[書評] 現代経済学の直観的方法
みなさん、こんにちは。Naseka です。
私は 哲学者・書評家・エッセイスト として、
自らを定義しています。
現代は「資産運用の時代」である。
バブル期のように
預金に1%を超えるようなことは
少なくとも日本では考えにくいし、
ここ数年で加速し出した
インフレも考慮すると
ますます運用が
必要になっていくだろう。
(もっとも預金も資産運用のうちではあるが)
私は一時期、資産運用の一環として
株式投資の勉強に
注力していた時期がある。
もちろん わずかばかりの資産を
増やすことが第一目的ではあったが、
どうせなら表面上の数字だけでなく
その本質を見極めたいと考えた。
一時期は「株式投資が趣味」
とさえ思っていた。
「株式(会社)とは何か」から始まり、
最終的に行き着いた命題は
「資本主義経済とは何か」
ということであった。
結論を言ってしまえば、
よく分からなかった。
より正確に言えば
「よく分からない」
ということが分かった。
ソクラテス風に表現すれば、
「無知の知」である。
それにしても、経済学は難しい。
もちろん「数学」や「物理学」が
簡単というわけではないが、
それらと比較しても
非常に難解な学問である。
経済や金融にかかわる本を
数十冊読んでみたが、
ほとんどの本は半分も読むうちに
私には小難しい説明になってきて、
後半は飽きて流し読みで
終わってしまった。
その中でも、この本は個人的に
一番分かりやすかった。
何より興味が尽きず、
むしろ読むのが止まらなくなり、
最後まで飽きることなく
読むことができたのだ。
絶対的な正解はない
まず私がいくつかの経済学の本を
読んで感覚的に掴んだのは、
「経済学に絶対的な正解はない」
ということである。
たとえば数学であれば、
証明された命題は
誰が何と言おうと「正しい」。
正しく証明されてしまえば、
そこに疑ったり
批判したりする余地はない。
それらの命題は、
どんな数学者であっても
「それは正しい」と万人が認める。
ところが経済学は、
万人が認める正解はないのである。
それは数学のように、机上の計算で
証明できるものではないからだ。
あくまでも現実の経済を観測したり、
過去の経済データを分析したりして、
「どうもこういう法則が
あるのではないか」
という推論を立てているようなものだ。
それで言えば物理学だって
実験結果から導かれた法則が
大半だと思うが、
物理学と経済学の決定的な違いは
「再現性が低い(或いは再現不可能)」
ということである。
この点、物理学は実験を繰り返して
「どうもこの法則は正しそうだ」
と検証することができるが、
経済は生き物だから
全く同じ条件での再現実験など
しようもない。
だから高名な経済学者の理論であっても、
平気で反論の余地が出てくる。
なぜなら その理論は
「証明」も「検証」も
されたわけではないからだ。
故にその時々で
もっともらしい経済理論は変わる。
やれ保護貿易だ、自由貿易だ、
ケインズ主義だ、計画経済だ、
新自由主義だ…というように。
私は
「経済とはズバリこういうものである」
という「正解」を求めていたから、
この事実に気付いて
急速に経済学への興味を失った。
(学んだことは無駄ではなかったと思っているが)
数式は要らない
「正解」があれば、
その正解を理解すべく
小難しい数式にだって
向き合うつもりであった。
(理解できるかどうかは別として)
だが、経済学に「正解」はない。
それ故に経済は正確な予測が困難だし、
経済学を学べば金持ちになれる
というわけではないのだ。
そうなると難解な数式や理論は
興味と暇がある人だけ理解すればよくて、
私のようにそうではない
市井の人間にとっては
「経済とは
『おおよそ こんなもの』である」
という程度の認識が得られれば十分である。
そこをいうと この今回の本は、
ほとんど数式は出てこない。
あくまで私の感覚ではあるのだが、
非常に平易で分かりやすいモデルで
現代経済というものを教えてくれる。
もちろんこの本に限らず、
分かりやすい説明というのは
枝葉末節までを正確に
表すものではないことが多い。
何事にも例外はつきものだし、
それを説明し出したらキリがない。
ただ、前述のように
大半の人にとっては経済学は
「おおよそ こんなもの」程度で
十分なのである。
本書はそのあたりの「必要十分」を、
十分に満たしているといえる。
読み物として面白い
1冊の本としてのテーマは
表題にあるように
「現代経済(学)」であるが、
当然 現代経済に至るまでには
その過程や歴史があり、
この先の将来へと続いていく。
(おそらく人類が生存し続ける限りは)
とりわけ最終章で語られる
資本主義が将来行き着くと思われる
「縮退」という状況、
「多様化がかえって縮退を加速する」
という話については、
非常に考えさせられるものがあった。
富める者がますます富み、
純然たる弱肉強食の
この資本主義の世界で、
強者が勝ち続けていく先に
何が待ち受けているのか。
もちろんこの本が述べることも
「正解」ではない。
あくまで「こうではないか」という
ひとつの話に過ぎない。
だが、読者ひとりひとりが
この本を読んだ上で自分なりに考えて、
「そうかもしれない」
「いや、違うのではないか」
と考えることに意義がある。
もし経済学に興味があるのであれば、
私は入門書として本書を薦めたい。
学問書として構えず
面白い読み物として
捉えてもらえれば、
抵抗感なく経済学というものに
親しむことができるだろう。
こんな人にオススメ!
・これから経済学を学ぼうとしている人
・経済学の入門書を読んでも
よく理解できなかった人
・資本主義経済の今昔や将来に興味がある人
お読みいただき、
ありがとうございました。
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