詩人になるというのはどういうことなのか。
いつだったか、Zoom教室での対談で、野木京子さんに、「詩人になるというのはどういうことなのか。」という質問をしたことがありました。
その時に野木さんは、少し考えた後で、「やってくる仕事を、こなしてゆくことです。」と答えてくれました。ぼくはそれを聞きながら、「なるほどな、ああ、たしかにそうだな」と思ったのです。
詩人というのは
多くの詩集を出してゆくこと
という答えではなく
詩人というのは
見るもの聞くものに詩情を感じ続けるもの
でもなく
詩人というのは
単に目の前の仕事をこなしてゆくこと
なのです。
でもそれならば、別に詩人でなくても同じではないかと思います。
はい、同じなのだと、ぼくは思います。
器用な詩人も、不器用な詩人もいるけれど、結局のところ、だれもが手元のところで、心を込めた詩を書こうとしているだけなのではないか。
そしてそこが、詩を書く人にとってもっとも大事な場所であり、時間なのではないか。
それ以外の詩に関することは、単にその時の現れでしかないし、遠くから見れば、さほどのことではない。
詩人であろうが、詩人になる前であろうが、やるべきことはひとつきりなのだと、ぼくは思います。
今、目の前に書こうとしている、わけのわからない思いと真摯に向き合い、まだどこにもなかった詩をひとつ、手元で生み出すことに、熱くなっていられることなのではないか。
そこに詩作のすべてがあり、これ以上のものはなにもないと、ぼくは信じています。