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【カルチャー】音楽について語る言葉を持たない私が音楽について語るとき。/#私を構成する42枚

音楽について語ってみた。


#私を構成する42枚

というタグがちょっと前から話題になっている。自分の好きな音楽アルバムを42枚選んで一枚の画像にし、共有するわけである。

今更だけど私も作成してみた。

私を構成する42枚

(意識的に)音楽を聴くようになってかれこれ15年。42枚も選ぶとなると過去によく聴いていたけど今ではあまり聴かなくなってしまったアルバムも選ぶ必要性が出てきて、結構苦労した。

42枚のリストの詳細はこの記事の最後に記しているので、ご興味のある方は見てみてください。


音楽を語る言葉を持たない私


正直、この42枚のリストを作って発信することにかなりのためらいがあった。

なぜなら私は、特別音楽に詳しいと言えるわけではないからだ。

"音楽を語る言葉を持たない音楽好き"と言っていいだろう。

音楽を聴くことは好きだが、演奏は出来ないし、音楽理論もまったく知らない。コード進行がどーのこーのと言われると白目をむいてしまう。

また、新しいアーティストを発掘することもしない。CDやレコードにかけるお金もさほど多くない。

それに、気づいている人もいるだろう。

この42枚のリスト、見ようによってはおもしろみがない。

なぜなら「定番中の定番」と言われるようなものばかりが並んでいて、あまりにも教科書的すぎるからだ。

「これを選ぶとはなかなか"通"だなぁ」
「これのアルバムは初めて見るなぁ」

と言うような感慨が起きてこない。要は新しい発見がない。

こんなリスト、誰の参考になるというのか。

上位互換が常に隣にいる世界


音楽に限った話ではないが、"自分の好きなもの"について語るのは意外と勇気がいる。

「これが好きって言って、変な人と思われはしないか・・・」

マイノリティー(少数派)に属している不安から生じる自意識が、邪魔するからだろうか?

確かに私が選んだ42枚は教科書的とは言えども、平成産まれの人間が選んだにしてはどこか時代を異にしている趣がある。確かに「変な人」と思われても仕方がない。

だが現代は、この間も書いたことだが、何がメインカルチャーで何がサブカルチャーか分からない。自分の好きなものをネット上で自由に発信できて、同じものを好きな人と繋がることができる時代である。

そう考えると、マイノリティーに属している不安を持つ人なんて案外減っているように思う。

実際私もネットがもたらす「自己開示によって繋がりを持つことができる」という恩恵を十二分に預かってきたから、「これが好きって言って変に思われないか」という不安にかられることはそこまで多くなかった。(元来の厚かましい性格もあるだろうが)

しかし、ネットが提供した「繋がりの場」は「自分より詳しい人の存在を常に意識させられる」という弊害も生んでしまったように思う。

それに苦しんでいる人は若い世代を中心にかなり多い。

実際ライターの稲田豊史は著書「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形」において、いわゆるZ世代の若者が述べた以下の言葉を紹介している。

「同世代の中でオタクがいっぱいいるから、もう敵わないんです。SNSで自分の"上位互換"の人をすぐに見つけられちゃうから、そのジャンルで勝てないと思ったらすぐ諦めちゃうんですよ。みんな言いますよ。『自分の好きなものを好きって言いにくくなった』って。私自身すごく共感します」(ゆめめ氏)

「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形(光文社新書)」より

この言葉を受け稲田氏はSNSで起きているこの状況を「自分の"上位互換"を目視できてしまう地獄」と表現している。

本当に『自分の好きなものを好きって言いにくくなった』というこの状況を地獄と呼ばずしてなんと呼ぶか。

「ネットを使って誰もが自分の好きな物事を発信でき、同じ趣味を持った者同士で繋がることができる」というのはただの幻想だったのか。

初めてこの言葉を見たときは、あまりの衝撃に開いた口が塞がらなかった。

音楽を語る言葉を持たない私が音楽について語るとき。


ただ、『自分の好きなものを好きって言いにくくなった』というのは何もZ世代に限った話ではない。

「ゆとり世代」である私も自分の好きなものを語るのは怖い。

大して詳しくもない音楽について語るなどもってのほか。ビートルズのビの字でも言おうものなら、そこらじゅうにいる「ビートルマニア」から集中砲火を受けてしまうだろう。

実際そんな現実も知らない10代の頃、リアルな場で音楽について語ろうとしてコテンパンにされた苦い思い出もある。

要するに音楽を語る言葉を持たない私は音楽について語るとき「私なんかが音楽について語っていいのだろうか」という不安があるのだ。

しかしそれは、音楽に限った話でなくいろんなジャンルにおいて、いろんな人々が感じていることであると思うのだ。

自己開示の難しさというのはここにあると思うが、これ以上語っていてはいつまで経っても本題に入れないのでここで止めにする。

ただ、最後に言いたい。


それでも私は音楽について語りたいのだ。


◆◆◆

私の洋楽TOP5,邦楽TOP5


というわけで、今回私が選んだ42枚のアルバムの中から、洋楽TOP5、邦楽TOP5を順に紹介していく。画像で言うところの一番上の二段。上段が洋楽TOP5、下段が邦楽TOP5である。

