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[書評] 真っ向勝負のスローカーブ

みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・書評家・エッセイスト として、
自らを定義しています。

中学生の頃に野球にハマり、
大学生の頃をピークに
熱が冷めた。

個人的には日本のプロ野球の
プレーオフ制度は好きではないので、
リーグ優勝チーム同士ではなくなった
"日本一" を争う構図に興醒めしたのだ。
(興行的には理にかなっていると思うが)

だが、年に数回 無性に
野球関連の本を
読みたくなることがある。

会社員として生きていると、
完全なる弱肉強食の世界に生きる
勝負師たちの生き様や考え方に
触れてみたくなるのだ。

そういうことであれば
別にサッカーでも格闘技でも
対象競技は何でもいいのだが、
これは単に私が過去に
野球と競馬の観戦を
趣味としてきたからである。
(だから たまに
 競馬関連の本も読みたくなる)


出会いは ドカベン

この本の著書・星野伸之 氏を
初めて知ったのは、私が人生で
初めて買った野球マンガが
キッカケだった。

忘れもしない、
「ドカベン プロ野球編 38巻」
である。

ドカベンの「ド」の字も
知らないのに、よりにもよって
続編の中途半端な巻である。

まだ野球に興味を持ちだして
間もない頃だったが、
その1冊で描かれた試合で
星野氏のプレースタイルに近い
キャラクターが投げていたのである。

一般的には
野球の投手というものは、
投げるボールは
速ければ速い方がいいとされる。

もちろんコントロールが悪くて
ストライクが入らなければ
意味がないし、いくら速くても
他のボール(変化球など)が
投げられなければ
苦もなく打たれてしまうのだが。

まぁ こまかいことを
言い出すとキリはないが、
一般論で言えば
それなりに速い方がいい。

基本的にプロ野球の
一軍で活躍するような投手は、
直球ストレートを投げれば
140 km/h くらいは ざらに出る。

特にここ10年くらいは
トレーニングや
理論的な面の進歩も
目覚ましいから、
150 km/h くらいでは
大して驚かれない時代になった。

そうでないのに活躍する
投手がいるとすれば、
変化球がスゴイとか
投球フォームが変則的だとか
スピードに代わる武器が
あるものである。

なぜ こんな平凡そうな人が

そんなプロ野球の世界の中で、
著者は なかなか特異な存在である。

まずもって「球が遅い」

彼が活躍したのは
1990年代前後だが、
それを考慮しても
最高で 130 km/h
そこそこというのは
横投げサイドスロー下手投げアンダースローを除けば
非常に遅い。

かといって とんでもない
変化球があるかといえば
代名詞ともなったカーブは
たしかに素人目に見ても
大きく曲がっていたが、
他の球は 映像で眺めている分には
特段 驚くようなボールでもない。
(私自身は昔 測定したら
 100 km/h も出なかったから、
 十分スゴイとは思うが)

じゃあ "精密機械" と
称されるような
抜群の制球力を
持っていたかというと、
決してそんなこともない。

それでいて 10年以上に渡り
チームの主力として活躍し続けた。

群雄割拠のプロ野球界で
長きに渡って活躍した人を相手に
大変 失礼な話ではあるが、
マンガとTVゲームから
彼を知った私の中では
「唯一無二の投手」の他に、
どこか「平凡」という
イメージがある。

たしかにカーブは大きく曲がるし
直球に比べて 非常に遅く
(キャッチャーがボールを
 素手で捕れるくらいには)
緩急差が武器となる投手だとは
思っていた。

もちろん ここまでは私が
画面越しに(または記録で)
見てきた感想であって、
実際に打者として相対すると
一級品のボールなのだろう。

だが それは対戦した者にしか
分からないことであって、
やはり 私からすれば
「なぜ こんな平凡そうな人が
 これだけ立派な成績を
 残せたのだろうか」
と疑問が拭えなかった。

それ故に 今回の本を
手に取ったわけである。

マインドセットの投手

私も これまで何冊も引退した
プロ野球選手の
著書を読んできたが、
だいたい自伝的に
生い立ちを綴ったり
現役時代の苦労や
印象的な試合などを
紹介したりする本が多い。

もちろん この本も
そういう話は
多分に綴られているのだが、
他の本と比べると この本は
「マインドセット」や
「考え方」といった視点での
話が多いような気がする。

「勝負術」という言葉も
ニュアンスが重なる部分はあるが、
やはり私の印象としては
「マインドセット」という言葉が
一番しっくり来る。

思うにこれが
星野伸之 という投手が、
活躍し続けられた
秘訣なのではないだろうか。

自分が平凡だからこそ

散々 好き勝手に
失礼なことを書いてきたが、
プロ野球界で
長く活躍した投手だから
そのボールも テクニックも
(月並みな表現ではあるが)
一流のはずである。

でも、やはり私の目には
ものすごいボールを
投げているようには見えない。

だが、実績は間違いなく
一流の数字である。

ここに私のような凡人が
生き抜くヒントがあるように思う。

野球の決め球ウイニングショットのような
武器を後天的に身につけられれば
苦労は少ないかもしれないが、
それは誰にでも叶うことではない。

しかしながら、
手持ちの武器は平凡でも
マインドセット次第では
一流の武器を持つ者たちと
互角に勝負することができる。

生まれや財力、遺伝子だけで
人生の優劣が
決まってしまうのならば、
私のような人間には
夢も希望もない。

実際には 不利な要因とはなっても、
不利なりに勝負する術は
いくらでもある。
それは ある意味、考え方次第だ。

私が 何かしら
圧倒的な武器を持っていたら、
この本は つまらないもの
だったかもしれない。

私自身が目に見える武器のない
「平凡」な人間だったからこそ、
面白さを感じられた本なのだろう。

ちなみに私は剛速球で圧倒したり
派手にホームランを
かっ飛ばす選手より、
投球術で打者を翻弄したり
送りバントや堅実な守備で
玄人を唸らせる選手の方が
好みである。

何の弁明にも
ならないかもしれないが、
プロ野球史上 他に類を見ない
投球スタイルだった著者は
私にとってお気に入りの
野球選手の ひとりである。

こんな人にオススメ!

・(特に1990年代の)プロ野球ファン
・「柔よく剛を制す」を好む人

こんな人には合わないかも…

・野球の話題に興味がない人
・「剛よく柔を断つ」を好む人

お読みいただき、
ありがとうございました。

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