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1番 秋の田の仮穂の庵の         天智天皇

2017年8月31日/花山周子記

秋の田の仮穂かりほいほとまをあらみわが衣手ころもでは露にぬれつつ  天智天皇 〔所載歌集『後撰集』秋中〕

歌意
秋の田のほとりにある仮小屋の、その屋根をいたとまの編目があらいので、私の衣の袖は露に濡れていくばかりである

『原色 小倉百人一首』(文英堂)

作者は天智天皇。天皇なのだから、まさかこんな掘っ立て小屋に当人がいるわけもなく、これは農民の暮らしをおもんばかっての御製ということになるようで、岡井隆は、

「その農業者によせられる感情の表現にあらためて感動した」(『トリビュート百人一首』)と書いている。

岡井が言うこの歌の感情の表現は、「苫をあらみ」の字余りからの下句「わが衣手は露にぬれつつ」の大仰なポーズに印象づけられるものだろう。

古代にあって天皇のような偉い人が農民の悲惨な貧困生活をこのように体感的に想像するというのは、まさに驚くべきことで、彼が生き生きと演じるそのモチベーションは一体なんだったのか。
露にぬれつつ・・・って。

というわけで、私の場合は現今の金持ちの心持ちをおもんばかって歌ってみる。

見下ろせる地上の人の貧を遠みわが懐は一滴も零さず 花山周子

注:『万葉集』巻十の中に「秋田刈る仮盧かりほを作りわが居れば衣手寒く露そ置きにける」というこの歌に近似した作者未詳の歌があることから、この歌は実際には天智天皇の歌ではないと考えられている。

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