松下 育男

詩とともに生きる。詩集『肴』(H氏賞)、他。詩の教室をやっています。現代詩文庫『松下育…

松下 育男

詩とともに生きる。詩集『肴』(H氏賞)、他。詩の教室をやっています。現代詩文庫『松下育男詩集』、詩集『コーヒーに砂糖は入れない』講演録『これから詩を読み、書くひとのための詩の教室』発売中。

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白玉の思い出

ぼくが若い頃、ネットとかEメールなんてまだなかった。だから原稿は郵便で送っていた。 詩を書いたら封筒に入れて、糊で封をして、夕暮れの街を歩き、赤い郵便ポストに入れていた。 ただ時折、自分で編集者のところまで原稿を持って行くこともあった。 締め切りぎりぎりだったり、編集者が読んですぐにその反応をこちらに伝えたかったり(書き直しの可能性もあるので)、その理由はいくつかあるけど、たまに、休日や仕事帰りに電車に乗って、わざわざ待ち合わせの場所まで書いたものを運ぶことはあった。

    • これからの予定

      これからの予定です。 9/28(土)& 10/19(土)「隣町珈琲」詩の教室。 10/27(日) 「ケトルドラム」で「松下塾」。小池昌代さんと。 11/16(土) 「隣町珈琲」詩の教室。 11/23(土)&24(日) 九州で詩の仕事。 12/21(土) 「隣町珈琲」詩の教室。 あとは「詩の通信教室」です。これはいつもいつでも。

      • 第2回「松下塾」は満席になりました

        第2回「松下塾」は満席になりましたので、参加申し込みは締め切らせていただきます。 ありがとうございます。

        • 【第2回「松下塾」開催のお知らせ】

          【第2回「松下塾」開催のお知らせ】 日 : 2024年10月27日(日) 時 : 14:15~16:30 (開場14:00) 内容 : 「二人で詩の話や朗読など」 出演 : 小池昌代さん と 松下育男 場所 : ケトルドラム・聖蹟桜ヶ丘駅2分 参加費 : 2000円+1ドリンク お申し込みは、fampine@gmail.com 松下までご連絡を。

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          2024/09/18(水)詩を送り出す場所

          我が家には固定電話があります。 それで、気がつくと、ずいぶん前から、固定電話にかかってくるのは、ほとんどが何かの勧誘か、迷惑電話です。 ですから、詩の友人とか編集者からかかってくることはめったにありません。こちらの方はたいてい携帯電話のメールで連絡をとっています。 ところが、かつて、固定電話にかかってきた電話で、「詩」という言葉を聞きました。 「松下育男先生でいらっしゃいますか」と言われ、知らない人に「先生」呼ばわりされるのは何かあるなと、感じました。 「先生のXX

          2024/09/18(水)詩を送り出す場所

          「外に向く視線」 ― 嘉陽安之さんと谷口鳥子さんの詩について

          詩を二つ、読んでみましょう。 まず最初は嘉陽安之さんの「朝をつくる」です。 * 「朝をつくる」 嘉陽安之 朝 それほど 広くない通りに 警備員さんや 教員が並んで 生徒の 通学の道が つくられていく その中を 今日も 中高生を務めに 青年でも少年でもない 現代の真ん中を 生きる者たちが歩いていく ぼくも道に立って 彼らの朝をつくる ぼくの後ろを 通勤の人や 自転車で 幼稚園に子どもを送る お母さんたちが 慌ただしく過ぎていく たまには酔っ払いもいる 昭和の二日

          「外に向く視線」 ― 嘉陽安之さんと谷口鳥子さんの詩について

          「気の持ちようで人は幸せになれるか」

          かつて、ヴィクトール・フランクルという人がいました。ご存じかと思うんですけど、オーストリアの精神科医です。ナチスの収容所に入れられて、家族を失い、のちに『夜と霧』という有名な本を残しています。最近、NHKでフランクルの思想についてシリーズで放映していて、それを観ながらいろいろと考えさせられることがあったんです。 ぼくはもともと、哲学とか思想は苦手なんです。ぼくが若い頃は実存主義というのが流行っていて、それでサルトルの本とかいくつか読んだりしたんですけど、表面的にはわかって

          「気の持ちようで人は幸せになれるか」

          2024/09/15(日)なんでもない人が詩を書いている

          詩を書いて有名になりたい、と思うことは自然なことだと思う。 自分の書いた詩が誉められたいと思い、賞をとって、もてはやされ、すごいすごいと毎日言われて、そんな日がくれば、たしかに気持ちよく過ごせるかもしれない。 そういう気持ちって、自分ではみっともないとか、あさましいとか、思っていても、やっぱりどこかにあると言えばある。 だから、承認欲求自体を否定しても仕方がない。欲望の一種なのだから。 ただ、それでもやっぱり、そんなところを目指して詩を書いているのではないと、たまにき

          2024/09/15(日)なんでもない人が詩を書いている

          2024/09/14(土) 詩に罪はない

          それで、さきほどX (「旧ツイッター」といつまで注釈を付けなければならないのだろう)に書いたように、明日9/15は「松下塾」で、9/28は「隣町珈琲」で詩の教室「現代詩の入り口」があります。 毎日生きていると、人間って、(ぼくも人間だから)どうしてもいろんなことを考えてしまいます。 若い人は若い人なりに、ぼくのような年寄りは年寄りなりに、自分の考えの中で、迷い、悩み、何をすべきかと、いろんなことを考えてしまいます。 ぼくなんかに何ができるだろうか、とか、これでいいのだろ

