石井紘基氏は,特別会計について国会で質問する日の朝,暗殺された。2002年のことだ。

 集結した参加者は約100人。日章旗をみて「ウヨク」だの「右」だのといってる間は,財務省は健在である。国共合作に学ばない日本人が日本を滅ぼす。(この段落はつぎの画像の解説文である)

デモをしない国民たちは「まず政治屋たちに舐められる」

 マスコミは国有地を世話してもらったり,税の減免をしてもらったりで,財務省には頭があがらない。タブー中のタブーであるため誰も触れないのだ。

 結果,財務省のやりたい放題となる。官僚を肥え太らせるために,国民は血を吐くような苦しい思いをしながら税金を納めつづけるのである。

 消費税を納めきれずに倒産する零細の個人事業者が続出しようとも,官僚たちは温々と過ごせる。それが財務省という名の吸血鬼が支配する日本の現状である。

 「100万人プロジェクトでやらないとこの国は変わりません」。主催者のころん氏は声を大にして指摘した。「財務省に媚を売って国会議員になっている奴は要らない」とも。

 売国議員を放逐するには,あと何回,選挙を経なければならないのだろうか。それまで国民は野垂れ死にしはしないだろうか。

 オールドメディアはどこまで行っても権力のお先棒担ぎのようだ。(引用終わり)

 以上のような日本国「政府」では,つぎのような報道が示唆する国家安全保障の問題発生に即座に対処し,より具体的に建策することは不可能。

日本は独自にこの攻勢に対抗できる戦略対応策を
ふだんから用意しているか?

 アジアに布陣するアメリカの太平洋軍のいいなりな自衛隊3軍で,この記事が示唆する「自国:日本の安全保障」は,いったいどのような基本体制であればよいのか,国民たち一人ひとりが,まともに考え議論したことはあるのか?

 現状の日本国,いまや経済3流,以前から政治4流であった。以上に記述した内容のうちで,他人事である問題などひとつもない。われわれの鼻先に突きつけられている現実問題,それも基本的な生存権にかかわる重要な意味がある。意識するとしないとかでも,好き嫌いの問題でもなく,もともと逃げられない問題。

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