相手の逃げ場所には立ち入ってはならない
10年近く前のことだが、自分の所属する事業部で同僚と距離ができたことがあった。いま思えば誰かが悪いわけではなく、組織運営がうまくいかずにひずみが出ていただけなのだが、「同僚の配慮のなさのせいで、自分の負担が過剰になっている」と思っていた。実際に仕事は大変で、毎日終電まで働いても仕事が終わらないような状況ではあった。
なお、この数年後には同業他社に吸収され、これらの諸問題は解決された。当時一緒に働いていたメンバーは数人だけ会社に残り、あとはみんな辞めていった。当時は対立していた同僚は、人間的には嫌いな人たちではなかったので、いつのまにか仲直りして、いまでも交流は続いている。最近は会えてないけど、SNSを通じて、元気にしていることは知っている。
私の唯一の救いは、他部署の人たちと仲がいいことだった。同じ会社に、つらいときにランチに行けるような味方がいることは心強かった。
対立していたIさんは、私と違って他部署に親しい人はいないようで、会社全体のイベントにはほとんど参加していなかった。しかし、他部署の人とも仲良くした方がいいと思い立ったのか、その年の忘年会(立食パーティ)にやってきた。
私はIさんや、Iさんと一緒にやってきた同僚には近づかず、他部署のメンバーと談笑していた。
その最中に背後から名前を呼ばれたので振り向くと、Iさんと他部署の社員数人がこちらを見ていたので、「呼んだ?何?」と聞く意図で彼らに向かって軽く手をあげた。すると、Iさんが
「あはは、何そのポーズ~」
とわざとらしく声をあげて笑うので、無言で軽くにらみつけて、彼女たちから離れてやった。
おそらく、Iさんは他部署の人たちと話をしようと試みたものの、会話が弾まないので、彼らと親しい私を会話に巻き込もうとしたのだろう。
私が彼女と接したくないことはおそらく気づいているのだから、パーティのときくらいはそっとしておいてほしかったわ。
このときのIさんとの関係悪化は、私が「Iさんが配慮してくれずにいろいろ押し付けてくる」と不満に思ったことが発端だったが、彼女がどうこうできる問題ではなかった。だからどうにかしてくれと言うつもりはないが、仕事以外の時間はそっとしておいてほしかったし、私の逃げ場である他部署の人との関係性は邪魔しないでほしかった。他部署の人と話すために、彼女を避けることで心を守っている私を巻き込まないでほしかった。
いじめっこが、学校でいじめている相手が近所の子たちと楽しく遊んでいるところに割り込むようなもんやで(笑)。