          2024/09/14(土) 詩に罪はない

          俳句を読む 75 五十嵐研三 うらがえすやもう一つある秋刀魚の眼

          うらがえすやもう一つある秋刀魚の眼 五十嵐研三 最近のサンマはだいぶ小さくなってきましたが、つい先日も、夕食のテーブルの上にちょこんと乗っていました。勤めから帰って、思わず嬉しく「サンマか」と、口から出てきました。特段珍しいものではありませんが、箸をつけて口に入れた途端、そのおいしさに素直に驚いてしまいました。掲句、「うらがえすや」とあるのですから、片面を食べ終わって箸で裏返したところを詠っています。眼がもう一つあると、わざわざ言っているからといって、秋刀魚の眼を意識しなが

          俳句を読む 75 五十嵐研三 うらがえすやもう一つある秋刀魚の眼

          2024/09/13(金)ぼくも君みたいだったよ

          まだ相変わらずすごく暑いけれども、最近は、午後5時を過ぎれば、なんとか散歩をすることができるようになった。 ぼくの散歩の経路は、いつも同じで、横浜の坂道を登ったり下ったりの繰り返しだ。 それで、夏場以外は、原稿書きに疲れた頃、午後4時頃に同じ道を散歩をすることが多くて、それで、ある、同じ坂の曲がり角で、同じ少女とすれ違うことがたびたびあった。 たぶん学校帰りで、制服らしい格好をしている。こちらは坂を下っていて、少女は登っているから、そう見えるせいもあるのかもしれないけど

          2024/09/13(金)ぼくも君みたいだったよ

          2024/09/12(木)仲良く話のできる会にしたい

          それで、今度の日曜日(9/15)は、聖蹟桜ヶ丘のケトルドラムで「詩のそばにいられる会」です。 初めて詩集を作ることについて、嘉陽安之さんと谷口鳥子さんと、話をします。 「詩のそばにいられる会」は、これ一回きりでなく、これからもゆったりと続けていきたいと思っているのです。 ある時は誰か好きな詩人と対談をしたり、ある時はぼくがボソボソとひとりで話をするのでもいい。 ともかく、ゆったりとお茶を飲みながら、詩の話ができる会にしたいなと、思っています。 なんというか、無理なん

          2024/09/12(木)仲良く話のできる会にしたい

          詩人の親戚

          会社員だった頃に、社内にひとり、詩人の親戚だという人がいた。 富永太郎の甥(だったか、その息子だったと思うのだけど)にあたるTという人だった。 Tさんとは、あるプロジェクトを一緒にやっていた時期があって、それで、Tさんは、ぼくが詩を書いていることを知っていて(社内報に載ってしまったことがあるので)、なんどか親戚のおじさん(富永太郎)のことを聞いたことがあったと記憶している。 その時にTさんに聞いたことはほとんど忘れてしまったけれども、当時の著名な詩人が富永太郎を訪ねて来

          詩人の親戚

          2024/09/11(水)ぼくにとっての詩とは

          今年の5月に、縁あって「隣町珈琲」で詩の教室をやることが決まった時に、せっかくやるのなら、ぼくは毎月、ひとりずつ好きな詩人の話をしたいと、提案しました。 新川和江さん、石垣りんさん、清岡卓行さん、渡辺武信さんの四人が頭に浮かんで、告知にもその名を書きました。 7月に教室が始まった時には、新川さんも渡辺さんも、ここに生きていました。 それが、ぼくが7月に新川さんの話をしてほどなく、新川さんは亡くなられました。 それから、渡辺さんの話は何月にしようかと、空を見て考えていた

          2024/09/11(水)ぼくにとっての詩とは

          2024/09/10(火)次から次によい詩ができなくたって、がっかりすることなんてない。

          このところ家で原稿を書いている時に、たまに聴く曲がある。昔の歌だけど、eaglesのHotel Californiaという曲だ。昔、流行っていたので、若い頃に若いeaglesが歌っているのを聴いたことがある。でもその頃は、いい歌だなと思って、それだけのことだった。 先日、原稿を書くのに疲れて、ちょっとひと休みと、携帯をいじっていたら、この歌が出てきた。画面には、歳をとったeaglesがこの歌を歌っていた。歳はとっていても、声は高音がきれいに伸びていて、素晴らしかった。ぼくは

          2024/09/10(火)次から次によい詩ができなくたって、がっかりすることなんてない。

          俳句を読む 74 松本進 颱風へ固めし家に児のピアノ

          颱風へ固めし家に児のピアノ 松本 進 もう60年も昔、多摩川のほとり、大田区の西六郷に住んでいた頃、台風が来るというと、父親は釘と板を持って家を外から打ち付けたものでした。ある年、ちょうど家の改築をしている時に大きな台風がやってきて、強い風に家が揺れ、蒲団の中で一晩中恐い思いをしたことがあります。掲句の家庭にとっては、まだそれほど状況は差し迫ってはいないようです。台風に備えて準備を終えた家の中で、子供が平然とピアノを弾いています。狭い日本家屋の、畳の一室にどんと置かれている

          俳句を読む 74 松本進 颱風へ固めし家に児のピアノ