覚えていない、ちょっと良い話
定期的に開催するスイーツ会。
大学時代の先輩と友達3人。甘いもの好きがきっかけで偶然結成されたメンバーの至福な日。
この日のスイーツはクレープ。
クレープ店は人気なようで長蛇の列だった。
ナイフとフォークで食べる系のオシャレクレープだからと、私たちは迷わず並び始める。
しばらくして、1人のおばあちゃんが私たちの後ろに並んだ。
「ここテレビでやっててね。」明るく優しい声で私たちに話しかけてきてくれた。
「ずっと来たいと思っててね、今日孫を誘ったんだけど断られちゃって。」
その日は敬老の日。
私は「孫〜〜!なぜ断った!!!…」
と心の中で叫んでいたが、きっと事情があったに違いないと思いその言葉を飲み込んだ。
私は1日早く祖母2人との時間を過ごし、この日はすっかりスイーツ気分。敬老の日だということを忘れていたのも正直なところ…。
1時間ほど並んでいる中で、私はほとんどをそのおばあちゃんとお話していた。
聞くと地方から数時間かけてここまで来た様子で、洋服もオシャレをしていた。なぜか自分のおばあちゃんのように愛おしく感じながら、いろんなお話を聞いた。
店の入口が近づくと1人席が空いたとのことで、先におばあちゃんが入れることになった。
「お話しできて楽しかった。ありがとう。」と一言を添えてくれて、私達はおばあちゃんを見送った。
私たちがクレープを食べ始めるときには、おばあちゃんはお会計をすませるタイミングだった。
そして、私たちを見つけると「楽しい時間を過ごせたから!ご馳走させて。」と。
「いやいやいやいやいや!」と全力でお断りして、私たちは優しいお気持ちだけをいただいた。
という、2年前の素敵な出会い。
スイーツ会はまだ続いている。
女子会男子の先輩から当時の話をつい先日されたが、私は「????」完全に忘れていて最初ピンと来なかった。
記憶から忘れ去られてしまっていた、良い話。
「あんなに良いことしたのに忘れちゃったの?」と驚かれた。
楽しかった記憶はたしかにあるが、良いことをしたという記憶がほぼない。
これでよく分かったことがある。
私はおばあちゃんという存在が、無意識レベルで純粋に素直に大好きなんだと思う。
それくらい私はおばあちゃん子だ。