
「青の朔日」とリンクする読書体験
青山美智子さんの「月の立つ林で」を読んでいて、BUMP OF CHICKENの「青の朔日」とリンクする部分を感じた。
この本の主人公は40歳で看護師を辞め、新しく仕事を始めようとするもののうまくいかない。そんな中、彼女が出会ったポッドキャストでは心地よい声で月にまつわる知識を放送していた。
たとえば、
「月は年間3.7センチずつ地球から離れている。」
「朔日(ついたち)は新月の日で、月が一番明るく輝いているイメージがあったけれど、実は何も見えない状態。」
主人公は人間関係に重ねながら、こう気がつく。
「悩んでいる時って、自分を見失ったりする。『私がいるよ』って伝えることは、『あなたがいるよ』って伝えることと同じなんだ。」
私たちの周りの人や過去の経験は、私自身が今もつ悩みを解決してくれるわけじゃない。
でも、たとえ離れた存在でも、見えない状態でもわずかな引力のように私に元気をくれる。
そして、迷っている時、見失いそうな時、自分自身の存在を思い出させてくれる。
人間関係だけじゃなく、仕事でも、今と同じ環境ではなくても、軸を変えずに別の立ち位置でやれることがあるかもしれない――そう思い、一歩踏み出す決意をする。
一方、バンプが歌う「青の朔日」は、目印となる明かりが見えない夜でも、迷いを抱えたままでも、いつかの約束や自分の決意を目印にして進んでいこうと歌っている曲だ。
どちらも、明かりが見えない中でも自分自身や人間関係、過去の記憶の存在の確かさを頼りにしながら前に進んでいこうと勇気をくれた。
自分が暗闇で迷子になったとき、見えないけれど確かなそれらの存在を思い出して進んでいきたい。