卒業
心地よい別れというものを初めて体験した。だんだんと春が当たり前になっているせいかもしれないけど、心が柔らかくあれるようなお別れだった。
卒業式の日もいつもみたいに時間ギリギリに学校へついて、だいぶ揃ったクラスメートの姿を見ながら自分の席を目指す。この日常も今日で最後。他愛もない会話をしてる友達のところへ行く。最後だっていうのに相変わらずみんなでゲームをしてたりする。いつも通りで嬉しい。いつものHRみたいに、先生が今日の予定を話してくれる。明日もここで先生の話を聞いてそう。
それから時間になって体育館へ行って、式をして、教室に戻ってきたら最後のHRをして、最後の礼をした。本当にいつも通りだったけど、号令係の声はいつもより凛々しくて、それ以外はいつも通りなのにそれだけ凛々しいから、みんなそれが少し可笑しくて、思わず笑ってしまう。最後までこのクラスらしくて良かった。
その後はアルバムにメッセージを書いたり写真を撮ったり、ゲームをしたりで、結局式が終わって三時間くらいは駄弁っていた。
僕は打ち上げに行く前に着替えたくて、みんなより早く、1人で帰った。自販機で高校生活最後の炭酸を買って、それを片手に校門をくぐる。不思議と寂しさよりも温かさを感じる。
「最高だった」と言うとひねくれたもう一人の僕が納得してくれないけど、「悪くなかった」と言うと、まさしくその通りと頷いてくれる。辛いこともあったけど、優しい記憶も楽しい記憶も思い出せる。心の底から「悪くなかった」と思える高校生活だった。