赤外線カメラのいろいろ
最初に
赤外線カメラについて世の中誤用が多く、正しい情報を伝えるために、本記事ではさまざまなポイントを解説します。
一般的な誤解や誤った情報について、極力専門的な言葉を避け、わかりやすい形で整理し、正確な情報を提供いたします。
特に詐欺まがいの製品が横行しており注意喚起も含めて投稿しようと思っています。
赤外線カメラに関心がある方や誤った情報に翻弄されてしまう方は必見です。
赤外線とは
光には波長があり~~~ と難しい話は別途解説するとして、人間の目には見える光には上限と下限があります。具体的に言うと虹色の青色から、赤色の間しか見えません。
赤外線とは目に見える赤い光の外にある光という意味で、人の目では見えない光すべてを総称します。(マイクロ波まで含むのかというのは置いておいて)
赤外線の分類と混用
ひとくくりに赤外線といっているが、実はそこには分類があり、名称がつけられています。
この名称のつけ方が厄介でいろいろなつけ方が存在しているのが混乱する要因となっています。
この分類がいくつかある理由はそれらを議論してきた分野で都合の良い波長の区切りが違うことが理由です。
可視光という分類もそもそも人の目で見えるという範囲で区切った名称なだけです。
上図では赤外線を0.77um(770nm)以上と定義してありますが、0.73um以上という人もいれば0.8um以上という人もいます。
これは人の目でも見える範囲が個人差があり、またどこから見えなくなるかも曖昧であるためです。
人の感覚による差だけでなく分野による差もあります。化学分野においては水の吸収が影響する領域や、分子内振動の吸収が影響する領域といった形で物性が影響する領域の観点から光を分類します。
一方赤外線というのはものを温める性質もあるためヒーターに興味がある人たちは効率的に温めることができる波長を区切って分類したがります。
そのため近赤外線、遠赤外線と言葉を交わしたとしても、示してる光が異なるため、会話が通じないことがあります。
赤外線カメラとしての分類
それでは赤外線カメラとしての分類は何を基準に分類すべきなのでしょうか?分類の仕方はいろいろとあると思いますが撮像素子とレンズの観点から分類してみます。
撮像素子、レンズ材料から見た時の波長分類
作る側の観点から考えたときに、それぞれの領域で使える材料は限らて来てり、また受光するセンサ方式も決定されます。
そのため波長ごとに全く異なるカメラが必要となってきます。
でレンズ材料について調べてみましょう。
一般的な光学ガラスとして利用される石英ガラスは下図のように赤外線領域では光を通しません。レンズが光を遮蔽してはカメラとして機能しません。
そのため赤外線カメラを作成するには赤外領域を通す材料でレンズを制作する必要があります。下図は赤外線を透過することができる材料です。
これら材料は需要がすくないこと、また湿気に弱い材料が多いことから加工が困難であり、非常に高価となります。
一方SiやGeは比較的安定であり、また近年カルコゲナイドガラスやSiもをモールド成型やエッチングでレンズを量産する技術が確立されてきており、比較的安価に製造することができるようになってきました。
一方撮像素子(センサー)についてはどうでしょうか?
方式としては大きく分けてCCD・COMOS素子、InGAS素子、ボロメーター素子の3つがあります。(その他もありますが一般的話にしておきます)
可視、近赤外領域ではCCD・CMOS素子が使われます。これは一般的なカメラに使われている素子です。近赤外領域ではInGaAsを利用した撮像素子が一般的に使われますが、この素子は非常に高価でまた冷却が必要となっているため利用がなかなか難しいのが現状です。
このあたりの波長までは、一般的には照明や太陽光を外部から受けて物体から反射、拡散した光をレンズを通して撮影します。逆に言えば照明がなければ撮影することはできません。
一方物体はある温度になるとそれ自身が光を放ちます。
例えば熱くなった鉄が赤く光る現象もそれです。物体から放射される光(熱線)を受けて温度が上昇するため、小さな温度計を格子上に並べることができれば温度上昇を計測することで赤外光をとらえるとができます。
そういった構造がマイクロボロメーターと呼ばれ熱線センサー(赤外センサー)として利用されています。このマイクロボロメーター自体は材料が安価で加工方法が技術確立され近年安く供給されるようになってきました。
以上のことから赤外カメラについては大きく分けて4通りあります。
1.数百万以上の非常に高価な特殊材料を使った撮像素子(無縁なので割愛します)
2.ボロメーターとSiやカルコゲナイトレンズを使った比較的安価な熱線カメラ(数万~十数万)
3.CMOS,CCDカメラと一般ガラスレンズを用いた近赤外カメラ(数千円から数万円)
4.ごまかした製品、詐欺に近い製品(数千円から数万円)
次回以降それぞれについて説明をしていこうと思います。