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壱
2023年7月7日 20:29
一つ、欠伸をした。こんな晴れた日は思索に耽るなどの馬鹿げたことはよしておいて、何とはなしに道を歩くに限る。桜の散る遊歩道をふらふら歩いていると、紋白蝶が視界の端に映り込む。彼もまた、なにも考えてはいなさそうだ。暫く歩くと、出店などが出ている少し広い道に出た。血を吸い上げた様な鮮やかな桃色に人々は魅了されているようだ。人集りの隙間を縫う様にして歩く。誰も私を見向きはしないが、それが私