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少しでも早く保釈されるための工夫:東京地方裁判所の問題点

保釈は、起訴された被告人が社会に戻るための最も重要な仕組みです。しかし、全国の中で東京がもっとも運用状況が悪いということが、弁護士の間では広く知られています。今回は、東京地方裁判所における保釈の運用の問題点と、そのような状況下での弁護士としての工夫についてお話しします。

保釈請求書の提出以降の手続きの流れ

まず、保釈請求から裁判所の判断に至るまでの流れを説明しましょう。 保釈手続は、弁護側が保釈請求書を裁判所に提出することから始まります。裁判所はこの請求に対する意見を検察官に求めます(求意見)。検察官は必ず反対の意見を述べます。覚醒剤使用初犯のような、誰がやっても保釈されるような事件でさえ、形式的に反対意見を出してきます。検察官の意見を受け取った後、裁判官が保釈するか否かを判断します。

東京地方裁判所の運用の問題点

東京地方裁判所における最大の問題は、保釈請求書の提出から判断までの時間が他の裁判所に比べて圧倒的に長いことです。東京では「平日中2日」空くと説明することになります。例えば、月曜日に請求すれば木曜日に判断が出るというわけです。金曜日に請求すれば翌週の水曜日まで待たされます。他の裁判所では、通常、請求当日か翌日には判断が出ることが多いようなのです。
この運用の差の理由は定かではありません。裁判所から検察庁への書類の受け渡しが一日に決まった時間、数回しかないことなどが言われていますが、そのような理由で釈放が数日遅くなることが許容されるはずがありません。弁護士会が改善を求めていますが、一向に改善される気配がありません。

少しでも早く保釈判断までたどり着くために弁護士に出来ること

被告人にとって、1日でも早く釈放されることは非常に重要です。場合によっては、その1日の差で仕事を失わずに済むこともあります。そのため、弁護士として現状の中でできる限りのことをして、少しでも早く判断を得られるよう工夫しなければなりません。
なお、保釈請求をするうえでの弁護活動の他の点についてはこちらのnoteをお読み下さい。

一つ目として、起訴状が裁判所に届いたできるだけ直後に保釈請求書を提出するようにすることが挙げられます。保釈は起訴後にしか請求できません。そして「起訴後」とは、検察官が提出した起訴状が裁判所に受領された瞬間以降を指します。そのため、提出できる状態になったらできるだけ早く保釈請求書を出すようにすることが重要です。請求書を出すのが遅れれば、当然、裁判所が検察官に意見を求めるのも遅れることになります。保釈請求書を提出するタイミングは弁護士側でコントロールできる事情なので、できる限り早く動くことが重要だと考えています。
二つ目は、保釈請求書を裁判所に提出する前か同時に、担当検察官に直接FAXしておくということです。検察官は保釈請求書を読んでから意見書を作成します。裁判所から求意見が届くまでの空白の時間が無駄にならないよう、あらかじめ意見を考えておいてもらうようにするのです。最終的には検察官が意見書を作成・提出するかどうかに左右されますが、何もしないよりは判断が早くなる可能性は高くなるでしょう。

まとめ

裁判官は、身体拘束が1日長くなることで被告人がどのような不利益を被るのか、体感として理解できていないように思います。被告人の悲痛な叫びを直接聞く機会がないからです。しかし、これを仕方がないと諦めるつもりはありません。被告人の声を直接聞いている弁護士として、現在の環境の中で最善を尽くす工夫を、たとえ小さなことでも積み重ねていくことが重要だと考えています。

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