コロナ禍での奇跡的な書面取材
「自粛」という名のもとに、新型コロナの感染拡大で企業活動が停止してしまった2020年。広報さんから「熱い原稿ありがとうございました」とお礼を言われました。
対面ではなく、メールによる書面取材という無機質なやり取りだったにも関わらず、どうして原稿に「熱」がこもったのか、少し長くなりますがお付き合いください。
休館に追い込まれた美術館・博物館に“善意のシグナル”を発信していた取り組みを振り返りたいと思います。
俎上に載せる記事はこちらです。
インタビュー:ドワンゴ-デスクワン (deskone.co.jp)
ドワンゴの「ニコニコ美術館」は、ネット展示配信を無償で実施し「コロナ休館の救世主」と呼ばれました。現在、感染症対策を取りながら再開に漕ぎつけた美術館・博物館ですが、これまでのような大規模集客が見込めないなか、アートの発信は変わらざるを得ないし、実際に「新しい美術館・博物館体験」が生まれました。
この新しい芽に着目し、「ニコ美」のプロデューサーにインタビューをお願いしました。メールを通して質問に答えてもらうという形で取材は進みました。
「ニコ美」を視聴し、実際に再開された展示会を博物館で鑑賞したうえで、オンラインとリアルでどう体験が違ってくるのか、拙い感想をぶつけながら質問を重ねていきました。「〇〇についてどう思うか?」ではなく、「〇〇について私はこう思ったのだが、実際はどんな意図があったのか?」と問い掛けます。相手も「ご指摘の通り。いやそこはこんな思いがありまして…」と返ってきました。
「お互いの技を全身で受け止めてくれるという安心感と、それを視聴者が見守る。不謹慎かもしれませんが、プロレスのような刺激を感じました」と感想をぶつけました。
返ってきた回答に「そうなんですよ。スリリングに感じるのは作り手としてこんなところを意識しているからです。それにニコ美はSNSとは決定的に違いがあるのです…」と、プロデューサーの語り口も熱を帯びてくるのがわかります。インタビュアーとして、このような瞬間に立ち会えるのは仕事冥利に尽きるというものです。
「プロレス」という言葉から展開していくプロデューサー氏の「ニコニコ観」「コロナ禍での企業発信」が本原稿の「見せ場」になります。さまざまな関係性がリアル同様に、オンラインでも構築できるかどうか、社会実験のでもあったと思います。
書面インタビューながら、取材者と被取材者、展示会をつくる学芸員、それを伝える動画プロデューサーと視聴者といった各々の関係性が露わになったともいえそうです。インタビュー記事の醍醐味であるプロレスのようなヒリヒリした切迫感を幾分かでも感じることができたなら、書き手としては望外の喜びです。
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