ねこのげぼく

音楽学者兼翻訳屋。商業翻訳はチャールズ・ローゼン『古典派音楽の様式』(音楽之友社。大久保賢氏との共訳)、トマーシュ・ユルコヴィッチ「母語は世界言語によって磨かれる」(『アステイオン』82号)、ミラン・クンデラ「にわかに信じ難い運命」(同誌86号)等。

ねこのげぼく

音楽学者兼翻訳屋。商業翻訳はチャールズ・ローゼン『古典派音楽の様式』(音楽之友社。大久保賢氏との共訳)、トマーシュ・ユルコヴィッチ「母語は世界言語によって磨かれる」(『アステイオン』82号)、ミラン・クンデラ「にわかに信じ難い運命」(同誌86号)等。

最近の記事

駄本はいかに処分すべきか

かつて学者渡世に身をやつしていたこともあって、本を買うことが食料品や各種消耗品を買うのと同等の行為となってしまっている。そのため、自室には大量の本があふれ返っていて、ただでさえ狭い賃貸物件に住んでいるというのに、年々狭まる一方の居住スペースをどうするかでいつも頭を悩ませている。中でも最も頭が痛むのは、箸にも棒にもかからぬ駄本をどう処分すべきかという問題である。 もちろん、古書店にまとめて売却するというのが一番簡単かつ実利にもつながる処分方法であろう。だが、昨今では古書市場で

    • 「人民」という言葉をもっと積極的に使おう!

      立憲民主党所属の参議院議員である石垣のりこ氏が「人民」という言葉を使ったとかで「小児右翼(ネトウヨ)」——「小児右翼」という言葉は、昔からの友人が案出した言葉で、あまりに見事なのでいつも使わせてもらっている——、つまるところ、この国の多数派の思考回路を最も端的に示した人の形をしたクズどもが切れまくっているらしいが、いったい何の問題があるのか。どうせ「○○人民共和国」と名乗っている共産党もしくはそれに類する政党が一党独裁を行っているということだけを根拠にして「サヨクがー」と吠え

      • ムソルグスキーの『死の歌と踊り』

        ムソルグスキーの『死の歌と踊り』は西洋芸術音楽史上最高の歌曲集だと思わざるを得ない。シューマンやマーラーの歌曲も大好きだしすごいと思うのだが、やっぱりムソルグスキーの歌曲に比べるとどこかひ弱な感じがする。これは、終曲の「司令官」。歌詞の内容がダイレクトに伝わってくるぐらいにロシア語を勉強していて本当に良かったと思う。最近はチェコ語にばかりかまけているとは言え、今でもちゃんと辞書を使えば何の問題もなく読めてしまう。ちなみに、この歌曲集はショスタコーヴィチによるオーケストラとソリ

        • 形態模写ならびに文体模写

          話している相手の語彙や文構造や統語法や修辞、話題の幅や話題の「飛ばし方」、そして話すテンポの配分や声色などが際立って特徴的なものだと、話しているうちに本人の話し方を覚えてしまって真似できてしまうようになるという能力を幸か不幸か持ってしまっているのだが(本人の口調をそのまま真似して本人に話しかけたりして、顰蹙を買ってしまったことが何度もある。真似せずにはおれなくなるほど面白いのだけど、やはり人間関係を円滑にしようと思ったら本人の面前で真似をすることはなるべく控えるべきだというこ

          「オカマ」という言葉について

          「オカマ」という実に穢らわしい言葉を浴びせかけられて散々泣いていたことは、悲しいかな「ミー・トゥー」である。小学校低学年の時にも中学年の時にも高学年の時にも散々な目に遭ったことを思い出してしまった。「俺」という人称代名詞が使えないだけでも、この言葉や「おとこおんな」などといった言葉を浴びせかけられて嫌な目に遭った(いまだにこの人称代名詞は嫌悪の対象でしかないので、絶対に使いたくない)。あの時の怒りと屈辱は、今でもまったく忘れていない。中学校に入ってから気が狂ったように英語を勉

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