また、それぞれのアルバムの中から好きな1曲を選んでいるので、興味のある方は聴いてみてください。

では初めよう。

洋楽編。

Tapestry/Carole King

言わずとしれた大名盤中の大名盤。生涯で1枚のアルバムしか聴いてはいけないと言われたらこのアルバムを聴くだろう。それぐらい大好きなアルバムである。

女性の繊細な心情を表現力豊かに歌ったこのアルバムは「女性のためのアルバム」と言われているが、男性である私が聴くと、始めてガールフレンドの家に遊びに行ったときのようなドキドキとした気持ちになる。

どの楽曲も素晴らしいが、私が一番好きなのは「You've got a friend」である。

題名を直訳すると「(たったいま)あなたは友達を手に入れた」と言う意味になるが、この友達とは歌の主人公である「わたし」である。

つまり「あなたには(私という)友達がいる」と言う励ましの歌と読み取れる。

「あなたは私の友達よ」と言うのではなく「私はあなたの友達よ」と言う。これはなかなかにタフで、本当の意味での友達でないと言えない言葉だと思う。

何があろうとも私はあなたの味方であると言う力強い心情が読み取れる、素晴らしい歌である。


1962-1966/The Beatles

これまた説明不要のど定番中のど定番。通称、赤盤。ライブバンドとして活動していた初期ビートルズの楽曲を集めたベスト盤である。

ビートルズと言うと何かと、実験的な音楽をやった革命児とか、古今東西に影響を与えた伝説のバンドということが言われがちだが、このアルバムを聴いていると、元は(いい意味で)ただのロック好き、ポップス好きのバンドキッズだったことが分かる。

そう考えると1stの「Please Please me」を挙げるべきだったのだろうけど。

今回私が選んだのは「Ticket to Ride」である。

広大なサウンドというのか、さながらアメリカンロックのような壮大さを感じる。

この言い方が正しいか分からないけど、現在の録音環境で録音されていたらもっと迫力のあるサウンドになっていたではないかと思う。

ラスサビでリンゴ・スターがスネアを一発「バンッ」と叩くのが最高にカッコイイ。


1967-1970/The Beatles

通称、青盤。録音芸術としての音楽を追求した後期ビートルズの楽曲を集めたベスト盤。

だいたいアーティストが実験的なことをやり出すと「問題作」とか「前の方が良かった」と言われがちである。

そのようななか、当時の人達がビートルズが実験的な音楽をやり始めたことをどのように受け止めていたかは分からないが、現在に至るまできちんと結果を残していることはさすがとしか言いようがない。

私が選ぶのは「A Day in the Life」である。これもまぁ、ど定番中のど定番である。

サリンジャーを彷彿とさせる文学的な歌詞に、オーケストラ、効果音をふんだんに駆使したプログレ的展開。ファインなアーティストとしても、ビートルズが本物であったことを証明する文句なしの楽曲である。


Mothership/LedZeppelin

3枚続けてベスト盤をリストアップするのもどうかと思うが、やはりツェッペリンを聴くとなったらこのアルバムだろうということで選んだ。正直、デビュー盤とで迷ったが。

後期に向かうにつれて楽曲の構成が複雑化し、マニアックな方向に向かっていく様が見て取れて重も白いが、何やかんや一番好きなのは初期の楽曲である。

ブルースを爆音で鳴らした。一言で言えばそれだけなのに、なぜこうも説得力があるのか。そう考えるとやっぱりデビュー盤にしておけば良かったかもしれない。

私が選んだのは「Since I've Been Loving You」である。

B'zの稲葉さんもこの楽曲が一番好きと述べているそうで、情熱的なバラードは確かに日本人の心情にあっているかもしれない。

ツェッペリンのアイデンティティであるブルースをとことんまで追求したこの楽曲こそ、まさにツェッペリンの代名詞であると言える。


Automatic For The People/R.E.M

日本での知名度は低いものの、Mr.Children、スピッツなど、日本を代表するアーティストに多大なる影響を与えたアメリカのロックバンド、R.E.Mの代表作。

内省的な雰囲気が漂っていてどこか暗い印象を与える作品だが、独特の浮遊感やメロディは現代の日本のオルタナティブロックに通ずるものがあり、R.E.Mの影響力の大きさが見て取れる。

私が選んだのは代表曲「Man on the Moon」である。

信じられないかもしれないけど、人類が月に行ったんだ。という歌詞が何とも言えない哀愁があって好きだ。

繊細さとポップさが同居している感じは、R.E.Mの代名詞と言っていいだろう。


邦楽編

紅盤/斉藤和義

ビートルズを彷彿とさせるタイトルだが、2人の男女が出会い、結婚するまでを描いたコンセプトアルバムである。

オリジナル曲だけでなく、往年の歌謡曲、J-POPのカバーも入っているのが聴きどころ。邦楽への関心を向けてくれた1枚でもある。

中でも一番好きなのは原田真二のカバー「キャンディ」

原曲はピアノがメインの曲だが、ギター1本でこれだけの再現をしてしまうというのが信じられない。(公式動画がないため未掲載)


