ヒナドレミのコーヒーブレイク ケヤキの木の逆襲
我が家の前の道を少し行ったところに、1本の大木が植えられている。木の名前に疎い私には、それが何という木なのか 分からない。
ある日 私がその木の前を通りかかった時、一人の年配の男性がその木の前に立ち、木を見上げていた。私はその男性に「この木の名前をご存じですか?」と尋ねてみた。するとその男性は「この木は『ケヤキ』と言ってな」と前置きすると、人から聞いたという『言い伝え』を話してくれた。
それによると・・・ある時、この村の住民から『公民館を作って、地域を活性化させよう』という強い要望が持ち上がった。そこで、何人かの住民が立ち上がり、公民館の建設計画が進められた。だが立地条件の良い場所が中々見つからず、計画は長い間 頓挫した。
そして遂に公民館を建てるのに良さそうな場所を見つけ出した。それがケヤキの木の植えられている場所だったのだ。この木は、今から200年以上前から この場所にあるのだが、公民館を建てるためには、ケヤキの木を切らなければならない。そこで、止む無くこの木を切ることとした。一部の地元民の反対も無くはなかったが、最終的には多数決で、木を切ることに決まった。
木を切る当日。その日は、明け方から村を暴風雨が襲った。「これでは木を切るのは無理だろう」そう判断した住民たちは、作業を延期した。
2度目に木を切る当日。その日も 朝から暴風雨となった。暴風雨は一日中続き、作業はまた延期となった。住民は、口々に「これは、おそらくケヤキの木が切り倒しを止めさせようとしているに違いない」と言って、木を切り倒すことを恐れ始めた。
そして あちこちから切り倒しの中止を求める声が上がった。だが、公民館も欲しい。住民によって木の切り倒しを続行するか否かの話し合いが持たれた。多数決の結果、公民館の建設は必要不可欠だという結論に達した。木を切らずに公民館を建てることは出来ないだろうか?住民たちが知恵を絞った結果、解決策が見つかった。ケヤキの木は敷地の中央に植えられていたため、そこを中庭・・・テラス風にしてその周りを覆うようなロの字型の建物にするのだ。そして公民館は完成した。
こうして建てた公民館だったが、5年もすると過疎化が進み、取り壊すことになった。もしかしたら、この取り壊しは ケヤキの木の仕向けたことだったのかもしれない・・・ということだった。
私は、この話を聞いて このケヤキの木を、この先 永久に守っていかなければいけない、と思った。そして『ケヤキの木を守る会』なるものを発足した。その後ケヤキの木は、安心したのか すくすくと成長を遂げている。
完