創作大賞に応募したいんですが 7
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「逃げろ」
姉はなぜこのメッセージを僕に向けたのか。
ひとつ謎が解けたかと思えばそれにより新たな謎が湧き出る状況で頭が追いつきません。あれから冷静になって考えてみたのでちょっとまとめていきます。
まずは状況を整理してみようと思います。思うにいまある謎は四つです。
①何から「逃げる」のか?
②なぜ「逃げる」必要があるのか?
③どうしていま、このメッセージが出されたのか?
④姉はどうやってこの伝達手段を思いついたのか?
自分のなかでの確認の意味もあって書き出してみましたが、このなかで①と②は簡単に推測可能です。
二つ目の姉の記事をそのまま素直に受け止めれば、①の逃げるべき対象は「母」で、②の動機も「母の毒親的行為」を差していると考えられます。
①と②がたとえこの推測の通りだとしても、「逃げろ」という逼迫したメッセージとは依然かけ離れている気はしますがとりあえずは仮説を立てないと話が進まないので。
次に行きます。
・③どうしていま、このメッセージが出されたのか?
これは、正直難問です。だって十二年も経っているんですよ、姉が消えてから。
まさか干支? は、関係あるまいし。
ただ一つ言えるのは、
「今、確認できただけで実は姉はずっと昔からこのメッセージをどこかで出し続けていた」
という可能性は低いことです。
おそらく姉がこのメッセージを出す必要性をかんじたのは最近、少なくともここ二、三年のことではないかと思うんです。
理由は二つあります。
一つは、十二年の間に直接僕に会うこともできたはずだ、と思うからです。
姉が消えたのは僕が大学受験をむかえる年でした。記憶が曖昧ですが、僕の志望する大学が自宅から通える範囲だったのを姉は知っていたかもしれません。そして僕は実際にその大学に合格して通っています。
つまり、姉が消えた年、そして大学に通う四年の合計五年間、僕は自宅に住んでいる可能性が高いと姉も思うはずです。それなら母の目を盗んで僕に直接会いに来ることもできるのではないでしょうか。
自宅付近で待ち伏せする。もしくは大学の周辺を探す。探偵でもない一般人には難しいかもしれないですが不可能ではない気がします。
でもご存じの通り、姉が僕に会いに来たことはありません。
ということは、少なくとも姉が消えてから五年間は、僕に「逃げろ」と伝える必要がなかったのではないかと思うんです。
とはいえ、直接来ると母と遭遇するリスクはどうしてもありますから、それを回避したかった、と考えることもできます。
そこで二つ目の理由です。
数年前までであれば、僕だと分かるSNSアカウントにDMを送れたはずなんです。
僕が今現在使っているSNSは、大きく三つです。
・X(旧:Twitter)
・小説サイト(も、一応追加しておきます)
・note
Instagramもアカウントはあるのですが、どうも性格に合わなくて作っただけで放置していますし、YouTubeなどの動画投稿サイトも視聴のみに留まっています。
今投稿しているSNSはいずれも匿名性を維持できるように運用しています。前にXは比較的個人を特定しやすいと書きましたが、僕自身は特定されるようなプライベートな発信はほとんどしていないはずです。基本的には小説投稿サイトにUPしたリンクの紹介の投稿ばかりです。
ですが大学生のころはそうではありませんでした。当時僕が使っていたTwitterアカウントには今よりもプライベートな情報を投稿していました。姉にそのアカウントを教えた記憶はないですが(フォローされていた記憶もないです)、もし探そうと思えば見つけられたのではと思うのです。
見つけられたとしたら、単純にDMを送れば済む話なんです。
しかしやはり姉からのコンタクトはありませんでした。
なのでこれらを総合して、姉が消えてからしばらくは僕に至急「逃げろ」と告げる必要はなかった、と考えることができるのです。
そのTwitterアカウントは数年前に消しました。友だちや家族のフォローが増えたことでなんだか閉塞的というか居心地が悪くなりやめることにしたのです。よくありますよね?
それでこの件は実は最後の謎にも関わってきます。
・④姉はどうやってこの伝達手段を思いついたのか?
「note創作大賞」を利用する。伝達手段としてあまりにも飛び道具すぎます。
この伝達手段を取るにはまず、僕が小説の創作に意欲がある、と知っている必要があります。
創作小説にまるで興味のない人には見つけられない場所だからです。
姉はどうやって、僕が小説を書いている、と知ったのでしょうか。
その答えが今は消してしまったTwitterにあると、僕は思っています。
姉はおそらく見つけていました。僕のアカウントを。
そこで僕は小説を書きたいだとか書いただとかをあげていたのでしょう。読んだ本の投稿もしていたのでどんなジャンルが好きかも予測できる。もちろんだからといって僕が今現在も創作を続けているかは姉にはわかりません。
なので姉は、今回メッセージを出すにあたって「賭けた」んです。
僕が創作大賞にやってくると。
そしてその賭けが見事に当たったのですからすごいとしか言いようがありません。
一体なにがここまで姉を突き動かすのでしょうか。
ところで。
すみません、ちょっと話がそれるのですが、「突き動かす」と今打ってからふと自分のことを考えてしまって。
僕は今年はじめて創作大賞に応募しようとしています。
今年で三回目の開催となる創作大賞ですが、はじめてなのです。そういうコンテストがあることを知らなかったから。といういうわけではないです。知っていたけど出すには至りませんでした。
創作自体は細々と続けてはいたものの、その先になにか華々しい未来があるとは思えなくなっていたのだと思います。
書いても、書いても、読まれない。埋もれていく。今回こそはと思ってUPした小説が、ビューが伸びるでもなくポイントが付くでもなく新着画面を下降していく。
コツコツと続けていたからこそわかるんです。ネガティブな予感とかじゃなく、積み重ねた経験としてわかるんです。
きっとこれも駄目だろうと。
本当に才能がある人は、本当に面白い小説は、こんなに長いこと埋もれるわけないんです。今はエンタメがどんどん出てどんどん消費されていて。「これってそんなに面白いのかな?」というのも本になったりして。そんななかで見向きもされないってことがつまり何を意味するか、わからないほど馬鹿ではないです。
でも僕は、今回、応募しようと思いました。
たぶんそれは、とある出来事がキッカケになったと思っています。
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