STYLE/LUNA SEA

ロックの深淵への道を開いてくれたのは、私にとってはLUNA SEAの存在が大きい。

実験的な要素が詰まったどことなく閉塞感のあるアルバムだが、バンドの緊張感がギリギリまで追い詰められていて、この時期のLUNA SEAにしかない音がパッケージされている。

今回選んだのはアルバムのラストを飾る「SELVES」

R&B、HIPHOPを思わせるリズムでありながら、アングラ、ニューウェイブを根源とするLUNA SEAらしさに染まった1曲。ラストのギターが幻想的。


9.5カラット/井上陽水

言わずと知れたシンガーソングライター井上陽水のメガヒットアルバム。

アルバムでの陽水は実験的な要素が強いが、このアルバムは他アーティストに提供した楽曲を自身が歌い直したものを収録。

提供楽曲とだけあって売れ線を意識しているが、そこに陽水のミュージシャンとしての真骨頂があるように思える。

今回選んだのは安全地帯の代表曲でもある「ワインレッドの心」

個人的には陽水の歌うワインレッドの方が、妖艶さがあって好きである。(公式動画がないため未掲載)


小さな生き物/スピッツ

スピッツを語ることほど恐れ多いこともない。ましてやアルバムを1枚選ぶなんて・・・という思いもあるが、今回はこちらをチョイス。

前作のとげまるとは違い、東日本大地震を経たのもあってか、無駄なものが一気に削ぎ落とされたソリッドな印象を与える。シンプルさが結局のところ好きなのだ。

中でも一番好きなのは「さらさら」

「眠りにつくまでそばにいて欲しいだけさ」の後に「見てないときは自由でいい」と歌う。真のやさしさというのか、こんな歌詞どうやって思いつくんだよと、ただただ驚くばかりである。


人気者で行こう/サザンオールスターズ

ゴリゴリのブルースをやっていた初期のサザンのアルバムも好きだが、当時隆盛を極めたデジタルサウンドをふんだんに取り入れたこのアルバムをあえてチョイス。

その時代のトレンドを全て自分のものに昇華してしまう桑田佳祐の才能もさることながら、それを実現するバンドメンバーもなかなか。演奏といい歌詞といい、一番脂が乗っていた頃なんじゃなかろうか。

どの楽曲も素晴らしいがやはり白眉は「海」か。

完全にAORのサウンドなんだけど、すでに大御所感を出し切っている。レコードで聴くとB面の1曲目に入っているのがなんとも憎らしい。(公式動画がないため未掲載)


【詳細】私を構成する42枚


以上、私を構成する42枚から選出した、洋楽TOP5、邦楽TOP5である。

なお、42枚の詳細は下記の通りである。

  1. Tapestry/Carole King

  2. 1962-1966/The Beatles

  3. 1967-1970/The Beatles

  4. Mothership/Led Zeppelin

  5. Automatic for the People/R.E.M

  6. 紅盤/斉藤和義

  7. STYLE/LUNA SEA

  8. 9.5カラット/井上陽水

  9. 小さな生き物/スピッツ

  10. 人気者で行こう/サザンオールスターズ

  11. Pearl/Janis Joplin

  12. Sticky Fingers/The Rolling Stones

  13. A Night at the Opera/Queen

  14. Californication/Red Hot Chili Peppers

  15. MTV Unplugged in New York/Nirvana

  16. Plastic Ono Band/John Lennon

  17. 殺シノ調ベ This is NOT Greatest Hits/BUCK-TICK

  18. MOTHER1+2 オリジナルサウンドトラック/鈴木慶一、田中宏和

  19. 家族行進曲/ハンバートハンバート

  20. ROMANCE/宮本浩二

  21. Echoes of Japan/民謡クルセイダーズ

  22. BLUE BLOOD/X

  23. King Of The Delta Blues/Robert Johnson

  24. Pet Sounds/The Beach Boys

  25. Wheels of Fire/Cream

  26. 461 Ocean Boulevard/Erci Clapton

  27. After the Gold Rush/Neil Young

  28. My Generation/The Who

  29. Cheap Thrills/BIG BROTHER & THE HOLDING COMPANY

  30. At Fillmore East/The Allman Brothers Band

  31. 井上陽水トリビュート/ヨルシカ、槇原敬之他

  32. Keisuke Kuwata/桑田佳祐

  33. THE BEST ALBUM 40th ANNIVERSARY~あの頃へ~/安全地帯

  34. The CLASH/The CLASH

  35. WAR/U2

  36. Black Holes & Revelations/MUSE

  37. Never Mind the Bollocks, Here's the Sex Pistols/Sex Pistols

  38. 想/INORAN

  39. #4/凛として時雨

  40. Wildflower/Superfly

  41. UROBOROS/DIR EN GREY

  42. anima/ナイトメア

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