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地方進学校の思い出


「地方進学校」での辛い日々

「進学校」の定義はよくわからないが、「みんこう」(みんなの高校情報)を見ると、私の故郷には偏差値70以上の高校が2つある。1つは、私の母校であるA高校。もう1つは、文武両道を掲げているB高校である。
どちらの高校も社会で華々しく活躍しているOB、OGがたくさんいる。一方で、私が知っているだけでも、高校時代に心に傷を負った人もいる。

A高校についていえば、まず、勉強ができないことで自信を失う人が多いと思う。中学時代はみんな優等生だったはずなのに、高校に入ると普通、下手したら普通ですらなくなる。そこで友達をたくさん作ったり、部活で活躍できればいいが、それもできない場合、自己評価はとことん落ちていく。
さらに、進学校のくせにくだらないいじめがあった。男子がひそひそと女子の悪口を話したりする程度で、暴力やカツアゲのようなものではないが、ひそひそ話ってけっこう精神的に辛いものである。また、私は友達が少ないので巻き込まれることさえなかったが、女子同士のいざこざもあったようだ。
いじめが理由ではないかもしれないが、不登校になる人もけっこういた。高校時代に傷ついたことが理由ではないと思うが、卒業後にみずから旅立った人、それも割と近い間柄だった人が数人いる。
不登校にはならなかったけど、
「高校時代は本当にきつかった」
という同級生は何人もいる。私も同感だ。

B高校の知り合いはそれほどいないのでよくわからないが、男子はみんな楽しそうにしていた。
一方、女子の場合、馴染めない子はとことん馴染めないようであった。不登校になって大学進学を諦めたり、無事に卒業したものの高校とは一切関わりたくないと言ったり、いろいろあったようである。
予備校で見かけるB高校の女子たちは、華やかでかわいらしく、そしていつもグループで行動していたので、私も馴染めなかったと思う。A高校では、地味であることも単独行動が好きなことも容認されていたし、そんな人はたくさんいた。

大人になって考えると、正直、どちらも行きたい学校ではないと思う。自分がまだ未熟だから耐えられないことが多かっただけかもしれないが、それだけではないと思う。
全否定するわけでもないし、楽しいことももちろんあったが、地方の良くないところ、妙なエリート意識が凝縮された嫌な空間だと感じることもあった。


地方進学校で感じた、同級生との差

都会であれば、名家や上流階級の子女は小学校から私立に通ったりするのかもしれないが、地方の場合、進学校にいいおうちの子が来ることも多い。
親が医者という人はたくさんいた。親が大卒というのも珍しくなかった。帰国子女の子も数人いた。
「うちは貧乏だから…」
と言ってあまりお小遣いを持っていない子もいたが、よく話を聞くと、お父さんは高卒の公務員だった。それは貧乏とは言わない。
我が家のような、働かずに酒を飲んで被害者意識に浸っている父親なんて、どこにもいなかったと思う。アルバイトでも日雇いでも働いてくれたらまだ尊敬できたのだが、それすらできない人だった。
父親の悪口はおいといて、地方進学校の生徒は安定した家庭の子供が多かった。当時の我が家みたいな家はどこの学校でも珍しいだろうが、この学校では特に劣等感を感じることが多かったと思う。アルバイトが禁止だったので、お金がないのにどうにもできないのが辛かった(学校に内緒で、冬休みだけ郵便局で働いていたが)。

「貧富の差」もあったが、「能力の差」も感じていた。
当然ながら、勉強ができる人がたくさんいた。トップは全国模試の上位者に名前を連ねるような人たちで、私にとっては天上人である。
さらに、勉強だけではなく、音楽や美術、運動が得意な人もたくさんいた。怖いことに、彼らは必死にではなく、スマートにさらっと素晴らしい成果を出すのである(少なくとも、私にはそのように見えた)。
優秀な彼ら、彼女たちの中には、卒業後にメディアで活躍を目にする人が数人いる。彼らの発言を聞くと、視野の広さ、視座の高さ、思考の深さに驚く。きっと高校時代から、明確な目標を持って努力していたのだと思う。

私はというと、中学時代は勉強しかできなかったが、高校ではその勉強すらできなくなった。音楽や美術、運動はもともと苦手である。運よく部活で成績を残せたが、それができなければ、さらに自己肯定感が下がっていたと思う。もし部活がなかったとしても、その分、勉強を頑張ったとは思えない。何も楽しいことがなく、でも不登校になるほどの勇気もないからとりあえず学校には行き、大学受験ではどこか行けるところがあったかさえ怪しい。部活で自信がついたから、その後は勉強を頑張って、1年の頃には考えられなかった大学に合格できたのだ(一浪したけどね)。

改めて書いてみると、コンプレックスまみれで辛い高校生活を送ったようだが、卒業しても同級生とつるみ、たまには同窓会に行き、東京で同じ高校出身の人と出会えば仲良くなるのだから、我ながら現金である。
辛かったと言っても、大人になっても引きずるほどのことはなかったこと、またそれを「いま思えばたいしたことないな」と思える大人になれたことは幸せなことだと思う。





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