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年老いた両親にプレゼントした旅の話し。〜幸せな旅だった〜
次の日、チェックアウトまでの時間ひとりのんびり外を眺めてコーヒーを飲んだ。
(無事に終われそうでやれやれ…)
チェックアウトの時間に、昨日の足の悪いおばあちゃんが、わざわざ叔母に支えられながらお見送りきてくれた。
なぜかずっと泣いていた…
「会えて良かった良かった」と。
母も名残惜しそうにずっと手を握っていた。
「これ、お土産ね」
と、叔母さんに各自手渡された、まあまあデカい萩の月…そして評判の魚の粕漬け。
絶対うまいに決まっているのだが…
…新幹線です。泣
急遽、宅配便ミッション追加。
広ーい仙台駅に隣接している商業施設で、さらに嬉しそうにお土産を買いまくる母を急かし、新幹線の時間が迫る中、ダッシュで荷物を箱詰めして発送。
駅弁を構内で買って新幹線に乗り込んだ。
帰りは、さすがに予算の関係でグランクラスではなくグリーン車を手配。
やれやれと、椅子直立でお弁当を食べている両親を見て、
(グリーン車が似合わないな…)と、少し笑えた。
私が子供の頃、生活が苦しくて両親は働いて働いて…指定席なんてもったいないと、自由席に並んでいた。
いつもお盆や年末に帰省するから、座れない事もあって、それでも私にはその旅が楽しみで仕方がなかった。
そんなわくわくをくれた両親に、経験したことのない世界を味わってほしかった。少しは恩返しできたかな。
私がプレゼントしたこの親孝行旅を忘れてしまったらどうしようと、高齢の母は心配していた。(お父さんは絶対忘れるわよとも)笑
「忘れても良いんだよ」
この先、記憶が消えてしまってもいい。その瞬間を楽しめた事が大切だから。
それから1年後、母の大好きだったおばあちゃんは他界した。
みんなでご飯食べた時の集合写真には、満面の笑みで笑うおばあちゃんと母が写っている。
母はその写真を眺めながら、あの時楽しかったなぁと、呟いてた。
急に思い立って、計画した旅はこの為だったのかもしれない。
親孝行の旅は、私にとっても幸せな旅だった。