無いものねだり
先日、学生時代からの女友達5人で集まった。
傍から見ると、どこにでもいるような40代半ばの女性5人。
1人は離婚経験あり独身、子どもあり、営業職。
1人は離婚経験あり独身、子どもなし、転職を繰り返す。
1人は既婚者子どもあり、事務職。
1人は独身、専門職。
そして、私。既婚者子どもあり、事務パート職。
ほぼ毎年1回、このメンバーで集まる機会を設けている。
が、実は、30代前半で正社員の仕事を辞めてから、私はこのメンバーで会うのが正直、キツかった。
みんな正社員で自立出来ているのに、身体を壊して細々とパートの仕事しか出来ず、夫に依存して生活している自分が惨めになるのだ。
自分の人生において、“仕事をして自立する”ということを重要視している私は、とにかくみんなが羨ましくなってしまい、帰宅後、しばらく落ち込んでしまうことが多々あった。
けれど、先日の集まりは、なんとなくいつもと感じ方が違った。
毎回、会話は、家族や仕事についての話から始まる。
自分の健康、共通の知人の近況…と続き、今回は、親の介護の話も加わった。
営業職でバリバリ働き、部長にまでなっている彼女は、離婚後も経済的に困ることなく、立派に一人息子を育てているが、最近、親が認知症になり、お世話をする必要性が出てきたらしい。
背負うものが増えて、大変そうだった。
転職を繰り返す彼女は、離婚して一人気ままに暮らしているが、やはり体調不良のときは不安になるらしい。
事務職で子持ちの彼女は、上の子が受験に成功して難関校に進学したことを喜んでいたが、下の子がやや不登校気味で悩んでいた。
独身で専門職の彼女は、専門分野を極めて仕事は充実しているが、同居している親が一時期、骨折し動けなかったので、仕事の調整が大変だったし、仕事以外の外出もままならずストレスフルだったらしい。
みんなそれぞれに大変さを抱えていた。
最初は40代半ばになると、色々あるよね…という感覚だったが、よく考えると、年齢に関係なく、それぞれに悩みやしんどさはいつもあったのではないか、ということに気付いた。
今までもそれぞれに仕事の悩み、夫婦の悩み、子どもの悩み、離婚の悩みがあったと思う。結婚しないことに関する悩みもあったかもしれない。
今回、親の介護の悩みや自分の健康不安が加わっただけなのだ。
私は「いつもみんなが羨ましかったよ」と言うと、
1人が「みんな完成された幸せの中にいるように見えて、実は色々とあるんだよ。それぞれの家庭内は見えないし、仕事だってそう。けど、傍から見ると、そのしんどさは分からない。だから、結局、無いものねだりしちゃうんだよね。」と言った。
そう、私は仕事に対して引け目を感じているから、いつも仕事に関する視点でしか見ていなかったのだ。
仕事のしんどさは分かっているつもりだったが、それ以上に「正社員で仕事をして安定した給与がある」状態だけに注目して、勝手に僻んでしまっていた。
私は、結婚していようが、離婚していようが、子どもがいようがいまいが、そこは全く重要視しなかったし、単にそれは個人の選択に過ぎないと思っていた。
結婚しても、いつも幸せなことばかりではないことを知っているし、子育ても辛いことや悩ましいことが多いことを知っているから。
なので、誰かから「結婚したいけど…」「子どもが欲しいけど…」と言われると、私は必ず「人生において、結婚も子どもも絶対必要ってわけではないよ」と言ってしまっていた。
結局、私はその人がどんなに悩んでいたとしても、「そんな悩み、大したことないよ」と軽く言っているのも同じだったんだなぁと反省した。
今回、私は自分の価値観に縛られない捉え方が少し出来たように感じた。
40代半ばにして、漸くやっとだが。
みんな日々、悩みや大変さを抱えて生きているし、私もそう。
思い通りにならないこともあるし、苦しい選択をしなければならないときもある。
だから、人生は楽しい、とまではまだまだ達観出来ないが、
他人が羨ましくなったら「あぁ、また無いものねだりしてしまったな」と、今の自分の生活も肯定してあげようと思う。