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9番 花の色はうつりにけりな     小野小町

2018年3月24日/花山周子記

花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに 小野小町おののこまち 〔所載歌集『古今集』春下(113〕

歌意 
桜の花はむなしく色あせてしまった。春の長雨が降っていた間に。─私の容姿もすっかり衰えてしまった。生きていることのもの思いをしていた間に。

『原色小倉百人一首』(文英堂)より

「うつりにけりな」って、なんか、かわいらしい。
首をちょっとかしげるような、乙女の仕草。急にここから歌は転調する。
「いたづらに」、厳しい調子だ。
「わが身世にふる」、いかめしい。
そして、加速する。「ながめせしまに」。
花の色の移ろいをきれいだなあ、なんてのんきにながめていたら、
自分はすっかりおばあさんになっていた。
ながめせしまに・・・ながめせしまに・・・ながめせしまに・・・が反響する。

すごいなあ、たった一首のなかでまるで玉手箱を空けてしまったみたいに長い長い時間をワープしてしまう。
ちなみに「ながめ」は「長雨」の掛詞でもある。うまい。

けれど、なぜだろう。私はどうも最終的には小野小町の歌が性に合わない。
「わが身世にふる」みたいな嘆きを退屈に思ってしまう。
好みじゃないんだなあ。


風草をつかみにけりないたづらにわが子世にう草の間に間に  花山周子

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