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創作大賞に応募したいんですが 3

行方不明というのは、でも、すこし大袈裟な表現だったかもしれません。
音信不通と言ったほうがもしかすると正確な気もします。

いまから十二年前、僕の姉は、僕ら家族との連絡を絶って、どこかへ消えたのです。

僕と姉はごく普通の家庭でごく普通に育ちました。
姉は僕より五歳年上でした。

年がやや離れていることもあって喧嘩らしい喧嘩をした記憶はなく、僕にとって姉は物知りでよく面白いことを教えてくれる親しい存在でした。

姉は大学にも進学し、そこは実家から通える範囲だったので大学卒業まで実家で過ごしていました。でも正直なところ大学時代の姉の記憶は僕にはあまりありません。

僕は自分では反抗期がゆるやかなタイプだったと思っていますが、それでも中学から高校という年頃は家族との関係は疎遠になるものです。大学生生活を送る姉もそれは同じで、顔を合わせる機会がそもそも少なかったように思います。

でもいまとなっては、大学生時代の姉をもっと知っておくべきだったのではないか、と思うのです。

姉が消えたのは大学卒業して就職のために実家を離れたときでした。

二十歳を過ぎてるとはいえ子どものはじめての一人暮らしに、母がなにかと世話をやいていたのを覚えています。僕もそれを手伝いつつ、でも自分の受験勉強だって忙しく、結局は姉の見送りもしませんでした。

異変が起きたのはそれから数週間後のことです。

母が「お姉ちゃんと電話がつながらない」と言い出しました。
はじめはよほど仕事が忙しいのかと思ったのですが僕がかけてみて事態の深刻さを悟りました。

電話は不通なのです。そのときにはすでにメールもLINEも届かない状況になっていました。

こうして姉は僕ら家族の前から消えてしまったのです。

いざとなったら姉の会社に連絡をとればいいだろう、と思われますか? それはもちろん僕らも考えました。そして実行した。

ですが姉はずいぶん早くに会社の内定は辞退していたようでした。

この内定辞退を知り、姉はなにかの事故に巻き込まれたのではなく、自らの意志で消えたのだということが濃厚になりました。

それが決定的になったのは一か月後、姉からの手紙が届いたときです。

そう、姉は消えてからたった一度だけ僕らに連絡を寄こしています。その手紙を、僕は見せてもらっていません。

しかし読んだ母と父によって、捜索願等は出さないという判断が下されました。

あらためてこう書いてみると不穏なかんじがしますし、当時は大変なことになったと思ったものですが、時間がたってみると、こういったことはそう珍しくはないなと思うようになりました。

案外いませんか? どこでなにをしているかわからない親戚って。

僕の場合それがたまたま姉だったというだけで、世の中ではありふれた話なのだと思います。

しかしその姉らしきアカウントが、突如、noteの画面に現れたのです。
思わず創作の手も止まる驚きでした。

姉が僕の前から消えたという事実は、長い間僕には直視できないものでした。
なぜ消えたのか? 理由はなにか? と考えてみる勇気すらありませんでした。

もし原因に思い当たってしまったら。
それがもし、僕にあるとしたら。

そう思うと怖くて、僕は無意識に、消えた姉を憧憬に格上げして自分の思考の外においていたような気がします。

SNSというのは不思議な場所なのかなと思います。
いろいろなものに出会う場所。

今回の件は僕にとっては嬉しい出来事でした。

本当に姉でも、本当は姉じゃなくても。
いまもどこかで姉があの記事のなかにあるように楽しそうに生きていると思えるだけで、いいように思えます。

SNSっていいな、noteがあってくれてよかったな、と思います。

さて長くなりすぎましたが、いよいよ小説のほうも進めないと間に合わなそう。
見たかんじ、今年はホラー部門に力を入れてそうな会社が多いですかね。
そのわりに投稿数が少ないので穴場にかんじる。

手持ちの作品にホラー要素をツッコむか、新たに作るか迷います……。
いや新たには無理か。

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